2020.05.20

自己効力感とは?4つの要因とその高め方について

自己効力感とは?4つの要因とその高め方について

「ある目標を達成できるか」「遂行できるか」について、その人が抱く自信を「自己効力感」と呼びます。自己効力感を強く持てる人材は、ビジネスシーンで積極的に動けます。また、周囲にも良い影響を与えるので、経営者や人事担当者は社員教育に生かしたいところです。この記事では、自己効力感を高めるために重要な4つの要因を説明します。読み終わった後では、自信を持って仕事に取り組める方法が分かるでしょう。

自己効力感とは何か

カナダの心理学者が提唱

英語でいうところの「Self-efficacy」を日本語訳した言葉が「自己効力感」です。もともとはカナダの心理学者、アルバート・バンデューラによって提唱された概念です。おおまかには「自分が目標を叶えるために正確な行動を選び取り実現できるだけの能力を持っていることの認知」です。簡潔にまとめれば「自信」ということになります。ただ、自信は明確な根拠がなくても強く持てているケースが珍しくありません。自己効力感は明確な根拠に裏打ちされ、自分を肯定する力だといえます。

優越感と劣等感との関係

自己効力感は優越感や劣等感といった感覚とも大きな関係があります。自己効力感が高まるにつれ、その人は優越感を強く抱けるようになるでしょう。ある分野において自分が十分な能力を有しているという認識に背中を押され、行動できるからです。一方、自己効力感が低くなれば劣等感は強くなります。ビジネスシーンでは、自己効力感を高めて適切な優越感を覚えるようになることが大事です。

提唱者のアルバート・バンデューラとは

社会学的学習理論で有名に

自己効力感の提唱者、アルバート・バンデューラはブリティッシュコロンビア大学卒業後、1964年にアイオワ大学にて博士号を取得しました。それ以降、臨床実験を重ねるなどして心理学の分野で活躍を繰り広げます。バンデューラは「社会学的学習理論」によって名を広めました。つまり、人間の成長には優れた他者を模倣することが重要だという理論を打ち立てたのです。

恐怖の克服を研究

博士が深く追求したのは、「恐怖の克服」という分野でした。博士は、強い恐怖感を克服した人間は自分自身を肯定的に捉える心理が働くようになると発見します。こうして、自己効力感の研究は進められるようになりました。そして、自己効力感が高い人は、困難な状況にあっても打破するために行動できるのだと唱えるようになります。

自己効力感のカテゴライズ

心理学的に、自己効力感は3つの種類にカテゴライズ可能です。

自己効力感1:自己統制的自己効力感とは

#自分で自分を制御する

まず、「自己統制的自己効力感」では、自分の行動をコントロールすることについて肯定感を抱けます。たとえば、「新規開拓事業を頑張る」という行動には、かなりのやる気と忍耐力が必要です。また、「重要な役割を引き受けて大きなプロジェクトを成功させる」という仕事でも、ポジションに見合っただけの振る舞いが求められます。いずれのケースでも、自分の行動を制御して成長を続けなくてはなりません。そのようなとき、自己統制が役立つのです。

#自分ならできる

自己統制的自己効力感を簡単に言い換えると「自分ならできるはず」という気持ちです。できると信じられるからこそ、失敗しても完全に心は折れません。むしろ、チャレンジ精神を高めて出直そうと考えられます。自己統制は、自己効力感の種類ではもっともスタンダードなタイプといえます。

自己効力感2:社会的自己効力感とは

#共感能力につながる

対人関係において役立つのが「社会的自己効力感」です。この感覚は乳児期や児童期の経験においてもっとも発達し、大人になってからも持続します。この自己効力感が強いと、他者に共感して寄り添うことができます。その結果、人間関係に恵まれて周囲とトラブルを起こすことなく社会の中で立ちまわれるのです。

#相手を思いやれる

たとえば、ビジネスシーンでは言葉がきついなどの理由で敬遠されている人も少なくありません。どうしてもそういったタイプと関わらなくてはならないとき、「自分なら仲良くなれるはず」とポジティブに考えられます。また、ミスをして落ち込んでいる人間がいたとして「どのような言葉をかけてほしいのだろう」と気づかえます。

自己効力感3:学業的自己効力感とは

#勉強の成果によって育まれる

これまで通ってきた学校、塾などでの達成感によって「学業的自己効力感」は育まれます。難関と呼ばれる学校に合格するなど、学習や学業で目立った成果を残した人ほど、この感覚は強まる傾向にあります。社会に出てからも常に新しいことを学んだり、身の回りのスケジュールやタスクを管理したりするときに役立つでしょう。

#学習意欲を絶やさない

ビジネスシーンでは「難しいスキル、ノウハウを一から学ぶ」ときなどに力を発揮します。また、「決められたカリキュラムに従って勉強を進めていく」ときにも学業的自己効力感は必要です。仕事をしている以上、まったく新しい分野について習得を求められることも出てきます。そのようなとき、どれだけ真剣に取り組めるかは社会人の価値となります。

自己効力感には4つの要因がある

バンデューラは自己効力感に影響する要因を4つ挙げています。それらを意識して行動すれば、自分で自己効力感を高めていくことも可能です。以下、4つの要因をそれぞれ詳しく説明していきます。

要因1:達成経験

#成功の積み重ねで自己効力感は高まる

自己効力感を高めていくうえで、もっとも大切な要因が「達成経験」です。困難な目標を達成した経験があれば、自分の能力を認知するきっかけになります。今まで「自分は能力が低い」と思い込んでいた人も、過去を振り返ることによって達成経験に思い当たることがあります。まずは自分の人生をさかのぼっていき、どのような行動がどのような結果につながったかを整理していきましょう。こうした認知の積み重ねが達成経験に変わります。

#安易な成功には要注意

注意点としては、容易な目標を数多く繰り返しても本当の意味での自己効力感にはなりにくいことです。逆に、物事を楽観的にとらえすぎる癖がつくなど、社会で苦労する原因になりがちです。努力の結果、目標達成できたような事例を思い出すようにしましょう。

要因2:社会的説得

#褒められた経験が効力感に

要約すると「褒められた経験」です。自分の能力やスキルを他者から言葉で認められたとき、人は肯定された気分になれます。「君に任せて正解だった」「君にしかできない仕事だよ」といったポジティブな言葉を何回もかけられているうち、認知が形成されて自己効力感につながっていくのです。

#批判的な言葉にも気をつけて

気をつけたいのは、社会的説得とは他者の意見に左右される点です。褒められると自己効力感が高まるかわりに、批判を受ければ一気に気持ちは落ち込んでしまいます。そして、感情を制御しにくくなっていくでしょう。あまりにも社会的説得だけを期待して自己効力感を育てようとすると、逆効果になるケースもあります。

要因3:代理体験

#さまざまな分野で行われている認知

自分の経験だけが自己効力感につながるわけではありません。他人の成功体験を目にすることで、認知が形成されることもあります。パターンは「類似性」と「優位性」の2種類です。「能力が近いはずのあの人が成功できた。それなら自分もできる」という思考が類似性による代理体験です。そして、「あの人よりも自分なら結果を残せるだろう」と考えるのが優位性による代理体験といえます。いずれのパターンも、ビジネスやスポーツ、恋愛や学業などさまざまな分野で起こっています。

#体験したのはあくまで他人

代理体験は他者に起こった出来事を自分の内面に取り込む作業なので、根拠のない自信を生みやすいのが難点です。その理屈に気づいたとき、築き上げた自己効力感を失う可能性も出てきます。自分自身でも深い経験を追求するなど、対策を立てておきましょう。

要因4:生理的感情的状態

#心身の健康が効力感を引き出す

本人の気分や体調も自己効力感に影響します。また、高揚感を抱けている際には自信を持って物事に取り組みやすくなります。たとえば、体力が有り余っているときは「何でもできる」という心理になりやすく、前向きに仕事や学習を進められるでしょう。つまり、心身の状態を整えることは自己効力感と大きく関係します。

#些細な変化で落ち込むことも

生理的感情状態は些細な変化で浮き沈みしやすいのが問題です。前日は自己効力感が高まっていた人も、寝不足や緊張、風邪などが原因でメンタルを悪化させてしまうことがありえます。急に自己効力感を落ち込ませないよう、生活習慣などを見直していくことが肝心です。

自尊心や自己肯定感との違いについて

往々にして、自尊心や自己肯定感は自己効力感と似た概念とされてきました。確かに、仕事や生活に大きく影響するメンタルの動きという部分は似ています。しかし、自尊心や自己肯定感は感情を表す言葉です。英語では「Self-esteem」と表現され、認知や判断の一種である自己効力感とは根底が違っています。混同しないように使い分けましょう。

自己効力感の重要性と高めることによるメリットとは

もしも自己効力感が高ければどうなるか

本人の自己効力感が高まれば成功に対する執着心が生まれ、困難な状況を打破するために努力ができます。また、自分の能力を冷静に見られるようになるので、成長への正しい手順を見出せます。それを日々実行に移すだけのモチベーションにもなるでしょう。

具体的な3つのメリット

まずは「挑戦心」です。ビジネスシーンでは新しいこと、成功率の低いプロジェクトを任されるケースも少なくありません。そのような仕事を振られたとき、積極的に取り組めるかは自己効力感にかかっています。次に、「立ち直りの早さ」です。失敗を必要以上に引きずらず、教訓を見出して次に生かそうとします。その結果、落ち込んでいる時間を惜しんでアクションを次々に起こしていけるのです。最後に「成長意欲の高さ」です。常に過去の自分を更新したいという意識があるので、向上心を保てます。未知の分野についても関心を持って学ぼうとします。

自己効力感を高める方法

意識をすれば、社会人になってからでも自己効力感を高めていくことは可能です。ここからは、「達成経験」「社会的説得」「代理体験」「生理的感情的状態」の4つの観点から自己効力感を構成する方法を述べていきます。

達成経験による高め方

目標は小さなものから設定する

まず「達成経験」によって自己効力感を高めていくなら、とにかく数をこなすことです。規模の大小を問わず達成経験を積み重ねていきましょう。もちろん、大きな目標を立てて達成できればそれだけ自己効力感も得られます。しかし、実力に不相応な目標へと向かっても未達成が繰り返されてしまいます。そのような状況が続くと重要な認知が形成されません。逆に、自己効力感がどんどん下がっていくことにもなりかねないのです。まずは目標達成が簡単な小さい目標を用意し、徐々に規模を大きくしていくのがポイントです。

過去の体験をリストアップ

すでに達成経験を得ているにもかかわらず、自分で気づいていないだけのこともあります。そこで、過去の経験をとりあえずリストアップしてみるのもひとつの方法です。些細に思える出来事でもいいので、とにかく思いついたものを並べていきます。その中で、自分では見えていなかった行動と結果の関係に気づくこともあります。その瞬間に認知が形成され、自己効力感が生み出されるのです。

社会的説得による高め方

他社の言葉を変換して受け入れる

本来、社会的説得は他者の評価によって認知を形成していく方法です。そのため、他者の言葉に影響されて自己効力感を下げてしまうことも少なくありません。そこで、自分に与えられた評価をポジティブに変換するよう心がけていきます。たとえば、「どうしてこんな簡単なことができないのか。他のことに集中しすぎているからじゃないか」と批判されたとします。それを「自分はダメだ」と思ってしまうと、肯定的な認知につながりません。しかし、「他の部分はできているんだ。自分は期待されているから言ってもらえるのだ」と解釈すれば、社会的説得を得ているのと同じ状態です。

できている部分に注目する

自分で自分を評価するときも、短所より長所に注目します。「自分は口下手だ。人前で上手く話せない」と考えるだけでは気分がふさぎこむばかりです。そこで、「しかし、入社当初よりはまともになってきた。この分ならまだまだ成長できるはずだ」とできていることを考えます。ネガティブな思考を頭に残さないよう努めれば、自己効力感は強まっていきます。

代理体験による高め方

結果ではなく過程を見る

基本的には他者の成功体験に注目することで認知を得られる仕組みです。ただ、成功という結果だけを追っていても健全な自己効力感は生まれません。自分の体験にあてはめて「自分にもできそう」「自分も頑張らなければ」と切実に思うには、成功の過程をしっかりと調べることです。同世代で起業に成功した人がいたのなら、年商や年収を確かめるのも大切です。しかし、本当に重要なのは起業のきっかけや事業内容、困難を克服したエピソードなどです。

身近な成功例を参考にしよう

代理体験では、つい偉人や有名人の成功例を参考にしがちです。実際、彼らの物語は興味深く、感動的ですらあります。ただ、時代や成功の規模が違いすぎると自分に同化するのが難しくなります。あるいは健全な認知が行われず、自信過剰になってしまって感情を制御しにくくなるなどのトラブルを招きかねません。代理体験を意識するなら、身近な例を探すのが得策です。同僚や友人、家族などで成功者を見つけたほうが、類似性も優位性も感じやすくなります。成功までのプロセスを詳しくさかのぼれるのも大きなメリットです。

生理的感情的状態による高め方

健康状態を保ち続ける

とにかく心身の健康を保つことが「生理的感情的状態」で自己効力感を得るための方法です。睡眠不足や不規則な食事などはもってのほかです。また、ストレスや疲労感なども放置していると深刻な症状を発症させます。まずは自分の生活リズムを見直し、乱れている部分を直していきましょう。夜更かしや過剰なジャンクフードの摂取などを控え、体調を整えていきます。簡単にできる趣味、身近な人への相談といった対処法でストレスをためないことも大事です。

生活に健康習慣を取り入れる

乱れた生活を正したところで、今度は健康習慣を取り入れていきます。筋トレやストレッチなどは毎日続けられますし、適度な疲労感を得られるので熟睡へと導いてくれます。また、ヨガも心身の健康に役立つ運動です。力も技術も要らないので、スポーツの未経験者でもすぐ始められます。ヨガにはリラックス効果もあり、穏やかな精神状態へと誘ってくれます。これらの習慣は毎日続けることが肝心です。仕事や人間関係で嫌な出来事があっても、ヨガやストレッチをすれば気持ちがリセットされるような暮らしを意識しましょう。

自己効力感を高めて達成する喜びを

「大丈夫、自分ならできる」という自分への肯定的な認知が自己効力感です。自己効力感が高い人は挑戦心にあふれ、困難を乗り越えながら成功体験を積み重ねていけます。逆に低いと、そもそも挑戦することに二の足を踏むようになります。自己効力感のあり様と伸ばし方を理解し、意識して過ごすことで人生を充実させていきましょう。

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