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2024.3.27

介護施設の人員配置基準とは?施設の種類や職種ごとの配置ルールを解説

介護施設では、事業所の規模や入居者の人数に応じて決められた人員を適切に配置することが義務付けられています。スタッフが退職した場合には配置を変更するなどの対応が必要なため、介護事業に関わる人事・労務担当者は人員配置基準を正しく理解することが大切です。

本記事では、介護施設の人員配置基準について、そもそも人員配置基準とはどのような基準なのか、計算方法や法的リスクまで解説します。

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介護施設の人員配置基準とは?

介護施設の人員配置基準とは、介護施設の利用者数に対して配置すべきスタッフの人数を定めたものです。いわゆる介護施設での人員体制を指します。なぜ人員配置基準が定められているのかというと、介護施設で品質の高い介護サービスを提供するためには、必要なスキルを持った人材が一定数必要だからです。
この人員配置基準は各施設が独自に設定するものではなく、厚生労働省が定めており、基準を順守しなければなりません。また、基準は介護施設の種類や規模によって異なります。業務上のトラブルやミスを防ぐためにも、自施設の適切な配置基準は必ず確認しましょう。

介護施設における職種と業務内容

介護施設での「人員」は、介護職員や看護職員、ケアマネージャーなど介護に関わる人を指します。この「人員」には次のような職種があります。

職種主な業務内容
管理者・施設長従業員の管理、利用の申込みに係る調整、業務の実施状況の把握など人員の管理全般を行う
介護職員食事や排せつ、入浴、掃除など、生活全般のサポートする
看護職員利用者の健康管理などを行う
生活相談員利用者や利用者の家族からの相談や医療機関との連絡調整などを行う
機能訓練指導員利用者のリハビリを担当する
ケアマネジャー利用者の介護ケアプランを作成する

後半の章で説明しますが、医療が必要な要介護者が入居する施設(主に公的な施設)では医師や薬剤師を配置する必要があるなど、施設の種類により上記に記載した職種以外の人員が必要な場合があることを覚えておきましょう。

介護職員の配置義務「3対1」

介護保険法に基づき、介護施設は入居定員に対して職員配置数の必須基準が国から決められています。多くの施設では、入居者3人に介護職員もしくは看護職員が1人常勤する、「3対1」の比率になっています。注意したいのは、常駐ではなく、「常勤」という点です。入居者3人に対し、最低1人の介護職員・看護職員を配置する必要があることを意味しています。

介護事業所で働く人の平均人数を示す常勤換算とは?

介護事業所では人員配置基準に沿った配置が求められるため、働く人の人数を正確に把握する必要があります。常勤換算は、その事業所で働く平均職員数のことです。介護事業所では夜勤やパートなどさまざまな形態の働き方があるため、常勤職員1人あたりに換算し、働く人の人数を把握します。この計算方法を「常勤換算法」と言います。

【常勤換算法の基本計算式】
常勤換算=「常勤職員の人数」+(「非常勤職員の勤務時間」÷「常勤職員が勤務すべき時間」)
※常勤職員は、事業者ごと就業規則で定められた勤務時間をフルタイムで働く従業員のことを指します。

介護施設の種類ごとの人員配置基準

代表的な介護施設を例に、定められている人員配置基準を見ていきましょう。

有料老人ホーム(介護付き・住宅型)

有料老人ホームは介護付きと住宅型に分類されます。住宅型有料老人ホームは、食事、洗濯、清掃などの生活支援サービスが付いた高齢者施設です。スタッフが介護サービスを提供しない点が介護付き有料老人ホームとの違いです。住宅型有料老人ホームは、比較的元気な方が入居するため、人員配置に関する基準は特に設けていないのが一般的です。
一方、介護付き有料老人ホームは、介護を必要とする高齢者が、生活支援を受けながら居住する介護施設です「介護付き」と表示できる施設は厚生労働省が定めた「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた、介護サービスの提供基準を満たした施設のみで、介護保険法に基づいた人員配置基準が定められています。

職種人員配置基準
介護職員看護職員と合わせて要介護者3名につき1名以上
※常勤
※夜間は共同生活の住居(=ユニット)ごとに1名
看護職員入居者30名以下は1名以上(入居者50名増えるごとに1名追加)
生活相談員1名以上
機能訓練指導員1名以上
ケアマネジャー1名以上

サービスつき高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者の単身・夫婦世帯が入居できる賃貸型の住まいです。平成23年に改正された「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」により創設されました。老人福祉法に定める「①食事の提供」「②介護の提供」「③家事の供与」「④健康管理の供与」のいずれも実施していないことが、有料老人ホームとの違いです。一般型と介護型の2種類あり、いずれも介護職員の人員配置基準が定められていますが、一般型には看護職員の配置基準はありません。

職種人員配置基準
介護職員日中1名以上
看護職員日中1名以上(介護型)

ケアハウス(軽費老人ホーム)C型

ケアハウスは「軽費老人ホーム」とも呼ばれ、自宅での生活が困難な60歳以上の高齢者を対象に、自立した生活を送れるよう制度化した低所得者向けの介護施設です。ケアハウスにはA型、B型、C型とありますが、A型とB型は旧制度のものなので新設が認められておらず現在はC型が主流になっています。ケアハウスにおける人員配置基準は以下のとおりです。

職種主な業務内容
管理者・施設長1名
介護職員看護職員と併せて要支援者10名につき1名、要介護者3名につき1名
※常勤
看護職員入居者30名以下は1名以上(入居者50名増えるごとに1名追加)
※常勤
生活相談員入居者100名につき1名
計画作成者要支援者と要介護者の合計で100名につき1名
機能訓練指導員1名以上

グループホーム

グループホームは、認知症の方のみが入居する施設で、小規模人数のユニットと呼ばれる単位で生活する施設です。毎日顔馴染みの人たちと落ち着いた生活を送るためこのような施設の形式が取られています。

職種主な業務内容
管理者・施設長1ユニットにつき1名
介護職員(看護職員)要介護者3名につき1名以上
※常勤
※夜間は共同生活の住居(=ユニット)ごとに1名
計画作成者1ユニットにつき1名
※内1名以上はケアマネジャーの有資格者
代表者事業所に1名
※認知症対応型サービス事業開設者研修修了者

デイサービス(通所介護)

デイサービス(通所介護)は、要介護の高齢者が自宅にこもりきりにならないことや、孤立感の解消、心身機能の維持、家族介護の負担軽減を目的としています。利用者が介護施設へ通い、食事や入浴などの日常生活の支援を受けたり、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで受けるサービスです。

職種主な業務内容
管理者・施設長1名(常勤専従)
介護職員利用者15名につき1名以上
利用者16名以上は5名増えるごとに1名追加
看護職員1名以上
生活相談員事業所ごとに1名
機能訓練指導員1名以上

サービス提供時間に応じて、介護事業所単位ごと利用者数が15名の場合は1人以上、利用者数が15人を超す場合は「(利用者数-15)÷5+1」で算出した人数以上配置する必要があります。

訪問介護

訪問介護は、自分や家族だけで日常生活を送ることが難しくなった要介護者を支援するため、訪問介護員(ホームヘルパー)が介護者の自宅を訪問し、食事、排せつ、入浴などの介護や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活支援を行うサービスです。

職種主な業務内容
管理者1名以上
※常勤、介護職員と兼務可
介護職員(看護職員)2.5名以上
※常勤換算・サービス提供責任者を含んで良い
サービス提供責任者利用者40名につき1名以上

介護医療院

介護医療院は、2018年4月に新設された施設で、医療を必要とする要介護高齢者の長期療養をしながら生活施設としての役割も果たす公的施設です。2024年3月に廃止される介護療養型医療施設と同様で介護保険が適応されます。厚生労働省の資料では以下のように定義されています。

介護医療院とは、要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設。

参考:「介護医療院 介護保険法第8条第29項」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000672495.pdf
職種人員配置基準
医師Ⅰ型:入居者48名につき1名以上(施設で3名以上) 
Ⅱ型:入居者100名につき1名以上(施設で1以上)
薬剤師Ⅰ型:入居者150名につき1名以上
Ⅱ型:入居者300名につき1名以上
介護職員入居者6名につき1名以上
看護職員Ⅰ型:入居者5名につき1名以上
Ⅱ型:入居者6名につき1名以上
機能訓練指導員実情に応じた適当数
栄養士入所定員100名以上の場合1名以上
介護支援専門員1名以上(100名以上につき1名を標準とする)
放射線技師実情に応じた適当数

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームは、常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者に対して、生活全般の介護を提供する公的施設です。略して特養とも呼ばれています。

参考:「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について(検討の方向性)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689880.pdf

職種人員配置基準
管理者1名
※常勤
医師健康管理及び療養上の指導のための必要な数
介護職員(看護職員)入居者3名につき1名以上 
※常勤
生活相談員100名につき1名
機能訓練指導員1名以上
介護支援専門員1名以上
栄養士1名以上
※入所定員40人未満の場合、他の社会福祉施設の栄養士との連携することで効果的な運営ができ、入所者の処遇に支障がない場合は置かなくてもよい。
ユニットリーダーユニットごと1名

人員配置基準違反をしたらどうなる?

人員配置基準は介護施設において順守しなければならない重要なルールです。慢性的な人手不足に悩む介護現場において基準ギリギリで運営している施設では、スタッフの急な退職や育児・介護休業の取得などにより、基準に外れてしまうこともありえます。基準に満たない場合、事業所の指定の取り消しや効力の停止処分がされる場合があるため管理者や担当者は注意が必要です。

基本的には厳守しなければならないルールですが、経過措置や緊急事態による例外もあります。関連法の改正があった際に、旧制度から新制度への移行中や移行完了後に不都合が生じないよう、一時的に基準が緩和されることがあります。これが「経過措置」です。また、近年では新型コロナウイルスの感染拡大など、やむを得ない緊急事態が起きた時に、一時的に人員配置基準や運営基準が満たせなくなることがありました。この時には、臨時的に柔軟な対応を行うことが厚生労働省から発表されました。

介護報酬改定に関わる人員配置基準の改定の動き

介護業界の人手不足が深刻化する昨今において、人員配置基準を緩和する動きも見られます。例えば、令和6年度の介護報酬改定では、夜勤職員の人員配置について、見守り機器等を導入し試験期間を経て、安全体制・質の確保、職員の負担軽減が確認できた場合に、1日あたりの配置人員数を現行2人以上としているところ、1.6人以上(利用者等の数が40以下で、緊急時の連絡体制を常時整備している場合は1人以上)に改定することを言及しています。その他にも、デイサービスにおける機能訓練指導員の人員配置の緩和なども実施されています。少子高齢化が進む中で、介護における人員配置の見直しは今後も進んでいくと思われます。

参考:「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000267331

まとめ

介護施設では、人員配置基準を守り適切な人員を配置することが求められています。法律で定められた基準のため、条件を満たしていないと事業所指定の取り消しなど、重い処分が課される場合があります。介護事業所の管理者・担当者は自事業所の状況や法改正の動きを把握した上で適切な配置をしていきましょう。

人員配置には組織の「人材情報」と「ポジション」の把握が不可欠

介護労働安定センターの「令和2年度 介護労働実態調査」では、介護職の離職理由として「人間関係」が最も多い理由にあがっています。

参考:「介護労働安定センター 令和4年度 介護労働実態調査結果」
https://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2023r01_chousa_gaiyou_0821.pdf

人間関係に悩む職員の状態に気づき、対策をすることも介護事業所の担当者に求められることです。とはいえ、職員同士の人間関係、モチベーションなどに気を配りながら人員配置基準を満たす配置を検討するのは簡単なことではありません。ITツールを活用することで、職員のスキルを可視化し育成につなげられます。結果的に人材確保につなげることが可能です。また、職員の悩みや今後やりたいことを聞く1on1を実施するなどコミュニケーションの方法を工夫することも検討してみるといいでしょう。

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