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2020.7.31

「複業は、自分の人生のハンドルを自分で握ること」 西村創一朗が見据える10年後の未来

3児の父、経営者、HRマーケター。複業を社会にインストールする活動を精力的に続けながら、自身もオリジナルの働き方を実践する西村創一朗さん。「働き方」を人生のテーマに置いた原体験と、10年後に見据える未来についてのお話を伺いました。

西村創一朗にしむら そういちろう

複業研究家/HRマーケター。 

プロフィール:
2011年に株式会社リクルートキャリアに入社後、複業で「二兎を追って二兎を得られる世の中を創る」をミッションに株式会社HARES(ヘアーズ)を創業。しばらくは会社員兼経営者として活動後、2017年に独立。19歳で学生結婚し、現在3児(12歳/8歳/4歳)の父。NPO法人ファザーリング・ジャパンの最年少理事も務める。著書に『複業の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)がある。

-西村さんのお仕事について教えていただけますか?

西村:僕の仕事は大きく分けて3つあります。1つ目が複業研究家のお仕事。企業さんが複業を解禁するためのコンサルティング業務をはじめとし、マッチングサービスのアドバイザーから個人向けセミナーの登壇まで幅広く複業支援を行っています。2つ目がHRマーケターのお仕事。採用支援やオンボーディングから、エンプロイーサクセスのようにインナーの領域まで、マーケティングの思考をHR分野にいかにインストールしていくかを考えています。人事コンサルとか採用コンサルとなどといえるでしょうか。残る一つが、コミュニティマーケティング。自社で運営しているものから企業のマーケティング、ブランディングを目的としたコミュニティまで、様々なコミュニティをアドバイザーとして支援しています。

公務員になりたかった

-現在のように「働き方」や「働くこと」に関連したお仕事に携わるようになったきっかけを教えてください

西村:遡ると、高校生くらいの頃から将来は公務員になりたいと思っていて。小6の時に父親のDVが原因で両親が離婚して、中学の頃は自暴自棄で不登校だったのでそんな風には考えていなかったんですが、中3の冬に高校に行くと決めてから、考え方がガラッと変わりました。中1から高3まで生活保護を受けて、税金のおかげ、世の中のおかげで生きてこれたという思いがあったので、「これからの自分の人生は、社会へ恩返しするために使いたい」と。
ただ、当時の視野は狭くて、世の中に貢献する=公務員だと考えていたので、大学は法学部を、ゼミは公務員を多く輩出しているところを選びました。

大学1年の時に子供ができて学生結婚したんです。大学をやめて働くつもりだったんですが、周囲の協力もあって通い続けられることになって。その恩に報いるためにもいい就職をするしかないと思ってましたね。当時は公務員志望だったので、業界を知るために公務員の方へのOBOG訪問を10人以上にしたところ、公務員になるのはなんか違うぞ…となってしまって。
「なぜ公務員になったんですか」と僕がキラキラした目で聞くと、みんな「安定してるからね」って言うんです。当時の僕は、世の中に貢献するために公務員になりたいと思っていたので、自分の安定を最優先にして仕事を選ぶ人とは働けないなと思いました。
もちろん、社会に出て志の高い公務員の方々にたくさん出会うことで僕の公務員像はアップデートされたんですが、当時はなんか違うなとギャップを感じました。

二兎を追う人々との出会い

西村:そうやって、将来の道を模索していく中でソーシャルビジネスという概念に出会いました。当時、マイクロファイナンスと呼ばれる分野で、少額でお金を貸して利子もほぼつけないグラミン銀行というビジネスを作った人が、ノーベル平和賞を受賞して話題になってて。それまで僕は、社会貢献=公務員だと思っていたけど、ビジネスの力でも社会は変えられるんだということに気付かされました。
そんな風にアンテナが広がってきた時期に、「父親であることを楽しもう」のコンセプトで活動しているNPO「ファザーリングジャパン」の代表インタビューを見て、ビビッときたんです。その日の夜にインターネットで代表のブログにたどり着いて、そこに書いてあったアドレスに「インターンさせてください」とメールを送りました。それが、大学2年生の後期の試験が終わった翌週くらいのことでしょうか。

そこからファザーリングジャパンの活動を通して、本当にたくさんの人に出会って様々な考え方に触れました。大手企業で役職に就きながら理事をこなす人や、公認会計士として働きながら活動に参加する人…
仕事に前向きに取り組みながら、父親であることにも全力で向き合って楽しんでいる人々に出会って、この人たちは二兎を追って二兎を得てるなと思ったんです。そして、自分もこういうパパになりたいとシンプルに思えた。仕事と子育ての両方に前向きに取り組むこともそうですし、会社と家の往復だけのワンウェイな生活じゃなくて社会の中に「会社でも自宅でもない第3の居場所」を持ってる人ってすごくかっこいいじゃないですか。

ただ、子育てに意欲的な男性が増えていくのを感じる一方で、子供の生まれた男性に対して「残業して稼がないとな」みたいなアドバイスが悪気なく降ってくる、育休なんて想定もされてないといった現実の社会があって。
理想と現実の板挟みに苦しむパパたちをたくさん見て、僕は「世の中の働き方を変える」ことで素敵な世の中を子供達の世代にプレゼントしたいと思うようになりました。
僕が「働き方」を人生のテーマに置いた原体験はここにあると思います。

 

新卒でリクルートキャリアへ

西村:日本の働き方を変えるようなビジネスを作りたい、作れるような力を身につけたいと思い、新卒でリクルートキャリア(当時はリクルートエージェント)に入りました。初めは中途採用領域の人材紹介営業として、インターネット業界のクライアントの採用支援をしてたんですね。今でも、当時のお客さんとご飯に行ったり、連絡をいただいて採用のお手伝いをしたり。

振り返ってみるとかけがえのない営業時代の3年間だったと思いますが、当時は、自分の仕事が「日本人の働き方を変える事業を自ら作り出す」という学生時代に掲げていた目標にちゃんとつながっているんだろうかと、モヤモヤや葛藤を常に抱えていました

ただ、そんな僕を奮い立たせてくれた力愛不二という言葉があるんです。「愛なき力は暴力であり力無き愛は無力である」という意味なんですが、これを当時の僕で置き換えてみると、「世の中の働き方を変える事業を作りたい」思いは力愛不二でいうと愛なんですよね。ただ、思いだけで世の中は変えられない。思いだけでは無力なんです。だから、僕はまず愛を形にできるような力を身につけけなきゃいけない。そのための営業の3年間にしよう、と気持ちを切り替えたら、成果も上がるようになりました。
なんでこんなことやらなきゃいけないんだろうって疑問に持ちながら働くことと、自分なりの意味づけをして目の前の仕事に取り組むのでは、パフォーマンスも変わりますよね。

タレントを可視化する手段としての複業

-西村さんの思う良い会社ってどんなものでしょうか?

西村:大前提として、「ビジネスモデルが秀逸である」こと。ビジネスモデルが秀逸で高利益率で競合優位性の高い商品を持っていると、ファシリティやオフィス環境やカルチャーに投資ができる。鶏が先か卵が先かみたいな話になってしまいますが、収益性の高いビジネスを生む組織作りには、会社のカルチャーが大きく関わってきます。
どんなカルチャーが良いかは会社の数だけ最適なものがありますが、全ての会社に共通して大切なのが、「適材適所が実現されていること」。そのためには、一人一人の社員が持っているタレント・才能を可視化することが必要ですが、複業はタレントを可視化する手段としても有効だと思っています。「社外で実はこんなことやってるよ」っていうのが、人に何かを任せる上で重要なフックになっていることは多いですし、社外の繋がりが思わぬタイミングでプラスに働くことは良くありますよね。そんな時、複業をやっている人とやっていない人とではネットワークの広がりが全然違います。
最近では新型コロナウイルスの影響もあって働き方がより柔軟に、多様になってきていますが、リモートワークやフレックスタイムの導入、複業の解禁といったある種の自由には当然責任が伴います。
「パフォーマンスを最大化する責任をはたしている人に自由が与えられている」自由と責任の緊張関係を保てていることは、良い会社に共通する条件ではないでしょうか。

複業を始めたい人の最初のステップ

-複業に興味があってもなかなか始められないという人も多いと思います。

西村:複業を始める前に、そもそもの目的を言語化することが大事だと思っています。単にお金を得たいのか、本業では得られないスキルや経験を得たいのか、もしくは本業で培ったスキルが社外で通用するのかを力試ししたいのか、あるいは社外での繋がりや友達が欲しいのか。
僕は複業を推奨する立場にいますが、全員が複業すべきと思っていなくて。複業でやりたいことが思いつかないなら、まずは今のお仕事を頑張って実績を出して、「ぜひあなたに仕事をお願いしたいです」って言われるくらいの力をつけるのもアリかもしれない。そこも含めて、複業をやる目的を言語化するのはすごく大事です。
もう一つ重要なのが、自分がやりたいこと・できることを言語化すること。本業を通じて培ったスキルでもいいし、好きこそ物の上手なれで極めたことでもいい。自分ができることをまずは書き出してみる、これがまずはやるべきことですかね。

自分の人生のハンドルを握る

-複業は働きがいに対してどんな風に繋がっていると思いますか?

西村:今の日本では、働きがいを感じている人が全体の6%しかいないと言われています。ブラック上司によるパワハラだとか、長時間労働で過労死なんてニュースも珍しくありません。そんな社会に自分の子供を送り出すのはすごい嫌だなと思うんです。
だから、僕の長男が新社会人として働き始めるであろう2030年には、過労死や過労自殺のない、多くの人が働きがいを持って働ける社会にすることが父親の義務だと考えていて。2030年までに日本のエンプロイーエンゲージメントを世界トップ5までに引き上げることを一つの壮大なビジョンとして掲げています。

複業をすることって自分の人生のハンドルを自分で握ることだと思うんです。誰かに言われたことをやるだけの受け身な人生じゃなくて、自分で決めて自分がやる、するもやめるも自分。そういう考え方の人が増えれば、日本社会全体のエンゲージメントは上がっていくと思います。

自分で自分をいいねと思うために

-西村さんの話を聞いていると、全ての行動の理由が「誰かのため」「社会のため」にあると感じます

西村:僕は、そんなに高尚な人間じゃなくて欲丸出しの人間なんです。
ただ、自分で自分のことを認められる時、いいねと思える時って、誰かの役に立ててる時だなと思ってて。その誰かは、目の前にいる直接的な誰かのこともあれば、今目の前にいるわけじゃないまだ見ぬ誰か、社会とか未来の子供達かもしれない。自分の活動が、「子供たちが大人になった10年後の未来に繋がっている」と思えることが、自分自身の原動力になるし、そういう活動を見て、応援し、背中を押してくれる人がいつの間にか増えていく。
結局は、誰かのために頑張ることが自分のためになっていると思うんです。前提として、世の中からギブし続けてもらって今の僕があると思っているので、この恩を社会に対して返さないことには気が済まないみたいなところもあるかもしれないですね。

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