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2020.6.3

タイムマネジメントを行い生産性を上げるコツとは

タイムマネジメントは、仕事の生産性を上げるために要求されるマネジメント手法です。もっとも、ただ漠然と「業務時間を減らそう」「時間を短縮しよう」と考えていたのでは上手くいきません。タイムマネジメントを成功させて生産性を上げるためには、コツやポイントを押さえる必要があるのです。そこで、この記事ではタイムマネジメントの考え方や方法、コツについて紹介し、疑問となりやすい点についても解説していきます。

目次

タイムマネジメントとは生産性を高めること

タイムマネジメントを上手く実践するためには、そもそも「タイムマネジメントとは何か」について具体的に押さえておくことが重要です。まず、タイムマネジメントとは、「限られた時間内で生産性を向上させるための行動をマネジメントする手法」をいいます。つまり、タイムマネジメントは、「時間の管理」ではなく「仕事をコントロールすること」なのです。タイムマネジメントという言葉を聞くと、時間をどう上手く管理するかということに意識が向きがちかもしれません。しかし、時間の使い方はあくまで一つの過程にすぎず、タイムマネジメントの最終目標は仕事のコントロールであることをきちんと理解しましょう。
「タイムマネジメントが上手くできる」というのは、つまり、「仕事をコントロールし上手に進めるスキルが高い」ということなのです。

タイムマネジメントが求められる背景

タイムマネジメントが求められるようになった背景には、2013年に政府が発表した「働き方改革」があります。働き方改革では、残業や長時間労働を減らし、労働者が精神的にも身体的にも余裕を持って働ける職場環境づくりがうたわれました。もっとも、単純に労働時間を減らすだけでは、こなすべき業務を終えることができず生産性が低下してしまいます。そこで、「単純に残業時間を減らそう」というのではなく、「時間あたりの生産性を向上させよう」という意識が高まってきたのです。
また、育児や介護をしながら働く人が増加したことから、フレキシブルな働き方の導入が求められるようになりました。以上のことから、企業や個人におけるタイムマネジメントの重要性が高まっているのです。

タイムマネジメントによる生産性向上のパターン

ひとくちに「タイムマネジメントによる生産性の向上」といっても、具体的にはいくつかのパターンがあります。元マッキンゼー・アンド・カンパニー人材育成マネジャーの伊賀泰代氏によれば、生産性向上パターンは「生産性=成果÷投入時間」の方程式を当てはめることで分析できるといいます。

タイムマネジメントによる生産性向上のパターン1

上記の方程式における「投入時間」を変化させないパターンです。業務に費やせる時間を変えられないのであれば、「業務の効率化」や「機械化」、「従業員のスキルアップ」を図ることで、成果物の総量を増やしたり質を向上させたりすることに注力します。そうすることで、生産性の向上につなげるのです。

タイムマネジメントによる生産性向上のパターン2

成果物の総量を変えずに投入時間を減らすパターンです。業務に費やす時間を減らすのであれば、「業務の効率化」「機械化」や「従業員のスキルアップ」などのマネジメントが最優先事項であり、不可欠になります。

タイムマネジメントによる生産性向上のパターン3

投入時間と成果物の総量を共に大幅に増やすパターンです。この場合は、成果に結びつきやすい業務を特定し、それに費やす時間のみを増加させます。こうすることで、成果物の総量が大幅にアップしやすくなり、生産性の向上につながるのです。

タイムマネジメントによる生産性向上のパターン4

投入時間と成果物の総量を減らすことで時間を余らせるパターンです。余った時間を成果の出やすい業務に回すことで、企業全体の生産性を大きく向上させることができます。”

タイムマネジメントを行うメリット

タイムマネジメントを上手く活用するためには、メリットを押さえることも大切です。

タイムマネジメントを行うメリット1

タイムマネジメントが上手く実践できると、成功体験を積んだ社員が「自己効力感」を持つことにつながります。自己効力感とは、「『自分は特定の状況において必要な行動を上手く実施できる』というように自分の可能性を認知していること」です。タイムマネジメントによる成功体験が続けば、社員の「やる気に」につながり、もっと積極的に業務をこなそうとする意欲が湧くため、より生産性向上につなげることができます。

タイムマネジメントを行うメリット2

社員の「ワークエンゲージメント」が高まるので、業務に没頭できる環境を整えることが期待できます。ワークエンゲージメントとは、「仕事に対して前向きで充実した心理状態にあること」です。タイムマネジメントで成功したことが充実感につながり、社員がさらに業務に専念したいと思える環境作りが期待できます。”

タスクの性質

タイムマネジメントでコントロールすべきタスクは、処理の仕方や時間の使い方によって、以下の4つの性質に分けられます。

考える仕事

企画立案書や提案書といった資料作成などは、しっかり頭を使って考えなければならない仕事です。このような仕事は、「集中すること」が重要であり、自分の集中力を上手くコントロールしながら業務にあたることで、短い時間で高い成果を得ることができます。「午前中がいちばん集中できる」など、自分が集中力を高められるタイミングを把握し、コントロールすることが大切です。

作業を連続してこなす仕事

電話やメール、見積書作成、資料ファイリング、会議の準備などの事務処理仕事は、手を動かしさえすれば次々と終えられる仕事です。このような仕事は、「準備→仕事→準備→仕事」の順で処理されていきます。よって、最初にまとめて準備時間をとり、それから一気に連続処理すれば短時間で終えることが可能です。

完全に時間を拘束される仕事

会議や商談などは、自分だけで完結できるものではなく、参加者ありきの業務です。自分の都合で会議の時間や場所を変更するなどということは、相手に対し礼儀を欠くものであり、タイムマネジメント以前の問題です。相手に時間を占有される仕事の場合で、どうしてもタイムマネジメントをしたいのであれば、相手を上手くコントロールすることで拘束時間を減らす必要があります。

限られた時間であれば自由に使える仕事

取引先までの移動または出張などは全てが自由時間というわけではありませんが、「業務について考察する」「パソコンやスマホなどで情報収集する」など限られたことなら可能でしょう。このタイプの仕事は、自分の工夫次第で時間を有効に使うことができます。

タイムマネジメントの方法

タイムマネジメントの具体的な手法と手順は、主に以下のとおりとなります。もっとも、以下の方法はあくまで参考例なので、全てこのとおりに従わなければならないというものではありません。必要であれば特定の手順を入れ替えたり、または省いたりすることも考えられるでしょう。また、業務を進めるに際して、より生産性を向上できそうなやり方があればそれを取り入れても構いません。タイムマネジメントの実践経験を積んで慣れてきたら、自身に合った手順を作成するのもよいでしょう。

1.タスクの洗い出し

必要なタスクを整理するにあたっては、あらゆる角度から意見を出し合いタスクを洗い出す必要があります。ロジックツリーやブレインストーミングといった手法が有効でしょう。

2.タスクを4つに分類する

タスクの洗い出しが終わったら、「アイゼンハワーマトリクス」を用いて、「第1の領域 緊急度・重要度とも高い業務」「第2の領域 緊急度は低いが重要度は高い業務」「第3の領域 緊急度は高いが重要度は低い業務」「第4の領域 緊急度・重要度ともに低い業務」の4つにタスクを分類します。そして、第1>第2>第3>第4の順で優先度を整理しましょう。

3.「フィジビリティスタディ」による優先順位の決定

アイゼンハワーマトリクスでタスクごとの優先順位が判断できない場合には、フィジビリティスタディにより、プロジェクトの実行可能性や採算性、市場動向、財務状況などの調査をします。その結果をもって、タスクの優先度を決めていきましょう。

4.「SMARTの法則」で具体的な目標を決定する

SMARTの法則では、次の5つの因子を総合的に勘案することでタスクの具体的な目標や締め切りを決めていきます。5つの因子とは、「Specific(明確性)」「Measurable(計量性)」「Assignable(割当設定)」「Realistic(実現可能性)」「Time-related(期限設定)」のことです。

5.「HIROEN」のフレームワークで所要時間を決定する

HIROENのフレームワークにより、タスクを「Hear(聞く)」「Inform(知らせる)」「Request(頼む)」「Operate(作業する)」「Examine(調査・検討する)」「Negotiate(交渉する)」の6つに分類し、各タスクにかかる時間を算出します。

6.実行に移す

上記1~5までの手法で整理したタスクとスケジュールをもとに、実際に行動に移し、PDCAサイクルを回していきましょう。

タイムマネジメントのコツ6選

タイムマネジメントは、ただやみくもに実践しようとしても上手くいきません。そこで、タイムマネジメントを成功に導くためのコツを6つ紹介します。

1.優先順位の高い業務に時間を割く

各業務を優先度順に整理し、順位の高い業務から時間を使っていくことが、短い時間で質の高い成果を生み出すコツです。

2.具体的な目標を設定して業務に取り組む

ある業務について、単に「終了する」「完成させる」ことだけを目標に掲げるだけでは、漠然としすぎているためモチベーションを保ちにくくなります。そこで、成果物を完成させるために「何を」「いつまでに」「どこまでやるか」といった具体的な項目についても目標設定をしましょう。「完成」というゴールまでに細かいゴールを設定しておくことで、その都度成果を感じられ、最後までモチベーションを保ちやすくなります。

3.目標に対する行動計画を設定し、タスクを細かく分ける

2.とも関連しますが、一つの業務を遂行するという大きな目標ができたら、それに対して必要なタスクを設定します。そして、そのタスクを行動タイプ別に振り分け、月単位、週単位、日単位などの時間軸に落とし込んで具体的な行動計画を立てていきましょう。

4.振り返りの時間を設ける

行動計画のとおりに業務が進まないことは多々あります。当初設定した計画どおりでは上手くいかないことが分かったら、その都度軌道修正していけばよいのです。軌道修正を的確に行うためにも、定期的に振り返りの時間を設けるようにしましょう。

5.優先順位の低い業務をまとめてこなす時間を設ける

タスクマネジメントでは、優先順位の高い業務に時間を多く割くことは言うまでもありません。もっとも、優先度の低い業務であってもいずれは終わらせる必要があります。そこで、優先順位の低い業務については間を空けて少しずつ終わらせるのではなく、まとまった時間で一気に片付けてしまいましょう。

6.自分がやる必要のない業務は人に任せる

優先度が低い業務は、あえて自分がやる必要はないのであれば他の人に任せるのも有効な手段です。その分浮いた時間を優先度の高い業務にあてることができます。

優先順位と所要時間でタスクをわける

タイムマネジメントを成功させるコツは、優先度の高い業務に時間を割くことです。各業務の優先順位を決める方法としては、To Doリストなどを使って業務を箇条書きにし、優先度と必要時間をふまえながら順位を「高・中・低」などに振り分けていきましょう。業務の重要度だけでなく、それにかけるべき所要時間も軸に考えることがポイントです。

優先順位の高い業務に時間を使う

業務は、「緊急性の高・低」および「重要性の高・低」の2つを軸として、大きく4つに分けられます。中でも最も時間を割くべきなのは「緊急性が高く」「重要性が高い」ものです。次に時間を割くべきなのは、「緊急性が低く」「重要性が高い」ものになります。ここで、多くの人は「緊急性が高く」「重要性が低い」ものこそ2番目に優先すべきではないかと思うかもしれません。しかし、タイムマネジメントで成果を出すためには「緊急性が低く」「重要性が高い」ものを優先して時間を使ったほうがよいのです。なぜならば、「緊急性が高い」業務というのは、「重要性が高い」業務の計画と準備を怠ったために発生するからです。
常に緊急性の高い業務ばかりを意識していては、重要な業務に十分な時間を割くことができず、かえって業務を増やしてしまいかねません。よって、日頃から「重要性が高い」業務に時間をかけ、緊急性のある業務の発生を抑えることで、余計な業務の手間を省くことにつながるのです。重要性が高い仕事にできるだけ時間を割くようにしましょう。

まとめて作業する時間を作る

タイムマネジメント成功のコツとして、優先度の低い業務はまとめて作業する時間をつくり、一気に処理することが挙げられます。いくら優先度が低いからといってそのまま放置してしまうと、あとであわてて処理しなければならなくなり、思いがけず余計な手間と時間がかかってしまうものです。また、毎日少しずつ処理するのもモチベーション維持の点であまり効果的ではありません。週1回程度でよいので、優先度の低い業務を処理するためのまとまった時間を設けると、バランスのとれたタイムマネジメントができるでしょう。

時間がかからない仕事はすぐにやる

優先度の低い業務の中でも、メールの返信や書類のコピーなどの作業はすぐに処理してしまいましょう。こういった作業は、あまり頭を使わず手を動かすだけですぐに片付けられるものです。しかし、簡単に片付くからといって後回しにしてしまうと、「塵も積もれば山となる」で時間のかかるタスクとなります。「簡単な作業だからいつでもできる」と後回しにせず、簡単な業務こそ先に片付けてしまいましょう。

余裕を持ったスケジュールにする

「締切をすぐ後ろに設定してタイトなスケジュールにしたほうが、モチベーションが上がりやすい」という人もいることでしょう。しかし、あまりに余裕のないスケジュールはかえって破綻しやすいものです。業務においては想定外のトラブルが発生することも多いため、調整時間も含めて余裕のあるスケジューリングを心がけましょう。先に優先度の高い業務をこなし、残りの時間を優先度の低い業務を片付ける時間に充てられるようなスケジューリングにすると上手くいきやすくなります。

人に任せる時間も考慮してスケジュールを組む

業務によっては、自分一人で完結するのではなく他の人に任せたほうがよい部分も出てきます。人に任せる必要がある場合は、依頼する業務の納期や進捗確認の時間もふまえた上でスケジュールを組んでいきましょう。一人で業務をこなす場合よりも、人に任せていく場合のほうがスケジューリングの難易度は高くなります。もっとも、スケジューリングを上手く組むことができれば、一人で取り組むよりもずっと成果を上げやすくなるでしょう。他の人に依頼することをふまえてスケジュールを組む際も、優先度の高い業務から時間を割き、残りの時間で優先度の低い業務を処理することをベースに組み立てていくことがポイントです。

タイムマネジメントで仕事の生産性を高めよう

タイムマネジメントは、基本的な考え方やコツを押さえたうえで実行すればそれまでの業務の「ムダ」をかなり削減することができます。タイムマネジメントを習得し、まずは、社員の自己効力感やワークエンゲージメントなど個人の能力を高めます。業務に取り組みやすい環境が整ったら、同時に会社の生産性向上を目指しましょう。

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