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2020.7.8

KPIツリーとは?成果が出る過程を見える化できる手法を解説!

ビジネスを展開するうえで最終的に達成したい目標を立てておくことは大切です。ただ、目標にたどり着くためになにをどうすればいいのかという過程が明らかでなければ達成が難しいこともあります。そのようなときに役立つのが「KPIツリー」です。

本記事ではKPIツリーとはなにかという基本的な内容から、具体的な作成の方法までがわかるように詳しく解説します。

KPIツリーとは?

「KPI」は「Key Performance Indicator」の頭文字を使った略称で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されています。つまり、KPIは、最終的に設定されている大きな目標を達成するプロセスのなかで、重要な指標となる小さな目標のことを指します。

どうすれば商品が売れるのか、集客するのにはどうすればいいのかなど、漠然と考えていてもなかなか具体的で効果的な方策が生まれにくいものです。そのようなとき、目標を達成するための道筋をわかりやすく、見えやすくする方法がフレームワークです。問題解決や目標達成のために論理的に考え、ロジックツリーと呼ばれる階層で表します。

KPIツリーは、大目標達成のために必要な指標をKPIの考え方に落とし込みながら1階層ずつ分解し、ロジックツリーで整理したものです。ロジックツリーとして整理することで、たとえば「売上拡大」のような大目標を達成するために、どんな指標を追えばいいかが見た目にもわかるようになります。

KPI・KGIの違い

ビジネスで目標達成のために用いられる概念には、KPIに似たものとして「KGI」があります。KGIは「Key Goal Indicator」の略称です。日本語では「重要目標達成指標」と訳されているように、KPIが目標達成のプロセスのなかで重要な指標であったのに対し、KGIは最終的な目標数値を指します。具体例としては、商品の売上高そのものや売上高を〇倍にする、または利益率、契約の成立数などです。インターネット上でホームページを運営しているなら、広告収入や認知度などもKGIとして設定することができます。つまり、KGIはビジネスの方向性を決める、いわば企業や部署全体の戦略的な目標だといえます。

一方で、最終目標であるKGIを達成するために要素を分解したものがKPIです。つまり、KPIはKGIを達成するための中間指標として重要な役割を果たし、個々の戦術を考えるためのものだと考えるといいでしょう。

日常生活においても、最終的な目標のために個別の戦略を考える場面はいろいろあります。たとえば、大阪府の郊外に住む人が、夕方5時までに東京についていたいという最終的な目標があるケースを考えてみましょう。新大阪駅から新幹線に乗ると仮定した場合、5時までに東京駅に着くためには、遅くても新大阪駅を何時何分に発車する便に乗らなければならないと考えるのではないでしょうか。そのうえで、新大阪駅までどのくらい時間がかかるかを考え、家を出発する時間を決めるはずです。このケースではKGIにあたるのが東京に夕方5時に到着するという目標であり、中間の新大阪駅で新幹線に乗る時間が小目標のKPIということになります。

ビジネスの場は日常業務に追われて個別のKPIに気を取られ、最終目標に対しての意識が薄れがちになることがあるかもしれません。しかし、上記の例で東京に夕方5時に到着するという最終目標を忘れると、そもそも新大阪駅に乗る新幹線の時間を決めることができないでしょう。KGIという大きな最終目的があるからこそ、優先的に決めなければならないことや定めるべき中間指標がはっきりし、具体的な戦術も練ることが可能になります。

ちなみに、ほかにも似たようなビジネス用語に「KFS」「CFS」などがあります。KFSは「Key Factor for Success」の略で「重要成功要因」を意味し、CFSは「Critical Success Factor」の略で「主要成功要因」を意味する用語です。KGIやKPIが具体的な目標の数値であるのに対して、KFSやCFSは事業を成功へと導く鍵のことを示しています。たとえば、社員の退職率を10%以下に抑えたいという具体的な目標値をKGIとして掲げた場合、社員の満足度を向上させるという要因が目標を達成するための鍵となるKFSだということです。この社員満足度の向上を実現するために具体的な方策として数値に落とし込むのがKPIで、たとえば福利厚生で割引率を〇%増やす、社内イベントを年2回から3回に増やすなどの具体案があります。

KPIと似た用語については、以下の記事で詳しく解説しています。

KPIツリーの効果

KPIをせっかく設定しても、わかりにくいようでは効果を発揮できません。KPIを最終目標が頂点になるツリーの形に整理することで、達成すべき目標や自分が日常業務で追うべき指標、努力するポイントを可視化してわかりやすくすることが可能です。

KPIツリーはもともと大目標を達成するためのステップを論理的に分析し、整理して作ります。そのため、適切なKPIツリーを作成しておけば経営陣はもちろん、各部署のリーダーや社員一人ひとりまで、目標や目標までの過程を論理的に理解することができるのです。情報を共有し、共通認識を持ったうえで業務にかかわることもできるでしょう。結果として事業や会社全体の成長につなげることも可能です。

KPIツリーを作っておけば、結果が伸び悩んでいるところや目標を達成するための障害になっているような箇所、いわゆるボトルネックも探しやすくなります。思うような結果がでていない箇所がみつかれば、そこからさらに子要素へと検証をしていくことで、原因の特定が可能です。また、ボトルネックが見つかった際、改善するための方策を提案するのにもKPIツリーがあれば状況の把握や認識の共有をしやすく、説得力も増します。

さらに、現場で働く社員にとって、最終的な大目標のKGIはイメージが湧かないことも考えられます。企業の規模が大きくなると部署も多彩になり、仕事も細分化されるからです。たとえば、ECサイトを運営している企業で担当しているのが広告にかかわる仕事だった場合、売上高の金額よりも、ECサイトへの訪問者数のような毎日担当している仕事に関する数値を示される方がわかりやすいでしょう。最終目標の売上金額を伸ばせという目標をいきなり突きつけられるよりは、課題が見つけやすく、業務にも取り組みやすくなるはずです。また、KPIツリーのどの指標に自分がかかわっているのか、責任の所在もはっきりします。

KGIの具体例

具体例としてクリニックの売上をKGIに設定するケースを考えてみましょう。売上は来店者数×顧客単価で計算することができますから、まずKPIとして来店者数と顧客単価に分解することができます。目標である売上の金額を上げるためには、もちろん来店者数を伸ばすことが必要です。ただし、この段階で漠然と来店者数を伸ばすといってもなかなか具体的な施策にはつながらないことも考えられます。

そこで、さらに要素を分解することを考えてみましょう。来店客数のなかには既存の顧客もいれば、新規の顧客も含まれています。つまり、来店客数は既存顧客と新規顧客の総和になっているため、来店客数をさらに既存顧客と新規顧客に分解して子要素のKPIを作ります。要素が細分化されると、新規顧客に対してはチャンネルごとの訪問者数を伸ばす、既存顧客はリピート率を上げるなど、最終目標の売上アップにつなげるために、それぞれのKPIで具体的な目標値を設定し、施策を練ることが可能です。

ソーシャルを運用する担当者の例も見てみましょう。半年間で流入数を3倍に増やすという数値が大目標のKGIになります。その目標を達成するために、KPIとしてインスタグラムのフォロワー数を〇〇まで増やす、ツイッターのフォロワー数を△△まで増やすなどの、具体的な数値を設定することができます。

KPIツリーの原則

KPIツリーを作成する際、分解指標は遅行指標から先行指標にするというのが原則です。遅行指標や先行指標という用語はよく景気動向を示す用語として使われ、先行指標は将来の業績や景気を見通せるような先行して変動するものを指して使います。一方で、遅行指標とは、数カ月や半年など後になってから変化してくるものを指します。

KPIツリーの作成においても、この点をしっかり把握しておくことが大切になります。大目標である売上高を上げるためにさまざまな施策を講じたとしても、その努力が積み重なり、結果として現れてくるのはしばらくたってからでしょう。つまり、KGIは遅行指標だということになります。KPIツリーを作成するときは、まず遅行指標を決め、先行指標へ分解していくようにすることがポイントです。実際にKPIツリーを作成し終えたら、一度見直して遅行指標から先行指標へ分解していくというルールに当てはまっているかどうか確認しましょう。

KPIに設定する要素を選ぶときは5つのポイントがあります。そのひとつが具体的な数値で設定できる指標であることです。そのため、「顧客のニーズを第一に考えよう」や、「営業は粘り強く行うこと」のように、数字で表すことができない定性的な指標はKPIには向いていません。また、リピーター率を10%アップさせる、サイトのアクセス数が1カ月〇〇PVになるよう目指すなど、計測できる指標にする必要もあります。チーム内で合意できるものであることも大切です。ビジネスを展開する以上、目標を達成するのはいつになってもいいというわけにもいきません。そのため、KPIの要素も期間を明確にできるものであることが必要です。たとえば、週単位や月単位、期末単位など、具体的な目標としてあらかじめ期限を設定しましょう。もちろん、最終的な大目標であるKGIに関連性のある指標でなければならないのはいうまでもありません。

ビジネスが複雑になってくると、KPIツリーを作成する際に類似した要素が出てくる場合もあります。しかし、一部例外もあるものの、基本的にはKPIツリーを作成するとき設定する要素は重複させないというのが原則です。

KPIツリーの基本的な作り方

KPIツリーは「足す」「引く」「掛ける」「割る」という四則演算できる要素で組み立てることがポイントです。具体的に「商品購入者数」というKPIを設定し、その子要素に「ECサイトの訪問者数」と「商品購入率」を設定してある例を考えてみましょう。この場合、「商品購入者数」は「ECサイトの訪問者数」と「商品購入率」の掛け算で数値が出ます。さらに、「ECサイトの訪問者数」を分割して子要素を「Web広告からの流入」「メルマガからの流入」「自分で検索してきた人の流入」の3つを設定したらどうなるでしょうか。この場合、「ECサイトの訪問者数」は3つの子要素を足した数になります。

つまり、ユーザー数を細かく分析するときは足し算、ユーザーがどう行動したかを分析するときは掛け算です。KPIツリーでは、四則演算といっても上記の例のように足し算と掛け算が多く使われています。このKPIの管理には、「A+B」や「C×D」などの簡単な関数で計算できるエクセルシートを使うのが便利です。実際にKPIツリーを作成するときは、KPIの集大成が大目標であるKGIになるように組み立てましょう。

注意点

KPIツリーはいわゆるロジックツリーです。ロジックツリーを作成する際は絶対的な書き方が決まっているわけではありません。ただし、左から右に記載していく方法が一般的です。一番左に大目標であるKGIを置き、KPIを分割しながらピラミッド型にしていくことで、左から右へ行くにしたがって比較的抽象的な大きい目標から、個別の部署の具体的な要素への流れが把握しやすくなります。子要素へと分割する際、わかれる要素は2つであるとは限りません。ときには「アポ数」に対して「電話でのアポ」や「メールでのアポ」「既存の顧客からの紹介でのアポ」「飛びこみでのアポ」のように、要素が3つや4つにわかれることもあります。そのため、最初に書きはじめるときは、ある程度余裕をもって高さを設定しておくことが必要です。

論理的な思考を行う際の手法として「MECE」があり、KPIツリーを作成するときはロジックの各階層をこのMECEにしておく必要もあります。MECEは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、相互に重複しておらず、全体的に漏れがないという状態のことを指します。たとえば、男女それぞれ大人と子どもになにかを販売しようとしたときの具体例をみてみましょう。「大人の男性向け」と「大人の女性向け」、「男の子向け」、「女の子向け」という区分けを作れば、MECEになっている状態です。一方、都道府県別になにかを行おうとしたとき、1つでも抜けている都道府県があればMECEになっていません。このように、KPIツリーを作成するときは、重複せず漏れなくKPIを設定するために、まず要素をしっかり洗いだしておくことが大切です。

MECEについては以下の記事で詳しく解説しています。

作成する際に便利なツール

KPIツリーを作成するためのツールとして最も一般的なのは「XMind」です。世界中に多くのユーザーがいるマインドマッピングツールで、無料でダウンロードできるバージョンと有料版があります。無料の場合はPDFへの書き出しができませんが、SNSやEvernoteなどで共有することはできるため、特にPDFへの書き出しが必要なければ利用するのに問題ないでしょう。UIデザインが一新され、作業に必要なビューの表示や非表示、切替などがワンクリックでできるようになるなど、使い勝手がよくなりました。

中心となる要素を中央において放射線状にマッピングを展開したい場合や、KPIツリーのようなツリー図、ロジック図、組織図など多彩な図を描くことが可能です。感覚的に操作することができる点もメリットだといえるでしょう。高品質なアイコンライブラリーや華やかなクリップアートライブラリー、多彩なテンプレートなど、作業しやすく、アイデアを視覚化しやすい機能がそろっています。プレゼンテーション機能も備えていたり、ガントチャートに変換できたりなど、ビジネスのさまざまな局面で利用することができる便利なツールです。

オンライン作図ツールの「Cacoo」もマインドマップを作成するときに使えるツールです。初心者でも簡単に使えるエディタで、フローチャートやワイヤーフレーム、ネットワーク図など、直感的に図を作成できる豊富なテンプレートもそろっています。GoogleドライブやGoogleドキュメント、Typetalkなど、外部サービスとの連携もあり、すでに使用しているものがあれば連携させて使うことが可能です。

オンライン作成ツールであるため、インターネットにさえつながれば誰でもどこからでも作業ができるほか、リアルタイムでチームが共同しながらチャートを作成・編集することもできます。スライドショーモードもあるためプレゼンテーションもでき、コメント機能でフィードバックをもらうことも可能です。

新たなツールを導入せずにKPIツリーを作成しようと思ったら、マイクロソフトオフィスのエクセルやパワーポイントも使えます。エクセルにもパワーポイントにも備わっているSmart Art機能を使って、KPIツリーを作ることができます。エクセルやパワーポイントを頻繁に使っているのなら、普段使いなれたソフトをそのまま利用するのも方法のひとつです。

KPIツリーで成果への道筋を見つけよう!

企業が業績を上げるためにはさまざまな施策が必要です。また、明確な目的を持ち、目標までの道筋をしっかり見据えておかなければなりません。大目標であるKGIを達成するためには、それに紐づくKPIをしっかり管理することが大切になってきます。今回の記事で紹介したKPIツリーは、KPIの設定や適切な管理をするために役立つ手法です。KPIツリーを作成して、成果への道筋を整えましょう。

サイダスのタレントマネジメントシステム「CYDAS」の機能「1on1 Talk」は、1on1を通じた上司・部下の関係性の質向上や対話の履歴を残すためにお使いいただけるのはもちろん、チームで立てた目標(KPI)の達成もサポートします。その他にも、Excel(エクセル)の評価シートをそのままシステム化できる目標管理機能も搭載しています。

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