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2022.10.27

「ゲームはただの遊びじゃない」兄のファンとして選んだ起業の道

幼い頃からゲーム三昧、小学生の頃にはマリオカートの世界記録を樹立。現在は兄とともに「ゲーム×研修」「ゲーム×ごみ拾い」とゲームを軸にした新しい事業を展開中…。そんな「ゲーム×人生」の歩みについて「株式会社Life Reversal Gaming.」代表取締役の髙木光治さんに語っていただきました。創業のきっかけから「ゲームの力」に対する思いまで、ざっくばらんに伺っています。

「一緒ならなんとかなる」その確信だけで突き進んだ

ーゲームを軸として起業された経緯を教えてください。

僕の家庭は、まさにゲーム一家。「家族のコミュニケーションの中心にはいつもゲームがある」、そんな環境で育っていたんです。

父、兄、僕で大会に出場するべく毎日ゲーム特訓の日々。小学生でマリオカートの世界記録を目指していた時は、父親がつきっきりで「さっきのプレイはここが良くなかったよね」と振り返りの作業を手伝ってくれて。「世界記録という目標をクリアできてないんだったら、クリアするまでやりきれ。たとえゲームでも、自分で決めたことを途中で投げ出すな。」と言われていました。普段は優しい父親でしたが、僕自身が決めたことに対しては厳しかったことを覚えています。ほとんどアスリートの領域ですよね。

兄は、僕が小学生の頃から原因不明の体調不良難病で、寝たきりの生活を余儀なくされていたんです。ゲームならベッドの上でもできるからこそ、家族の大切なコミュニケーションツールになっていたし、兄にとってもゲームはただの遊び以上の意味を持っていたと思います。

ですが、学生時代の僕にとって、ゲームはあくまで遊び。だからこそ、普通に就職をして会社員として働きはじめました。ただ、その頃から兄がYouTuberとしてゲーム配信を始めたり、マリオカートの世界大会に出場する等、より真剣にゲームと向き合うようになっていました。ゲームを通じて社会とつながっている兄の様子をみて、「ゲームはただの遊びじゃない」と感じるようになりました。

僕自身もやっぱり兄のプレイを見ていると興奮するし、勇気づけられるファンの一人。だからこそ、兄の一番近くで一緒に「ゲームの力をもっと見てみたい」という一心で、起業を決めました。勢いで会社を退職したものの、具体的な事業案は何も決まっていなくて(笑)

でも、「兄と一緒にいればなんとかなるな」って確信だけはありました。

ゲームでつながる創業期。

退職してから、イベントや講演の依頼を少しずついただけるようになってきたものの、これでは食べていけないというのが本音でした。

そんななか、とあるeスポーツイベントに関わったときに「今度、ゲーム×ごみ拾いイベントを開催するのだけど、一緒にやらないか」とお誘いを受けました。当時は単純に面白いなと思い参画を決めたのですが、今振り返ってみると、ゲームがきっかけで人と人が繋がり、ゲームの生み出した娯楽以上の価値を実感した瞬間だったのかもしれません。

eスポーツは競技性が高く、オリンピックでも採用が検討されるほどの盛り上がりをみせています。それでも「ゲームは娯楽でしょ?」という認識の人も少なくありません。むしろ娯楽でも良いのかもしれません。だって、娯楽だからこそ、年齢性別など関係なく多様な人がフラットな関係で前向きな気持ちで集うことができるじゃないですか。

社会問題は複雑性を増しています。誰か一人が頑張れば解決するものではなく、みんながアイデアを出し合い解決するしかありません。アイデアの多様性を担保するために、娯楽や楽しさを持ち出しても良いと思うんですよね。深刻な問題を茶化そうという意味ではなく、前向きに楽しく問題を解決できればそれに越したことはないと思います。

「ゲーム×研修」意外な組み合わせが生む、思いがけない効果

少し話は変わりますが、僕は「ゲーム×ごみ拾い」だけでなく「ゲーム×研修」も行っています。

娯楽と学びという相反する不思議な組み合わせですが、実は僕には馴染み深いものなのです。

僕が高校生の頃、ふと「勉強もゲームと同じように攻略できるんじゃないかな」と思いつきました。マリオカートでタイムを縮めていく方法と、テストで点を取る方法は似ているんじゃないかと気が付いたのだと思います。

その時の自分にとって少し高い目標設定をして、それを攻略する。攻略したらさらに高い目標を立てる…。実際そんな風に勉強してみたら苦手意識のあった教科でも少しずつ点数が取れるようになっていったんです。

この経験は、先ほど述べた「世の中の問題を楽しく解決する」という考えに大きな影響を及ぼしていると思います。

ー普通、研修に「楽しい」イメージはありませんが、ゲームと組み合わせることによってより能動的に参加できる気がします。

僕も会社員時代に受講者側だったのですが、会社からの指示で参加する研修って、参加者のやる気によって効果が変わってくると思うんですよね。指示されたから渋々研修に参加する人と、参加するからには何か学んでいこうという人がいるならば、後者の方が学びが深いのではと思います。

じゃあ、どうすれば後者の人を増やせるか。

ゲームの操作技術が上手くなってからゲームの楽しさを知る人より、ゲームが楽しかったから技術向上に励んでいた人の方が圧倒的に多いと思うんですよね。努力の先に楽しさがある仕組みだと、前向きに取り組む人を増やすのは難しいと思っています。なのでワクワクする時間があって、その先に学びがあったら一番いいんじゃないかなって。

上司と部下が入れ替わる?!ゲーム研修ならではの現象

とある企業でゲーム研修を担当したんですが、とても印象的だったことがあります。その研修には、社長さん、50代のベテラン社員、大学を卒業したばかりの新卒社員の方まで幅広い年代の方が参加していました。その時に、新卒社員の方が「社長にも苦手なことがあると気づいた」と話してくれたんです。もちろん、ゲーム研修を取り入れて、社長さん自身も参加されるような会社なわけですから、普段から風通しの良い組織です。だからこそ、ゲーム研修を通じて、「正解は与えられるものじゃなくて、みんなで作っていくものなんだ。あらゆる可能性も考えながら模索していくことが重要なんだ」と実感している新卒社員の様子は、僕たち自身の気づきにもなりました。

またベテラン社員の方からいただく反応も新鮮でしたね。

僕たちの研修って、いわゆる講義ではないんです。

例えば「ぷよぷよを通じて目標立てを学ぶ研修」。チーム対抗戦でぷよぷよをプレイして、プレイするごとに次のプレイの目標を立てる、目標に沿ってプレイをしたら振り返ってさらに次の目標を立てる、そんなふうに目標と振り返りのサイクルを模擬体験してもらうものなんですが、はじめはごく基本的な操作だけ教えます。回転はここで、同じ色が組み合わさると消えます、くらいのことですね。

ベテラン社員の中には「ゲームの操作をなぜもっと説明しないのか」「やったことがないからできるわけがない」と不満げな人もいました。でも、ゲームに慣れた若い世代と話しながら研修を進めていく中で、そうした態度が少しずつ変わっていったんです。チームで振り返りをする時間では「こういう場合はどうするのがいいのか、どうやったら勝てるのか」そうしたことをゲームのプレイに慣れている世代に聞いていました。

普段の業務における「教える・教えられる/上司・部下」の関係性とは、立場が逆転していたんです。

最後には、「気軽に聞ける環境をつくらないで、できないと決めつけることがあったかもしれない」という感想を話してくださって。上の世代にも下の世代にも新しい学びがあったのは、ゲーム研修ならではかなと思います。

先入観なしに何かに取り組んだり、言われたアドバイスに沿って一度やってみるみたいな姿勢って、誰しも最初は持っていると思うんです。でも毎日の仕事に没頭する中で、気づかないうちに考えが凝り固まってしまうこともあります。フレッシュな気持ちで取り組める新入社員のちょっとした気づきが、意外と大切なことだったりするんじゃないでしょうか。

僕の会社員時代を振り返ると、日々のルーティン業務をなんとなくこなした上で、新しいアイデアやチャレンジは先送り…みたいになっていたなと。

でも、ゲームって言われたら、その日はいつもと違う脳を使ってワクワクしながら取り組めるんじゃないかなと思うんです。今日は、いつもの仕事と違うんだぞと。

ー普段の仕事内容から離れるから、新鮮な気持ちで取り組めるんでしょうね。

職場での上下関係が、フラットになるのもゲーム研修ならではです。チームで勝つためには、社歴や年齢に関係なく意見をいう必要があります。テーマがゲームであれば、上司が部下に対して「得意なんでしょう、教えてよ〜!」って頼ることができるじゃないですか。それって普段の仕事においても、非常に重要なことだと思うんです。気軽に聞ける関係性、話せる関係性が日頃から作れていれば、成長の速度も上がりますし、仕事もスムーズに進むはずです。

eスポGOMIで感じた、人と人をつなぐゲームの力

「ゲーム×ごみ拾い」の正式名称は「eスポGOMI」と言うのですが、少し説明をさせてください。

eスポGOMIはチーム戦で、1チーム3〜4人。ごみ拾いをサッカーのように前半戦と後半戦に分け、前半戦と後半戦の間のハーフタイムにゲーム大会を行います。ゲーム大会で勝利したチームは「競技エリア付近の地理に詳しい人を仲間にできる」「ごみ拾いを有利に進めるための道具を入手できる」「ごみ拾いのプロを仲間にできる」などの特典を獲得することができます。拾ったごみの種類と量によってポイントが付与されるのですが、最終的に、そのポイントを一番多く獲得できたチームが勝利という流れになっています。

参加者は競技エリア付近に住んでらっしゃる方や、働いている方がメインですが、参加動機は多種多様です。ゲーム好きや街の美化に興味を持つ方はもちろんですが、ごみを拾うために街を歩きまわるイベントなので、運動不足解消に参加する方、地域の様々な方とのコミュニケーションを楽しみにする方など様々な動機で参加されています。

リピーターもいらっしゃいますし、過去に参加された方が他の方を誘って参加してくださったりしていて、地域のコミュニティ形成の一端にもなり得るのではないかと思います。

子どもの頃に経験したことがある人も多いと思いますが「遊び」を通して友達ができたことがあると思います。eスポGOMIはその場で初めて出会った人同士がチームを組むこともあるんですが、前半戦ではぎこちなかったチームも、後半戦では活発にコミュニケーションを取って協力しながらごみを拾っています。

その結果、どのチームも後半戦の方が多くのごみを拾えるようになるんですよ。慣れもあると思いますが、ハーフタイムのゲームを通じてチームビルディングが短い時間でなされた結果なんじゃないかと思っています。

ゲームの力を信じている

ゲームってすごく良いコミュニケーションツールだと思うんです。

僕の家庭は少し極端なゲーム一家でしたが、ゲームをする時間が家族の大切なコミュニケーションの時間になっていました。

ゲームの持つ楽しませる力、人を惹きつける力を使って、もっといろんな価値が作れるようにゲームの可能性を模索していきたいです。そのためにも、常に自分たちが楽しんでいたいなと思います。

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