2019.09.17

社員満足度も業務効率もアップ!フレックスタイム制成功の秘訣は?

社員満足度も業務効率もアップ!フレックスタイム制成功の秘訣は?

働きがいのある職場づくりをするうえで、有効となるのが勤務時間の自由度が高い「フレックスタイム制の導入」です。2019年4月に働き方改革の一環としてフレックスタイム制に関する法改正が行われ、より導入がしやすくなりました。この記事を読むことで、フレックスタイム制を効果的に導入する秘訣を知ることができます。ここでは、フレックスタイム制の仕組みや特徴、向いている職種や上手な取り入れ方について紹介します。

フレックスタイム制の仕組み

そもそも、フレックスタイム制とはどのようなものなのでしょうか。簡単にまとめると、それぞれの企業で定めた一定期間における総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、さらに労働時間を自ら決めることができるという制度のことです。フレックスタイムを導入するには、きちんと仕組みを理解しておく必要があります。どのような仕組みなのか、詳しく見ていきましょう。

1日の労働時間はコアタイム・フレキシブルタイムからなる

フレックスタイム制の大きな特徴として挙げられるのが、1日の労働時間が「コアタイム」と「フレキシブルタイム」からなるということです。コアタイムとは、「必ず会社に出勤する時間」として設けられるものです。社内・社外会議などがある場合は、コアタイムに行うのが一般的だとされています。一方、フレキシブルタイムは「出勤・退勤が自由に行える時間」として設けられるものです。

基本的に、労働者が自分で自由に出勤・退勤の時間を決めることができます。なお、コアタイムは必ずしも設ける必要性はなく、時間のすべてをフレキシブルタイムにすることも可能です。ただ、コアタイムを設定する場合は、その前後にフレキシブルタイムを設ける必要があるため、気を付けましょう。

就業規則等への規定と労使協定の締結が必要

フレックスタイム制を導入するにあたり、要件は基本的に2つあります。
まず1つ目は就業規則等で「始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる」という規定をすることです。
2つ目は労使で話し合いを十分に行い、労使協定によって「制度の具体的な枠組みを定めること」が挙げられます。労使協定で定めるべきことは、大きく分けて「対象となる労働者の範囲」「清算期間」「清算期間における総労働時間」、さらに「標準となる1日の労働時間」「コアタイムとフレキシブルタイム」の5つです。それぞれの項目について、内容をチェックしていきましょう。

対象となる労働者の範囲

対象となる労働者の範囲では、誰が対象者となるのかを定めます。具体的には「個人ごと」「部署・課ごと」、「プロジェクトなどのグループごと」「全従業員」という具合です。定め方は任意であり、労働者の個人名を明記し、範囲を指定することも可能だとされています。また、労使協定に定めることで、部署ごとにコアタイムやフレキシブルタイムの設定を変えたとしても、問題はありません。

清算期間

精算期間とは、フレックスタイム制を適用するにあたり、区切りとなる期間を指します。精算期間は総労働時間を定める際の単位となる重要なものです。上限は3カ月で、その期間以内であれば自由に設定が可能です。また、毎月1日など、起算日も必ず定める必要があります。

清算期間における総労働時間

総労働時間とは、簡単にまとめると労働者が精算期間において労働すべき時間のことです。基本的には1日8時間、週40時間をもとに決定します。法定労働時間を超えないように設定する必要があるため、注意が必要です。具体例としては1カ月160時間というように清算期間の総時間を定めても良く、また所定労働日を定めたうえで、所定労働日1日当たり8時間などと定めても問題ありません。

なお、清算期間の上限は3カ月であり、この期間内であれば、自由な期間を決めて良いとされています。ただし、清算期間が1カ月を超える場合には、清算期間全体の労働時間が週平均40時間を超えないこと、さらに1カ月ごとの労働時間が週平均50時間を超えないようにする必要があります。"

標準となる1日の労働時間

標準となる1日の労働時間とは、フレックスタイム制の対象者が有給休暇を取得したときなどに、1日の労働時間として算定の基準となるものです。清算期間における「総労働時間」を、その期間の「所定労働日数」で割った時間が基準となります。

コアタイムとフレキシブルタイム

コアタイムとは、1日のうちで「必ず働かなければならない時間帯」のことです。コアタイムを設ける場合は、労働の開始・終了の時刻を定める必要があります。なお、コアタイムは協定で自由に設定でき、コアタイムを設ける日と設けない日があったり、日によって異なる時間を設定したりできるのが大きな特徴です。

一方、フレキシブルタイムは、労働者が自らの選択で労働時間を決めることができる時間帯のことです。フレキシブルタイムを設ける際は、コアタイムと同様に労働の開始・終了の時刻を定める必要が生じます。なお、コアタイムを設けた場合は、その前と後にフレキシブルタイムを設けなければならないという決まりがあります。始業と就業の時間がコアタイムにならないように配慮して設定するのが肝心です。なお、コアタイム・フレキシブルタイムのどちらも、必ずしも設けなければならないものではありません。希望があれば、終日労働者が出退勤の時間を決定できるようにすることも可能です。

労使協定の届け出が必要な場合

清算期間が1カ月を超えてしまう場合は、労使協定を所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。精算期間が1カ月以内の場合は必要ないため、安心して良いでしょう。なお、万が一違反した場合は30万円以下の罰金などの罰則が科せられる可能性があります。

フレックスタイム制における労働時間の管理

フレックスタイム制では、時間外労働のカウント方法が一般の労働時間制度とは異なるため、注意が必要です。なかには労働時間が足りないというケースもみられるため、事前に対策を立てておくのが重要といえます。特に、清算期間が1カ月以上になる場合は、計算方法により時間外労働が法定の限度を超えてしまう可能性があります。違法になってしまわないよう、あらかじめしっかりと準備を行いましょう。

清算期間全体で時間外労働をカウントする

フレックスタイム制では、その日ごとの労働時間について労働者自らが決めるため、残業という扱いにはならないのが特徴です。清算期間のなかで法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が、残業としてカウントされます。なお、時間外労働を行う場合は、36協定の締結・届出が必要となります。ただし、1日の延長時間について協定する必要はなく、1カ月・1年の延長時間を協定するのが基本です。

2019年4月に施行された働き方改革関連法により、時間外労働の上限が法律に設けられました。なお、中小企業への適用は2020年4月とされています。上限は「月45時間以内」「年360時間以内」です。フレックスタイム制においては、上記の手順で算出された時間外労働時間・残業時間が、この上限を超えないようにする必要があります。

清算期間が1カ月を超える場合の計算方法

清算期間が1カ月を超える場合、時間外労働のカウントがより複雑になり、十分な理解が求められます。具体的には、清算期間の長さに関係なく、毎月の労働時間を管理することが必要です。以下の2つが、時間外労働としてカウントされます。

1つ目は「1カ月ごとに週平均50時間を超えた労働時間」です。2つ目は清算期間を通じて「法定労働時間の総枠を超えて労働した時間から1カ月ごとに週平均50時間を超えた労働時間を除いた時間」となります。また、清算期間の最終月では、一般の労働時間制度なら時間外労働の上限規制の枠内に収まるものの、清算期間が1カ月を超えるフレックスタイム制を導入することにより、上限規制違反となる場合もあります。労働時間の管理が非常に複雑になるため、注意が必要です。

総労働時間を下回った場合の手続き

残業の発生とは反対に、清算期間内の実労働時間の合計が総労働時間を下回った場合は、どのように対応すれば良いのでしょうか。このような場合、当月の賃金支払いの際に「不足した時間数分を控除する」ことで対処できます。それ以外では、当月の賃金を支払う際には当月分として支払い、「不足時間数分を翌月の総労働時間に加算することで残業時間と相殺する」という対処も可能です。ただし、その月の法定労働時間の総枠の範囲内が加算できる限度となります。また、労働時間が下回ることが続く場合には何らかの罰則を設けるなど、自己管理を促す体制も必要になってくるでしょう。

フレックスタイム制のメリット

フレックスタイムを導入することで、どのようなメリットがあるのか気になる人も多くみられます。フレックスタイム制は一般的に労働者にとってメリットの多い制度と考えられがちです。しかし、導入することで、労働者だけではなく企業にもさまざまなメリットがあります。労働者側・企業側の具体的なメリットには、以下のものが挙げられます。

労働者側のメリット

労働者側のメリットは、「時間の自由度が高くなる」ということです。時間を自由に使いやすくなることによって、以下のようなメリットが期待できます。まずは「通勤ラッシュを避けられる」という点です。フレックスタイム制なら昼からなど、通勤ラッシュの時間帯を避けた勤務時間に設定することが可能です。人の多い時間帯を避けて通勤することで、ストレスを軽減しやすくなります。また、遠方から通勤しやすくなるのも大きなメリットです。

また、「勤務時間に縛られない」というメリットもあります。忙しい日は遅くまで働き、翌日は遅い時間から出社するなど、業務量に合わせて勤務時間を調整できます。また、余裕のあるときは早めに退社するなど、自分でライフワークバランスを調整できるのが魅力です。さらに、メリットとして「急な遅刻・早退などにも対応しやすい」ことも挙げられます。家庭環境は人によってさまざまです。なかには、育児や介護などの理由により、急に遅刻してしまったり、早退することになったりするケースもみられます。このような場合にも、フレックスタイム制なら個々の事情に対応しやすいのです。

それに加えて、「業務の効率性が上がる」ことが期待できます。労働者が個々の予定・業務量に合わせて計画的に働けるため、無駄な時間を過ごしてしまうリスクを低減できます。時間を有効活用でき、業務の効率性が向上しやすいのがメリットです。

企業側のメリット

企業側のメリットとしては、以下のものが挙げられます。まずは業務の効率性が上がることで、「残業代の削減につなげられる」という点です。業務の少ない日は早めに退社するなどの調整をすることで、無駄な労働時間が発生せず、残業代の削減につなげられます。

さらに「優秀な人材の確保・定着につながる」というのもメリットの一つです。フレックスタイム制を導入することで従業員の満足度が高まり、時間・業務管理がしっかりとできる優秀な人材を確保できます。さらに、フレックスタイム制の導入をアピールすることで、従業員に配慮しているというイメージが強まり、「企業のイメージアップが期待できる」のも大きなメリットといえるでしょう。

フレックスタイム制の注意点とデメリット

フレックスタイム制の運用を成功させるには、導入に関する注意点や把握しておくべきデメリットについて、事前に確認しておくのが肝心です。主な注意点とデメリットについて、内容を見ていきましょう。

導入の注意点

前述した導入の要件を満たすほかにも、導入や運用にあたり注意すべき点がいくつかあります。主な注意点は以下の通りです。まずはフレキシブルタイムが極端に短い場合、「フレックスタイム制とみなされない場合がある」ことが挙げられます。また、「満18歳未満の年少者についてはフレックスタイム制を適用しないこと」とされているため、注意が必要です。さらに、フレックスタイム制の導入には、「各従業員の実労働時間を把握する義務」があります。従業員の過重労働などによる健康障害防止にも、十分な注意を払いましょう。

デメリット

フレックスタイム制にはメリットだけではなく、デメリットもあります。主なデメリットは、以下の4つです。

1つ目は「時間帯により他社との連絡がつきにくくなる」こと、2つ目は「自己管理になるため従業員が時間にルーズになりやすい」ことが挙げられます。自由度が高い働き方であるからこそ、問題が発生してしまうこともあるのです。
3つ目は勤怠管理が煩雑で「労務管理担当者の負担が増える」こと、4つ目は社内での連携がとりにくく「コミュニケーション不足になる可能性がある」ことです。フレックスタイム制を導入する際は、勤怠管理やコミュニケーション不足に意識を向ける必要があります。

フレックスタイム制導入を成功させるためのポイント

フレックスタイム制の導入を成功させるためには、以下の点を意識するのが重要です。まずは「適用すべき範囲を明確にする」ことです。どの部署・職種に適しているのか十分に検討し、適用すべき範囲を決めましょう。また、導入前に「全従業員に対して十分な説明と話し合いの場を設ける」のが重要になります。適用される人だけではなく、適用されない人も含めて説明と話し合いをするのが肝心です。さらに、「デメリットへの対策」を考えるのもポイントとして挙げられます。フレックスタイム制に向いている業種はどんなものか、またデメリット対策はどうすればいいのか、具体的に検証してみましょう。

向いている業種の特徴

フレックスタイム制を実行しやすいのは、労働時間を画一的に定めず、労働者の裁量に任せたほうが効率的とされる業種です。具体的には、「設計業務」「研究開発業務」「デザインなどのクリエイティブ職」が挙げられます。反対に、向いていないのは常に職場の仲間との連携や、外部とのやり取りが必要になる業種です。具体的には、「建設業」「医療」、「教育」「生活関連サービス」などの業種は、フレックスタイム制に向いていない傾向です。

デメリットの検証と対策

フレックスタイム制の導入を成功させるには、予想されるデメリットへの対策をしっかりと講じることがポイントです。まず、適用する部署や人、適用しない部署や人とで不公平感が生まれないように、「事前に全従業員への説明と話し合い」をしっかりする必要があります。また、コミュニケーションツール不足への対応としては、フレキシブルタイム制を適用する従業員の出社予定が、社内全員で把握できるようなシステムを考えるのが大切です。

さらに、自己規制ができず時間にルーズになってしまう従業員への対応としては、コアタイムを設定したうえで「正当な理由なくコアタイムに欠勤・遅刻・早退してはならない」などと就業規則で定める必要があります。違反を繰り返す従業員には、制裁として減給処分を行うなどの決まりを作るのも一案です。また、従業員の勤務実態を正確に把握するために、勤怠管理システムを導入するのもポイントです。

導入の際は他社とのやりとりが頻繁な部署・人には適用するかしないかを決め、もしもする場合は、出社していなくても連絡が取れるようなシステムを整えましょう。タイムカードやICカード、パソコンなどによる打刻が自動集計される勤怠管理システムを導入すると、清算期間における総労働時間の計算がしやすい体制をつくれます。

フレックスタイム制導入の実態と事例

フレックスタイム制は30年以上前から整備されていますが、導入実績は伸び悩んでいる傾向です。それでも導入成功事例は数多くあり、働き方改革によって、改めて注目を集めています。フレックスタイムの導入が多い企業の業種や規模別の導入実態はどうなっているのか、また成功事例はどのようなものなのか、チェックしていきましょう。

導入が多い企業の業種

厚生労働省の「平成29年就労条件総合調査結果の概要」によると、フレックスタイム制の導入が多い業種は、情報通信業・複合サービス業・学術研究、さらに専門・技術サービス業だとされています。反対に導入が少ない業種には、建設業・医療・福祉、教育・学習支援、生活関連サービス・娯楽などがあります。

企業規模別導入率

先に挙げた厚生労働省の資料でフレックスタイム制を採用している企業の割合を企業規模別に確認すると、 「1,000人以上が23.6%」「300人~999人が14.2%」、「100~299人が6.4%」「30人~99人が3.7% 」となっています。このデータをみると、企業規模が小さくなるほど、フレックスタイム制の採用率が低くなる傾向です。また、導入の数も減少傾向にあることがうかがえます。

成功事例の紹介

フレックスタイム制の導入実績はまだまだ少ないものの、導入に成功し、職場環境が良くなった事例も多くみられます。成功したケースのなかから、大企業と中小企業の例をあわせて3つ見ていきましょう。

事例その1:アサヒビール株式会社

まずはアサヒビールの事例です。アサヒビールは社員にとって最も良いワーク・ライフ・バランスを実現するための取り組みの一環として、フレックスタイム制を採用しました。部署によってコアタイムを含む制度のほかに、コアタイムを含まない「スーパーフレックス制度」を導入しています。制度の導入は各事業場の選択によりますが、工場を除く約98%の事業場で導入しているのが大きな特徴です。フレックスタイム制の導入と並行して在宅勤務制度やビデオ会議なども取り入れることにより、生産性を落とさず結果を出し続けています。

事例その2:アメリエフ株式会社

アメリエフ株式会社は、遺伝子情報の受託解析や遺伝子情報を解析するためのシステム開発、また遺伝子解析に関する研修サービスの提供などを行っているベンチャー企業です。フレックスタイム制の導入ではコアタイムを廃止し、「スーパーフレックス制度」を導入しています。なお、対象が部署に関係なく、全社員が対象となる点が大きな特徴です。実際の運用ではクラウド勤怠管理システムを用いて勤怠管理を行っています。また、各自の勤務時間の予定を共有するなどの取り組みを行っているのが特徴です。これにより打ち合わせの調整などがしやすくなり、コミュニケーションの低下という課題をクリアしています。

事例その3:三井物産ロジスティクスパートナーズ

三井物産ロジスティクスパートナーズは、社員数30名ほどの金融業です。社員の満足度と収益力を向上させる目的で、働き方改革案の一つとしてフレックスタイム制を導入しました。ライフワークバランスを重視しており、マネージャークラス以上の中高年層社員にも、家族や自分の時間を充実させることの大切さについて社長自ら説得したとされています。

その一方で、業績向上と私生活の充実を両立させる方法について、社員だけで考えさせて提案させるなど、意見・要望に耳を傾ける体制が整っているのが特徴です。それにともない会議の量を8分の1にし、書類の量・メールの数・社長関連の部下業務を半減させることに成功しています。また、日々の全般的な業務にデッドラインを設定したのも大きな特徴です。フレックスタイム制の導入とあわせて業務の効率化を図り、従業員の意欲や集中力の向上を実現させています。

正しい知識と適切な運用がフレックスタイム制を成功へ導く

2019年の法改正によって利便性が向上したフレックスタイム制は、特徴を正しく理解して対策を講じることで、デメリットを防げます。そのため、導入に成功している事例も多くみられるのです。フレックスタイム制を導入する際は、同時に業務の効率化や、円滑なコミュニケーションの体制を整えるのがポイントとして挙げられます。積極的にフレックスタイム制を導入して、ライフワークバランスの整った、社員と企業のどちらも満足度の高い職場環境の構築を目指しましょう。

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