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2024.9.5

サーバントリーダーシップとは?10の特性とメリット・デメリット

こんにちは!働きがいを応援するメディア「ピポラボ」を運営するサイダス編集部です。

今回のテーマは、「サーバントリーダーシップ」です。組織では、重要な役割を担う人物のことを「リーダー」と呼びますが、リーダーには、ワンマンタイプや放任主義、民主型など、さまざまな種類があります。サーバントリーダーシップは、このようなリーダーのタイプの一つであり、近年注目されている支援型リーダーのことです。

本記事では、サーバントリーダーシップの定義や特徴(10の特性)、サーバントリーダーシップを取り入れるメリット・デメリットについて詳しく解説します。

サーバントリーダーシップとは

サーバントリーダーシップとは、「まず相手に奉仕する」ことを基本理念とし、他の人の意見に耳を傾けたうえで、組織やチーム全体の進むべき方向を指し示し、導いていくタイプのリーダーのことを意味します。

日本における従来のリーダー像は、組織やチームを支配し、力強く牽引していく「支配型リーダー」が一般的でした。サーバントリーダーシップは、従来の支配型リーダーの対極にある概念(対義語)であり、メンバー一人ひとりに寄り添い、彼らの成長を支援することに重きを置くことが特徴です。具体的には、メンバーの話を丁寧に聞き、ニーズを理解し、能力を最大限に発揮できるようサポートしていくようなリーダーが該当します。

誤解されやすいサーバントリーダーシップの意味

「サーバント」の語源は、英語で「使用人」や「召使い」「奉仕者」という意味がある英単語「servant」からきています。その言葉の意味から「上司が部下の主張を何でも聞き入れる」や「メンバーの言いなりになる」という誤解を招きますが、これは間違いです。サーバントリーダーシップにおいて、あくまで組織やチームの目指す方向を定めるのはリーダーの役割であり、この点においては従来のリーダーシップと同じ考え方です。

重要なのは、その過程において、「メンバーファースト」の視点を持つことです。ミッションやビジョンはリーダーがしっかりとメンバーに示し、その上でメンバーがそれぞれの個性を生かしてパフォーマンスを発揮できるように支援することが、サーバントリーダーシップの本質です。

サーバントリーダーシップにおける理想のリーダー像とは

サーバントリーダーシップにおける理想のリーダー像は以下のような特徴を持った人だと言えます。

【サーバントリーダーシップにおける理想のリーダー像】

  • 人に役に立ち、社会のためにできることをするという奉仕の精神をもっている
  • 周囲の人々との信頼関係を重視している
  • 部下の話に耳を傾け、協力しながら目標を達成を目指せる
  • メンバーのモチベーションを意識し、失敗したとしても成長につなげるための環境をつくることができる

組織のメンバーが力を発揮していける状態にするサーバントリーダーは、今後一層重要性が増していくと考えられます。とはいえ、サーバントリーダーは、決して完璧な存在である必要はありません。むしろ、自身の弱さを認め、メンバーと協力しながら課題を乗り越えようとする姿勢が大切です。

サーバントリーダーシップの10の特性

サーバントリーダーシップには、以下の10個の特性があります。これらは、サーバントリーダーを目指す場合の行動の指針となるものです。それぞれ詳しく解説します。

サーバントリーダーシップの10の特性1:傾聴

傾聴とは、相手のことをしっかりと聞く力のことで人間関係を築くうえでカギとなる重要な能力です。傾聴を適切に実践すれば、相手が望むことを引き出すようなコミュニケーションが可能になります。

上司と部下の人間関係では困難が生じる状況もありますが、部下の話を丁寧に聞くことができれば、部下の変化や想い、困難などに気づくことができるでしょう。また、傾聴すると相手と厚い信頼関係を結ぶことができます。

サーバントリーダーシップの10の特性2:共感

共感力をもって相手の気持ちやものの見方を理解したり、感情移入したりするのもサーバントリーダーシップの必須要素です。部下と話をするときには、誰しも完璧ではないということを理解したうえで、相手の立場に立って考えるスタンスをもちます。

ただし、上司にとって共感は簡単にできることではありません。まずは自分のアイデアや考えをストップし、相手の話を先入観を持たずによく聞いてみるとよいでしょう。

また、同意と共感は異なります。自分の考えを無理に合わせたり意見を一致させる必要はありません。共感は相手に寄り添って感情を理解することであり、その行為だけで相手は楽になったり自分への信頼を増したりします。共感力のある人には人望が集まるのです。

サーバントリーダーシップの10の特性3:癒やし

サーバントリーダーは、部下の身体や心の健康状態への配慮も必要です。従来の支配型リーダーは、威厳があり近づきがたい印象を与えることもあり、部下にプレッシャーをかけることが多くなります。反対に、サーバントリーダーには、近づきやすく、相手の傷や不安を癒し、本来の力を取り戻させるような配慮があります。

仕事に取り組んでいると、予期せぬ難題が立ちはだかったり、ミスをして落ち込んでしまったりする場合があるでしょう。そこで部下を精神的にサポートしたり、起こっている問題を解決する手助けをしたりするのもリーダーの大切な役目です。

上司は部下よりも経験があったり能力があったりします。大きな器で部下を受け止め、手を差し伸べましょう。

サーバントリーダーシップの特性4:気づき

気づきとは、ものごとを客観的によく見て本質を見極めたり変化を知る能力です。先入観や思い込みにとらわれず、仕事やメンバー、顧客などあらゆることを観察しましょう。

観察眼が鋭くなると、ビジネスの動きに敏感になるだけでなく、チーム内の関係も円滑になります。また、自分が部下に対して気づいた点を共有することで、部下が自分の特徴や持ち味を知り成長することもあります。

同じ組織で長く働いている場合は、気づきに意識が回らないことがあるでしょう。いつでも新鮮な気持ちでものごとや人間関係を考察してみると、新しいアイデアや改善点が見つかるかもしれません。

サーバントリーダーシップの10の特性5:納得

相手にきちんと説明し、相手の意見を聞いたうえで合意を得て仕事を進めていくこともサーバントリーダーの特徴の1つです。相手が納得しない状態で決定したり指示を出したりすると、モチベーションが上がらず仕事が効果的に進まないでしょう。

論理的に説明するだけではなく、コンセプトや将来的なビジョンなども共有することで、感情的にも納得してもらうことが必要です。メンバーがそれぞれ納得した上で仕事をすると、相乗効果が出てチームとしても成長します。

納得しない状態で仕事を進めてしまうと、どこかで反抗心が出てしまったりやる気を無くしてしまったりするので、注意が必要です。

サーバントリーダーシップの10の特性6:概念化

ものごとを俯瞰して考え本質を見抜いたうえで、プロジェクトやタスク、目標のコンセプトを相手にわかりやすく伝える力もサーバントリーダーとして重要です。

異なる個性や価値観をもったメンバーが同じ目標を目指して達成するには、それぞれがビジョンを理解し、コンセプトに納得して取り組む必要があります。目先の成果も大切ですが、大きな視点で俯瞰的に物事を見てメンバーの心を動かすようなコンセプトを提示することも重要です。

サーバントリーダーシップの10の特性7:先見力

グローバル化やITの発達、急速な技術発達や社会構造の変化などにより、ビジネスを取り巻く環境はすさまじいスピードで変化しています。

このような環境の中で組織が発展し成長し続けていくためには、過去の出来事から未来を見通したり、俯瞰的に見て方向性を見定めたりする力が必要です。サーバントリーダーは目先の出来事だけに集中せず、中長期での市場や商品価値の変化を見極めたり、チームとしてあるべき姿を提示したりします。

先見力を持つためには、過去から学ぶことも重要ですが、さまざまな分野に意識を張り巡らせることが必要となります。国内から海外、社内から社外、同業種から他業種、新しい製品やサービスなど、固定観念にとらわれず興味を持って世界を観察することが大切です。リーダーや経営陣としての自覚が強いほど、企業を発展させていくための責任感があり先見力が養われていくでしょう。

サーバントリーダーシップの10の特性8:執事役

支配型リーダーは、自分や所属部門の利益のことを最優先に考えがちです。サーバントリーダーは、相手に献身的な態度で接し、相手の利益に貢献するように物事を進めます。この点も従来のリーダー像と異なる大きな特徴です。

サーバントリーダーは、チームのメンバーのサポートをするのが自分の役目だと意識して行動します。上司に献身的に支援してもらえることで、部下は信頼して仕事に全力投球できるでしょう。

また、上司に対する不満や反抗的な態度は生じにくく、チーム内の人間関係が円滑になります。執事役に徹することで、部下が成功したときにはリーダーも自分のことのように嬉しくなるウィンウィンの状態になります。

競争社会の厳しい環境よりも、暖かくサポートしてもらう方が部下は長所や能力を伸ばしていきやすくなります。

サーバントリーダーシップの10の特性9:人々の成長への関与

サーバントリーダーは、組織としての結果だけを追い求めるのではなく、そこに至る過程も重視し、一緒に働く仲間の成長を促すことができます。

会社を継続的に発展させていくためには、一人ひとりが成長していくことが重要です。サーバントリーダーは、数字だけを追うのではなく、そこに至る過程で部下とオープンに意見交換したり、アドバイスや支援をします。

メンバーの特徴や強みに気づいてもっと伸ばせるようにコーチングすることで、結果としてチーム全体の能力が上がるでしょう。部下としても仕事で成長できていると感じることができ、モチベーションを高く維持することができます。

また、部下の弱い面や改善できる面にも気づくことができ、精神的なサポートや実践的なアドバイスによって強化していきます。威圧的に注意するのではなく、部下を尊重しながら育成していきます。

サーバントリーダーシップの10の特性10:コミュニティづくり

サーバントリーダーは、お互いが助け合いながら成長できるコミュニティを形成することができます。メンバーの強みや特徴をしっかり把握し、一人ひとりを尊重して相乗効果を生み出せる環境を作ります。

リーダー自身がメンバーに奉仕する姿勢を見せているため、メンバー一人ひとりも困った人がいた場合に迷わず手を差し伸べるでしょう。部署にとらわれずに、組織の中でフレキシブルに目標や課題別に小さなワークグループを作成し、コーチングすることもできます。

リーダーへの信頼が厚ければ、メンバー同士も打ち解けられ、団結力が得られるでしょう。

サーバントリーダーシップが生まれた背景

サーバントリーダーシップは、1970年にアメリカのロバート・K・グリーンリーフ博士によって提唱されたリーダーシップ哲学です。当時アメリカでは、ベトナム戦争の泥沼化や、ウォーターゲート事件の勃発により、若者たちが社会を導くリーダーに対して不信感を募らせていました。そのような中、ロバート・K・グリーンリーフ博士はヘルマン・ヘッセの「東方巡礼」を読んで、サーバントリーダーシップの概念を生むインスピレーションを得たと言われています。サーバントリーダーは人間が本能的に持つ奉仕したいという感情を生かして、人から信頼を得て導くことのできるリーダーです。

ロバート・K・グリーンリーフ博士は1970年にエッセイを発表して以来、米国でサーバントリーダーシップの考え方を定着させるべく執筆活動やコンサルティングなどの啓蒙活動を行いました。多くのトップリーダーから注目されてきた哲学の1つといえるでしょう。

サーバントリーダーシップが重要視される理由

サーバントリーダーは1970年に提唱されてから、最近再び注目を集めるようになってきました。世に必要とされるようになった背景として、グローバル化やITの発達などにより、ビジネスの環境変化が一層と激しくなったことが挙げられます。

組織では、日々刻々と変化する環境の中で、多様な人材が求められるようになりました。また、スピード感をもって企業の提供するサービスや商品の品質を上げていかなければなりません。

このため、従来のように強い統率力でメンバーを率いるというよりも、部下のパーソナリティに応じて寄り添うマネジメントが求められるようになりました。サーバントリーダーの元では部下の能力や質もあがり、結果的に組織が一丸となって力を合わせてビジネスの競争に打ち勝っていく体制が構築しやすくなります。

従来の「支配型リーダーシップ」との違い

従来、リーダーはメンバーを支配する立場として考えられてきました。支配型リーダーシップは、「強制型リーダーシップ」と言い換えられることもあるほどです。しかし、サーバントリーダーシップはメンバーを支援したり後押ししたりするスタンスが基本となります。ここでは、従来の支配型リーダーとサーバントリーダーの違いを解説します。

支配型リーダーの特徴 

支配型リーダーは、競争社会を生き抜き、組織の中でうまく立ち回ってきたタイプの人が多いでしょう。自分の地位がとても重要で、常に自分の能力を磨き他の人に差をつけます。それがリーダーとしての自信にもなり、部下やメンバーに命令したり一方的に説明します。

【支配型リーダーシップの特徴】

・リーダー絶対的な権限を持ち、トップダウンで指示を出す
・メンバーはリーダーの指示に従うことが求められる
・コミュニケーションは一方通行になりがち
・メンバーの自主性や創造性は阻害されやすい

サーバントリーダーの特徴 

サーバントリーダーは、自分のリーダーとしての地位に関わらず他人を助け奉仕することから信頼を得ます。

信頼関係が構築しやすく、そこから部下やメンバーとの有益なコミュニケーションが生まれます。部下の話によく耳を傾けることも重視するため、会話は一方通行の説明や命令にはなりません。このことは、チームの一人ひとりがモチベーションを向上させることにもつながり、組織全体の士気も高まります。

また、サーバントリーダーは、自分1人の成長だけに固執せず、部下をコーチングすることで自分も学びを得て一緒に成長していく点も特徴的です。

【サーバントリーダーシップの特徴】

・リーダーはメンバーに奉仕し、彼らの成長を支援する
・メンバーは積極的に意見を出し、主体的に行動することが求められる
・コミュニケーションは双方向で、風通しの良い関係性が築かれる
・メンバーの自主性や創造性が尊重され、最大限に引き出される

日本企業で支配型リーダーが多い理由

日本企業では、支配型のリーダー像が定着しており、未だに多く存在しています。その理由の一つとして、新入社員は支配型のリーダーシップを実践する上司や先輩から学び、自分が管理職になった際も同じような方法でリーダーシップを発揮します。先人をモデルにした育成であるがゆえに、リーダーとはそういうものだという固定概念がついてしまうということもあるでしょう。近年グローバル化が進む中で、グローバル企業のマネジメント手法や育成方法を取り入れる企業も増えてきています。今後はサーバントリーダーという新たなリーダーシップの型がより一層浸透していくと考えられます。

サーバントリーダーシップのメリット

サーバントリーダーには、次のようなメリットがあります。

【サーバントリーダーシップのメリット】

・組織全体の生産性が上がる
・上司の部下に対する信頼が上がる
・部下の成長促進につながる

組織全体の生産性が上がる 

多くの場合、企業の経営陣と一般社員の間には考え方や方向性の違いが生じやすいものです。従来のように経営側が掲げた理想を押し付けても、理想と現場の現実との間にギャップが生まれて施策がうまく遂行されない場合があるでしょう。一方的に指示されるだけでは、すんなりと命令に従わない社員もいます。

サーバントリーダーは命令ではなく、双方のコミュニケーションをもって社員を助けたり、一緒に顧客やほかの社員に奉仕したりします。そうした行動を見て社員はリーダーに対して信頼を抱くため、リーダーに従いたいと思ったり組織のことを考えて自発的に動けるようになります

サーバントリーダーはコーチングやメンタリングなどによって部下の行動変化を促し、結果的に組織全体の生産性が向上する効果が期待できます。

上司の部下に対する信頼が上がる 

上司の部下に対する信頼が上がる点もサーバントリーダーシップのメリットです。部下が自発的に成長していくことで、組織自体が柔軟で変化に強いチームになります。サーバントリーダーは部下の意見にもきちんと耳を傾けます。突発的な問題が起こった際に、優秀な部下が組織にフレキシブルで有益な意見をもって力になることもあるでしょう。

部下の成長が促進される

サーバントリーダーシップのもとでは、部下の行動意識が変わります。部下が自主性を重んじて自分から「やろう」と行動するようになります。命令を受けていわれたことだけをやるのとは違って、自発的に考えるようになるため、工夫を凝らして課題に取り組み発信できるようになるでしょう。

また、サーバントリーダーが部下との話し合いを持つことによって、リーダーの持つ考え方への理解が深まります。一方的に命令されているだけでは、会社の方針に納得がいかないままフラストレーションを抱えて業務に取り組むこともあるでしょう。しかし、リーダーとコミュニケーションがうまく取れていれば、チームが一体となって目標を共有し達成しようと動くようになります。部下も自分の意見を聞いてもらえることによって、積極的に参加するように意識が変わります。

部下が上司とのコミュニケーションの重要性を学んだうえで、顧客の声に耳を傾ける大切さに気付くようになるのも利点です。

サーバントリーダーシップのデメリット

サーバントリーダーシップは、理想的なリーダーシップスタイルとして注目されていますが、あらゆる組織状況において万能というわけではありません。導入を検討する際には、メリットだけでなく、デメリットも理解しておくことが重要です。ここでは、サーバントリーダーシップのデメリットを紹介します。

業務の遅延の可能性 

サーバントリーダーシップでは、メンバーの意見を広く聞き取り、合意形成を重視するため、意思決定に時間がかかることがあります。特に、緊急を要する状況や迅速な対応が必要な場合には、意思決定の遅れが致命傷となる可能性もあります。

対策としては、緊急性の高い案件とそうではない案件を明確に区別し、緊急性の高い案件についてはリーダーが決断する、あるいは、事前に決定権限を委譲しておくなどのルールを設けることが有効です。

リーダーシップの所在が曖昧になる 

サーバントリーダーは、指導や指示よりも支援や貢献に重きを置くため、メンバーによっては、リーダーシップの所在が曖昧に感じられることがあります。明確なビジョンや目標を明確に示し、メンバーと共有することが重要です。定期的なコミュニケーションや進捗確認を通じて、方向性を再確認する機会を設けることも有効です。

自主性の過度な尊重による混乱

メンバーの自主性を尊重しすぎるあまり、誰が何の責任を持って仕事を進めているのかが不明確になり、混乱が生じる可能性があります。対策としては、責任と権限を明確に定義し、メンバーに周知徹底をすることが挙げられます。定期的な進捗報告や相互フィードバックを通じて、責任感と当事者意識を高めることが有効です。

また、サーバントリーダーシップを取り入れることで、自由な雰囲気の中で、ルールや規律が守られず、組織経営が滞ってしまう可能性もあります。サーバントリーダーシップは、決して「放任主義」ではありません。最低限守られるべきルールや規律を明確に設定し、遵守を徹底する必要があることを周知しましょう。

リーダーが自己犠牲的になりすぎる可能性がある

サーバントリーダーは、メンバーへの奉仕を重視するあまり、自身の負担が大きくなり、疲弊してしまうことがあります。リーダー自身のワークライフバランスにも気を配り、無理のない範囲でリーダーシップを発揮することが大切です。

サーバントリーダーシップを導入する時の注意点

サーバントリーダーシップを導入する際には、効果を最大化するためにも、「組織文化や風土に合っているか吟味する」「従業員に対する研修や教育をしっかり行う」「トップマネジメントの理解と協力を得る」といったことに注意を払う必要があります。それぞれ詳しく解説します。

組織文化や風土に合っているか吟味する

サーバントリーダーシップは、従来のトップダウン式の組織文化とは大きく異なるため、現状の組織文化や風土に合致しているか、慎重に見極める必要があります。まずは、自社の組織文化や風土を分析し、サーバントリーダーシップとの適合性を検証してみましょう。従業員へのアンケートやヒアリングを通して、現状のリーダーシップスタイルや組織に対する意識を把握することが重要です。社内外におけるサーバントリーダーの成功事例を収集し、自社に適した方法を検討していきましょう。本記事の「サーバントリーダーシップの導入事例」でも成功事例を紹介しているのでぜひ参考にしてください。

調査の結果、組織文化と大きく乖離している場合は、いきなり全社的に導入するのではなく、まずは一部署やチーム単位で試験的に導入し、効果や課題を検証しながら段階的に広げていくと良いでしょう。

従業員に対する研修や教育を行う

サーバントリーダーシップを浸透させるためには、リーダー層だけでなく、従業員全体への理解促進が必要不可欠です。具体的には、以下のような研修を行うと良いでしょう。

・サーバントリーダーシップ研修
従業員向けに、サーバントリーダーシップの概念や実践方法を学ぶ研修を実施します。座学だけでなく、ロールプレイングやグループワークを取り入れることでより実践的な研修になります。

・コミュニケーション研修
サーバントリーダーシップを実践するには、「傾聴力」や「質問力」など、相手のニーズを汲み取るコミュニケーション能力が求められます。従業員向けに、コミュニケーションスキル向上のための研修を実施することも有効です。

・啓蒙活動の実施
研修や教育だけでなく、社内報やイントラネットを活用し、サーバントリーダーシップに関する情報を発信したり、意識改革を促すキャンペーンを実施するのも良いでしょう。

トップマネジメントの理解と協力を得る

サーバントリーダーシップを組織全体に浸透させるためには、トップマネジメント層の理解と協力が必要不可欠です。なぜなら、トップ自らがサーバントリーダーシップを実践することで、組織文化の変革を促すことができるからです。影響力のある立場の人が姿勢を変えていくことで、社内にその精神が浸透しやすくなります。

今まで社長や経営陣の意見を第1に動いていた組織を、発想を転換して一般社員や顧客にフォーカスしていきましょう。社長から部長、部長から課長、課長からチームというように取り組んでいくと、効果的です。

社内ヒエラルキーが色濃く存在する場合は、それを逆にする発想です。始めは違和感があるかもしれませんが、上の立場の人が積極的に変化することで、考え方が浸透していきます。

伝統的な日本の企業などはなかなか、この哲学が浸透しにくいかもしれません。最初から全てのポイントを完璧に実行しようとせず、まずは基本となる「傾聴」から実践してみるのもよいでしょう。

また、サーバントリーダーシップを評価制度に組み込むことで、従業員がより積極的に成長支援に取り組めるようになる効果も期待できます。従業員からのフィードバックを評価に反映させる360度評価なども有効です。

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サーバントリーダーシップの導入事例

サーバントリーダーシップの導入事例1:資生堂

資生堂は、会社の再生をかけてサーバントリーダーシップの導入を実施しました。店頭の顧客を第1に考える発想に転換し、消費者を最優先とする逆ピラミッド型の組織構築を実践し経営改革を推進しました。

店舗と店舗に一番近い社員の声を聞くことが第1と考え、社長自ら現場スタッフの声に耳を傾けていきました。また、そこで聞いた意見や要望を具現化したのです。

大きな組織では、トップ自らが動きサーバントリーダーの姿勢を見せることで、会社全体にその精神が浸透しやすくなり、社内風土も変化します。従来のようなトップダウン方式で上から命令するのではなく、社長自らの奉仕精神によって、社内の意識改革が実現したのです。

サーバントリーダーシップの導入事例2:ダイエー

ダイエーもサーバントリーダーを導入した企業の1つです。

赤字経営のため閉鎖に追い込まれた店舗に社長自ら出向き、社員とコミュニケーションをとりサーバントリーダーシップを体現しました。社長がお礼や説明を現場の社員に直接することで、社員の心に響きモチベーションが高まり、閉店セールの成功などにつながりました。

閉店・異動後もスタッフたちは士気を高め、前年比売上増という結果に結びついたのです。社長が自ら進んで奉仕の態度を見せたことによって社員の意識が変化し、組織としての団結力が上がったのでしょう。

サーバントリーダーは、時代に合わせた新しいリーダーシップ

急激に変化するビジネスの世界で成長し続けるためには、リーダーの意識改革が必要です。これからは部下のパーソナリティや能力に合わせたマネジメントやリーダーシップが求められるようになってくるでしょう。ここで紹介したポイントに気を付けてリーダー自身が変化することで、組織全体のモチベーションと能力が高まり、より強力なチームを形成していけるでしょう。

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