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2021.2.24

【わかりやすく解説】インクルージョンとは?ダイバーシティとの違い

経営者やビジネスパーソンのなかには、インクルージョンという言葉を知っているがその内容についてまでは詳しくわからないという人もいるでしょう。インクルージョンとは、「包括」などを意味する言葉です。このインクルージョンはダイバーシティとの関連性が深く、セットで語られることも多いです。そこで、この記事では、インクルージョンの基本的な知識やダイバーシティとの関係などについて解説します。

インクルージョンとは?意味

インクルージョン(Inclusion)とは「包括」「受容」といった意味の英単語です。近年では、社会用語として「人々の多様性を受け入れ、それぞれの個性や能力を発揮している状態」を指して使われます。

ビジネスにおいては、多様な属性の社員が各々の能力を発揮、活躍できる環境や状態のことです。適切な環境調整を通して、社内コミュ二ケーションやチームワークが促進され、個人と組織両方のパフォーマンスの最大化を目指すことがインクルージョンの目的といえます。

インクルージョンの語源は宝石業界

インクルージョンは、もともと宝石業界で使われていた言葉でした。天然石かどうかの判定は、鉱物の中に入り込んだ液体や別の鉱物の液晶などを参考に行われます。また、産地の推定を行う場合には鉱物に含まれる含有物で判定します。これら含有物の総称をインクルージョンと呼んでいたのです。

その後、社会福祉分野やビジネス分野においても、それぞれのシーンにおいて「さまざまな要素が入り込んでいる状態」に対して、インクルージョンという言葉が使われるようになっています。

インクルージョンが普及した背景

インクルージョンという考え方が普及した背景には、ソーシャル・インクルージョンの誕生や教育現場の課題などがあります。ここでは、インクルージョンの背景にある要因について詳しく解説します。 

「ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)」という考え方の誕生

「ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)」とは、すべての人々が孤独や排除から保護され、文化的な生活を享受できるよう社会が支え合う」という理念です。1970年代のフランスで誕生したとされるこの考え方は、社会的に弱い立場の人を含め、誰もが排除されることなく社会に参画できるよう、格差の解消を目指しています。

少子高齢化による労働力不足の深刻化が進む日本において、ソーシャル・インクルージョンへの注目度が高まっています。ソーシャルインクルージョンにより、高齢者や障がい者、外国人など、社会的な立場が異なる人が互いの個性と多様性を尊重し、社会の一員として支え合うことを目的としています。

インクルーシブ教育への転換

日本国内でインクルージョンの考え方が最初に広まったのは、教育分野です。1994年にUNESCOがサラマンカ声明において「インクルーシブ教育は国際社会全体で取り組むべき課題」であると表明し、1980年代にはアメリカで浸透していきました。

その後、障がいのある子どもや授業についていけない子どもなどが、分け隔てなく同じクラスで学ぶ「インクルーシブ教育」という概念が、日本の教育分野においても根付いてきています。

なお、2022年9月に国連の障害者権利委員会から日本政府に対し、「インクルーシブ教育の権利を保障すべき」という勧告を受けており、教育現場における取り組みが世界的に注目を集めています。

インクルージョンを推進するメリット

インクルージョンを推進することで、いくつかのメリットが得られます。まず、多様な人材それぞれの個性を認めたうえで活かすことによって、社員の自己肯定感と自己有用感を高めることにつながるメリットです。結果的に、離職率が下がり定着率をアップできます。また、会社全体でインクルージョンに取り組む姿勢は、社外から健全な企業だという評価を受けることにつながります。環境問題への取り組みをPRすることがCRSの代表的なものです。加えて、インクルージョンの推進を行えば、さらなる社会的評価のアップという効果が得られる可能性があるでしょう。インクルージョンの推進は、クリーンで健全な企業イメージを構築する対策の1つにもなるのです。

インクルージョンとダイバーシティ(多様性)の違い

インクルージョンと合わせて用いられる言葉に「ダイバーシティ」があります。ダイバーシティとは「多様性」という意味の英単語で、直訳的には個人のさまざまな属性や価値観の違いが包含・受容されている状態です。

また、ダイバーシティは、違いが尊重され、個人の能力が発揮できる状態を指すインクルージョンの前提条件とも言えます。つまり、インクルージョンとダイバーシティは不可分な関係性であり、ビジネスにおいては「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」という形で取り入れられています。

ダイバーシティ&インクルージョンとは

インクルージョンでは、社員1人ひとりの能力やスキルを活かすことに重点を置くのに対し、ダイバーシティでは多様性そのものを指します。両者を効果的に作用させることによって、企業における課題を解決していこうとする考え方が「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」です。

ダイバーシティだけを重視し、個性豊かで多様な人を採用しても、活躍の場がなければ離職してしまう可能性があります。また、女性の活用や定年の延長、外国人の採用、ダブルワーク推進といった多様性を活かすためには、インクルージョンの考え方が欠かせません。

多様な人材が活躍できる環境を整えるために、ダイバーシティとインクルージョンをセットで推進することが重要だと言えます。

ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)とは

最近ではビジネスにおいて、ダイバーシティ&インクルージョンに「エクイティ(Equity)」を加えた「DEI(DE&I)」という言葉も注目を集めています。エクイティとは日本語で「公平性」を意味する単語です。

さまざまな属性や特性を持つ人が公平に取り扱いを受けられるよう、それぞれに必要な支援を行うことが、エクイティに該当します。

「DEI」は、社員それぞれの個性が尊重され、機会や業務における公平が担保される環境、もしくは仕組みを整えるための取り組みを指しています。

ダイバーシティ&インクルージョンを導入するポイント

ダイバーシティ&インクルージョンのメリットを得るためには、実際に導入を推進する必要があります。導入の際には、ポイントを押さえておくことが重要です。ここでは、導入時の主な4つのポイントについて解説します。

制度・体制を準備する

1つ目のポイントは、社内の制度や体制を整備することです。これらを整備しなければ、ダイバーシティ&インクルージョンは掛け声だけで終わってしまいます。具体的には、足が不自由な人のためにバリアフリー化を推進したり、長時間勤務が難しい人のために短時間休暇を取得できる制度を導入したりすることなどがあげられます。制度や体制の整備のポイントは、さまざまな人が働きやすい環境を、それぞれの人の背景などを考慮したうえで進めることです。多くの場合、育休や教育プログラムなどの導入も重要になってきます。また、多様な人材を公平に評価することも欠かせないため、客観的な評価ができる制度に人事評価システムを変更することも考える必要があるでしょう。

社員の意識を変える

2つ目のポイントは、社員の意識改革です。制度を導入したとしても、管理職や従業員がダイバーシティ&インクルージョンの考え方を受け入れていなければ、絵に描いた餅でしかありません。成功させるためには、管理職や従業員の意識を変えることが必要なのです。ダイバーシティ&インクルージョン実現のために、まずは多様な人材を雇用しようと安易に進めることは避けたほうがよいでしょう。多様な人材の採用だけでなく、採用後に実力を発揮できるようにお互いを尊重する意識を醸成することが欠かせません。そのためには、目標を設定したり社内の雰囲気を変えていったりすることが大切です。

公平に発言できる環境を作る

3つ目は、公平に発言できる環境を整えることです。多様性を担保するためにはどうしたらよいのかと悩む担当者もいるでしょう。多様性を実現する方法の1つは、誰でも遠慮なく公平に発言できる風土をつくることです。さまざまな個性を持つ人を雇用してダイバーシティを実現したとしても、雇用された人がそれぞれの価値観や能力を発揮できなければ意味がありません。それでは、インクルージョンが実現できている状態とはいえないからです。各従業員の意見や考え方、価値観は、経営を変え、会社をプラスの方向へ導く原動力になるという意識を社内に浸透させることが重要になります。そのためにも、公平に発言できる環境を作ることは、欠かせない要素だと認識しておきましょう。

企業のD&I・DEI推進事例

ここで、企業のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)やDEIの推進事例を紹介します。実際に企業がどのように多様性を組織に取り入れているのかを参考にして、自社における取り組みを検討する上でお役立てください。

リクルートホールディングス

リクルートホールディングスでは、1960年の創業当初から「個の尊重」を理念としており、学歴や国籍などの属性に関わらない多様な人材の採用を行っています。経営戦略の一環としてDEIを掲げており、すべての社員のキャリアや成長につながる働きがいの追求と、自分らしい柔軟な働き方の両立を目指しています。

現在はグループ全体でジェンダー平等に向けて取り組むと同時に、すべての階層における女性比率を2030年度までに約50%にするという目標を掲げています。また、DEIイベントを定期的に開催し、社外の有識者や社内のリーダーとの対話を通して、DEIの考え方や具体的な行動について学べる機会を提供しています。

日立製作所

日立製作所では、2022年9月に「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)ポリシー」を制定し、DEIを尊重する職場環境の実現を公約すると発表しました。この背景には「社内における多様性が、市場の理解やイノベーションの推進に不可欠」だという考え方があります。

具体的には、子育て世代の社員が働きやすい職場環境を整えるほか、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見・思い込み)への対処法を学ぶ研修を提供しています。また、2030年度までに日立製作所の役員層に占める女性および外国人の比率を、それぞれ30%に引き上げる目標を掲げ、社内でもDEIに関する取り組みを実施しています。

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インクルージョンの理解と共にぜひ推進しよう

インクルージョンは「包括」という意味があり、ビジネスにおいてはすべての社員が平等に業務や機会を得られる状態を指します。企業におけるインクルージョンにより、社員1人ひとりが尊重され、能力を発揮できる環境の整備が進み、結果的に離職率の低下や社外評価の向上といったメリットが期待できます。

近年では、インクルージョンだけでなく、ダイバーシティとセットで取り組むD&Iや、エクイティと組み合わせたDEIの重要性が高まっています。日本国内でも、グローバル企業や大手企業をはじめ、D&IやDEIの実現を企業理念や公約として掲げる企業が増えています。

インクルージョンをダイバーシティと合わせて推進していくことには、多くのメリットがあります。ただし、導入して推進するためには、その概念や重要性を十分理解して進めることが大切です。インクルージョン、ダイバーシティのどちらかだけを重視するのではなく、どちらも尊重して相互作用を働かせることができれば、よりよい成果が期待できるでしょう。

D&I施策の推進のためにも、従業員一人ひとりの能力やスキルの把握が必要不可欠です。人材データプラットフォーム「CYDAS(サイダス)」は、人事担当者だけでなく社員全員で使うことを目的に設計されたタレントマネジメントシステムだから、常に最新の情報が自然と蓄積されていきます。機能を掛け合わせて活用することで、一人ひとりのワークエンゲージメントを高め、組織への定着率向上につながります。資料は無料でダウンロード可能です。ぜひお気軽にお問合せください。

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