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2020.1.9

勤務間インターバルって何のこと?管理方法や法律について学ぼう

勤務間インターバルについて知りたい人のなかには、「具体的にどのような管理方法なのか」という点が気になる人も多いでしょう。勤務間インターバルを導入する場合、制度の必要性やメリットなどについて正しく理解しておくことが大切です。この記事では、勤務間インターバルの管理方法や法律などについて解説していきます。

勤務間インターバルの特徴

勤務間インターバル制度とは、労働環境の待遇の改善するための取り組みとして厚生労働省が奨励した制度のことをいいます。日本では、長時間労働や過労死などが深刻な社会問題とされています。労働にまつわるさまざまな問題を解消するためには、勤務のあり方や仕事への取り組み方などを見直すことが欠かせません。勤務間インターバルが導入された場合、仕事を終えた後には一定の休息時間を設ける必要があります。たとえば、残業をしたために終業時刻が遅くなってしまった場合、翌日の始業時間を遅らせるという措置をとるのが、勤務間インターバルの特徴です。
勤務間インターバル制度を企業が導入して勤務間インターバルが長くなると、それにつれて質の良い睡眠をとることができるようになります。逆に、睡眠時間が短かったり、睡眠の質が悪かったりすると体調管理が難しくなり、健康への影響が心配されるでしょう。具体的には、長時間労働を続けると、心血管疾患や精神疾患などの病気を発症するリスクが上がります。加えて、1週間あたり50時間以上の長時間労働をすることによって、メンタルヘルスを悪化させるという調査結果が報告されています。さらに、時間外労働が週80時間を超過すると、いわゆる「過労死ライン」といわれることさえあるのです。
労働を適切に管理し、過労死やメンタルヘルス疾患のリスクを軽減するという意味合いにおいても、勤務間インターバル制度を導入することで労働環境をより良いものするということは非常に重要です。ただ、勤務間インターバル制度については、2019年4月の段階で、導入を努力義務化するということにとどまります。そのため、企業によっては制度の取り扱いを行っていないケースも多く見られます。

勤務間インターバル制度の導入事例

勤務間インターバル制度を導入しようかどうかで悩んでいるのであれば、いくつかの導入事例を把握しておくと良いでしょう。まず、世界に視野を向けると、EUの勤務間インターバル制度の導入が知られています。EUの場合は、1993年に制定(2000年改正)された労働時間指令に基づいて、制度が適用されるすべての労働者に対して、24時間につき最低でも連続して11時間の休憩時間を確保するというのが主な内容です。
次に、日本で制度を導入している企業としてユニ・チャーム株式会社が挙げられます。ユニ・チャーム株式会社では、2017年1月からすべての社員を対象に、最低でも8時間以上のインターバルの確保を必要としています。さらに、インターバルを10時間設けるということを努力義務として設定している点も特徴といえるでしょう。また、株式会社フレッセイが実践している勤務間インターバルは11時間です。ただし、卸売業・小売業であることから、例外として年末年始は勤務間インターバル制度の適用を除くとしています。
続いて、TBCグループ株式会社の場合は、勤務間のインターバルとして9時間は休息を確保することが義務です。さらに、TBCグループ株式会社では、社員の健康を管理するための指標として、勤務間インターバルが11時間未満の日が所定労働日数の半分以上となった社員に対しては健康指導を実施している点が特徴です。ほかにも、KDDI株式会社については、勤務間インターバルは8時間です。ただし、緊急性が高い、または継続性がある業務、繁忙期などのケースでは、上長の判断で制度の適用を除外しても良いとされています。KDDI株式会社の場合も健康管理指標を設定しており、1カ月あたり11日以上は11時間のインターバルを確保しなければならないというラインを設定しているという点も特徴のひとつです。

勤務間インターバルを導入するステップ

新たに勤務間インターバルを導入するのであれば、導入するための手順やポイント押さえておきましょう。まず、制度を導入するために、さまざまな事柄について検討を重ねる必要があります。具体的には、制度を導入する目的を見失わないように気を付けることが求められます。加えて、労使間での話し合いを行い、現在の労働環境の実態や問題点などを把握することが欠かせません。
次に、制度設計を検討していきましょう。制度設計の段階で、制度を適用する対象者の決定や休息時間数を明確にしておくことがポイントです。加えて、休息時間が次の勤務時間に及ぶようなケースでは、勤務時間の取り扱いについても考えておく必要があります。たとえば、「終業時間は変えず、就業時間を短縮する」など事柄は、ルール化しておかなければ労使間のトラブルにつながる恐れさえあります。
さらに、実際に制度を導入する前にはできるだけ試行期間を設けて、制度そのもののメリットや課題、効果などを検証しておくことが大切です。試行期間があると、勤務間インターバル制度を、より自社に合った形に近付けることができるようになります。そして、試行期間が終わった後は、問題点の洗い出しを行います。ここで改善すべきポイントがあれば、見直ししておくと良いでしょう。検証と見直しができたら、いよいよ制度を本格的に稼働させていきます。制度を導入するにあたっては就業規則を整備し、社員に対して勤務間インターバルを導入する目的やルールを周知徹底する必要があります。最後に、一定期間制度を運用させたら、問題点がないかどうかを見直すようにしましょう。

勤務間インターバルの必要性を知ろう

日本で勤務間インターバル制度の導入が必要とされていることには、いくつかの理由があります。まず、日本の企業では長時間にわたる労働が常態化しているという問題です。日本の年間総労働時間は、1980年に2100時間を超過しています。これは、主要国のなかでもトップの労働時間です。ゆえに、日本では長時間労働の問題が度々指摘されるようになり、労働時間の短縮を目指した取り組みが行われるようになりました。
さまざまな施策が行われたことから、日本の年間労働時間は年々減少しています。しかし、国際比較をすると、日本がヨーロッパ各国よりも長時間労働を行っているという状況が続いています。また、日本政府が「一億総活躍社会」を実現させるために、働き方改革を重視した対策を進めていくなかで、長時間労働を是正して総労働時間を減らすことは急務です。厚生労働省でも、勤務間インターバルを普及促進させるために、有識者検討会を設置したり、導入企業に対する助成金を整備したりするなどの対策を行っています。

勤務間インターバル制度がもたらすメリット

勤務間インターバル制度を導入すると、さまざまなメリットがあります。まず、勤務間インターバル制度によって休息時間の確保ができるようになると、実質労働時間を短縮することが可能です。毎日の労働時間が短くなると、企業も社員も業務の効率化を目指すなど、仕事に対して工夫して取り組むようになるでしょう。
次に、適切なインターバルがあると、過労死などの健康被害から社員を守ることもできます。長時間労働が繰り返される背景として、特定の社員が多くの仕事を抱え込んでいるという問題があります。人材を増やすなどしてワークシェアリングや負荷の分散を進めることによって、社員にとって働きやすい労働環境となるという点も、勤務間インターバル制度を導入するメリットのひとつです。
さらに、公平な労務管理を目指すと、社員のストレス軽減にもつながります。ストレスを溜めこみすぎることなく仕事に取り組むと、やる気や生きがいの向上も期待できます。加えて、ストレスが軽減されると業務に集中できるだけでなく、勤務中の事故の防止にもつながるでしょう。労務改革によって企業の魅力が高まれば、長期安定雇用の確保も可能になります。人材不足は日本の企業にとって深刻な問題です。そのため、長期的な雇用が確保できれば、企業として生産性を上げることも期待できます。

勤務間インターバル制度導入の課題とは?

企業が勤務間インターバル制度を導入するにあたっては課題もあります。まず、休息時間を具体的にどのように設定するのかという問題です。たとえば、EUのケースのように11時間のインターバルを設けた場合、23時まで残業をすると、翌日の10時まで休息をとることとなります。すると、始業時間が9時の会社の場合には、時間通りに出社することはできません。
次に、勤務間インターバル制度を義務付けるのか、それとも努力目標にするのかという点です。制度を義務化した場合、無理なインターバルを設定すると、業務に支障が出ることとなります。業務に支障が生じれば、ルールを守れていないことに対するストレスにもつながりかねません。さまざまなケースを考慮して、休息時間を8~9時間と短く設定してしまうと、制度の導入自体は容易になります。しかし、勤務間インターバル制度の効果は薄れてしまうというデメリットがあります。勤務間インターバル制度を導入する場合は形式にこだわりすぎず、それぞれの会社の業務に合った休息時間を設定し、制度することが必要です。

勤務間インターバル制度に関する法律

勤務間インターバル制度にまつわる法律を把握しておくと、制度の導入を検討するときに役立ちます。2018年6月には、「労働時間等設定改善法」が改正されました。この2条1項には、「事業主は、その雇用する労働者の労働時間の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない」と規定されています。
勤務間インターバル制度の導入は、あくまでも努力義務です。したがって、企業に強制するものではありません。企業が制度を導入するのであれば、メリット・デメリットをよく考え、そのうえで導入するかどうかを検討することが求めます。また、勤務間インターバル制度を導入すると、助成金を受け取ることができます。制度を導入する場合には、助成金の手続き方法などもチェックしておきましょう。

勤務間インターバル制度を導入して魅力ある企業にしよう

勤務間インターバル制度を利用することは、ストレスの軽減や睡眠時間の確保に役立つだけでなく、社員の集中力アップにもつながります。集中力が高まれば、生産性の高い魅力のある企業へと成長していきます。勤務間インターバル制度の導入で悩んでいるのであれば、制度の必要性や課題などをしっかりと把握したうえで、導入を目指すようにしましょう。

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