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2020.3.4

「人材」と「人財」はどう違う?企業の成長につながる人への投資とは

企業にとって人は大切な財産です。そして人事戦略は長期的に経営を維持・向上させるための鍵です。最近では、「人材」の代わりに「人財」という言葉を使う企業が増えてきているのを知っていますか。その背景には、人の成長にかける想いや、従業員の教育や育成について積極的な投資を行う戦略がみてとれます。この記事では、さまざまな「じんざい」の意味や考え方の違い、企業が従業員の成長にコストをかけるメリット、従業員の成長を促すための方法などについて説明していきます

「人材」とは

「人材」という言葉は、企業にとっての単なる材料という意味ではありません。「材」という字には、もともと原料や材料、木材という意味の他に、「才能」や「才能のある人」、「素養」といった意味があります。つまり「人材」とは、単に従業員を会社を構成する材料としてみているのではなく、仕事をするうえで役立つ能力を備えている人を指す言葉です。例えば、仕事をきちんとこなせる人や、組織内で適切に対応できる人のように、個人の成果だけでなく、組織の力を高めていく主体性や協調性を持った人のことです。そしてこれは現在の能力にだけ焦点を当てているのではなく、将来の可能性も含んでいるため、これから企業に貢献してくれる素養がある新入社員や入社前の内定者のことも表します。したがって、使い捨ての材料のような表現ではなく企業にとって大切な価値のある構成要素を示すことがわかるでしょう。 

「人財」とは

「人財」に使われる「財」という字には、「宝」や「値うちのあるもの」、そして「有用な物質や金銭」という意味があります。すなわち「人財」とは、企業にとって有益で、大切な人を指す言葉で、従業員を宝と考えているというメッセージが込められている言葉なのです。また、お金の意味も含めた価値なので、企業がその人に投資をすることで得られる利益も含む言葉です。 

そのほかの「じんざい」

上記の二つ以外にも「人在」「人罪」という言葉があります。「人在」とは、文字通り会社に今在るだけの人という意味です。指示された仕事をこなすことはできるが、今以上の成長を見込むことができない将来性のない人のことを表します。終身雇用制の時代であれば、勤続年数を延ばすこともできたかもしれませんが、時間の経過が目まぐるしい現代社会ではそうはいきません。自分自身の市場価値を高めて成果や業績を上げることが必要なのです。 

「人罪」とは、使われる「罪」という字からも明らかなように、人罪は他に悪い影響を及ぼす人という意味を持ちます。つまりモチベーションもスキルも低く、企業の発展を阻害する可能性があるため、他の人への代替が望ましい人といえるでしょう。 

「人材」と「人財」の違い

「人材」と「人財」は同じような意味であり、違いがわかりにくい表現です。実際のところ「人財」は当て字であり、本来の書き方である「人材」と意味において明確な違いがあるわけではありません。2つの表現には優劣の差があるのかと疑問に思う人も多いですが、決して「人財」に比べて「人材」が悪い意味であるということではなく、むしろ有能な人に使う言葉です。どちらを使う場合でも、企業ごとの想いが込められているのです。 

使い分けには、具体的に以下のような傾向が見られます。

人材を使う場合 

代替可能なリソースとしての人を表す場合には、本来の「人材」が使われることが多くなります。マニュアルやひな形の通りに決まった仕事をし、その人がいなくなった場合には他の誰かが代わって対応することができます。

人財を使う場合 

反対に、他の人には代えがたい人という意味を強調したい場合は、「人財」が使われることが多いといえるでしょう。
例えば、自らビジネスを創造する、既存のマニュアルを随時更新し続ける、意思決定ができる、人脈を活用できる、などといった人物像の場合は代替するのが難しく、企業にとって宝のような存在の従業員です。企業が発展し続けるために、大切な従業員への想いを込めて当て字である「人財」を選択する場合もあるでしょう。
ただし、同じ意味を込めていたとしても、当て字ではなく本来の「人材」を使う企業もあります。
従業員への想いや意味合いはあっても、最終的には本来の「人材」という表記を使うか、あえて「人財」を使って強調するかという企業側の判断でしかありません。したがって言葉の使い分けを細かく気にするよりも、「人的資源」と「人的資本」という2つの考え方について注目し理解しておくことの方が重要でしょう。

「人的資源」と「人的資本」

「人的資源」とは、英語でいうと「human resource」にあたる概念であり、経営資源の一つで仕事をこなすために必要なヒトのことです。企業が高い成果をあげるためには人材が存分に能力を発揮できることが必要です。そのためには人材をどのように配置・活用するか戦略を立て、人材のモチベーションを高めることが重要となります。 

また、「人的資本」とは、英語で「human capital」にあたる概念であり、人の知識やスキルを資本とみなす考え方です。これは将来的に企業価値を高めるための投資対象で、投資を行うことによって価値が高まっていくのです。従業員の成長を促すために教育や研修に時間とコストをかけ、自ら成果を上げられる存在になってもらうことを戦略としている企業では、「人財」という言葉に加えて積極的に好んで使う傾向があります。 

日本企業には人的資本への投資が必要

従業員を人的資本と考えれば、従業員の成長を企業の成長につなげることができます。企業は人によって構成されており、人は投資を行うことによって発展していくものと考えるのが人的資本の考え方です。その企業の事業内容や経営の方針に基づき目標を決め、従業員一人一人の能力を研修などを通して上げていくことで、企業自体が発展し持続可能な組織となっていくことが見込めるでしょう。
この点について、日本の企業の現状はどうでしょうか。2018年に人材サービス会社ランスタッドが行った調査によると、勤務先が費用を負担する研修などを受けている人の割合は、世界33カ国のうち日本が最下位となっています。日本企業には、もっと「人財」に投資して育てていくという課題があり、これから大きな伸びしろがあるともいえるでしょう。
また、国際的にも競争できる企業になるためには、従業員の自律性を高めることもポイントです。自律性とは、上司や同僚から言われたことだけをこなすのではなく、それぞれが自ら考えて能動的に付加価値を生み出すための行動がとれる能力を指します。従業員が自律性をもつと、自ら動くことによって業務の効率を高めたり、トラブルを未然に防いだり、あるいは組織を円滑に動かしたりするなどさまざまな利点があります。
自律性を高めるための研修に、積極的に投資していくことが必要でしょう。こうして人を育てることが、結果的に企業の競争力強化につながっていきます。

ヒューマンスキルに注目すれば管理職も育成できる

「人財」への投資は、会社が決めた人物像に限らず、従業員に「なりたい自分」を実現してもらうために行うこともできます。従業員にとっては、自ら描いている理想の将来像に投資してもらえることはモチベーションの向上につながり、スキルアップのより高い効果が期待できます。企業から一方的に決められたことをやらされるのではなくなりたい自分を描いて取り組むので、意欲と自立性を兼ね備えた人に成長する可能性が高まるでしょう。
従業員が身につけることができるのは、テクニカルなスキルばかりとは限りません。リーダーシップやコミュニケーション能力などのようなヒューマンスキルに投資すれば、将来的に管理職としても通用する「人財」を育てることができるでしょう。
ヒューマンスキルとは、対人関係で必要となる、円満な人間関係を築く能力のことを指し、範囲は多岐にわたります。企業の事業内容や経営方針と、従業員各々の進んでいきたい方向から、どの分野に力を入れて伸ばしていくべきかを見極めることも大切です。一度に全てをカバーしようとせず、現在のスキルと進捗をみながら、段階的にさまざまな分野の個別スキルを伸ばしていくとよいでしょう。

働きがいのある環境が早期退職を防ぐ

せっかく「人財」に投資しても、活躍する前に退職されてしまった場合は時間とコストが無駄になってしまいます。急な退職の場合、なかなか代わりの人がすぐに見つからず引継ぎができなかったり、職場の穴が埋まらなかったりすることがあります。こういった人の流出を防ぐために、上司が人事部と協力して従業員のキャリアのために適材適所な配属を行うことや、定期的な面談を通して不安や不満を解消することが、従業員に働きがいを与え退職を防止するためにも効果的でしょう。

ここでは従業員に働きがいを与える上でのポイントを、2点ご紹介します。 

1:どんな社員とも積極的にコミュニケーションを取る 

注意したいのは、自律的に行動できている優秀な従業員であっても、突然退職の意志を告げ会社を辞めてしまう場合があることです。モチベーションを高く保ち常にやりがいをもって働いていそうな社員でも、面談をしてみると優秀であるがゆえの悩みを抱えていることがあります。
上司は日頃から従業員一人一人とコミュニケーションを取ったり、面談の機会を頻繁に設けたりするなどの工夫が必要です。

2:従業員の声に耳を傾ける

面談では、上司が会社の方針や自分の考えを一方的に話すのではなく、従業員の声に耳を傾け、仕事や教育がうまくいっているか、つまずいている点はないかなどを確認しましょう。問題がある場合は解決や動機付けに力を貸し、成長がさらに加速するように励ましていくことが大切です。従業員が1人でスキルアップ研修に取り組んでいる場合は、客観的に見てアドバイスや励まし、成果に対するフィードバックなどの言葉をかけていくと本人の満足度もきっと上がるでしょう。

人財の育成にはシステムの導入が役立つ

上司が従業員とコミュニケーションを密にとりながら成長を促すためには、人財情報をデータ化して管理するためのシステムが役立つこともあります。そのため、人財情報は全社的に利用できるシステムを構築しておくことが望ましいでしょう。マネージャ同士でシステムを介して情報を引き継げるようになっていると、従業員の異動があったとしても混乱することなく、長期的なスパンでサポートすることができるからです。
特に、従業員に「なりたい自分」を目指してもらうには、キャリアの設計も含めた長期的なサポートが必要になります。また、従業員が現在抱えている課題や、取り組んでいる目標についても合わせて管理することを考えてもよいでしょう。
企業では上の立場のマネージャになるほど忙しいケースが多くありますが、従業員のこれまでの過程やこれからの目標がいつでも見える化されていると、同じ時間であっても発展的な会話ができます。人財育成をエクセルや印刷物で管理している企業も多々ありますが、システムを導入することで効率化が図れます。

人財への熱意を社内外に伝えることも重要

企業として「人財」への投資に力を入れていく場合、そのことを自社のWebサイトなどを通して伝えていくのも一案でしょう。人の成長度合いは簡単に数値化できるものではありません。しかし、育成にかける想いをメッセージとして発信していく努力はできます。それにより社内外に以下のような影響を与えることができます。

社内への影響 

社内に向けては、自ら考えて行動できるようになって欲しいことや、熱意をもって人財育成に取り組んでいることを伝えることができます。人財投資の成功事例があれば、体験談などをWebサイトに載せて紹介するとよいでしょう。それを見た他の従業員が具体的にイメージしやすくなり、育成プログラムへの参加意欲が向上します。

社外への影響

社外に向けて人財育成への取り組みを発信する場合も、誰もがわかりやすいようにどのような方針や活動例があるのかを見せることができます。しかし発信するだけで実態が伴わないと社内外からの不信感を生み出してしまう可能性があります。そうならないためにも人を長期的な経営資源と捉え、育成し生かしていくようにしましょう。それによって企業のイメージが向上するとともに、自ら成長を望む向上心のある人を新たに採用することにつながっていくでしょう。 

人財とともに成長していける企業を目指そう

人材と人財には、代替が利くか利かないかの違いがあります。そして人財とは、投資によって価値が高まっていく「人的資本」です。従業員を資本と考え時間とコストをかけて成長を促していけば、自ら考えて行動し付加価値を創造できるような、かけがえのない存在になり得ます。その結果、企業としても競争力が増して成長していくことができます。人財を大切にして、従業員とともに成長していける企業を目指していきましょう。

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