2019.08.02

メンター制度とは?目的や導入ステップ・メリットデメリットを紹介

メンター制度とは?目的や導入ステップ・メリットデメリットを紹介

企業の人材育成において、メンター制度が注目を集めています。メンター制度は、経験の浅い新入社員の精神面をサポートするために役立つ制度です。メンターを担当する社員にとっては成長のきっかけとなり、企業にとっては社内コミュニケーションを円滑化する効果も期待できます。そこで、企業がメンター制度を導入する際のステップについて説明するとともに、制度のメリットとデメリットについても解説します。

メンター制度とは?

「メンター(mentor)」とは、「経験を積んだ指導者・助言者」という意味の言葉です。一般的には、仕事に限らず人生のさまざまな面において指導や助言をくれる師匠や恩師のような人物のことをメンターと呼びます。ビジネスシーンにおいては、組織的な体制として「メンター制度」を導入する企業も多くみられます。メンター制度とは、新人や若手のサポートにあたるために、ある程度の経験を積んだ先輩社員などがメンターとして任命される制度です。ここでは、なぜ企業がメンター制度を導入するのか、その理由や目的、効果について説明します。

なぜメンター制度が必要なのか

新入社員は、仕事や人間関係について悩みを抱えることが多いものです。「気軽に相談できる先輩がいない」あるいは「誰に相談すればよいのかわからない」といった理由から離職に至ってしまうケースも少なくありません。年功序列から成果主義・実力主義へとシフトしつつある社会の中で、競争や生き残りのために先輩社員が新人や後輩に対してもライバル意識をもってしまいやすいという背景もあり、社員が孤立するような状況は今後も多くなっていくことが考えられます。そのため、メンター制度により社員同士のつながりを増やし、悩みの解消や精神面のサポートを行うことが必要とされているのです。

メンター制度の内容

メンター制度のもとでは、新入社員や若手社員のサポート役として先輩社員が割り当てられます。サポートする側の社員をメンター、サポートされる側の社員をメンティと呼び、メンターとメンティは原則として1対1のペアを組みます。メンターは必要に応じてさまざまな役割を担いますが、精神的な面からメンティを手助けすることが中心です。

例えば、メンティが達成したいと思い描いていることが不明瞭な場合、メンターはゴールを明確化することで具体的な目標設定を促します。メンティが目標に向かって進んでいるときは、メンターは目標に対して現状がどうなっているかを時折確認し把握させます。そうすれば、メンティは目標を達成するためにより的確な行動をとれるようになるでしょう。

メンティが何らかの課題や問題を抱えており、自分だけで解決することが難しいような状況では、メンターが相談役になります。その際は、メンティ自身が解決方法に気づき、自発的に行動を起こせるように配慮することで、モチベーションの維持や向上にも努めます。また、より長期的な視点から、メンティのキャリアプランについての相談にのることもメンターの役割のひとつです。

メンター制度の目的

新人の悩みを早期解決することは、メンター制度の大きな目的のひとつです。しかし、企業がメンター制度を導入する目的はそれだけではありません。メンターの働きにより、社員は具体的な目標を設定し自発的に行動できるようになるため、組織の活性化が期待できます。また、社員の精神面に配慮して悩みを解消していくことは、社内の雰囲気を明るくするとともに、社員満足度の向上にもつながります。最終的には、新人の早期離職を減らし社員の定着率を向上させることができるでしょう。このような理由からも、メンター制度を導入する企業は増えつつあるのです。

メンター制度で期待される効果

メンター制度を導入することで得られるもっとも直接的な効果は、新人や若手が抱える不安の解消です。不安が解消されれば早期離職者が減るため、社員の定着率向上が期待できます。また、業務を行うために最低限必要な社員同士のつながりに加えて、メンターとメンティの関係によって社員同士の新たなつながりが生まれます。その結果、社内コミュニケーションがより活発になり、対話や相談による自発的な課題解決が行われるようになるでしょう。メンター制度を導入することは、社員が自ら課題を解決したり業務を改善したりできる企業風土づくりのきっかけとしても効果的です。

メンター制度と他の制度との違い

企業が新入社員や若手社員をサポートする代表的な方法として、メンター制度のほかにも「OJT」や「エルダー制度」、「コーチング」などがあります。ここでは、これらの制度がメンター制度とどのように違うのかについて説明します。どれも似たところがある制度ですが、それぞれの違いを理解しておくことはメンター制度をより深く理解するために役立つでしょう。

OJTとの違い

「OJT(On-the-Job Training)」とは、実務を通してトレーニングを行う手法です。企業においては、現場に配属された新人に具体的な仕事を与え、その経験を通して仕事に必要な知識や技術、安全に業務を行うための心構えなどを習得させることをいいます。OJTでは、指導を行う社員を必ずしも新人に対して1人ずつ任命するとは限りません。経験のある先輩社員が複数の新人を監督する場合もあれば、1人の新人が複数の先輩社員に教わることもあります。

企業によってはOJTでもメンター制度と同様の手法が用いられることもありますが、メンター制度とOJTでは根本的な目的が異なります。OJTは、あくまで「業務を正しく行えるようにトレーニングすること」が目的です。これに対し、メンター制度では業務に直接関係することだけでなく、職場環境における不安や会社のルールに関することなどもサポートします。また、コミュニケーションの活性化を促進し、新人がひとりの人間として成長していけることを重視します。

エルダー制度との違い

「エルダー制度」は、新人ごとに「エルダー」と呼ばれる先輩社員がついて、仕事の進め方について指導やサポートを行う制度です。マンツーマンの体制をとるなど、エルダー制度とメンター制度との間には似ている部分が多くあります。質問などが気軽にできるように新人と年齢の近い社員をエルダーにする方法が一般的になっているため、業務と直接関係のない相談をエルダーが受けることも少なくありません。しかし、エルダー制度の主目的はあくまで業務を行えるようにすることであり、その意味ではOJTの一種といえます。業務の進め方の手本を見せたり、業務内容をチェックしたりといった直接的な指導を行う必要があることから、新人と同じ部署の先輩社員がエルダーを担当することになるのが通常です。

メンター制度でも仕事に関するサポートは行いますが、その目的は個人としての目標設定やキャリアプランに関することであり、具体的な指導を行うエルダー制度とは異なっています。また、メンター制度では人間関係や仕事上の悩みなど精神面のサポートも行うため、同じ部署内の先輩などのように新人と直接の利害関係がある社員はメンターにならないのが原則です。

コーチングとの違い

「コーチング」は、広い意味では「対話を通して目標の設定や達成をサポートする」ことです。ビジネスシーンにおいては、コーチは新人や若手と1対1の面談などを行うことによって、業務上の目標を達成するための計画や行動を支援します。ただし、OJTのように直接的な指導や一方的なアドバイスは行わず、自発的な行動を促すことに力を入れているのがコーチングの特徴です。

企業内でのコーチングは、プロジェクトのように業務上の具体的な目標が設定されている場合に力を発揮します。一方、メンター制度ではキャリアや人生に関わるより長期的な視野で行われるため、目標そのものの設定も含めてサポートすることになります。このような違いはあるものの、当人の自発的な行動を促すという点においては、コーチングとメンター制度はよく似たものです。実際に、メンターと同様の役割を果たしているコーチもいます。

メンター制度導入ステップ

メンター制度を導入したいと考えたとき、具体的には何を行えばよいでしょうか。そのためには、導入の方法をステップにわけて理解することが役立ちます。ここでは、メンター制度を企業に導入する際の具体的な手順について説明します。

メンターの選出

メンター制度を導入するための最初のステップは、メンターになる社員を選出することです。先輩社員であれば誰でもメンターになれるというわけではなく、適性を備えた社員を選ぶことが大切です。メンターに向いている適性には、いくつかの代表的なものがあります。なかでも、「ある程度の業務実績」があることは必須の条件といってよいでしょう。新入社員や若手社員は、メンターを「お手本」と捉えることも少なくないためです。実績があるメンターをロールモデルとすれば、その考え方などを模倣することでメンティは成長していくことができます。

「コミュニケーション能力の高さ」も、メンターになるうえで重要な適性です。ただし、求められるのは一方的にスピーチをする能力や、相手を論破するディベート力ではありません。精神面を含めてメンティをサポートするためには、相手の声に耳を傾ける「傾聴する力」が必要になります。このとき、ものごとを俯瞰する力があれば、さらによいでしょう。メンティが問題を抱えている場合は、視野が狭まってしまい解決策に気づけなくなっているケースも少なくないためです。メンティが置かれている状況を俯瞰的に理解できれば、ものごとを客観的に整理し、わかりやすく伝えることが可能になります。

メンター制度は、メンティの自発的な行動を促すことに重点を置いています。その意味で、「人の成長に喜びを感じられる資質」は、メンターにとって何よりも大切な適性かもしれません。自分の考えを押し付けることなく、相手の立場に立って、ともに成長を喜べるような人はメンターに向いているといえるでしょう。

メンターとメンティのマッチング

メンターに適した社員を選出することができたら、次のステップではメンターとメンティとのマッチングを行います。メンター制度の効果を最大限に発揮するためには、マッチングの際にも考慮すべきポイントがあります。もっとも原則的なポイントは、メンティと別の部署からメンターを選ぶことです。新入社員や若手社員が抱える人間関係などの悩みの中には、部署内の先輩社員には相談しづらいものも多いでしょう。メンターが別の部署の社員であれば、そのような悩みでも相談しやすくなります。

メンターとメンティのマッチングでは、年齢や世代の差を考慮することもポイントです。特に社会人になったばかりの新入社員がメンティの場合、入社3〜5年目程度の若手社員をメンターにすれば、相手の気持ちを敏感に察することができます。年齢が近ければ、メンティにとっても気軽に相談しやすくなるでしょう。

メンティが女性の場合や、女性社員が働きやすい環境を目指してメンター制度を導入したいと考えている場合は、働くうえでの女性ならではの悩みがあることを考慮することがポイントになります。リーダーや管理職として活躍している先輩社員をメンターとしてマッチングすれば、メンティは自身の能力向上や子育てとの両立などについて現実的なビジョンを描きながら成長していくことができるでしょう。

メンタリング計画作成

メンターとメンティのマッチングができたら、次のステップでは「メンタリング計画」を作成します。「メンタリング」とは、メンターが対話を通してメンティをサポートしていく関わり方のことを指す言葉です。メンタリングにおいては、メンターが率先して導いていくのではなく、メンティが自ら考えて自発的に行動できるよう促すことが大切です。そのため、メンタリング計画は型にはまったものでもなければ、メンターが自分の考えだけで作成できるものでもありません。

メンティに寄り添い、後方からサポートするようにして計画を立てれば、メンティは自らの力で課題を解決しながら目標に向かって進めるようになります。より適切にメンタリング計画を立てられるようにするために、企業としては組織的にメンターを支援する仕組みも検討するとよいでしょう。

メンター制度を導入するメリット

ここまでで、メンター制度の概要と導入のステップについて説明してきました。ここからは、企業がメンター制度を導入することで得られるメリットについて、さらに詳しく説明します。

メンティの不安解消

メンター制度がメンティに与えるもっとも直接的なメリットは、不安の解消です。特に、社会人になったばかりの新入社員や、転職や異動で新しい環境に慣れていない社員には、さまざまな不安があるものです。不安を抱えた状態では業務に集中することも難しいため、生産性が低下してしまうかもしれません。社員が実力を発揮できないばかりか、そのまま放置することは離職につながるリスクでもあります。

そのようなとき、仕事に限らずプライベートなことでも相談できる人が身近にいることは、たいへん心強いものです。メンター制度では、相談できる相手を社内につくることができるため、不安な点があれば早期に解決できます。不安がなくなれば業務にも集中できるようになり、社員は実力を発揮できるようになるでしょう。このことは、組織としての生産性向上にもつながります。

メンターの成長

メンタリングを通して、メンティはメンターのことをひとつのロールモデルとして意識します。メンターは常に新人や若手から「見られている」ことになるため、自分自身の言動や仕事への取り組み方について自然と責任感を持つようになります。これは、メンター自身の成長にもつながる効果です。

メンターとして適切なメンタリングを行うためには、メンティが抱えている課題や目標について正しく理解しなければなりません。メンターとメンティは別々の部署の社員であることや、キャリアプランなどのような長期的な視点に立った内容も考えていかなければならないことから、メンターには通常の業務よりも深く仕事や会社について学ぶ必要性が出てきます。また、メンティの声に耳を傾けたり、自発的な行動を促したりするためには、相応のスキルも磨いていかなければなりません。メンター制度はメンティをサポートすることが主目的ではありますが、メンターになった社員にも成長の機会というメリットをもたらすのです。

社内コミュニケーションの円滑化

メンター制度を導入すると、業務のために最低限必要な部署内のコミュニケーションのほかに、メンターとメンティのつながりによって部署の垣根を超えたコミュニケーションが行われるようになります。社内コミュニケーションが活発化することにより、ある部署で生まれた知恵が別の部署で活用されるなどの効果が期待できるでしょう。期待される効果はそれだけではありません。

業務内容を熟知した社員同士であれば、専門用語を用いたり文脈を省略したりといった、ある程度乱暴な方法でもコミュニケーションは成立します。効率的なことのようにも思えますが、このようなコミュニケーションにばかり頼ってしまうと、新人が疎外感を感じる原因にもなりかねません。メンター制度のもとでは、メンターとメンティは異なる部署の社員同士であることから、丁寧なコミュニケーションによって意思疎通をはかろうとする姿勢が自然に鍛えられます。多くの社員がメンタリングを経験するようになれば、より円滑なコミュニケーションが行えるようになっていくでしょう。

メンター制度を導入するデメリット

メンター制度には、うまく対応できなければデメリットとなりうることもあります。ここでは、制度を導入する際にどのような点に注意が必要かについて説明します。

メンターの負荷

メンターとして選出された社員も、自分自身が行わなければならない業務を抱えているのが通常です。単にメンターを任命するだけでは、通常業務に加えてメンタリング業務がプラスされることになり、メンターの負荷が高くなってしまいます。通常業務だけでも手一杯という場合は、メンターとしての役割がおろそかになってしまうでしょう。メンター制度は組織的な改善・向上のための施策ですから、適切に運用するためにはメンターの負荷を調整しなければなりません。

この点がデメリットとならないようにするためには、メンターとして選出されたことを本人だけでなく、その上司も把握することが必要です。そうすれば、メンターとして実際の活動をはじめる前に、メンタリング業務のための時間を割くことができるよう業務量の調整などを行えるでしょう。

メンターの能力による効果のばらつき

メンターをつとめる社員には、会社や仕事についての知識やメンタリングそのものに関するスキルなど、状況に応じて幅広い能力が求められます。メンターの能力にある程度の差があることは避けられませんが、あまりに差が大きすぎると、メンティの成長度合いにばらつきが生じてしまう恐れがあります。新人にとってはメンターに当たり・外れがあることになってしまい、不公平感にもつながりかねません。

このような事態を避けるためには、本格的なメンタリングをはじめる前にメンターになる予定の社員を集め、レクチャーやトレーニングを行うとよいでしょう。メンター制度の目的を正しく伝え、メンタリングにおけるメンティとの接し方や指導方法などについて具体的に理解してもらうことで、メンターの能力を底上げ・均一化します。また、メンター制度の運用を開始したあとも情報交換ができるように、メンター同士のネットワークを構築することも検討するとよいでしょう。

メンター制度の導入事例

実際にメンター制度を導入している企業は多数ありますが、中でも独自の考え方でメンター制度を活用している企業について、いくつか紹介します。

ある大手企業のメンター制度は、中堅社員を対象に実施されています。具体的には入社4年目の社員をメンティとし、メンターには入社10年目前後の社員を選出することで、これから組織の中心的な役割を担うことになる人材の長期的な育成を目指しています。メンター制度は新人向けとは限らないということを示す事例です。

役員やベテラン社員をメンティとし、若手社員のメンターがITに関する指導を行なっている企業もあります。先輩社員に若手のメンターがつくというのは、通常のメンター制度とは逆の珍しい事例でしょう。若い人のほうがITリテラシーが高いことを利用しつつ、世代が離れた社員同士のコミュニケーションを円滑化することも狙ったユニークな取り組みです。

あえて女性社員のみを対象として、メンター制度を導入している企業もあります。女性ならではの悩みの解消やキャリアについてのアドバイスは、女性同士のメンタリングだからこそ可能な部分もあります。この企業におけるメンター制度は、女性管理職を新たに育て、社内の多様性を促進するための施策です。

様々なメリットのあるメンター制度を活用しよう

メンター制度の導入は、新入社員や若手社員の不安を解消できるだけでなく、メンターの役割を担う社員にとっても成長のきっかけになりうるものです。また、社内コミュニケーションの円滑化や、早期退職者が減ることによる企業イメージの向上も期待できます。さまざまなメリットのあるメンター制度について、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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