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2020.10.12

【必見】ピグマリオン効果とは?実験例やビジネスでの活用方法を徹底解説!

心理的効果の一つとして、「ピグマリオン効果」は高い注目を集めています。特に、教育現場やビジネスシーンでは、このピグマリオン効果を活用するケースが多くなっています。ただ、心理的効果は数多くあり、ほかのものとの違いや具体的な活用方法がわからない人も多いのではないでしょうか。この記事では、ビジネスで部下や仲間の最善のパフォーマンスを引き出すための、ピグマリオン効果の概要や活用方法について紹介します。

ピグマリオン効果とは①【定義】

ピグマリオン効果とは、アメリカの教育心理学者である「ロバートロゼンタール」が1964年に提唱したものです。一般的に「教師期待効果」と呼ばれる、心理学的な効果のことをいいます。ピグマリオン効果は英語で「pygmalion effect」であり、「ローゼンタール効果」と呼ばれることもあります。
概要を簡単にまとめると、「教師の期待によって学習者の成績が向上する」というものです。人は無意識のうちに、他者から「褒められたい」「認められたい」という欲求があります。他人から期待されていることを感じるとやる気が出て、そのぶん成果を上げやすくなるのです。非常にシンプルで理解しやすい心理的効果であるため、教育現場やビジネスシーンで無意識のうちに活用されている場合も多い傾向にあります。

ピグマリオン効果とは②【由来】

さまざまなシーンで活用されているピグマリオン効果。ただ、その由来をきちんと知る人は多くありません。ピグマリオン効果の由来について、しっかりとチェックしておきましょう。ピグマリオン効果はギリシャ神話と深い関わりがあり、「ピグマリオン」はギリシャ神話に登場する王の名前が由来だといわれています。地中海の「キプロス島」の王であるピグマリオンは、彫刻家でした。彼は現実の女性に対して失望していましたが、ある日得意な彫刻で自分の理想とする女性を作ってみたのです。
完成した女性の彫刻は「ガラテア」と名付けられ、ピグマリオンはまるで本物の女性のように、大切に扱うようになりました。やがて、ピグマリオンは自分の理想であるガラテアに恋をします。ただ、ガラテアは彫刻であるため、彼の想いに応えてはくれません。ピグマリオンはかなわない恋に落ち、やつれてしまいました。すると、その姿を見た恋の女神「アフロディーテ」がガラテアに命を吹き込み、人間にしたのです。人間となったガラテアとピグマリオンは結ばれ、夫婦となり末永く暮らしたという逸話があります。この神話から名前を借り、「心から期待したことは相手も応えてくれる」という意味で、ピグマリオン効果と名付けられました。

ピグマリオン効果とは③【実験】

ピグマリオン効果が初めて確認されたのは、「ネズミを使った迷路実験」だといわれています。教師が生徒に向けて、ネズミを使って「迷路実験をするように」と指示しました。このとき、実際には教師は生徒に個体差のないネズミを渡しています。しかし、生徒にはあえて「訓練された利口なネズミ」「のろまなネズミ」というように説明して渡したのです。
この利口なネズミとのろまなネズミで迷路実験を実施したところ、実験結果に差がみられました。生徒に実験結果を提出させたところ、のろまなネズミに対し、利口なネズミのほうが良い成績だったのです。この実験ではネズミの個体差について説明した結果、生徒が「教師の期待に応えたい」と無意識に思ったことが、結果に反映されたのではないかと考えられています。つまり、ピグマリオン効果によって、教師が期待している通りの「意思決定が行われた」ということがわかったのです。

ピグマリオン効果とは④【実験】

ピグマリオン効果の実験として、もう一つ有名なものがあります。まず、成績が優秀な生徒と成績が悪い生徒を集めて、それぞれクラスを作ります。そして、クラスの担任になった教師には、その事実を隠したままあえて逆の成績を伝えました。つまり、成績が優秀な生徒を集めたクラスの担任教師には、「あなたのクラスの成績は悪い」と伝えたのです。反対に、成績が悪い生徒を集めたクラスの担任教師には「あなたのクラスの成績は良い」と伝えます。この説明を受け、成績優秀な生徒のクラスの担任教師は、生徒に対して「期待していない」という態度を取りました。反対に、成績が悪い生徒のクラスの担任教師は、成績が良いことを前提として、期待を込めて接したのです。
すると、もともと成績が優秀な生徒たちのクラスの成績は下がり、もともと成績が悪かった生徒たちのクラスの成績は向上しました。これは、生徒たちが教師の態度から期待を敏感に察知したことが、パフォーマンスに影響を与えたと考えられています。この実験結果から、「人は期待されるとその通りの結果を出しやすくなる」ことがわかりました。

ゴーレム効果との違い

心理的効果にはさまざまな種類があります。なかでも、ピグマリオン効果と対極的な心理的効果として有名なものが「ゴーレム効果」です。ゴーレム効果とは、他人から期待をされずに関わりを持つことで、パフォーマンスが下がってしまう現象を指します。パフォーマンスとは、学業やスポーツの成績、さらに作業効率などのさまざまなものを含みます。つまり、ゴーレム効果とは「相手に対する期待がないと実際にその通りになっていく」という心理的効果なのです。相手に期待するとその通りになるという意味のピグマリオン効果と、逆のものとして認識されています。
なお、ゴーレム効果は「ユダヤ教」に由来して名付けられたものだという説があります。ゴーレムとはヘブライ語で「かたちなきもの」という意味を持つ、ユダヤ教に登場する泥人形のことです。ゴーレムは呪文を唱えた人の思うままに動くものの、額に張られた護符をはがすと土に戻ってしまいます。この特徴から、ゴーレム効果と名付けられたとされています。
ゴーレム効果の例としては、会社内における上司と部下をイメージするとわかりやすいでしょう。たとえば、普段からミスの多い部下に対し、上司は「何を言っても無駄」というレッテルを貼ったとします。すると、そのような接し方をされた部下は「期待されていない」と感じ、不満を持ったりやる気が出なくなったりするのです。その結果として、部下のモチベーションが下がり、ますます上司から期待されなくなるという負の連鎖を招きやすくなります。このように、期待していないという態度で接すると、相手の成長にマイナスの影響を与えてしまうことがあるのです。

ホーソン効果との違い

ピグマリオン効果と混同されやすいものに「ホーソン効果」があります。ホーソン効果とは、他人から注目されることによってその人の期待に応えたいと思う心理的行動、またそれによって得られる好結果を指します。ホーソン効果とピグマリオン効果の大きな違いは、「何によって成果が上がるのか」という点です。ホーソン効果はいわゆる「注目・関心」によって成果が上がります。一方、ピグマリオン効果は「期待」によって成果が上がるというのが異なる点です。
ホーソン効果は、アメリカのとある工場で行われた実験から実証された心理的効果だとされています。工場では生産性向上のため、照明に関する実験を行いました。実験の内容は、照明を少しずつ明るくした場合と一定の明るさを維持した場合とでは、どちらの生産性が高いのかを調査するというものです。実験結果をみると、どちらのケースでも生産性の向上がみられ、照明の明るさは関係がないということがわかりました。これは報酬や休憩時間などの条件を変更した場合でも同じで、生産性は向上したといわれています。
この結果を踏まえて、生産性が向上したのは「注目が集まり従業員に心理的変化があったため」ということがわかりました。従業員は実験対象として「自分が選ばれた」「注目されている」という意識が強まり、個々のやる気が高まったことで、生産性向上につながったのです。このように、「注目されている」という事実によって、パフォーマンスが向上することがわかりました。

ハロー効果との違い

ピグマリオン効果と意味が似ている心理的効果に、「ハロー効果」というものがあります。ハロー効果とは、相手の一部分に対する評価を、全体への評価として錯覚してしまうことを指します。つまり、人物を評価するときに目立つ特徴に引きずられて、ほかの特徴に関する評価までもゆがんでしまうというものです。心理的効果を受けるのが「自分」なのか「相手」なのかという点が、ピグマリオン効果との違いとして挙げられます。
ハロー効果は、英語の「後光」が由来だとされています。後光とは成人・天使などの背後から差す光のことです。肩書きや見た目などの「後光」に目がくらみ、対象人物の本質・全体像が見えにくくなるという意味を込めて名付けられました。なお、ハロー効果には大きく分けて、「ポジティブなもの」と「ネガティブなもの」の2種類があります。ポジティブな効果とは、「肩書きや見た目の印象によって対象人物の評価が上がる」というものです。反対に、ネガティブな効果はその逆で、「肩書きや見た目の印象によって対象人物の評価が下がる」というものになっています。
それぞれの具体例を挙げると、ポジティブな効果は「有名企業で働いているのだから要領も良いはず」「見た目が美しいから優れた人格なのだろう」などです。反対に、ネガティブな効果としては「知名度の低い企業で働いているのだからスキルが低いはずだ」「見た目が地味だから性格も暗いのだろう」などの例が挙げられます。

ビジネスでピグマリオン効果を活かす方法!

ビジネスでピグマリオン効果を活かす方法には、さまざまなものがあります。代表的な5つの方法について見ていきましょう。1つ目は「裁量を与える」ことです。裁量を与えるといっても、現場で上司が細かく指示を出すことは避けたほうが無難です。具体的な指示を出したり細かく指導しすぎたりすると、結果として過保護になり相手の成長が妨げられてしまう原因につながります。必要な指示だけを出し、あとは相手の判断に任せることも重要です。「期待している」というメッセージを送り、相手を信じて見守るように心がけましょう。
2つ目は「期待を言葉で伝える」ことが挙げられます。期待はしているだけでは相手に伝わりません。はっきりと言葉にして相手に伝えることで、ピグマリオン効果を得やすくなります。ポイントは、ネガティブな言葉は避けて、ポジティブな言い回しを意識することです。「できなかったら声をかけて」というよりも、「あなたならできる」というように期待を込めた言葉を伝えましょう。
また、注意をするときも同様です。相手がミスをしたときに、「何度も同じことをするな」というような言い方をすると、相手の気分ややる気を損ねる原因につながります。このようなときにも、「このミスを克服できたらさらに成長できる」と伝えれば、相手の気分を損ねずに済みます。さらに、「自分は期待されている」と感じられ、注意を素直に受け止めやすくなるのです。相手の成長のためにも、期待が伝わる言葉を選びましょう。
3つ目は「スキルに合わせて達成できる挑戦を与える」ことです。課題を与えると、そのぶんステップアップにつなげられます。ただし、難しすぎる課題を与えないように注意することが肝心です。能力を見誤った課題を与えると、相手は自信をなくしてしまうおそれがあります。相手のスキルをきちんと見極めて、達成できる挑戦を与えるようにしましょう。
4つ目は「褒めてモチベーションを維持する」ことです。人は誰しも、褒められると嬉しいものです。上司から褒めてもらうと部下も期待を実感でき、モチベーションを維持しやすくなります。ただし、褒めるだけではなく必要に応じて注意することも大切です。間違っている部分はきちんと理由を説明したうえで、褒めてフォローを行いましょう。仕事でミスをした場合などは、「失敗したけど前の仕事は評価している」「次こそ成果を出せる」というように、前向きになれるフォローを行うことがおすすめです。
5つ目には「過剰な期待をかけない」ことが挙げられます。部下によっては過剰に期待すると、それが重荷になってしまうこともあります。期待を感じると「自分はそれに応えられない」と不安になったり、落ち込んでしまったりするケースがあるため要注意です。過剰な期待はしすぎないように心がけましょう。

ピグマリオン効果の注意ポイント!

ピグマリオン効果を最大限に引き出すためには、注意点を把握しておくことが大切です。特に注意したい点としては「褒めすぎない」ことが挙げられます。褒めすぎると、場合によっては現状に甘えたり、手を抜いたりするケースがあります。かえって成長の妨げになる可能性もあるため、注意しましょう。このような事態を避けるためには、「叱り」と「褒め」のバランスをキープすることが大切です。バランスをうまく維持することで、部下や仲間の能力を最大限に引き出しやすくなります。また、相手に合わせて期待値を決めることも注意すべきポイントです。相手に合った期待値の量・質を見極めることで、最大限にピグマリオン効果を活用できます。

ピグマリオン効果を活用してパフォーマンスを向上させよう!

ピグマリオン効果はポイントを意識して活用することで、パフォーマンスや能力を効果的に引き出せます。簡単かつわかりやすく効果が出て、誰でも気軽に取り入れられるハードルの低さが魅力です。また、ピグマリオン効果以外にも、さまざまな心理的効果を得られるものがあります。ピグマリオン効果やそのほかの心理的効果もあわせて活用して、仕事のパフォーマンスを向上させましょう。

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