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2023.7.6

「すべてはコミュニケーションから始まる」プロバスケットボール選手が語るチームづくり

B.LEAGUEに所属する日本のプロバスケットボールチーム「越谷アルファーズ」で、2022-23シーズンのキャプテンを務めた長谷川 智也選手。

普段はバスケ関連のインタビューを受けることが多いと思いますが、サイダスの社名の由来「すべての人・チームの才能を引き出す」にちなんで、長谷川選手の”才能が引き出された瞬間”等の内側や芯に迫るべく、インタビューをさせていただきます!

長谷川 智也(はせがわ ともや)

身長185cm82kg新潟県出身
現在34歳。
ポジションはシューティングガード。
法政大学卒業後、2012年に当時NBDLの大塚商会アルファーズ(現:越谷アルファーズ)でプレー。
その後トップリーグ3チームでのプレー経験を詰み、2020年に再び越谷へ。
正確無比なシュート力とアツいハートを持つエモーショナルアタッカー。
越谷では
2021-22SEASONキャプテン。
2022-23SEASONはシーズン途中からキャプテンを務めた。
※2023-24SEASONも越谷アルファーズでの契約継続を発表。

ー選手になるまでに企業勤めをされていたご経験もあるとか。

大学卒業後、実業団チームの「大塚商会アルファーズ」に加入し、大塚商会で日中は他の社員と同じようにフルタイムで働き、勤務後にバスケの練習を行うという形で、1〜3年目は営業・4年目に人事部に所属していました。
バスケだけに集中したい思いもありましたが、プロになれるのは一握り。トップリーグへの所属は今よりも狭き門でした。

様々な選択肢を検討した結果、実業団に所属して、仕事もバスケも全力で取り組むことに決めました。この決断をするときに思い浮かべていたのは、学生時代の恩師から教えられた「文武両道」の精神です。幼い頃から「バスケだけじゃなくて勉強もしっかりやりなさい」と両親から育てられてきましたし、どちらも全力を出せる人ってかっこいいと思うんです。

全ては捉え方次第、困難な状況も目的意識があれば乗り越えられる

ーバスケと仕事の両立は大変なこともあったと思いますが、どんな風に乗り越えたのでしょうか。

仕事のために平日のバスケの練習に出ることができず、週末の試合にぶっつけ本番で出場するといったこともありました。
バスケと仕事、どちらも全力で取り組むために、日中はひたすら足を動かしてお客様のもとを訪問し、営業目標を達成することに必死でした。自分の場合、そんな努力をきちんと見てくれる上司がいたので、環境にも恵まれていたと思います。

今現在も、越谷アルファーズには企業勤めと両立をしている選手がいます。私も通った道で大変さは身を持って知っていますが、どんな困難なことでも、自分なりの目的意識さえ持てれば、前向きに取り組んでいけると思うんです。「やらされている」感覚で仕事に取り組んでいても成果は出ません。バスケの世界も同じで「B1昇格」という最終的な目的意識さえあれば、瞬間の大変さを乗り越えていくことができます。

ー長谷川選手はプラス思考ですか?

周囲の影響を受けて、年々プラス思考になっています。
落合選手(前キャプテン)もかなりポジティブな思考を持っていましたし、桜木ジェイアールさん(スーパーバイジングコーチ)・安齋竜三さん(アドバイザー)等、いろんな考え方を学んでいくうちに「他の人のために」という、自分本位ではなく利他的に考える思考が身に付きました。

ー人生の中で「自分の才能が引き出されたな」という瞬間はありますか?

今が一番「才能が引き出されている」と思います。
「ポジティブな空気がチームに伝染するように」という考え方や、チームを鼓舞する姿勢が自分の才能で、それを発揮できている今が一番良いかなと。

ー2022-23シーズンを振り返って、新しい発見や挑戦したことはありますか?

2022-23シーズンもたくさんの学びがありましたが、特にインパクトが大きかったのは、安齋アドバイザーからシューターとしての考え方・ポジショニングを一から学べたことでしょうか。

ボールの軌道が1センチずれるだけで、ディフェンスの影から仲間が一歩踏み出すだけで、そのパスは通っていたかもしれない。そういった考え方を学びました。

自分と向き合い、自分の能力や強みを活かしていく

また、去年のシーズンは怪我の影響でなかなか試合に出られませんでしたが、今年は全60試合に出場できました。専門家の力を借りながら、今まで以上に真剣に自身の身体に向き合ったからこそだと思います。

食べ物も、小麦粉を抜いて、グルテンフリーにトライしたりとか。ラーメンもパスタもパンも大好きですが、アスリートとしてのプロ意識を持って、身体づくりに取り組んでいます。

自分の能力の活かし方は?

自分を知ることです。まずは自分のことを知らないと、自分の能力もわからないと思うんです。
試合中、どんな状況でミスをしやすいのか、どんなシチュエーションを苦手と感じるのか。そこを客観的に把握しないと、自身の能力を存分に活かすことはできないと思います。

ーご自身の強みはどんなことがありますか?

強みは「流れを変えるゲームチェンジャー」であるところです。一本のパスで、一本のゴールで「必ず流れを変えるんだ」と、その一試合に命をかけるくらいの気持ちでコートに立っています。

コミュニケーションは「やりすぎ」なくらいでちょうどいい

チームづくりで大事にしていることは?

チームづくりは、コミュニケーションを取ることから全てが始まります。チームでたくさん会話して、よかった点、改善点を振り返り、次の行動につなげていく。その繰り返しで、チームの雰囲気や結果は形作られます。

とにかく行動に移さなければ、何にも変わりません。失敗したら、また話し合って改善策を見つければいいだけのこと。若い選手にも自身の行動で示していけるように心がけています。

コミュニケーションはどんな風に取られていますか?

試合中のどんな状況でも声かけを行って、コートに立っている5人全員の気持ちが離れないようにしています。
チームメンバーに良いプレーがあった時には、オーバーリアクションだと思われるくらいに、100%の力で喜びの気持ちを表現します。

劣勢のときの声がけは難しそうですね。

「今を全力でやろう」と声がけをします。試合は秒単位で目まぐるしく動くので、ネガティブなことを考えている時間はないんです。

ー試合中の長谷川選手の声、観客席まで聞こえてきます!

2試合連続ともなると、まったく声が出なくなる時も。試合後のヒーローインタビューに枯れた声で対応することもあるので、そんな時はお客さんに「長谷川選手、なんであんなに声出てないんだろう」と思われているかもしれません(笑)

信じていること、大事にしている考え方を教えてください

「誰かのために」ということを一番大事にしています。
自分のためではなくて、チーム・家族・友達のためだとか、利他的な考え方ができると、この先の人生が良い方向に向かっていくと思っています。

ーバスケを辞めたいと思ったことはありますか?

実業団チームで仕事とバスケを両立させていた3年目の時ですかね。仕事が忙しく、思うようにバスケに集中できなかったこともあり、選手として続けていくことを諦めかけた時期がありました。その頃は「あと1ヶ月だけがんばろう!」と、なんとか自分を奮い立たせていましたね。

でも、そのタイミングで当時憧れていたチーム(現B1)からオファーをいただいて。一緒にプレーしたい選手もたくさんいるチームだったので、本当に嬉しかったです。

一番達成したい目標の実現に向けて

ーそのタイミングで声がかかることは「運」も持っていますね

それが人生のターニングポイントとなり、バスケともう一度向き合うことができました。
NBL・B1のチームで5年間修行をした後、以前からお世話になっていた越谷アルファーズの会長と「一緒にこのチームをB1に上げよう」と決意し、チームに戻りました。

越谷アルファーズのB1昇格は、バスケ人生の中で一番達成したい目標になっています。
努力した成果は、すぐに出るときもあれば、何十年も経ってから実になることもあります。だからこそ、自分の苦手なことを理解して、自己分析し、努力を継続していきたいです。

自分の良いプレーが出た時はもちろんですが、仲間の成長や変化を感じると、とても嬉しくなります。
みんなの力が最大限に発揮されて、チームに素敵なケミストリーが起こって勢いが止められないくらいになったとき、目標であるB1昇格が達成できると思っています。
その時まで、頑張ります!

(取材・文:土屋あかり)

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