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2020.12.10

今までしてきた1on1ミーティングは数知れず…内省のスペシャリストが語るキャリア

ヤフーで人事として働くかたわら、1on1エバンジェリストとして様々な企業で研修を行う堀井さん。社会人としてのキャリアや1on1ミーティングとの出会いについて、お話いただきました。

堀井耕策

1on1エバンジェリスト。2007年よりヤフー株式会社。企業に所属しながら複業(副業)として「1on1」の研修講師として社外活動を開始し、大手企業や、官公庁での研修も多数行う。

1on1研修講師として

ヤフーの人事として、部署や職種の垣根を超え、数え切れないほどの1on1ミーティングを行ってきました。
2018年から副業としても、様々な企業での1on1研修を実施しています。
ヤフーでは、2013年頃から1on1ミーティングが全社的に導入され文化として定着していますが、多くの企業では、「面談と何が違うの?」「効果が実感できない」等の課題を抱えている印象です。
副業先は、ベンチャー企業から官公庁まで様々で、どれも人の縁がつながる形でご紹介いただき今に至っています。

社会人としての基礎を叩き込まれた営業時代

新卒で日本NCRに就職し、営業として6年半働きました。
学生時代、就職活動にあまり精を入れておらず、先輩に声をかけてもらって就職したんですが、ITの基礎や社会人としての考え方を徹底的に叩き込んでくれた場所でした。「人とコネクションを作っていくことが好き」という自分の特性に気づく大切な期間でもありましたね。
本当に営業が全部やるんですよ。お客様と話しながら仕様を固めたり、サーバーの構成から売り上げ計画まで。納品に関しても営業が先導して技術職の人たちに指示していく…なかなかハードな環境でした。
だからこそ、学びも非常に大きかったのですが、数字を馬車馬のように追っていくことには全く興味が持てなくて。企画の仕事に興味があったこともあり、転職を決意しました。

2007年に営業企画としてヤフーに入ってもう14年目になります。入社してから2013年まではM&Aのプロジェクトや子会社をつくるプロジェクトのPMといった特殊な仕事ばかりをやってましたね。2013年から現在にかけては、人事部で働いています。

1on1ミーティングとの出会い

ー事業企画の仕事から人事部に異動したのはなぜですか?

事業企画の仕事の中でも人をつなげたりだとか、まとめたりする立場になることが多くて、その姿を見て「人事向きかも」って思ってもらったのかな、「堀井さん人事にこない?」と声をかけられて。
最初は、「ありがとうございます、考えときます」くらいのテンション感だったんです。今すぐ人事に行くってことはないかなあと。
ただ、2010年くらいにリーダー職になった後、2012年にピン芸人みたいに宙ぶらりんな立場になってしまって。その時に、どんなプロジェクトも一人では限界があって、みんなの力を合わせないと成り立たないという当たり前のことを実感したんです。ヤフーのなかでちょうど社内転職制度ができたのもあって、2013年に人事への異動を決意しました。

当時、ヤフーは特に人材育成に力を入れ始めた時期でした。30社ほどあるグループ会社でも同じように、育成プロジェクトを推進していこうという流れで、僕が指名されたんです。
グループ会社の研修では、内省とフィードバックについて特に深く話をしていました。その後、グループ会社の人事マネージャーとして出向したり、グループ人事として人事同士、社長同士をつなげるといった業務をしていて。その時の経験が1on1研修講師としてのキャリアに繋がってるんです。

ヤフーの1on1第一人者 本間浩輔氏との出会い

ー副業を始められたのは、2018年ということで、意外と最近なんですね

グループ会社で1on1研修をやっていたんですが、Yahoo!の1on1第一人者である本間浩輔氏と1on1をしていたときに、「いつもやってるような研修、副業としてもやってみなよ」と、ふと言われたんです。
その言葉に背中を押されて、本格的に副業を開始しました。

ー人事への異動も副業の開始も、周りの人に「見出される」形で人生が進んでいるように感じます

ヤフーが人材育成に力を入れるタイミングと、本間浩輔氏との出会いと、グループ会社での人材育成、それぞれの場面で色々な人からきっかけや気づきを与えてもらっています。
特に2013年以降が僕のターニングポイントになっているんですが、その頃、キャリア論に出会いまして。

キャリアというと、どうしても仕事上のことだけを考えてしまいますが、キャリア論では、「人はどの様に人生を歩んでいくのか」という学び全般を扱います。ライフキャリアとワークキャリアの両方を考えると、無限の問いがあるんですよね。

ーキャリアという言葉だけを聞くと、仕事のことを想像しがちですが、人生の中で仕事の位置付けは人によって違いますしね

生きがいには、「好き・得意・稼げる・世の中から必要とされている」という4つの要素があるという風に整理されてるんですが、得意って自分では紐解けない部分がたくさんあるんです。他者からフィードバックをもらって得意だと気付いたり、ストレングスファインダーのような診断が気づかせてくれるかもしれない。得意なことは、できて当たり前だから自分で自覚するのが難しいんです。1on1ミーティングにも、そういったところに気づかせる、気づき合う、そんな要素がありますね。

キャリアについての学びは、自分の人生という意味ではもちろん、人事の仕事をしていく上でも、育成計画を立てたり人材配置を考えたりするのに役立っていると感じます。

ー今までたくさんの1on1ミーティングをされてきたことと思いますが、これはうまくいかなかったな、と思った時はありますか?

たくさんありますよ!
例えば、「将来何したい?」という質問は、全くしなくなりましたね。言ってしまうと部下は詰まるんです。将来の理想の姿を漠然と持っていても、未来のことなんて誰にも分からないから、すごくふんわりとした回答になってしまう。

1on1ミーティングにおいては、「将来何したい?」と聞くのではなく、「将来どんな方向に向かって行きたくて、今できることは何?」「自分の理想像に向けて今したいことは何?」
そんな聞き方をする方が話しやすいんです。

あとは不得手を得手にしようと仕向けないことも大事な気がします。
自分の得手を磨いてダイヤモンドのようにして、不得手をカバーすればいいし、何よりもチームで仕事をするって補い合うためですから。それぞれの強みを磨いていくためのフィードバックを心がけています。

自分の人生を自分で切り開いていくために

ーこれからさらに力を入れていきたいことについて教えてください

子供が生まれてから考え方が変わりました。
親として子供の幸せはみんな願うじゃないですか。でも、自分の子供が幸せに生きるために大切なのは、僕がみんなに支えてもらったように、支え合えるような社会を作ることだなと思ったんです。「自分の子供だけが幸せになればいい」といった考え方は違うなと。
一人のちっぽけな人間に何ができるかわからないけど、全ての子供たちが幸せに生きることのできる社会に少しでも近づいてほしい、そんなことをいつも考えています。

人生100年時代と言われていますが、定年まで仕事一筋でやってきて「その後何する?」ってなったとき、自分のやりたいと思えることが何もないのはあまりにも寂しい。
そうならないためにも「自分は何がしたいんだっけ?」と内省しながら人生を送っていくことが大事です。
自分の仕事を通じて、そうした気づきを一人でも二人でも多くの人に提供したいと思っています。

(文:郷田いろは)

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