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2020.11.11

欠勤とは?意外と知らない意味や給料との関わりを法律的観点から解説

会社や役所に勤務していれば、「欠勤」という言葉はよく見聞きするものです。しかしながら、漠然と「仕事を休むこと」という理解はあっても、欠勤の具体的な定義や類語との違いを正確に知っている人は少ないのではないでしょうか。 
そこで、この記事では欠勤の定義や欠勤の意味、給料への影響、欠勤する際に注意すべきポイントなどについて解説します。 

欠勤とは

欠勤とは、文字どおり「お勤めを欠くこと」を意味します。つまり「出勤するよう定められた日の業務を休むこと」です。

労働者は、雇用者に対して労働を提供する対価として給料などの対価を得る契約をしています。欠勤は労働を提供する義務を履行しないことなので、労働の対価である給料は支払われません。この点で、休んでも給料が得られる有給休暇とは異なります。とはいえ、実は、日本では「欠勤」について法律上明確な定義はされていません。

雇用者と労働者が労働契約を結んでいることを考えれば、欠勤は契約の不履行です。欠勤自体に明確な定義がないことから、社会通念上の合理性を欠くものとみなされています。

欠勤は契約違反に?

先にも述べたとおり、雇用者と労働者は「労働者は雇用者の指示に基づいて労働を提供し、雇用者は対価として給料などを支払う」という労働契約を結んでいます。

契約上、労働者には「出勤する義務」はあるものの、「欠勤する権利」はないのです。労働者が欠勤すると雇用者の指示に従って業務をこなせません。そのため、休むことは労働契約違反に該当します

また、二日酔いや体調不良で出勤しても指示どおりに業務がこなせないこともあるでしょう。これも契約に違反していることになり、会社は雇用者の権限で労働者に対して帰るよう命じることができます。

休業・休職との違い

欠勤と混同されがちな言葉に、休業や休職があります。なんとなく意味が異なることは理解しつつ、同じような意味合いで使っている人もいるのではないでしょうか。ここでは、それぞれの意味を説明します。

欠勤

先に述べたように、欠勤は労働者の都合によって労働を提供すべき日に休むことです。雇用者の指示に基づいた業務を行わないため、労働契約の不履行にあたり、欠勤した日の給料は支払われません。

休業

休業も業務を休むことです。ただし、雇用者側か労働者側のいずれかに特別な事情があり、労働者に対して業務が免除されている点で欠勤とは異なります。

雇用者側の特別な事情とは、たとえば、不況で業績が悪化したり災害にあったりして会社が操業できない状態に陥ったケースなどです。労働者側の特別な事情とは、身内の看病や老親の介護をしなければならない、病気で療養が必要になったなどのケースが挙げられます。
労働者側の都合によって休業する場合、基本的に給料は払われません。雇用者側の都合による休業であれば、平均賃金の60%以上の休業手当を受け取れます。これは、労働基準法に定められた規定によるものです。

休職

休職は、労働者が働けない状態になり長期的に休むことです。とはいえ、休職については法律に明確な規定はありません。会社ごとにどのようなケースで休職が適用されるかは異なり、就業規則に規定されていることが一般的です。

原則として、休職期間の給与は支払われません。なお、欠勤が続く、毎日のように遅刻してくるなど労働者の勤務態度に問題があり、指導しても改善されないときなどは、雇用者が休職するよう命じることも可能です。

有給休暇・公休との違い

欠勤に似たものとして、休業や休職のほかに有給休暇や公休もあります。それぞれの違いや定義をみてみましょう。

有給休暇

簡単にいうと「給料をもらえるお休み」です。事前に届出をすることで労働を提供する義務がある日に業務を免除されて休むことができ、さらに給料の支払いも受けることができます。欠勤と明確に異なるのが、この給料が受け取れる点です。ただし、労働義務がある日の業務が免除されることで発生する休みなので、もともと会社の休日である日に有給休暇を適用することはできません。たとえば、土日祝日が休みの会社で、土曜に有給休暇を消化して給料を払ってほしいと望んでもできないのです。 

雇用者は、働き始めてから6カ月継続して勤務し、すべての労働日の8割以上出勤した労働者に対し、10日間の有給休暇を付与する義務が課されています。また、2019年からは、雇用者は労働者に年に5日間の有給休暇を確実に取得させる義務を負うようになりました。労働者は多忙であっても1年間に最低でも5日間の有給休暇を取得する必要があります。 

公休

企業側の都合で会社全体や組織の一部が休みとなる日が公休です。企業が定めた休みという点で欠勤とは異なります。

一般企業の多くは土日やお盆、年末年始を休みと定めています。その場合、土日、お盆、年末年始が公休です。運送業や工場勤務などでシフト制を採用している場合は、労働者によって公休は異なります。いつが公休かは社内規定によって定められています。

公休は労働者が休む権利のある日なので、業務上やむを得ず出勤した場合は、ほかの出勤日に代わりに休みをとるか休日出勤手当を受けることが可能です。雇用者が、代休や休日出勤手当などの対価なく労働者を休日出勤をさせると、違法にあたります。

ノーワーク・ノーペイの法則

先述のとおり、欠勤すると給料が支払われません。月給制で給料が支払われている場合は、残業手当などを除くひと月の固定の賃金から、欠勤した日の分が差し引かれます。

また、たとえば始業時間が午前9時の会社で遅刻して9時30分から仕事を始めた場合、雇用者は、遅刻した30分の賃金を差し引くことができます。労働しなかった日や時間の賃金を給料から差し引くことは法的に認められていて、労働者は引かれた賃金を支払うよう請求することはできません。

労働者が欠勤や遅刻で仕事をしなかった時間分の賃金を支払う義務は、雇用者にはないのです。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。ノーワーク・ノーペイの原則という言葉は法律として明記されていないものの、その考え方は労働基準法第24条に記されています。

欠勤控除について

欠勤して労働しなかった分の賃金を毎月の固定の給与から差し引くことを、欠勤控除といいます。ノーワーク・ノーペイの原則により、労働を提供しなかった時間分の賃金を給料から控除することは、雇用者側の正当な権利として認められています。

ただし、控除する金額は適切な計算によって算出されなければなりません。欠勤分に対して賃金をいくら差し引くかは月給をもとにして計算しますが、一律に同じ計算式があてはまるわけではありません。勤務形態によって計算方法も異なり、手当の種類によっては控除しないものもあるなど、複雑な要素が絡んでいるからです。
基本的には次の2つの計算式のいずれかを当てはめて算出します。

  • 賃金控除額=(基本給+諸手当)/月の所定労働日数×欠勤した日数
  • 賃金控除額=(基本給+諸手当)/月の所定労働時間×欠勤した時間

このとき、諸手当についてもいくら控除するかを考えることが必要です。手当の種類によっては控除の対象外となります。どの手当を控除対象とするかは、雇用者の判断で決めることが可能です。

フレックスタイム制を適用している労働者の場合は、計算方法が異なります。フレックスタイム制とは労働者が始業・就業の時間を自由に決められる働き方のことです。あらかじめ一定の期間を清算期間と定め、その期間における総所定労働時間を決めておきます。労働者はその時間を超えない範囲で、好きな時間だけ働くことが可能です。たとえば、清算期間を1週間とし、契約時間を40時間と定めたとしましょう。この場合、月曜日から水曜日までは10時間働き、木曜日は2時間、金曜日は8時間働くといった変則的な勤務が可能です。

フレックスタイム制で働く労働者に対して欠勤控除をする場合、清算期間の総労働時間との兼ね合いでいくら差し引くかを判断することになります。たとえば、清算期間が1カ月、総労働時間を160時間と定めていたとしましょう。このとき、実労働時間が155時間しかなければ、5時間を欠勤控除することもでき、翌月に持ち越して5時間分働いてもらうこともできます。

欠勤でクビになることはある?

雇用者は「労働者が気に入らない」などの恣意的で合理性に欠ける理由で雇用契約を破棄することはできません。しかし、客観的に合理的と認められる正当な事由がある場合に限り、雇用契約を一方的に解除することが可能です。これを解雇といいます。

長期間にわたって欠勤が続くときは、業務に支障が生じます。そのため、状況によっては欠勤は解雇の正当な事由と認められます。ただし、企業が欠勤を理由として解雇を行う可能性があるときは、就業規則に、解雇事由として「業務に耐えられない場合」「欠勤を繰り返した場合」などと明記しておくことが必要です。

また、労働者の欠勤が続くからといっていきなり解雇することはできません。先に、労働者に対して「欠勤は契約違反である」ことを明らかにすることが必要です。就業規則の服務規程を確認するよう求め、注意や指導を行う必要があります。それでも欠勤が繰り返されるようであれば始末書を提出させるなど、懲戒処分を繰り返して行うことで欠勤が違反行為であることを指導します。そこまでしても労働者の勤務態度に改善がみられないようであれば、解雇に至ることが一般的です。

インフルエンザは欠勤扱いになる?

毎年冬になると、季節性インフルエンザが流行します。季節性インフルエンザに罹ると高熱や身体の痛みが起きるうえ、出勤すると周りに感染させてしまう恐れもあり、仕事を休まざるを得ないでしょう。

幼稚園や保育園、学校などの教育機関では、季節性インフルエンザに罹ったときは学校保健安全法により一定期間の出席停止となります。しかし、企業の場合は、季節インフルエンザを出勤停止とする法律は存在しません。
そのため、季節性インフルエンザに罹って仕事を休むときは、従業員側の事情による休みとして欠勤扱いされることが一般的です。欠勤なので給料は発生しません。ただし、季節性インフルエンザに罹った労働者が休もうとせず出勤を続け、雇用者が強制的に休ませる場合は休業手当を支払うことが必要です。

なお、新型インフルエンザの場合は労働安全衛生法による就業禁止に該当するため、企業が強制的に休業を命じることができます。休業手当を払う必要もありません。

欠勤を有給休暇に変えることは可能?

有給休暇取得可能日数が残っている場合、欠勤した日をあとから有給休暇として申請できるケースがあります。ただし、有給休暇の取得は事前に申請することが原則です。欠勤したあとに有給休暇を申請するときは、雇用者の承認を得る必要があります。 

本来欠勤扱いとなる休みに、雇用者の判断で有給休暇を適用することは違法ではありません。たとえば、季節性インフルエンザにり患して数日休んだ労働者が、その期間に有給休暇をあてるよう申請した場合、認められることはよくあります。季節性インフルエンザによる欠勤は無給となりますが、有給休暇の申請が認められれば給料を得られます。 
欠勤に有給休暇をあてるかどうかは労働者が判断します。企業は労働者に1年間に5日間の有給休暇を取得させる義務を負いますが、欠勤したときに勝手に有給休暇をあてることはできません。 

欠勤する時の注意点

欠勤する時の注意点①連絡をしっかりと

会社を欠勤すると、担当している業務に支障が生じます。出勤しているほかの労働者が代わりに仕事をせざるを得ないこともあるでしょう。 

周囲に少なからず迷惑をかけてしまうため、欠勤する場合は必ず勤務先に連絡を入れることがマナーです。連絡なしで欠勤すると無断欠勤となり、業務に支障が出て、上司や同僚、取引先などの信用を失いかねません。また、多くの関係者に心配をかけてしまうため、社会人として避けるべき行為であると言えます。やむを得ない理由での欠勤であっても、なるべく早く連絡することが必要です。 

欠勤する場合は欠勤届を提出する必要があります。欠勤届のフォーマットや提出方法は会社ごとに異なるので、就業規則などで確認しておくと良いでしょう。電子メールで連絡することで、欠勤届の代わりとする企業も増えています。 

とはいえ、始業時間ギリギリなどにメールで欠勤の連絡をすることはあまり良くありません。急な連絡は電話でしたほうが良いでしょう。なぜなら、始業時間間際の忙しいときにメールで連絡しても、確認する人がいない可能性があるからです。電話であれば、確実に休むことが伝わり、周囲の人も対応しやすくなります。 

欠勤する時の注意点②理由は明確に

有給休暇は労働者の権利なので、休む欠勤の理由を明確にする必要はなく、「私用」としても問題ありません。しかし、欠勤は本来出勤すべき日に休むことです。そのため、体調不良である、家族の看病をする必要がある、身内に不幸があったなど、やむを得ない事情があっても欠勤の理由を明確にしたほうが良いでしょう。 

無断欠勤するとどうなる?

上の注意点を理解せず、連絡をしないまま欠勤をすると以下のことが起こる場合があります。 

減給 

無断欠勤をすると、減給やボーナスカットなどの処分が下されることがあります。事前に有給休暇の届出をせずに無断で欠勤をした場合、その日の分の給料は支給されません。ボーナスへの影響は企業によって方針や規定が異なります。無断欠勤は勤務態度の評価でマイナスとなり、結果的に人事考課に影響してボーナス減額となることが多いでしょう。 

信用を失う 

ビジネスは人間関係の上に成り立っているといっても過言ではありません。社内 でも社外でも、信頼関係がないと業務が思うように進まないことがあるでしょう。しかし、無断欠勤をすると会社や上司、同僚からの信頼を失う可能性があります。仕事への責任感が疑われ、信頼関係の構築が難しくなってしまうでしょ う。上司も無断欠勤を繰り返すような社員には、大きな仕事を任せたり昇進の機会を与えたりすることができなくなります。不当な理由での無断欠勤は、業務の評価にも響くのです。 

損害賠償の可能性 

従業員の無断欠勤によって会社が多大な損害を被ることがあります。例えば、事前にセッティングされていた重要な商談のキャンセルや取引先の契約破棄、新規 事業開発の遅れなどさまざまなケースがあるでしょう。人員に余裕のない会社では、無断欠勤が1件生じるだけで実務に大きな悪影響が出てきます。 
無断欠勤によって業務に支障が出た際、会社側が被害を被ったとして損害賠償を請求される可能性もあるので注意が必要です。事実上は立証が難しいため会社が勝訴する可能性は高いとはいえませんが、正当だと判断されてしまった場合は多額の賠償金を支払うことになってしまいます。連絡を入れずに欠勤すると、その後の人生に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があるのです。 

制度をしっかり理解しておこう

欠勤の具体的な意味や法律上の扱い、休業・有給休暇などとの違い、欠勤控除制度などについて理解できたでしょうか。 
働き方が多様化するなかで、従業員の欠勤に対して適切な対応ができるよう、制度をしっかり理解しておきましょう。 

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