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2021.2.26

内省ってきちんとできてる?ビジネスにおける効果的な内省方法を解説

企業における人材育成の一環として、高い注目を集めているのが「内省」と呼ばれるものです。内省という言葉自体は聞いたことがあっても、概要や具体的な取り組み方について知らないという人も多いのではないでしょうか。内省の効果を得るためには、内容をきちんと理解し、適正な方法で実行することが重要です。そこで、この記事では内省の基本知識や具体的なやり方、注意点について解説します。

内省とは

内省は英語にすると「リフレクション」といい、鏡に映った自身や物事という意味を持つ言葉です。具体的には、自分自身と向き合い「過去の言動や物事の考え方について深く省みる」ことをいいます。自身や見慣れた物事を多角的な視点で見つめ直し、本質を理解することが主な目的です。
ビジネスシーンの人材育成分野における内省は、自分の仕事から一度距離を取り、「業務の流れ・考え方・行動」について客観的に振り返ることをいいます。自己意識について反復的な考え方をすることで、知性が磨かれていきます。その結果、ビジネスパーソンとしての成長につなげられるのです。この内省は社会人として活躍するために必要なスキルとして、多くの企業から注目を集めています。

内省と反省の違い

内省と似ている言葉の一つに、「反省」が挙げられます。この2つは混同して考えられがちですが、実際には持つ意味が異なるものです。そのため、両者の違いについてきちんと理解して使い分けをすることが重要になります。まず、内省は前述したように、自分自身と向き合って言動・価値観・考え方について振り返ることをいいます。見直しの結果として、気付きを得ることが主な目的です。一方、反省は自分自身の誤った言動・価値観・考え方について振り返り、その結果を周囲に伝えるためのものです。
両者は自分の内面と向き合うという点では似ていますが、「フォーカスする部分」に大きな違いがあります。内省は悪い点の把握とともに、今後はどうするかという「改善点」を洗い出すことに着目した考え方です。基本的には自己観察が目的であり、必ずしも誤りを認めて正すことが目的とは限りません。一方、反省は「ミスや間違いはどこか」という悪い点にフォーカスする考え方です。そのため、後悔という意味合いが強く、間違いを正すことを主な目的としています。したがって、内省は「未来志向」、反省は「過去志向」で振り返るものといえます。内省の結果として反省につながるケースもありますが、両者にはこうした違いがあることを理解しておきましょう。

内省と内観の違い

内省や反省と似ている言葉に、「内観」というものがあります。内観とは「自分を観察する」という意味を持つ言葉です。具体的にいうと、自分自身の言動や感情について深く観察することをいいます。鏡の前に立つと、そこには自分自身の姿があります。しかし、これはあくまでも外側の世界にいる自分を視覚的に捉えているだけに過ぎません。何を考えているのか、何を感じているのかという内面的な部分までは、目で捉えることができないのです。この鏡に映らない内面を自分で見つめること、それが「内観」となります。
内観するためには、気持ちを穏やかにして自身について振り返ってみることが重要です。内観のコツをつかめるようになると、自分の心に対してより素直になることができます。そして、その考え方や言動などの振り返ったものを分析することで、内省につなげられるのです。

具体的な内省方法

内省はビジネスパーソンが成長するために重要な役割を果たしてくれます。それでは、実際に内省を行うときはどのようにすれば良いのでしょうか。具体的な内省の方法について見ていきましょう。

リフレクション・テーブル

まず内省の方法として挙げられるのは「リフレクション・テーブル」というものです。これは個人ではなく集団で行う内省の方法で、12名程度で行うことが一つの目安となります。なぜ集団で行うのかというと、それは「価値観」が深く関係しています。個人で内省を行う場合、人によっては価値観が固定されてしまい、考えが堂々巡りになってしまうケースがあるのです。すると、内省がうまくできない可能性があります。その点、集団で内省を行うと、さまざまな価値観に触れることができます。その結果、個人の価値観の狭さによる行き詰まりが発生するリスクを避けられるのです。
リフレクション・テーブルを行うときの手順は非常にシンプルです。基本的には週に1度、定時で75分程度のペースで行うと良いでしょう。この間に20~30回程度のセッションを行い、これを習慣化させます。リフレクション・テーブルを組織全体で行うことで、個人はもちろん組織としても内省を促すことができます。なお、リフレクション・テーブルを行う際は、「気付きを共有する」ことがポイントです。各セッションでは参加者ごとに経験を持ち寄って、内省を行いましょう。そして、そのときに感じた気持ちや気付いたことをメンバー同士で共有し合うのです。ほかの参加者の意見を聞いて話し合いをすることで、自分では思い至らなかった部分の気付きを得られるでしょう。

行動自体への内省

ビジネスパーソンの成長にとって、外せないのが「行動自体への内省」です。ビジネスなどで「こうしよう」と意気込み、計画を立てる人もいるでしょう。しかし、計画を立てることが目的になってしまい、実際には行動に移さないまま「もういいや」と自己完結してしまう人もいます。このようなときに大切になるのが、「行動自体を内省すること」なのです。ビジネスパーソンは日々の業務に追われており、「なかなか時間が確保できない」「計画を実行する暇がない」という人もいるでしょう。このような行動をしない理由は結果だけ見ると、残念ながら言い訳に過ぎません。こうした言い訳は内省でも反省でもなく、行動できなかった理由を自分の都合の良いように転換するためのものです。そのため、自分自身を成長させるためにも言い訳はしないように心がけることが肝心といえます。
また、言い訳は自身の成長の妨げになるだけではなく、「イメージダウン」につながる可能性もあるため、要注意です。いつも言い訳をしていると、周りの人から「あの人は口だけでできない人だ」「やる気がない」というイメージを持たれてしまうおそれがあります。人は完全ではないため、もちろんやろうと思ってもできないこともあります。こうした物事に対して言い訳をするのではなく、きちんと分析を行うことが大切です。なぜできなかったのか、やらなかったのかという客観的な分析を行い、行動を内省することによって自身の成長につなげられます。

自身への問いかけ

内省では「自身への問いかけ」を行う必要があります。質の高い内省を実現させるためには、クリエイティブな問いかけを自分自身に行うことが重要なのです。スムーズに質問を投げかけられるよう、リストアップしておくと良いでしょう。具体的には、「自分が仕事で誇れること」「変わりたいところ」などのポイントをじっくりと考えてみることが重要です。また、人間関係を修復するために行うことが1つだけあるとしたら何か、というように自身の考え方について深く観察してみることもおすすめです。過去の経験から何を学びどうなりたいのか、自身に問いかけてみることで、新たな気付きを得られるでしょう。
なお、問いかけをするときはただ考えるだけではなく、「紙に書き出す」ことも重要です。文字に書き出して可視化することで、考えがより明確になります。その結果、今後の改善点を洗い出しやすくなるのです。

効果的な内省を行うポイント

内省を行う際は、いくつかのポイントがあります。まずは「俯瞰的な視点を持つ」ことです。自身の行動や現在の状況について考えをまとめるとき、感情を切り分けて俯瞰的に考えることが大切です。あくまでも事実に注目し、起きたことや考え、感じたことを表出させましょう。また、自分はどのような物事に「意義」を感じるかについて、内省を行うことが重要です。心が弾む出来事への理解は、本来の自分自身に近付くために欠かせないものです。それは同時に、社会からどのような役割を求められているのかを探すための手がかりになります。意義を探ることで、あるべき自分に近づけるでしょう。
それ以外にも、「組織における使命と自分のやりたいこと」をリンクさせることが肝要です。自分が本当にやりたいことは、そのぶん内省もしっかりと取り組みやすい傾向にあります。使命とやりたいことのすり合わせによって、より効果的な内省を行えます。ただし、個人と組織の使命は必ずしも一致するとは限りません。使命が重なることはあくまでも理想として捉え、「固執しない」ように心がけるのが肝心です。変えるべきポイントはきちんと改善を行いつつ、柔軟性を持って内省に取り組み、成長することを意識しましょう。

内省を行う注意点

内省を行う際の注意点には、以下のようなものがあります。まず、内省は「完璧主義にならない」ように意識することが大切です。内省はこだわりすぎると柔軟性が失われてしまう原因になり得ます。その結果、完璧を求めすぎて一人で悩んでしまうおそれがあるため要注意です。こだわりは持ちすぎず、適度に周りの意見も取り入れながら内省を行うことがおすすめです。また、内省を行ったあとは「ポジティブな方向につなげる」必要があります。内省は事実に直面して気持ちが落ち込んでしまう人も少なくありません。しかし、ネガティブになったままの状態で内省を終えると、後悔だけが残ってしまいます。これでは自身の成長につなげられません。事実を受け入れ、前向きな行動や気持ちにつなげていくことを意識しましょう。
それに加えて、「広い視野を持つ」こともポイントとして挙げられます。経験や知識が少ない場合、どうしても狭い視野で内省を行いがちです。すると、間違いに気づけなかったり、自己正当化をしてしまったりする可能性があります。内省は広い視野と柔軟性を持って取り組むことが、成長のためのポイントとなります。視野を広げるためにも、自分だけではなく第三者の力を借りることがおすすめです。周りの人の事例を参考にしたり、上司や先輩からのアドバイスを受けたりすると、より効果的に内省を行えるでしょう。

楽しく自発的な内省をして成長しよう

内省はきちんとやり方を確認したうえで行うことが肝心です。また、実施するときはより効果的に行うためのコツや、注意点に意識を向けるようにしましょう。自身や組織への理解を深めておき、日頃からきちんと内省を行うようにすれば、ビジネスパーソンとしての成長が見込めます。また、内省は周りの人と協力することで視野が広がり、より効果を得やすくなります。周囲と協力しつつ、楽しく自発的に内省を行いましょう。

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