2020.5.20
自己効力感とは?定義や自己肯定感との違い、測定方法とその高め方について
「ある目標を達成できるか」「遂行できるか」について、その人が抱く自信を「自己効力感」と呼びます。自己効力感を強く持てる人材は、ビジネスシーンで積極的に動けます。また、周囲にも良い影響を与えるので、経営者や人事担当者は社員教育に生かしたいところです。この記事では、自己効力感の定義や測り方、自己効力感を上げるために重要な4つの要因を説明します。自己効力感について学び、自信を持って仕事に取り組みましょう。
自己効力感とは
自己効力感の測定方法
自己効力感の構成要素
自己効力感の3つのカテゴライズ(タイプ)
自己効力感には4つの要因(情報源)がある
自己効力感を高める方法
自尊心や自己肯定感との違いについて
自己効力感の重要性と高めることによるメリットとは
自己効力感が高い人と低い人の違い
自己効力感と看護の関係について
自己効力感を高めて達成する喜びを
目次
自己効力感とは
自己効力感とは、大まかには「自分が目標を叶えるために正確な行動を選び取り実現できるだけの能力を持っていることの認知」を指します。簡単に言えば、「自分ならできる」「自分ならきっとうまくいく」と思える認知状態です。イメージとしては、「自信」に近いものですが、自信は明確な根拠がなくても強く持てているケースが珍しくありません。自己効力感は明確な根拠に裏打ちされ、自分を肯定する力だといえます。英語では、「Self-efficacy」と表現されます。
自己効力感は行動変容を引き起こすための要因になりうるため、ビジネスシーンや教育、予防医学、産業といった分野で活用されています。
自己効力感の提唱者:アルバート・バンデューラ
自己効力感は、社会的認知理論(日常生活において、社会から受ける情報を人がどのように認知するかを説いた理論)の中で使用され、スタンフォード大学教授で心理学者のアルバート・バンデューラ博士によって提唱された概念です。ブリティッシュコロンビア大学卒業後、1964年にアイオワ大学にて博士号を取得しました。それ以降、臨床実験を重ねるなどして心理学の分野で活躍を繰り広げます。
バンデューラは「社会学的学習理論」によって名を広めました。つまり、人間の成長には優れた他者を模倣することが重要だという理論を打ち立てたのです。
とりわけ博士が深く追求したのは、「恐怖の克服」という分野でした。博士は、強い恐怖感を克服した人間は自分自身を肯定的に捉える心理が働くようになると発見します。こうして、自己効力感の研究は進められるようになりました。そして、自己効力感が高い人は、困難な状況にあっても打破するために行動できるのだと唱えるようになります。
優越感と劣等感との関係
自己効力感は優越感や劣等感といった感覚とも大きな関係があります。
自己効力感が高まるにつれ、その人は優越感を強く抱けるようになるでしょう。ある分野において自分が十分な能力を有しているという認識に背中を押され、行動できるからです。
一方、自己効力感が低くなれば劣等感は強くなります。ビジネスシーンでは、自己効力感を高めて適切な優越感を覚えるようになることが大事です。
自己効力感の測定方法
自己効力感の有無や程度はどのようにして測ることができるのでしょうか。個人の自己効力感を測る方法の一つ、「一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)」についてご紹介します。
一般性セルフ・エフィカシー尺度
一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)とは、アルバート・バンデューラが提唱した自己効力感を測定する尺度で、GSESは「General Self-Efficasy Scale」の略語です。自己効力感を測定する項目として、全16種類の質問に「はい」か「いいえ」で回答することで、自己効力感を測定します。点数が高ければ高いほど自己効力感が高いという判定になります。
一般性セルフ・エフィカシー尺度の特徴は、「一般性」という言葉にもあるように一般的な認知傾向を測定できること、アセスメントなどでの利用範囲が広いこと、応用範囲が広いことなどが挙げられます。ただ個人の自己効力感を測定するだけでなく、環境の整備などにも応用できることから、ビジネスの世界や教育、医療の世界でも幅広く活用されています。
日本では、1986年に坂野裕二氏、東篠光彦氏によって一般性セルフ・エフィカシー尺度が確立されました。「行動の積極性」「失敗に対する不安」「能力の社会的位置づけ」の3つのカテゴリーに属する全16種類の質問にアンケート形式で答えることで自己効力感を測定します。
自己効力感の構成要素
自己効力感は、「このようにやればできるだろう」といった行動遂行を導くための先行要因(意識的要因)があります。具体的には、「結果予期」と「効力予期」と呼ばれるものです。それぞれ見ていきましょう。
結果予期(結果期待/outcome expectancy)
結果予期とは、過去に得た知識やこれまで積み重ねてきた経験といった「過去」のデータをもとに、行動をとった際に起こりうる結果を予測し、今後の展開を推測することです。
効力予期(効力期待/efficacy expectation)
効力予期とは、結果につながる行動を実行できることを指します。結果予期は、起こりうる結果を予測することですが、効力予期は「結果に向けて何をすればよいか?」を考え、実行できると自分自身で確信することを指します。
効力予期と結果予期の高低によって、我々の行動は大きく変わります。それは、「ここまでできる」という見通しがあれば物事に積極的に取り組むことができますが、「できるかどうかわからない」という感覚に陥ると、できることでも諦めてしまいやすいからです。こういった点から、自己効力感は行動変容に大きな影響があると考えられているのです。
自己効力感の3つのカテゴライズ(タイプ)
心理学的に、自己効力感は3つの種類にカテゴライズ可能です。
自己効力感1:自己統制的自己効力感とは
#自分で自分を制御する
まず、「自己統制的自己効力感」では、自分の行動をコントロールすることについて肯定感を抱けます。
たとえば、「新規開拓事業を頑張る」という行動には、かなりのやる気と忍耐力が必要です。また、「重要な役割を引き受けて大きなプロジェクトを成功させる」という仕事でも、ポジションに見合っただけの振る舞いが求められます。
いずれのケースでも、自分の行動を制御して成長を続けなくてはなりません。そのようなとき、自己統制が役立つのです。
#自分ならできる
自己統制的自己効力感を簡単に言い換えると「自分ならできるはず」という気持ちです。できると信じられるからこそ、失敗しても完全に心は折れません。むしろ、チャレンジ精神を高めて出直そうと考えられます。自己統制は、自己効力感の種類ではもっともスタンダードなタイプといえます。
自己効力感2:社会的自己効力感とは
#共感能力につながる
対人関係において役立つのが「社会的自己効力感」です。この感覚は乳児期や児童期の経験においてもっとも発達し、大人になってからも持続します。
この自己効力感が強いと、他者に共感して寄り添うことができます。その結果、人間関係に恵まれて周囲とトラブルを起こすことなく社会の中で立ちまわれるのです。
#相手を思いやれる
たとえば、ビジネスシーンでは言葉がきついなどの理由で敬遠されている人も少なくありません。どうしてもそういったタイプと関わらなくてはならないとき、「自分なら仲良くなれるはず」とポジティブに考えられます。また、ミスをして落ち込んでいる人間がいたとして「どのような言葉をかけてほしいのだろう」と気づかえます。
自己効力感3:学業的自己効力感とは
#勉強の成果によって育まれる
これまで通ってきた学校、塾などでの達成感によって「学業的自己効力感」は育まれます。高い学力を持っていると、自己効力感が高い傾向にあり、学習、学業、自己効力感には相関関係があると言われています。いつもテストで満点を取っていた、難関と呼ばれる学校に合格するなど、学習や学業で目立った成果を残した人ほど、この感覚は強まる傾向にあります。社会に出てからも常に新しいことを学んだり、身の回りのスケジュールやタスクを管理したりするときに役立つでしょう。反対に、学習への不安が残っている場合、社会人になってからも学業的自己効力感が低く学びへの意欲が低下してしまうこともあります。
#学習意欲を絶やさない
ビジネスシーンでは「難しいスキル、ノウハウを一から学ぶ」ときなどに力を発揮します。また、「決められたカリキュラムに従って勉強を進めていく」ときにも学業的自己効力感は必要です。仕事をしている以上、まったく新しい分野について習得を求められることも出てきます。そのようなとき、どれだけ真剣に取り組めるかは社会人の価値となります。
自己効力感には4つの要因(情報源)がある
バンデューラは自己効力感に影響する要因(情報源)を4つ挙げています。それらを意識して行動すれば、自分で自己効力感を高めていくことも可能です。以下、4つの情報源をそれぞれ詳しく説明していきます。
要因1:達成経験
#成功の積み重ねで自己効力感は高まる
自己効力感を高めていくうえで、もっとも大切な要因が「達成経験」です。困難な目標を達成した経験があれば、自分の能力を認知するきっかけになります。今まで「自分は能力が低い」と思い込んでいた人も、過去を振り返ることによって達成経験に思い当たることがあります。まずは自分の人生をさかのぼっていき、どのような行動がどのような結果につながったかを整理していきましょう。こうした認知の積み重ねが達成経験に変わります。
#安易な成功には要注意
注意点としては、容易な目標を数多く繰り返しても本当の意味での自己効力感にはなりにくいことです。逆に、物事を楽観的にとらえすぎる癖がつくなど、社会で苦労する原因になりがちです。努力の結果、目標達成できたような事例を思い出すようにしましょう。
要因2:社会的説得
#褒められた経験が効力感に
要約すると「褒められた経験」です。自分の能力やスキルを他者から言葉で認められたとき、人は肯定された気分になれます。「君に任せて正解だった」「君にしかできない仕事だよ」といったポジティブな言葉を何回もかけられているうち、認知が形成されて自己効力感につながっていくのです。
#批判的な言葉にも気をつけて
気をつけたいのは、社会的説得とは他者の意見に左右される点です。褒められると自己効力感が高まるかわりに、批判を受ければ一気に気持ちは落ち込んでしまいます。そして、感情を制御しにくくなっていくでしょう。あまりにも社会的説得だけを期待して自己効力感を育てようとすると、逆効果になるケースもあります。
要因3:代理体験
#さまざまな分野で行われている認知
自分の経験だけが自己効力感につながるわけではありません。他人の成功体験を目にすることで、認知が形成されることもあります。パターンは「類似性」と「優位性」の2種類です。「能力が近いはずのあの人が成功できた。それなら自分もできる」という思考が類似性による代理体験です。そして、「あの人よりも自分なら結果を残せるだろう」と考えるのが優位性による代理体験といえます。いずれのパターンも、ビジネスやスポーツ、恋愛や学業などさまざまな分野で起こっています。
#体験したのはあくまで他人
代理体験は他者に起こった出来事を自分の内面に取り込む作業なので、根拠のない自信を生みやすいのが難点です。その理屈に気づいたとき、築き上げた自己効力感を失う可能性も出てきます。自分自身でも深い経験を追求するなど、対策を立てておきましょう。
要因4:生理的感情的状態
#心身の健康が効力感を引き出す
本人の気分や体調も自己効力感に影響します。また、高揚感を抱けている際には自信を持って物事に取り組みやすくなります。たとえば、体力が有り余っているときは「何でもできる」という心理になりやすく、前向きに仕事や学習を進められるでしょう。つまり、心身の状態を整えることは自己効力感と大きく関係します。
#些細な変化で落ち込むことも
生理的感情状態は些細な変化で浮き沈みしやすいのが問題です。前日は自己効力感が高まっていた人も、寝不足や緊張、風邪などが原因でメンタルを悪化させてしまうことがありえます。急に自己効力感を落ち込ませないよう、生活習慣などを見直していくことが肝心です。
自己効力感を高める方法
自己効力感の高めるには、先ほど述べた4つの情報源にアプローチするのが効果的です。
①「達成経験」:成功体験によって達成感を得る
②「社会的説得」:自己教示や他者からの説得的暗示
③「代理経験」:他者が課題を遂行する行為を観察する
④「生理的感情的状態」:脈拍など生理的な反応の変化を経験する
具体的な高め方をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
①達成経験による高め方
目標は小さなものから設定する
まず「達成経験」によって自己効力感を高めていくなら、とにかく数をこなすことです。規模の大小を問わず達成経験を積み重ねていきましょう。もちろん、大きな目標を立てて達成できればそれだけ自己効力感も得られます。しかし、実力に不相応な目標へと向かっても未達成が繰り返されてしまいます。そのような状況が続くと重要な認知が形成されません。逆に、自己効力感がどんどん下がっていくことにもなりかねないのです。
まずは目標達成が簡単な小さい目標を用意し、徐々に規模を大きくしていくのがポイントです。
過去の体験をリストアップ
すでに達成経験を得ているにもかかわらず、自分で気づいていないだけのこともあります。そこで、過去の経験をとりあえずリストアップしてみるのもひとつの方法です。些細に思える出来事でもいいので、とにかく思いついたものを並べていきます。その中で、自分では見えていなかった行動と結果の関係に気づくこともあります。その瞬間に認知が形成され、自己効力感が生み出されるのです。
自己効力感を高めるためには、過去や未来という時間を自分と関連づけたり、自分自身を振り返ったりする能力が必要であり、こうした能力は具体的操作期と言われる7歳〜12歳といった子ども時代に備わると考えられています。自分と時間を結びつけて考える力が高いと、自己効力感を高く保つことができるという相関関係もあります。
②社会的説得による高め方
他者の言葉を変換して受け入れる
本来、社会的説得は他者の評価によって認知を形成していく方法です。そのため、他者の言葉に影響されて自己効力感を下げてしまうことも少なくありません。
そこで、自分に与えられた評価をポジティブに変換するよう心がけていきます。たとえば、「どうしてこんな簡単なことができないのか。他のことに集中しすぎているからじゃないか」と批判されたとします。それを「自分はダメだ」と思ってしまうと、肯定的な認知につながりません。
しかし、「他の部分はできているんだ。自分は期待されているから言ってもらえるのだ」と解釈すれば、社会的説得を得ているのと同じ状態です。また、活用できるソーシャルサポートが多いと認識している人ほど、自己効力感が高い傾向にあると報告されています。
できている部分に注目する
自分で自分を評価するときも、短所より長所に注目します。「自分は口下手だ。人前で上手く話せない」と考えるだけでは気分がふさぎこむばかりです。そこで、「しかし、入社当初よりはまともになってきた。この分ならまだまだ成長できるはずだ」とできていることを考えます。ネガティブな思考を頭に残さないよう努めれば、自己効力感は強まっていきます。
③代理体験による高め方
代理体験とは、他社の行動を観察し、あたかもそれを自分がやっているようにイメージするトレーニング方法です。
結果ではなく過程を見る
基本的には他者の成功体験に注目することで認知を得られる仕組みです。ただ、成功という結果だけを追っていても健全な自己効力感は生まれません。自分の体験にあてはめて「自分にもできそう」「自分も頑張らなければ」と切実に思うには、成功の過程をしっかりと調べることです。
同世代で起業に成功した人がいたのなら、年商や年収を確かめるのも大切です。しかし、本当に重要なのは起業のきっかけや事業内容、困難を克服したエピソードなどです。
身近な成功例を参考にしよう
代理体験では、つい偉人や有名人の成功例を参考にしがちです。実際、彼らの物語は興味深く、感動的ですらあります。ただ、時代や成功の規模が違いすぎると自分に同化するのが難しくなります。あるいは健全な認知が行われず、自信過剰になってしまって感情を制御しにくくなるなどのトラブルを招きかねません。
代理体験を意識するなら、身近な例を探すのが得策です。同僚や友人、家族などで成功者を見つけたほうが、類似性も優位性も感じやすくなります。成功までのプロセスを詳しくさかのぼれるのも大きなメリットです。
④生理的感情的状態による高め方
健康状態を保ち続ける
とにかく心身の健康を保つことが「生理的感情的状態」で自己効力感を得るための方法です。睡眠不足や不規則な食事などはもってのほかです。また、ストレスや疲労感なども放置していると深刻な症状を発症させます。とにかく心身の健康を保つことが「生理的感情的状態」で自己効力感を得るための方法です。睡眠不足や不規則な食事などはもってのほかです。また、ストレスや疲労感なども放置していると深刻な症状を発症させます。健康状態と自己効力感は無関係だと思いがちですが、不健康な状態は自己効力感を低下させてしまうため注意しましょう。
まずは自分の生活リズムを見直し、乱れている部分を直していきましょう。夜更かしや過剰なジャンクフードの摂取などを控え、体調を整えていきます。簡単にできる趣味、身近な人への相談といった対処法でストレスをためないことも大事です。
生活に健康習慣を取り入れる
乱れた生活を正したところで、今度は健康習慣を取り入れていきます。筋トレやストレッチなどは毎日続けられますし、適度な疲労感を得られるので熟睡へと導いてくれます。
また、ヨガも心身の健康に役立つ運動です。力も技術も要らないので、スポーツの未経験者でもすぐ始められます。ヨガにはリラックス効果もあり、穏やかな精神状態へと誘ってくれます。
これらの習慣は毎日続けることが肝心です。仕事や人間関係で嫌な出来事があっても、ヨガやストレッチをすれば気持ちがリセットされるような暮らしを意識しましょう。
自尊心や自己肯定感との違いについて
往々にして、自尊心や自己肯定感は自己効力感と似た概念とされてきました。確かに、仕事や生活に大きく影響するメンタルの動きという部分は似ています。それぞれ違いを確認していきましょう。
自己効力感と自尊心の違い
自尊心とは、「自分を尊いを思う心」と書くように、「自分を大切にする気持ち」のことです。「自分の考えに自信を持ち、他からの干渉を排除する態度」といった意味ももち、「プライド」とも言い換えることができます。自尊心が強すぎる場合、「あの人はプライドが高い」などネガティブな意味合いで使われることもあります。
自尊心は、「自分自身・自分という存在」に対して肯定的な気持ちを持っていることを意味しますが、自己効力感は自分が持っている「目標達成力」に対して肯定的な気持ちを持っている点が異なります。
例えば、算数の計算問題を間違えてしまった場合、自尊心が低い人は「できない自分が露呈して自信がなくなる」と考えてしまいますが、自己効力感があれば「今回は間違えてしまったが、次はできるはずだからもう一回チャレンジしてみよう」と思うことができます。
自己効力感と自己肯定感の違い
自己肯定感とは、「ありのままの自分を肯定する感覚」を意味します。自尊心とも似ていますが、自己肯定感は基本的に自己評価に基づいて生まれる感情で、ありのままの自分を受け入れるというポジティブな意味合いで使われることが多いです。自己肯定感は「self-esteem」(セルフ・エスティーム)と表現することで、自尊心=プライドと区別するのが一般的です。
自己効力感と自己肯定感は、前者は目標達成力に対して自信があることを意味し、後者は自分自身に肯定的な感情を抱いている点で異なります。すなわち自己肯定感は、「できていてもできていなくてもありのままの自分を受け入れられる力」とも言い換えられるでしょう。
自己効力感の重要性と高めることによるメリットとは
もしも自己効力感が高ければどうなるか
本人の自己効力感が高まれば成功に対する執着心が生まれ、困難な状況を打破するために努力ができます。
また、自分の能力を冷静に見られるようになるので、成長への正しい手順を見出せます。それを日々実行に移すだけのモチベーションにもなるでしょう。
具体的な3つのメリット
1 挑戦心が生まれる
ビジネスシーンでは新しいこと、成功率の低いプロジェクトを任されるケースも少なくありません。そのような仕事を振られたとき、積極的に取り組めるかは自己効力感にかかっています。
2 立ち直りが早い
失敗を必要以上に引きずらず、教訓を見出して次に生かそうとします。その結果、落ち込んでいる時間を惜しんでアクションを次々に起こしていけるのです。
3 成長意欲が高くなる
常に過去の自分を更新したいという意識があるので、向上心を保てます。未知の分野についても関心を持って学ぼうとします。
自己効力感が高い人と低い人の違い
自己効力感が高い人と低い人にはどのような違いがあるでしょうか。詳しく見ていきましょう。
自己効力感が低い人
自己効力感が低い場合、「自分にできるはずがない、失敗するはずだ」と思い込んでしまい、行動意欲が低下しやすく、仮に能力を保有していたとしても十分に発揮できず、結果を出すことが難しくなります。さらに結果が振るわないことで、「やっぱり自分はできない人なんだ」と思ってしまい、自己効力感の低下に拍車がかかり、負のループに陥ってしまします。
自己効力感が高い人
自己効力感が高い場合、「自分はやればできる!」という気持ちが強いことから、失敗を恐れずに積極的に行動することができます。仮に失敗した場合でも、根底には「自分にはやり遂げられる力がある」という認知がベースにあるため、「次はどうしたらうまくいくか」を考えることができ、過度に落ち込むことを防ぐことができます。失敗も前向きに捉え、すぐに行動に移すことができるため、業務の生産性も高いケースが多いでしょう。
また、自己効力感が高いと達成感を感じやすくモチベーションを長く維持できる傾向にあります。
自己効力感と看護の関係について
バンデューラが提唱した自己効力感は、高齢化社会が直面する介護や看護の世界でも注目されています。自己効力感と介護・看護の関係について具体例を交えて解説します。
セルフケア不足看護理論(ドロセア・オレム)とは?
1959年から2001年にドロセア・オレムによって提唱されたのが、セルフケア不足看護理論です。セルフケアの段階にあるにもかかわらず、なかなかセルフケアのステップへ進むことができない患者に対して行うケアのことを意味し、リハビリテーションやプライマリケアといった場で活用されています。
例えば、すでにリハビリによってかなり症状に回復が見られている患者でも、それまで看護師から手厚いケアを受けていた場合、看護師からの補助・ケアに慣れてしまい、セルフケアを避けてしまうことがあります。そのままでは、完全回復の妨げになってしまうこともあるため、患者の自己効力感を高め、「自分でもセルフケアができるかもしれない」という感覚を生み出すのです。
看護師・看護学生自身にとっても自己効力感は大切
看護師・看護学生・介護士などは、病気を抱え、心身ともに弱っている患者に接する機会が多いことから知らず知らずのうちに影響を受け、心の問題などを抱えてしまうことがあります。自己効力感は、ビジネスの世界でも幅広く活用されています。「私は患者さんに適したケアを実施できる」という自己効力感があれば、自分の心の健康も保ちながら、仕事を円滑に進めることができるでしょう。看護の現場に携わっている方は、まず一般性セルフ・エフィカシー尺度などを使って、自分の自己効力感を測定し、低い場合はさらなる低下を防げるよう、自己効力感を高める方法を実践しましょう。
自己効力感を高めて達成する喜びを
「大丈夫、自分ならできる」という自分への肯定的な認知が自己効力感です。自己効力感が高い人は挑戦心にあふれ、困難を乗り越えながら成功体験を積み重ねていけます。逆に低いと、そもそも挑戦することに二の足を踏むようになります。 そのため、企業の人材育成の場においても、自己効力感を適切にマネジメントすることはとても重要になってきます。 自己効力感のあり様と伸ばし方を理解し、意識して人材育成を行っていきましょう。
サイダスのタレントマネジメントシステム「CYDAS PEOPLE」は人材情報を一元化でき、社員の雇用情報も管理できるシステムです。評価やキャリア支援まで一気通貫して実現できます。 また、勤怠や給与のシステムとデータ連携することで、組織の状態をダッシュボードとして俯瞰的に見ることができ、人事や経営の意思決定にも役立てられます。 組織課題に合わせたご利用ができますので、まずはお気軽にご相談ください。 |