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2020.9.24

雇用契約書って必要?記載事項と作成のポイント・注意点を解説!

従業員を雇用したときは、雇用契約書や労働条件通知書を交付して渡すことが一般的です。しかし、慣習的に交付しているものの、両者の違いをよく知らないという担当者もいるのではないでしょうか。雇用契約書と労働条件通知書とは目的や必ず交付すべきものかどうかという点が異なるため、違いをよく理解しておくことが大切です。ここでは、雇用契約書とは何か、労働条件通知書との違い、何を記載すべきかなどについて説明します。

雇用契約・雇用契約書とは

雇用契約とは「事業所などが従業員を雇い、労働の対価として給料などの報酬を支払う」契約です。雇用契約と似た言葉に労働契約がありますが、両者の違いは明確ではなく、おおむね同じように使われています。雇用契約書は、雇用契約の内容について企業と従業員とが合意に至ったことを示すものです。しかし、企業は雇用した従業員に対して雇用契約書を交付しなくても法的に問題はありません。労働契約法においても「できる限り書面により確認するものとする」と述べられるにとどまっています。

とはいえ、企業と従業員が合意した証明となる雇用契約書は、作成しておくことが望ましいでしょう。発行しておけば「そのような内容の契約はしていない」といった行き違いが起こるのを防止するのに役立ちます。正社員だけではなく、非正規雇用の従業員に対しても作成するべきでしょう。雇用契約書に記載するのは、勤務時間や休日など労働条件に関する内容です。雇用契約書として必要な絶対的明示事項と、記載しなくても口頭で確認すれば良い相対的明示事項の2種類があります。

労働条件通知書との違い

雇用契約書と労働通知書とはどう違うのか、両方とも発行する必要はあるのかと疑問に思う人もいるでしょう。労働条件通知書も勤務時間や休日などの労働条件を明示するものです。そのため、一見すると雇用契約書と同じもののように思えます。両者が異なるのは、雇用契約書は交付が義務付けられていないのに対し、労働条件通知書は労働基準法によって通知するように義務付けられている点です。雇用契約書を交付しなくても罰則の規定はありません。しかし、労働条件通知書を交付しなければ罰則の対象となるのです。なお、2つを一緒にして「労働条件通知書件雇用契約書」として発行しても問題はありません。

また、雇用契約書は契約内容の合意を示すものであり、当事者である企業の担当者と従業員の署名、捺印が必要です。しかし、労働条件通知書は条件を通知するためのものであり、一方的に送るだけで構いません。合意を示す必要はなく、書名、捺印も不要です。とはいえ、労働条件通知書を一方的に従業員に送るだけでは、のちのち労働条件に関するトラブルが起こる可能性があります。トラブルのリスクを低減するためには、雇用契約書を交わしておくか「労働条件通知書兼雇用契約書」として合意を得た形にすることが望ましいでしょう。

内定通知書との違い

企業の多くは、選考を通過し採用することが決定した応募者に対して「内定通知書」を発行します。これは、企業が応募者に対して「あなたを雇用します」という意思表示をするためのものです。雇用契約書と同様に、法律で作成や通知が義務付けられているものではありません。そのため、書面を発行せずに、電話やメールで内定を伝える企業もあります。また、雇用契約書には記載すべき事項が定められていますが、内定通知書にはそれもありません。各企業が独自の様式で内定通知書を作成しています。

もし雇用契約書を交わさなかったら?

企業のなかには、労働条件通知書は交付しても雇用契約書は作成していないところもあるでしょう。先に述べたように、雇用契約書の発行は義務付けられていないため交わさなくても問題はなく、罰則もありません。ただし、雇用主は「労働条件を従業員に明示する」ことが義務付けられています。「明示する」ためには、口頭ではなく書面にして伝えることが必要です。この義務に違反すると、30万円以下の罰金が科されます。契約自体は口頭で成り立つため、口約束だけでも労働契約自体は成立します。しかし、労働条件の内容を書面にして伝えなければ労働基準違反となるのです。

労働条件通知書に必要事項を漏れなく記載して発行していれば、問題はないでしょう。しかし、記載事項に漏れがあったり、労働条件通知書も雇用契約書も発行していなかったりすると、労働条件を明示する義務に違反していることになります。

絶対的明示事項

労働条件を明示するといっても、何を記載すれば良いのかよくわからない人もいるのではないでしょうか。法律で明示することが義務づけられ、書面で交付する必要がある「絶対的明示事項」があるので、それを漏れなく記載しましょう。

労働契約の期間

正社員など期間を定めずに雇用している従業員の場合は「期間の定めがない」と記載しましょう。契約社員など期間が定められている従業員の場合は、その期間や更新の有無、更新の判断基準などを明記する必要があります。更新の有無とは、契約期間満了後に自動的に更新する、更新することはない、満了のたびに更新するかどうかを判断するといったことです。

就業の場所、従事する業務

従業員を実際に就業させる場所や従事させる業務についても必ず記載します。入社後に配属された部署から異動する予定があるときは、異動先を併記することも可能です。

始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間や休日、休暇、就業時転換

業務が何時から何時までなのかも明記する必要があります。就業先がシフト制で、勤務日によって従業員の始業・終業時刻が変わるときは、すべてのパターンを明示しましょう。所定労働時間を超える労働が発生する有無、休憩時間、休日休暇などを明示することも必要です。従業員が交代制勤務を行うときは、就業時転換(交替期日や交替順序など)についても記載しましょう。

賃金の決定や計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払の時期

賃金についても忘れず記載する必要があります。月給や時給といった賃金を計算する方法、手渡しや銀行振込などの賃金を支払う方法、締め日や支払う日なども明示しましょう。

退職に関する事項(解雇の事由を含む)

定年制の有無や定年制を採用しているのであれば何歳で定年になるのかなどについて記載します。自己都合退職の際の手続き(「退職する何日以上前に届ける必要がある」など)や解雇の事由と手続きについても記載しましょう。書くべき事項が多すぎるときなどは「詳細は就業規則10条~15条の定めるところによる」といった記載で代替することも可能です。

相対的明示事項

相対的明示事項といって、該当の定めがあれば明示が必要ではあるものの書面交付はしなくて良いものもあります。たとえば、退職手当、臨時の賃金や賞与、休職などに関する事項です。退職手当については、いつどのような計算で支払うのかを明示しましょう。臨時の賃金や賞与も、いつどのように支払うのかを示します。企業に独自の休職制度があるときは、それについても明示することが必要です。そのほか、会社に食堂があって従業員に支払ってもらう食費があるときや、作業用品の購入費用が発生するときなどは、それらについてもはっきり説明する必要があります。

このほかに、安全衛生(健康診断の時期や災害補償に関する事柄など)や職業訓練、災害補償、業務外の疾病補助、自社に表彰制度や制裁制度があるときなども明示することが必要です。なお、昇給制度は絶対的明示事項に該当しますが、例外的に書面ではなく口頭による明示で良いとされています。

正社員の雇用契約書のポイント・注意

正社員の雇用契約書を作成する際は、どの労働時間制を適用するかを決めることが必要です。労働時間制には、固定時間制のほかにフレックスタイム制度や変形労働時間制などがあります。将来的なトラブルを回避するためにも、転勤の有無や人事異動、職種変更の可能性があるかどうかについても明示して、従業員の合意を得ておくことが望ましいでしょう。なお、正社員の雇用にあたって一定の試用期間を設けるときは、試用期間の存在や期間中の労働条件などについても忘れず記載しておくことが大切です。

なお、多様な働き方が可能となりつつあり、従来から使用している雇用契約書では労働環境や条件の変化に対応できていない可能性があります。必要な事項が網羅され、きちんと対応した内容になっているか、今一度確認することが望ましいでしょう。

契約社員の雇用契約書のポイント・注意

契約期間が決まっているため、雇用契約書には満了日や更新の有無、更新を判断する基準について詳しく記載することが必要です。従業員にはきちんと合意を得ておきましょう。また、契約社員の雇用契約書を作成する際は、たびたび行われる法改正に留意することが大切です。現在使用している雇用契約書や労働条件通知書の内容が、現行の法に違反していないか確かめるようにしましょう。雇用契約書に定める内容が、就業規則に記された労働条件を下回らないようにすることも必要です。たとえば、就業規則で「土日祝日を休日とする」と規定しているのにもかかわらず、契約社員の雇用契約書で「休日は日曜日のみ」としてはいけません。

契約社員と雇用契約を結ぶ際は「無転換ルール」についても留意する必要があります。これは、2013年4月に労働契約法が改正されて定められたル―ルで「契約期間が通算で5年を超える場合、契約社員が無期契約へと転換を希望したときは応じなければならない」とするものです。たとえば、3年間の契約で契約社員を雇い、契約期間満了後に再び3年間の契約をしたとしましょう。すると、通算で6年間の雇用となり、5年間を超えます。この場合、契約社員が無期契約を望んだとき、会社はそれに応じなければなりません。更新の定めについては、この5年ルールを勘案して慎重に考える必要があります。

パート・アルバイトの雇用契約書のポイント・注意

パート、アルバイトとは所定労働時間が短い労働者を指します。具体的には「1週間の所定労働時間が正規雇用者の4分の3以上」かつ「1カ月の所定労働日数が正規雇用者の4分の3以上」のどちらの条件も満たす労働者のことです。パートやアルバイトであっても、労働条件はきちんと明示しなければなりません。絶対的明示事項、相対的明示事項とも、漏れなく明示しましょう。また、次の項目を書面によって明示する必要があります。これを怠れば、10万円以下の罰金が科されます。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 短時間就労者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

法改正によって、現在使用している雇用契約書や労働条件通知書の内容が違法なものとなる可能性があります。内容をしっかり確認しておきましょう。

その他のポイント!押印方法や保管期間について

作成した雇用契約書は2通印刷し、企業欄に署名、捺印しましょう。その後、従業員に渡して住所や氏名、締結年月日を記入してもらいます。企業と従業員の署名がそろえば、契約成立です。雇用契約書は、企業と従業員とで1通ずつ保管しましょう。なお、雇用契約書が2枚以上になるときは、署名のないページが差し替えられることを防ぐために契印を押すか袋とじにするかします。雇用契約書は、従業員が退職もしくは死亡した日から3年間は保管しましょう。これは、労働基準法で定められている期間です。

雇用契約書は電子交付(メール送付)が可能

雇用契約書は以前から電子化が認められていました。書面による交付のみ認められていた労働条件通知書も、2019年4月に電子化が解禁され、メールなどで送付することが可能となっています。電子化すれば、印刷や製本の手間が省け印刷や郵送コストの削減にもなるなど、さまざまなメリットが得られるでしょう。ただし、雇用契約書の電子化においては次の3つの要件を満たすことが必要です。

  • 真実性の確保
  • 見読性の確保
  • 検索性の確保

真実性の確保とは、当該の電子データの内容が正しく、改ざんされていないことを示す必要があるということです。認定事業者のタイムスタンプを押すか、正当な理由がない限り訂正や削除ができないよう社内の規定を定める必要があります。見読性の確保では、納税地においてディスプレイやプリンターを用いて画面やプリントアウトした書面で契約書の内容を確認できるようにしておくことが必要です。検索性の確保では、主要項目を条件によって検索できるようにしておくことが求められています。これらの要件を満たすのには労力がかかり、容易なことではないでしょう。そのため、電子契約サービスを利用するのもひとつの方法です。

トラブルを避けるために!雇用契約書は正しく交わそう

従業員を雇用するときは、絶対的明示事項を明記した労働条件通知書を送付すれば法的には問題ありません。しかし、労働条件を巡るトラブルを未然に回避するために、雇用契約書も交わしておくと良いでしょう。1つにまとめて労働条件通知書兼雇用契約書としても構いません。契約を交わしたあとは、適切な方法で保管しましょう。

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