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2020.10.2

リフレクションとは?人材育成での効果や役立つ実践方法を徹底解説!

人材育成の方法はさまざまですが、中でも有効とされるものの一つに「リフレクション」があります。これは、「気づき」を得られる振り返りを行うことにより、一つひとつの経験を大きな成長につなげる方法です。この記事では、初めにリフレクションの概要を紹介し、続いて反省との違いや、効果的な実践方法について詳しく説明します。

目次

リフレクションとは①【概要】

リフレクション(reflection)は、日本語に訳すと「反映、反響、内省、熟考」といった意味になります。人材育成に場面でのリフレクションは主に「内省」のことで、自分の日々の業務の仕方や仕事への姿勢、業務フローなどを、一度現場から離れて客観的に見つめなおすことを指します。リフレクションをすることにより、自分の仕事への理解や知見を深めることができ、よりよい仕事の仕方へとつなげることができるでしょう。リフレクションとは、失敗だけでなく成功やそこまでの過程の全てを見つめなおすことで、新たな行動へとステップアップするための未来志向の方法論なのです。

リフレクションとは②【歴史的背景】

リフレクションの概念は、もともと「デューイの実践的認識論」と「ショーンの2つのスタイルのリフレクション」に両方に由来するとされています。

リフレクションの原型・デューイの実践的認識理論

デューイの実践的認識論とは、現在のリフレクションの考え方の原型となった理論です。デューイは、経験からの学びは2種類に分けられ、1つは行き当たりばったりの「試行錯誤的なもの」、もう1つは「思考に結び付くリフレクティブなもの」であると唱えました。
そして、リフレクティブなものとは、人々の行いと結果との間に因果関係を発見しようとする努力であると考えたのです。その考え方こそが「リフレクティブ・シンキング」であり、そこから導かれる見通しをもとに改善策が生み出されると説きました。

リフレクティブな実践家とは・ショーンの2つのスタイルのリフレクション

デューイの理論を「行為の中のリフレクション」と「行為についてのリフレクション」の2つに分け、振り返りのタイミングには異なる2つのスタイルがあると提唱したのがショーンです。また、ショーンは実践的思考能力を持つ者を「リフレクティブな実践家」という人物像としました。

人材育成のリフレクションに似ている・ヘーゲルの『精神現象学』

著名な西洋哲学者の1人、ヘーゲル遺した『精神現象学』という大著があります。『精神現象学』でヘーゲルは、人々の意識は外部のさまざまな世界を旅することで多くの体験を積み上げ、最終的には自分自身に回帰すると説きました。このヘーゲルの考え方は、西洋哲学史において多大な影響を与え続けています。そして、人材育成のリフレクションは、この『精神現象学』に通ずるところがあるといわれているのです。

リフレクションとは③【反省との違い】

リフレクション(内省)は、反省とは異なるものです。リフレクションの効果を上げるためには、反省との違いを正確に押さえておく必要があります。

反省とは

まず、反省とは、誤りを正すことを主な目的とします。自分がしてしまった間違いや失敗を思い出し、なぜそうなってしまったかについて原因や理由を分析することで、さらなるミスを犯さないようにするものです。言い換えれば、反省とは自分のミスというマイナス面に焦点を当てるものとなります。

リフレクション(内省)とは

一方で、リフレクション(内省)とは、自分がした行動全体を客観的に振り返ることを意味します。リフレクションでは、失敗や成功を問わず、フラットな視点で自身の行動を振り返り、見つめることを目的とします。仕事でミスを犯さないようにするだけでなく、より一層の成果を上げるために「未来志向」で振り返ることがリフレクションの最も大きな特徴です。

リフレクションとは④【基本プロセス】

人材育成において実際にリフレクションを導入する際は、以下のプロセスで行うようにしましょう。

ステップ1:出来事を思い返す

まず、過去に起きた出来事をそのまま思い出すことから始めます。この段階では、たとえば「今日の昼頃、電車で〇〇さんに会った」というような具合で思い出していきます。

ステップ2:環境や他者について振り返る

次に、出来事の背後にあると考えられる環境要因や他者の心理について振り返ります。たとえば、「〇〇さんはどこに行くために、あの時間の電車に乗っていたのか」「前に会ったときと雰囲気が変わったように見えたのはなぜか」というように考えていきます。出来事を、そのときの環境や他者の心理に焦点を当てて振り返るのです。

ステップ3:自己についての振り返り

最後に、ステップ1と2の振り返りを通し、出来事があったときの自分自身の行動について考えます。自分はそこでどうすべきだったか、自分の言動は適切だったかという観点で振り返りましょう。たとえば、「○〇さんの服装や髪形の変化に気づき、前向きな言葉をかけるべきだったかもしれない」というように、よりよい行動を模索することが重要です。過去を振り返ろうとするとき、大抵の場合はステップ1と2で終わってしまうでしょう。しかし、そこからステップ3へと進むことで初めて出会える新たな気づきも多いものです。リフレクションの効果をアップさせるためには、ステップ3をおろそかにしないことが重要になります。

理論と手法①【経験学習モデル】

リフレクションのプロセスが理解できたら、次は、具体的な理論と手法について押さえましょう。主なものとして、まず、デービット・コルブの「経験学習モデル」があります。この理論で重要とされるのは、経験それ自体をじっくりと振り返るプロセスです。具体的には、次の4つのステップを踏むことで実践されます。

ステップ1:具体的経験

まず、自分が経験した出来事そのものを思い返します。

ステップ2:省察的観察

具体的経験を思い起こしたら、それに対し、一度客観的に振り返りながら意味付けを行います。これが、リフレクションに当たる部分です。省察的観察を行うことによって、単なる出来事が学習へとステップアップするとされています。

ステップ3:概念化

具体的経験を省察的観察で振り返ったら、「なぜそうなったのか」「そのときどうすべきだったのか」といったことを分析します。まずは、一般的な分かりやすい言葉として整理し、抽象的な概念として表現しましょう。これが「概念化」です。省察的観察をただ漠然とイメージだけで思い浮かべるのではなく、言葉で表すことが大切です。抽象概念化を行うことで得られた気付きは、今後に必要なルールやスキームとして応用することができます。よって、概念化は次なる成果に活かすためのステップとして、経験学習モデルの中心ともいえる重要な部分なのです。

ステップ4:新たな試み(能動的実践)

最後に、概念化した体験をモデルに実践をし、具体的な体験として実証することでプロセスが完成します。具体化された体験は、ステップ1の経験よりも、よりよいものとなっているはずです。そして、その体験についてさらに経験学習モデルを繰り返すことで、段階的にブラッシュアップされていくでしょう。

理論と手法②【ダブルループ学習】

ハーバード大学の研究者であるクリス・アージリスが提唱する手法が「ダブルループ学習」です。この手法は、「シングルループ学習」と「ダブルループ学習」の2つの学習法を組織の人材育成に取り入れるという考えを基礎とします。

シングルループ学習

これは、行動を振り返ることで結果との因果関係を振り返り、解決策を検討し、その過程で学びを得ることを1つのループとしてとらえる学習方法です。シングルループを繰り返すことでさらなる改善を図り、目標達成につなげることができます。

ダブルループ学習

これは、シングルループ学習をもう一歩深く分析し気づきを得る方法です。シングルループ学習を何度か繰り返しても問題解決策が見えてこない場合に、ダブルループ学習を用いると、そもそも前提とする考え方が誤っていたなどの原因に気付きやすくなります。言い換えれば、改善策だと思っている行動自体に疑問を投げかけることで、隠れた誤りを発見しようというのがダブルループ学習なのです。

理論と手法③【ジョハリの窓】

心理学者のジョセフとハリーは、「人が認知していることは4つの窓に分けられる」と説き、対話することでその窓の領域を拡張する方法を提唱しました。それが、「ジョハリの窓」です。

1:開放の窓

これは、「自分が考える自分の姿」と「他人から見える自分の姿」が一致している状態のことです。自分について、他人と同じイメージを共有できている領域が大きいほど、コミュニケーションが上手くいっていることになります。

2:盲点の窓

他人からは見えているが、自分は気付いていない自分の姿を表します。他人と同じイメージを共有できていないということなので、この領域が大きいとコミュニケーションはあまり上手くいっていないといえるでしょう。この領域を狭めるためには、他人からのアドバイスを受け入れることが大切です。

3:秘密の窓

これは、自分だけが分かっている自分の姿を表します。この領域が広いのも、他人とのコミュニケーションが上手くとれていないことを意味します。

4:未知の窓

自分も他人も誰も知らない領域を表します。未知の領域というのは、潜在的な可能性を秘めているものです。したがって、この領域を上手く表に出せれば、大きな成果を出すことにつながるでしょう。そのためには、やったことのない分野に挑戦したり、新たな出会いを経験したりすることが大切です。

人材教育でのリフレクション①【必要性】

人材教育の一環として企業でリフレクションを導入するのであれば、具体的にどのような効果があるのかを明確に押さえておくと、より導入しやすくなるでしょう。

新たな発見と気付き

リフレクションで自身の行動を客観的に振り返ることで、行為時には気づけなかった新たな方法や手段を見つけることができます。

行動の変化

リフレクションにより新たな気付きを得た後は、自身の行動自体がより良い方向に変化することを実感できるでしょう。

今後の改善策の構築

リフレクションを複数回繰り返すことで、その都度行動を客観的に振り返る習慣が身に付くようになります。そうすると、失敗か成功かを問わず、常に「次はどうすればよいか」という分析が積み重なり、新たなルールやスキームを構築することにつながるのです。

周囲に良い影響を与える

リフレクションによって常に改善策が提案されていけば、自分だけでなく周囲にも良い影響を与えることができます。自身の行動を改善することは、周りの人たちも役立つことにつながるでしょう。また、蓄積された改善策を組織内で一般化し、周囲と共有することも可能です。

人材教育でのリフレクション②【実践方法】

組織の人材育成におけるリフレクションの実践方法についてみていきましょう。基本的には、リフレクションの基礎的な理論や手段を企業の人材教育に落とし込んでいくことになります。流れとしては、まず、解決したいトピックを選びます。そのトピックを工程ごとに分け、客観的に振り返ります。その際、工程ごとに「なぜそうなったか」「どうすべきだったか」「他に何ができたか」を分析しましょう。そして、最適な方法を導き出し、次のステップに生かすのです。
リフレクションを行うにあたっては、理想と現実のギャップを明確にするのがポイントです。理想に限りなく近づくためには何をどのようにすべきか、変えるべきかといった観点から検討するようにしましょう。また、リフレクションをしながら浮かんできたことを、“KDA”「Keep(続けるべきこと)」「Discard(やめるべきこと)」「Add(新たに始めるべきこと)」のフレームに分けて整理することも役立ちます。チームで行う際は、リフレクション会議をしたり、レポートにまとめたりするのもよいでしょう。

人材教育でのリフレクション③【注意点】

リフレクションを誤った方法で行ってしまうと、適切な効果が期待できなくなります。よくありがちなのが、リフレクションと反省を混同することです。改善を意識するあまり、ミスや間違いだけに注目してしまわないようにしましょう。失敗ばかりに着目してしまうと、新たな気付きや発想を得られにくくなります。また、失敗の原因になった人をあぶり出し、反省させることを目的とするのも避けましょう。失敗した人を委縮させてしまい、自由な意見やアイデアを誕生させる機会を奪うことになります。

正しいリフレクションで効果的な人材育成を行おう!

この記事では、リフレクションについて、基本的な概念や歴史的背景、理論や実践方法について紹介しました。リフレクションは、単なる反省とは異なり、未来の成長へとつながる「気付き」を得られるかどうかの観点で行うことがポイントです。ぜひ、この記事を参考にして適切なリフレクションを実践し、よりよい結果を目指しましょう。

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