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2021.2.2

効果的なフィードバックとは?手法・ポイント・やってはいけないこと

ビジネスを効率よく進めるには適時、部下に対してフィードバックをする必要があります。しかし、効果的なフィードバックとはなにか把握している人は少ないのではないでしょうか。ここでは、フィードバックをするメリットやポイント、やってはいけないことについて説明します。具体的な手法についても紹介するので、フィードバックを実行しましょう。

フィードバックとは?何をすること?

フィードバックとは、もともと制御工学の分野で使われ始めた言葉です。たとえば、電流を制御する装置のスイッチを押したときに、予想していたよりも電流の規模が小さかったとしましょう。目標とするレベルの電流を発生させるには、出力具合を調整する必要があります。つまり、ある作業を行ったときの結果を鑑み、次の作業に反映するのがフィードバックといえるでしょう。フィードバックは、教育・心理学の場、そしてビジネスの場でも用いられます。特に、ビジネスの場でのフィードバックは、「対象が行った業務に対する評価を伝えること」を指します。フィードバックの対象は部下や取引先、ときには消費者であるケースもあるでしょう。上司から部下に対しては指導や面談として、ほかにも取引先との打合せ、お客さまアンケートなどを通じてフィードバックは行われます。
フィードバックの目的は、どのようにしたらより良い結果を得られるか、または次に目指すべき方向性について対象者に理解してもらうこと。ただ感想や意見を伝えるのでは、適切なフィードバックではありません。ところで、フィードバックと似たような意味で「フィードフォワード」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。フィードバックの視点が過去にあるのに対し、フィードフォワードは未来を見据えた言葉である点が異なります。なお、2つの言葉はどちらが優れているというわけではありません。フィードバックとフィードフォワードを組み合わせることで、結果と反省を踏まえた今後の行動についてスムーズに話せるようになるのです。

適切なフィードバックのメリット

効率的な目標達成

フィードバックを活用すると、目標をスムーズに達成できます。部下、あるいはチームに現状報告をしてもらい、必要に応じて軌道修正を行いましょう。ポイントは、フィードバックはこまめに行うということです。当事者が気がつかなくても、いつの間にか目標を見失っているケースは多々あるためです。スパンが長すぎると、軌道修正が遅れるかもしれません。上司が客観的な立場から現状評価し、次にやるべき内容を指示することで効率的に目標達成できるでしょう。

人材育成

フィードバックは人材育成にも役立ちます。ただし、人材育成を目的とするならば目標達成のためのフィードバックとは別のアプローチが必要となるでしょう。都度やり方を上司が指示するのでは、考える機会が損なわれるためです。成長を促すには対象者自らが課題に気がつき、解決策を見つけ出すことが求められます。その場しのぎの方法ではなく上司の仕事に対する観点や考え方を伝えることで、自らより良い手段を選べるようになるでしょう。長期的に見れば、部下やチームを鍛えるということは一時の目標達成や成績アップよりも有意義です。フィードバックの方法に気を配って、人材育成に役立てましょう。

対象者のモチベーションアップ

部下やチームにポジティブな気持ちを持たせるのも、フィードバックのメリットの一つです。自分の長所に気がつけない部下も多いです。上司が改めて評価することで、モチベーションがアップするでしょう。たとえばルーティンワークに従事する人のなかには、誰でもできる仕事だからつまらない、やる気が起きないと考えている人もいるでしょう。しかし、仕事の正確さ・毎回一定以上の成果を出す能力などを上司が褒めることで、あらためて自分の仕事にやりがいを見出せることがあります。また、失敗して気落ちしている部下に対しては、上司の適切なフィードバックが自信を取り戻す足がかりになるかもしれません。
ポジティブなフィードバックは、部下に問題解決の糸口をつかませ、前向きな気持ちで仕事に打ち込んでもらうのに役立ちます。ただし、後述する「やってはいけないフィードバックのやり方」では、逆にモチベーションを落としかねません。きちんと部下のモチベーションが上がっているか、確認しつつ取り組みましょう。

フィードバックのポイント

次に活かせるよう具体的なものにする

せっかくフィードバックをしても、意図したことが伝わらなければもったいないでしょう。「このままではうまくいかないのではないか」「なんとなく良さそうだね」など、大まかな感想だけでは次に活かせません。「この点は問題ない、課題はここなので次はその部分を改善しよう」というように、評価できる部分と対策すべき部分を明確に示すことが重要です。また、ニュアンスで伝えようとするのもよくありません。「誰が」「何を」「いつまでに」というように細かく表現し、人によって話が変わるような言い方は避けましょう。

対象の「行動」に着目する

フィードバックをする際は、考え方や性格、結果ではなく「行動」を評価することが重要です。漠然と「センスがいいね」「元気があっていいね」というだけでは、たとえ褒める内容であっても説得力がありません。具体的にどの行動について話しているのか分からなければ、伝えられた側も困惑するでしょう。薄っぺらな上司だと感じる人もいるかもしれません。一方、「もっと頑張らないとだめじゃないか」「君には失望した」など、否定的な内容でも同じです。どの行動が発端となり振るわない結果になったかを指摘しなければ、ただの非難と受け止められる可能性が高いでしょう。なお、行動を評価するには、日ごろからしっかり部下の動向を見ていないと難しいです。そのため、行動を評価してくれる上司だと分かってもらえれば、部下の信頼を得やすくなるでしょう。

適切な言葉を選ぶ

フィードバックの目的は、対象者の成長や目標達成です。対象者を追い込むことが目的ではないので、建設的な言葉を選ぶように心がけねばなりません。対象者が自信を失い、やる気を失ってしまっては本末転倒です。また、伝わりやすい表現をすることも意識しましょう。たとえば「あとは自分で考えて」と言ったときに、試されていると気合いが入る人もいれば、突き放されたと感じる人もいます。相手に合わせ、適切な言葉を選んでフィードバックをすることが求められます。

やってはいけないフィードバックのやり方

やり方を間違えるとフィードバックが台無しになってしまいます。やってはいけないフィードバックについて紹介します。

フィードバックがネガティブすぎる

対象者に言いたいことが山ほどあったとしても、矢継ぎ早にいうのは避けましょう。追い詰められているように感じ、次の行動を起こせなくなってしまう可能性が高いです。フィードバックの本来の目的を考え、相手がポジティブに受け止めやすい伝え方を考えるべきです。「こうしないとだめではないか」よりも「こうしてくれるとほかの人のためにもなる」というように言い換えてみるのも一つの方法です。

フィードバックの時期が遅すぎる

フィードバックのタイミングが遅いと「いつからそう思っていたのか」「なぜ早く言わないのか」などと不信感を持たれます。すぐに伝えなかったのは特に重要なことではなかったためと判断されてしまえば、部下の成長の機会をも逃してしまうでしょう。もし大変な作業を一からやり直すことになると、目標達成も危ぶまれるかもしれません。タイムリーなフィードバックを心がけましょう。

フィードバックの手法

サンドイッチ型

ネガティブな内容をどうフィードバックするか悩むときは、「サンドイッチ型」がおすすめです。サンドイッチ型の特徴は、ポジティブなフィードバックの間にネガティブな内容を挟み込むこと。部下にとって気持ちのよい内容で話を終えることで、上司は言いにくい内容を指摘しやすく、部下も課題を前向きに受け止められるでしょう。このため、部下のモチベーション低下や自信喪失を防ぎやすい手法といえます。ときには、ポジティブな内容が思い当たらない場合もあるかもしれません。その場合は、最初に話した話題を繰り返すという手も効果的です。なお、サンドイッチ型は人によって向き不向きがあります。ポジティブな内容に気を取られ、本来伝えたかった内容が響かない人もいます。対象者にサンドイッチ型が向いているかどうか、フィードバック後の成果を必ず確認しましょう。

SBI型

「Situation(状況)」「Behavior(行動)」「Impact(影響)」の順番でフィードバックを行うのが、SBI型です。対象者の置かれていた状況について認識を合わせ、対象者がどのような行動をとったのか客観的に伝え、その行動について上司がどう感じたかを伝えます。SBI型のメリットは、対象者が話を理解しやすいこと。また、上司の気持ちを伝えるので「よく見てもらえている」「気持ちに寄り添ってくれている」と良い印象をもたせやすいこともポイントといえます。一方、ネガティブなフィードバックをSBI型で伝える際は注意しましょう。特に、付き合いが浅いうちは否定的に受け止められるかもしれません。サンドイッチ型など、ポジティブな内容を添えたほうがよい場合もあります。

ペンドルトン型

ペンドルトン型の特徴は、上司が一方的に話を進めるのではないということです。対象者と交互に話をすることで、相手に考えさせることができます。対象者に評価できる点・反省点を見つけてもらうため、形式的なフィードバックに陥りません。当事者意識をもたせ、モチベーションを上げる効果が期待できます。なお、ペンドルトン型を用いる際は、時間配分に注意しましょう。上司と対象者が会話を重ねていくので、フィードバックに時間がかかりがちです。加えて、上司と対象者の認識が違いすぎると、話をまとめるのが難しいでしょう。考えに大きなズレがある場合は、説明的なSBI型などの手法も検討すると良いです。

適切なフィードバックをして対象者に成長してもらおう

フィードバックとは、課題点を指摘することではありません。対象者に目標達成のための行動を示し、方向性について考えてもらうことが本来の目的といえるでしょう。適切なフィードバックは、対象者の成長を促します。なお、的確に意図を伝えるには、相手に合ったフィードバックの手法を選ぶことが大切です。組織全体のために、フィードバックの方法を身につけましょう。

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