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2019.11.11

学習する組織にしよう!社会から求められる企業の作り方

企業は社会に対する責任があり、世の中に求められる存在にならなければいけません。そのためには、「学習する組織」になることが必要不可欠です。社内の組織が学習する組織になれば、社員の意識が変わって、企業の成長にも大きく寄与します。ここでは、学習する組織になるためにどのような取り組みをすればよいのかを解説します。

学習する組織とはいったい何?

マサチューセッツ工科大学の上級講師であるピーター・センゲによって提唱された学習する組織とは、組織アプローチの手法のことです。ピーター・センゲが1990年に著した書籍がベストセラーになって以来、世界中で注目されています。効果的な目的達成を果たすために、チーム全体や個々の能力、考え方を常に伸ばし続けることができるのが学習する組織です。学習とは勉強の意味ではなく、組織がさまざまな問題に対応するための力を得ることとされています。
学習する組織は、ビジネス環境の急激な変化によって生じるあらゆる問題に対応できるのです。そのために、企業内外の状況や相互に与える影響を即座に把握する力を養います。また、チームや組織の創造性を高め、個々の力を集結させるためのスキルを伸ばすことを目指して行動するのです。このような学習の成果が組織の力に反映され、常に変化を繰り返すビジネスの世界に太刀打ちできるようになります。
ビジネスの現場では、技術や知識の更新スピードが高まっていて、既存の知識やノウハウがすぐに陳腐化するようになりました。また、グローバリゼーションによって、世界経済は急激に変化するようになり、ビジネスを取り囲む情勢は複雑化しています。そのため、どのようにして会社経営をしていけばよいのか悩んでいる経営者が増えているのです。そこで、どんな状況にも対応できる組織を目指せる、学習する組織という考え方が評価されるようになりました。学習する組織の取り組みは世界的に広がりを見せていて、多くの企業が重要であると考えているのです。

学習する組織が目指す目標

学習する組織は、個人の能力を高めるだけではなく、それが組織の力に反映されなければいけません。そのため、個人の課題と組織としての課題が存在しています。まず、組織のメンバーが創造性を高め、事業に対して責任感のある介入ができるようになることです。また、それぞれのメンバーが、組織やチームの一員として必要なときに力を結集できるように、自分自身の技術を磨くことも課題となります。さらに、個々のメンバーが、組織や社会に影響を及ぼしている諸要素を正確に把握して、問題解決のための行動を自発的にできるようになることも目的の1つです。これらの課題を解決することができれば、想定外な問題に直面しても、組織は本質的な対応ができるようになります。

組織が学習する分野

1.システム思考

学習する組織は、システム思考について学習することが求められています。システム思考は、複雑性を理解できるようになるために重要です。人間の行動や身の回りで起こる現象などはとても複雑で、把握することが難しい場合もあります。そこで、それぞれの物事を1つ1つ単体として考えるのではなく、すべてが相互に関係しているものととらえる見方がシステム思考です。物事を静止的で断片的なものとして見るのではなく、動的で全体的なものとして考えます。そうすれば、一見複雑に見える事象を理解しやすくなって、何をすべきか見えてくるのです。あらゆる事態に対してシステマティックな考え方ができる力を組織は学習するべきとされています。
ビジネス環境は複雑化していて、従来のように原因と結果という単純な関係だけをとらえていたのでは、対応できない時代となりました。一部の変化が周りに影響を及ぼすことがあるなど、多くの変化に直面します。そこで、システム思考を活用することによって、複雑なビジネス環境の構造や変化のパターンをとらえることができるようになるのです。そうすれば、現実に対して効果的な対応ができるようになります。ビジネスの世界で、主体性を持って積極的に対応できる人間や組織になれるのです。

2.自己実現

学習する組織において、それぞれのメンバーが、自分の仕事や役割の幅を広げるために行う創造的な活動を自己実現と呼んでいます。具体的には、自分のありたい姿をイメージして、それを実現するために研鑽を積むことです。それぞれが志を持って、それを実現するために自らを動かそうとすることで、自己実現を達成できるとされています。個々のメンバーが自分の成長を目指して、持続的に学びや実戦を繰り返すことが求められているのです。
組織のメンバーが自己実現を重視すれば、それぞれが内発的な動機によって行動するようになります。これは、組織が大きな仕事を達成するための原動力となるでしょう。上から命令されたから行動するのではなく、自分のなかの動機に触発されて動くメンバーが増えれば、強い集団となります。やる気に満ち溢れて、高いモチベーションを持ったメンバーが、それぞれの目標のために行動するのです。
また、個々のメンバーが、それぞれ目標を定めて、そのギャップを埋めるために能動的に学習できるようになると、最終的には大きな能力を得られます。個人が得た力は組織に反映させるため、結果的に組織は全体として大きく成長できるのです。

3.メンタルモデル

メンタルモデルとは、過去の学習や経験によって形成される行動や意思決定のイメージのことです。人は無意識のうちに行動の判断をしていて、その基準となっているのがメンタルモデルとされています。こうすればこういう結果になるという予測は、心の奥底で自然に行われているのです。たとえば、夕日を見れば、もうすぐ夜になるだろうと自然に考えます。これは、過去の学習によって、太陽が沈むと空が暗くなり夜になると知っているからです。このときに、実際に頭のなかに地球や太陽の実物があるわけではありません。そうではなく、地球と太陽の動きに関するモデルが頭のなかにあって、そこから未来の事象をイメージしているのです。
メンタルモデルは、人間の生活のあらゆる場面で使われています。たとえば、誕生日に友人にプレゼントを贈るときには、相手の喜ぶ顔を思い浮かべるでしょう。現実に他人の心を読み取ることはできないのですが、頭のなかに他人のモデルがあって、そこから相手の反応を予測できるのです。当然、ビジネスに関わる事象にもメンタルモデルは深く関わっています。消費者がどんな商品やサービスを選ぶのか決めるのも、メンタルモデルに基づく行動なのです。
学習する組織では、自分がどんなメンタルモデルを持っているのか把握することから始めます。そして、現実にはメンタルモデルで予測した通りのことが起きないケースがあることを理解させるのです。間違えたメンタルモデルを持っているならば、それを見直さなければいけません。たとえば、消費者の行動を理解したつもりになっていても、メンタルモデルが間違っていれば、意味のない広告を出してしまうかもしれないのです。正しいメンタルモデルを持つことは、ビジネスでとても重要とされています。

4.共有ビジョン

会社の組織は、異なるものの見方や考え方をする人の集まりです。そのため、何もしなければ、それぞれが「私」の考え方を重視して行動してしまいます。これでは、個々のメンバーの力を結集して組織の力にすることができません。それぞれがばらばらな方向に努力してしまえば、組織としての成長を実現できなくなります。そこで、学習する組織では、共有ビジョンという考え方が重要となるのです。これは、組織を構成するメンバーの共有するものの見方や考え方のことで、組織全体のパフォーマンス向上に必要となります。共有ビジョンをもち組織全体としての方向性を揃えることができれば、組織としての成長につながるでしょう。
組織が共有ビジョンを持つためには、「私たち」は何を創造できるのか、どうありたいのかを考えることが大切です。会社の提供する商品やサービスによって、どんな世界観を創りたいのか、組織がどんな状態でありたいのかを、具体的に考えていきます。そのためには、個々人の持つビジョンを重ね合わせることが必要です。それぞれ、異なる方向性のビジョンを持っていたとしても、そのなかには共通したものが含まれているでしょう。組織内で個人のビジョンを共有して対話を繰り返すことで、共有ビジョンが得られるのです。

5.チーム学習

学習する組織で重要なチーム学習とは、共通するビジョンを持てるようになったチームが全体で学び合いをする段階のことです。チームの内外の人たちと対話をして、自分たちのメンタルモデルや問題点について探求します。その結果、お互いの意識合わせを行うことができ、より強い組織に成長できるのです。創造的な話し合いをして、チーム全体としての能力を高め合います。
組織は、個人が成長しただけでは問題を解決することはできず、チームとしての成長が必要となるのです。学習する組織とは、最終的にチームとしての成長を目指すもので、チームで学習し合う過程は欠かすことができません。個人ではどうしても対処できない問題はたくさんあります。そんな個人としての限界を突破できる可能性を持っているのが組織の力です。チーム学習では、個々のメンバーがチームについての問題点や改善点を出し合うことができます。さまざまな意見や考え方を結集することで、チームが大きく成長を果たすことができるのです。
個人やチーム、組織が無意識に前提としていることはたくさんあります。それが間違いであれば、いつまで経っても組織として成功することはできません。ときには、組織としての常識を打ち破る必要性があります。それを果たすためには、チームとして協力して学習することが重要となるのです。

未来について学ぶシナリオプランニング

学習する組織は未来について学習しなければいけません。未来にわたって会社が事業を継続していくためには、未来の変化を予測する必要があるからです。そこで、有効な手法となるのがシナリオプランニングであり、これは不確実性を前提として複数の未来予測に基づいて戦略を立てる方法となります。したがって、単一の未来を予測するのではないことがポイントです。未来の事業環境について想像して、複数のありえる未来を予測します。どのような未来がありえるか予測したうえで、複数のアプローチ方法があることを理解して、共有するという流れです。
シナリオプランニングには、適応型シナリオプランニングと変容型シナリオプランニングがあります。適応型は、複数の起こりうる未来に対応できるようにシミュレーションすることです。変容型は、望ましい未来を想定してシナリオを作り、その実現を目指していきます。いずれにしても、シナリオプランニングは、5つのステップによって行われる手法です。まず、チームを収集して、何が起こっているのかを観察し、起こりうる未来を想定したストーリーを作成し、できることやすべきことを掘り出し、システムを変えるために実行します。

学習する組織へと導く探求の方法

チームや組織を学習する組織へと変えていくための探求の方法があります。それは行動探求(アクション・インクワイアリー)と呼ばれ、3つの段階のフィードバックを意識しながら行うことで大きな影響力をもたらせるようになるのです。まず、起こった結果から自分の行動を見直していく一次ループの学習があります。一般的な組織やチームでは、この段階の学習者がほとんどです。次に、起こった結果から、自分の思考の前提となった戦略やゴールを見直していくのが二次ループの学習となります。そして、起こった結果より自分の存在意義やビジョンについて再構築するのが三次ループの学習です。
通常、内省や探求は行動の結果が出てから行われ、将来の行動しか変えられません。行動探求の場合には、行動しながら瞬時に三次ループの学習ができ、次の瞬間に必要な行動をすぐ選べるようになります。行動している自分自身を瞬時に振り返って、タイムリーな行動を起こせる点が、行動探求の大きな特徴です。この三次ループによる学習を進めていくことで、グループ全体が学習する組織になるでしょう。

社員自らが動く組織へ変えていこう

個々の社員が問題意識を持って、自身で考えて動くようになれば、学習する組織を実現し育てていくことができます。その結果、企業が大きな力を持てるようになって変わっていけるでしょう。あらゆる問題に柔軟に対応できる企業になれるのです。

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