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2023.11.6

インセンティブとは|歩合・ボーナスとの違い・導入方法などを簡単に解説

企業の給与体系などで「インセンティブ」という言葉を耳にしたことがある人もいるでしょう。ビジネスシーンにおけるインセンティブは、社員の意欲的な行動を引き出すための報酬を意味します。

インセンティブ制度により、社員のモチベーションや企業価値の向上などが期待できますが、個人の競争意識が強まることでチームや組織に影響が及ぶ可能性もあるため、社員の価値観やニーズを把握したうえで導入することが大切です。

本記事では、インセンティブの定義から種類、類語との違い、制度導入時のポイントまで詳しく解説します。インセンティブ制度によるメリット・デメリットを理解し、自社に適した形でインセンティブを活用するためにぜひ参考にしてください。

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目次

インセンティブとは

インセンティブ(incentive)とは、行動を促す「刺激」や「誘因」「励み」「動機付け」といった意味の英単語です。会社の給与体系におけるインセンティブは、目標達成や成績に応じて支給される報奨金などを指します。

また、消費者に提供される試供品や懸賞品は、消費者インセンティブなどと呼ばれる場合があります。

ビジネスにおけるインセンティブの意味

ビジネスにおけるインセンティブとは、社員を対象とした報酬制度を指します。成績に応じた成果報酬として金銭を支給するケースが多く見られますが、昇給や昇格、褒賞旅行といった非金銭的なインセンティブもあります。

インセンティブには、社員の意欲や生産性を向上させるという目的があり、インセンティブ制度として整備している企業も少なくありません。

インセンティブ制度の目的と背景

インセンティブ制度の最大の目的は、社員のモチベーションアップにあります。企業や組織全体の業績の影響によってはボーナスが増える場合もありますが、インセンティブは個人の業績が反映されやすいため、自身の頑張りを正当に評価してもらえる仕組みとして有用です。

社員を対象としたインセンティブが日本国内で導入され始めたのは、1990年代のバブル崩壊以降と言われます。厳しい経営状況に直面する国内企業が多かった当時、コスト削減を目的として雇用制度の見直しを行った結果、成果主義とインセンティブによる人件費の適正化に注目が集まりました。

現在は人材の流動性が高まっているうえ、働き方や価値観の多様化が進んでいます。従来の年功序列のような雇用形態ではなく、成果を評価する仕組みが優秀な人材を定着させるためにも重要と考えられています。

インセンティブの類語

インセンティブと似た言葉は多く存在します。ここでは、インセンティブと同じような使い方をされやすい類語との違いを詳しく開設します。

モチベーションとインセンティブの違い

モチベーション(Motivation)とインセンティブは、どちらも「動機」という意味がありますが、用途は異なります。インセンティブが報奨金など外部からの刺激を指すのに対し、モチベーションはやる気自体を表します。

インセンティブ制度の導入により、社員のモチベーションアップが期待できますが、どのような働きかけが有効かは個人で異なります。社員や働き方の多様化を受け、モチベーションの向上に役立つインセンティブを使い分けるなど、対策も検討する必要があります。

歩合制とインセンティブ制度の違い

「歩合制」は、インセンティブ制度と混同されやすい言葉の1つですが、報酬が発生する条件が異なります。歩合制は、個人の実績や成果に応じて一定の割合で報酬が発生する制度で、インセンティブ制度は、目標達成によって報酬が発生する制度です。

例えば、歩合制の場合、販売実績1件につき売上の○%が基本給とは別に支給される、といったルールで運用されます。一方、インセンティブ制度では、300万円の売上目標を達成した場合に基本給とは別に利益の○%が報酬として支給されるといった違いがあります。

報奨金とインセンティブの違い

報奨金は、貢献や努力を奨励するための金銭のことで、基本的にはインセンティブと同じ意味で用いられます。一般的には、インセンティブ制度で成果を出した社員に支給されるのが報奨金です。

ただ、会社によっては異なる解釈で使用している場合もあるので注意が必要です。

ボーナス(賞与)とインセンティブの違い

ボーナス(賞与)もインセンティブと混同されやすい言葉です。インセンティブは、個人が目標や成果を達成することで支給されるのに対し、ボーナスは企業や組織の業績に対して支払われる点が異なります。

また、ボーナス(賞与)は、基本給や固定給とは別に支払われる金銭報酬を意味するのに対し、インセンティブは金銭以外の報酬も含まれています。なお、ボーナスは法律で義務付けられているわけではなく、企業の就業規則や労働契約にて支給する旨を規定する必要があります。

手当とインセンティブの違い

手当は、基本給とは別に支給される賃金のことです。具体的には通勤手当や住宅手当、役職手当などがあり、通常は毎月定額が支給されます。

一方、インセンティブは個人の実績や目標達成に応じて支払われるもので、支給される報酬額やタイミングは制度ごとに異なります。

インセンティブ制度のメリット

社員に対するインセンティブ制度を導入することで、社員のモチベーションアップだけでなく評価基準や経営面に関するメリットも期待できます。ここでは、インセンティブ制度の導入によるメリットについて詳しく解説します。

【インセンティブ制度導入によるメリット】

  • 社員のモチベーションが向上する
  • 目標と評価基準が明確になる
  • 変動費化による経営リスクが軽減される

社員のモチベーションが向上する

インセンティブ制度により、成果に応じた報酬を得られる環境が整うことで、社員のモチベーションアップが期待できます。社員の労働意欲が高まり、生産性や業務効率が向上することで、企業組織の発展へとつながります。

年功序列や勤続年数などをベースとする従来の制度における不公平感の解消にもつながるでしょう。また、一般的なボーナスよりも短いスパンで制度を運用できるため、短期的な効果獲得を目的とした導入も可能です。

目標と評価基準が明確になる

インセンティブ制度では、具体的な達成目標を設定するため、社員が目指すべきゴールややるべきことが明確になります。また、成果と行動が可視化され、自分の成果を周囲に認めてもらいやすくなる点もメリットです。

正当な評価基準の元で、社員は納得感をもって業務に取り組めるでしょう。採用においては、明確な評価基準や達成報酬を示すことで、意欲の高い優秀な人材を採用できる可能性も考えられます。

変動費化による経営リスクが軽減される

インセンティブ制度の導入は、経営リスクの軽減にも役立ちます。成果に応じて報酬を単発的に出すインセンティブ制度は、業績に連動する変動費であり、固定費としての人件費とは別です。

固定費が多い場合、企業の売上が減少した際に経営リスクを圧迫する可能性がありますが、インセンティブ制度により変動費化することで経営リスクの抑制につながります。

インセンティブ制度のデメリット

続いて、インセンティブ制度のデメリットについて解説します。自社における最適なインセンティブ制度の運用を目指すために、デメリットも理解しておきましょう。

【インセンティブ制度のデメリット】

  • チームワークを乱す恐れがある
  • ストレスやプレッシャーを感じる社員がいる
  • 給与が安定しないことがストレスになる

チームワークを乱す恐れがある

インセンティブ制度を導入することで、社員が成果を追求するあまり、同僚との競争が激しくなりチームワークを乱してしまう恐れがあります。個人の目的の比重が報酬に偏ってしまい、顧客の取り合いや責任のなすり付けなどにより、業務に悪影響が出る可能性も否めません。

また、制度次第ではノウハウが共有されず、人材育成や組織に対する意識が薄れることも考えられます。個人プレーや部署内の人間関係の悪化を防ぐために、チームに対するインセンティブなども検討すると良いでしょう。

ストレスやプレッシャーを感じる社員がいる

インセンティブ制度では成果を重視するケースも多く、業務へのストレスやプレッシャーとなる場合もあります。また、過度な競争意識から居心地の悪さを感じて転職を検討する社員が出る可能性もあります。

さらに、目標や評価基準が明確化されることで、社員同士の差がより浮き彫りになり、思うような成果を残せていない場合には焦りや不安が強くなることも考えられます。

給与が安定しないことがストレスになる

インセンティブ制度では、成果を出すほど報酬が得られる反面、成果が出ないと報酬は伸びません。金銭的なインセンティブを設定している場合、月ごとに収入が上下する可能性があるため、特に安定志向の社員にとってはデメリットに感じられるでしょう。

職種によっては、時期の影響や不測の事態などが原因で期待した収入が得られない場合もあるでしょう。また、給与が不安定な状態では長期的なライフプランが立てにくいため、離職や転職の要因となることも考えられます。

インセンティブ制度の導入方法と導入時のポイント

ここからは、実際にインセンティブ制度を導入する流れを紹介します。効果的な制度の運用を目指すためのポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。

【インセンティブ制度導入の流れ】

  1. インセンティブ制度導入の目的を明確にする
  2. インセンティブの種類を決める
  3. インセンティブを付与する条件を決める
  4. インセンティブ制度を周知する

インセンティブ制度導入の目的を明確にする

まずインセンティブ制度を導入する目的を明確にする必要があります。組織の課題を洗い出し、インセンティブを支給することで何を達成したいのかを具体的に決めることが大切です。例えば、「売上の120%向上」「離職率の10%低減」といった数値目標が挙げられます。

また、目的や目標を明確化するために、最初の段階から人事部を含む経営層がしっかりと議論し、目的意識を見失わずに導入・運用することも大切です。

インセンティブの種類を決める

制度の目的が決まったら、次にインセンティブの種類を決めます。インセンティブの種類は後ほど詳しく解説しますが、金銭的なもの以外にも評価や役割など非金銭的なものがあります。

目的だけでなく、社員のニーズや価値観に合わせて適切なインセンティブの種類を選ぶことが制度導入の成功に不可欠です。

インセンティブを付与する条件を決める

インセンティブ制度の目的を前提とし、インセンティブを付与する条件を検討します。すべての社員が公平にインセンティブ制度の恩恵を受けられるように、条件を設定することが大切です。

具体的な条件の難易度については、実際に条件をクリアした経験のあるマネージャーなど、現実的な判断能力のある人の意見も取り入れると良いでしょう。

インセンティブの内容を決める

対象者に何をどのくらい付与するのか、インセンティブの内容を決めます。具体的な報酬内容や運用フロー、評価方法、評価基準などの細部を詰めていきます。

社員の価値観に合わない内容や、期待する行動を誘発できないシステムでは、インセンティブ制度が効果的に機能しない可能性があります。必要に応じて社員アンケートやヒアリングを通してニーズを把握した上で、制度を設計すると良いでしょう。

インセンティブ制度を周知する

インセンティブ制度の準備が整ったら、開始前に社員へ周知しましょう。制度の導入についてアナウンスする際には、目的や報酬の支給条件、評価基準など正確な情報を丁寧に伝えて、社員の理解や協力を得ることが大切です。

インセンティブの種類

インセンティブには、金銭的なインセンティブ以外にも、評価や機会など非金銭的なインセンティブもあります。ここでは、代表的なインセンティブの種類を5つ紹介します。

物質的(金銭)インセンティブ

物質的なインセンティブは、金銭や物品によるインセンティブです。物質的な欲求や動機を刺激するもので、給与体系におけるインセンティブ制度はこの分類に含まれます。

例としては、成果を出した営業職の社員に対して報奨金が支給されるケースなどです。契約件数や達成売上を基準とする他、目標の達成率に応じて報酬を算出する場合もあります。

評価的インセンティブ

評価的インセンティブとは、企業が社員の働きを評価するインセンティブのことです。上司や同僚からの評価に対する欲求を刺激し、やる気を誘発するために支給されます。具体的には、昇進や昇格の機会を与える、社内で表彰されるといったものが挙げられます。

また、人事評価で高いランクを付けてもらうことや、上司や同僚から褒められること自体もインセンティブとして機能します。

人的インセンティブ

人的インセンティブとは、共に働く上司や同僚、取引先や顧客など「人」に関するインセンティブです。仕事上での人間関係は、生産性にも大きく影響します。

人間関係に関するインセンティブにより、社員が自分の努力で職場環境を変えるチャンスを得られるため、モチベーションアップを促すことが可能です。

理念的インセンティブ

理念的インセンティブとは、企業理念やビジョン、目指すべき方向性などへの共感によるインセンティブです。企業の価値観やミッションが組織に浸透することで、社員はビジネスの社会的意義を感じられ、会社へのエンゲージメントが高まります。

自分の仕事が会社や社会にどのように貢献しているかを社員が理解できれば、業務意欲の向上が期待できます。

自己実現的インセンティブ

自己実現的インセンティブとは、社員個人の望むキャリアや夢の実現に向けて、モチベーションを高めるためのインセンティブを指します。自分の能力を発揮できる場や可能性を広げられる仕事、社員の裁量権の委譲などにより、モチベーションを高める効果が期待できます。

自己実現やビジョン達成につながる機会を通して、社員が個人としての成長や達成感を実感でき、キャリアアップに向けた動機づけが可能です。

営業職だけではない!インセンティブ制度に向いている職種

インセンティブ制度は、個人やチームの成果に応じて報酬が発生するシステムのため、成果を数値で判断できる職種で導入しやすい傾向にあります。

営業職は、インセンティブ制度による効果を得やすいこともあり、不動産や保険業界を中心に採用する企業が多く見られます。しかし、制度の設計次第ではあらゆる職種で適用が可能です。

例えば、タクシー運転手や配送ドライバー、コールセンター、アパレル販売などです。個人の成果を可視化しやすい職種では、インセンティブ制度によって成果アップや目標達成といった効果が期待できます。

他にも、マーケティングや企画、広報、人事・総務などでも、適切なインセンティブを設定することで、社員のモチベーションアップにつながります。

インセンティブは非課税?

企業から支給されたインセンティブは、基本的には課税対象です。個人に対するインセンティブとしての報奨金は、成果報酬などと同じ給与所得とみなされます。チームに対して付与された場合も、最終的に個人に分配されるのであれば課税対象です。

ただ、インセンティブが飲み代などの場合、内容や金額に妥当性がある限りは会議費として計上でき、非課税となる場合があります。また、金銭や物品以外のインセンティブも、内容によっては非課税になります。

このように、インセンティブの支給方法や内容ごとに課税・非課税の判断が必要です。

社員のモチベーションアップにはタレントマネジメントシステムを活用!

インセンティブは、行動を促す刺激や動機づけといった意味があり、ビジネスシーンでは社員を対象とする報酬を指します。近年は、社員の価値観や働き方の多様化に伴い、金銭以外のインセンティブを導入するケースも増えています。

インセンティブ制度の導入により、社員のモチベーション向上や経営リスクの軽減といったメリットが期待できますが、自分の頑張りや成果が可視化しやすい分チームワークや職場の雰囲気を乱すリスクも考えられます。

社員のニーズや仕事内容を考慮して、最適な方法で導入・運用することが大切です。

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