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2022.4.12

コンピテンシー評価とは?シートの書き方や例文、項目例、自己評価方法を解説

従業員の努力や成果などを評価し、昇給・昇進・賞与などに反映させる人事評価。公平に評価するため、コンピテンシー評価を導入する企業が増えています。しかし、コンピテンシー評価のことをよく知らないと、導入するべきか判断に迷うものです。

そこで今回は、コンピテンシー評価が自社に必要かどうか判断できるよう、概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。コンピテンシー評価項目の具体例や、コンピテンシー評価を導入する際のポイントや評価される側が押さえておきたい自己評価の書き方も、具体例や例文を交えながら紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

コンピテンシー評価とは?

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コンピテンシーとは、仕事で結果を出している人の行動特性のことをいいます。業務上の職務において、好成績を収めている人材には共通点があるものです。その共通点を洗い出して評価基準にし、人事評価することをコンピテンシー評価といいます。コンピテンシー評価は別名「行動評価」と呼ばれることもあり、これらの用語に違いはありません。

従来の人事評価制度といえば、「職能資格制度(能力評価)」が主流でした。キャリアを積めば能力も向上するという前提のもと作成されたので、能力や成績に関係なく、年齢や勤続年数が重視されていました。しかし、近年では成果主義が浸透したこともあり、公平性の高い人事評価制度としてコンピテンシー評価を導入する企業が増えています。

営業職を例にすると、高い成績を上げている従業員には、常に市場や競合他社の調査を行っている、プレゼンテーション能力が高いなど、何かしら特性があります。コンピテンシー評価では、その特性をロールモデル化し評価基準に定めます。これにより、努力した従業員ほど評価されるようになり、従業員のモチベーション向上につながるのです。

さらに評価基準が具体的に定められることで、他の従業員は改善すべき点や身につけるべきスキルなどを具体的に把握できるようになります。うまく運用できれば、会社全体のスキルアップにもつながるでしょう。

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コンピテンシー評価(行動評価)と業績評価の関係性

業績評価とは、特定の期間に設定した目標に対する達成度に基づいて社員を評価する人事評価基準です。コンピテンシー評価(行動評価)は行動特性を、業績評価は業績の達成度を評価する点が違います。

コンピテンシー評価では、ハイパフォーマー人材の行動特性を評価基準にしていることから、業績評価と組み合わせて活用することにより、バランスがとれたより良い人事評価制度を整える効果が期待できます。業績の達成度だけでなく、業績を達成するためのプロセスを評価することで社員の納得感が高まるでしょう。

コンピテンシー評価のメリット

コンピテンシー評価には、以下5つのメリットがあります。

【コンピテンシー評価5つのメリット】

  • 即戦力人材が効率良く育成できる
  • 目指すべき目標が明確化するため行動しやすい(モチベーション向上)
  • 人事評価に対する納得感や公平性が高まる
  • 評価者側も評価が行いやすくなる
  • 経営ビジョンを浸透できる

コンピテンシー評価を導入することで、今抱えている課題を解決できる可能性があります。それぞれ解説するので、導入を検討中の方は参考にしてみてください。

即戦力人材が効率良く育成できる

コンピテンシー評価を導入することで、現場の実態に即した評価が行えるようになるため、即戦力人材を効率良く育成することができます。

コンピテンシー評価でロールモデルになるのは、その現場で高い成果を挙げている従業員です。実際に好成績を収めている従業員の行動が評価基準になるため、現場に適した実践的な評価基準が定められます。その現場に必要なスキルが明確化されるため基準が分かりやすくなり、必要な人材を素早く育てることが可能です。

新入社員や既存社員を育成する際にも、コンピテンシー評価は役に立ちます。どのような行動・考え方をすると成果を出せるのかが、正しく明確に伝えられるからです。コンピテンシー評価を上手に人材育成に活用しましょう。

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目指すべき目標が明確化するため行動しやすい(モチベーション向上)

コンピテンシー評価を導入すると、目指すべき目標が明確になるので、方向性を間違わずに済みます。どのような行動をとるとロールモデル人材に近付けるのか、どのような考え方をすると成果をあげられるのかが把握できるので、自分で考えて行動しやすくなるのがメリットです。

加えて、改善すべき点が見えやすくなるところも魅力のひとつです。成果を上げられない原因が何なのかを知れるので、自分の行動を見直すきっかけにもなります。

人事評価に対する納得感や公平性が高まる

コンピテンシー評価は、業績や成果につながる行動特性が評価項目とされます。したがって、コンピテンシー評価を導入することで基準が明確になり、主観に左右されない公平な評価が可能になることで、納得感や公平性が高まる効果が期待できます。自分に下された評価に対しての理解が得やすく、納得感を高められるのがポイントです。

評価基準が不透明な会社は、従業員から不満や不信感を抱かれやすく、「頑張っても仕方がない」と思われることでモチベーションの低下や離職につながることもあります。コンピテンシー評価制度があると、何を基準に評価されているのかが明確であるため、評価に真摯に向き合って努力しようという気持ちにさせることが可能です。

また、何をすると評価が上がるのかも具体的に把握できるので、従業員のモチベーション向上にも効果的です。

評価者側も評価が行いやすくなる

評価される側だけでなく、評価者側の評価がやりやすくなるというのもメリットのひとつです。

コンピテンシー評価の評価基準は「行動」であり、ロールモデルとして定めた行動基準を満たしているかそうでないかで評価できるため、評価者側はあいまいな判断をすることなくスムーズな評価が可能になります。人事評価に費やす時間も削減できるはずです。

また、コンピテンシー評価は採用時にも役立ちます。自社で作成したコンピテンシーの評価項目を参考にすることで、求めている人材かどうかを判断しやすくなるのが特徴です。採用後は、その人に適した部署への配属が可能になり、離職率の低下や業務の生産性向上につなげられます。優秀人材の獲得のためにもコンピテンシー評価の導入を検討してみましょう。

経営ビジョンを浸透できる

企業内で成果をあげているハイパフォーマー人材の行動特性をコンピテンシー評価の評価項目として取り入れることで、企業に必要なスキルの向上やミッション・ビジョンの浸透につながる効果が期待できます。

コンピテンシー評価のデメリット

メリットがある反面、覚えておくべきデメリットもあります。コンピテンシー評価のデメリットは、以下の2つです。

【コンピテンシー評価のデメリット】

  • コンピテンシーを定めるのが難しい
  • 理想形にするのに時間がかかる上にアップデートも大変

コンピテンシー評価を導入してから後悔しないよう、しっかり押さえておきましょう。

コンピテンシーを定めるのが難しい

コンピテンシーを定めるまでの道のりは長く、どう設定すべきかを考えるのも難題です。コンピテンシー評価を導入するには、ロールモデルの設定やコンピテンシーの分析を必ず行わなければいけません。

成果を上げている従業員をロールモデルとして定義するだけでなく、詳細なヒアリングを行った上で、その従業員がもつ行動特性を洗い出して言語化することが必要です。不備のある定義にならないようにするためには、精度の高いヒアリング力と分かりやすく言語化するスキルが求められます。

また、コンピテンシーモデルは職種や役割によって異なるものです。そのため、全職種・全役割においてコンピテンシーを定めなければいけないので、導入するまでに手間と時間がかかります。

理想形にするのに時間がかかる上にアップデートも大変

一度コンピテンシーを定めても、それで理想形になるとは限りません。そもそも会社は、成長とともに業務内容や業務の範囲が変わるため、理想とするコンピテンシーモデルも変わります。その度に修正しなければいけないので、導入した後も試行錯誤を続けることが必要です。

コンピテンシー評価は柔軟性に乏しいところがデメリットです。評価基準を細かく設定しているため、仮に業務内容や組織図、経営体制など環境が変わったときに対応できない恐れがあります。場合によっては最初から作り直さなければいけない可能性もあるので、人事担当者の負担が増えることは否めません。

コンピテンシー評価の項目例

評価項目に設ける内容は、会社によって異なるものです。一から作り始めるのは手間や時間がかかる上、経験がなければ失敗する恐れもあります。そこで、行動項目を決めるときは、「コンピテンシーディクショナリー」をもとに作成するのがおすすめです。

コンピテンシーディクショナリーとは、コンピテンシーをモデル化するときに重要とされる考えやベースのことです。「達成とアクション」「支援と人的サービス」「インパクトと影響力」「マネジメント・コンピテンシー」「認知コンピテンシー」「個人の効果性」の6つの領域に分類されています。

コンピテンシーディクショナリーはさまざまな分野で適用できるように設計されているので、異なる職種や役割に対応しています。それぞれ詳しく解説します。

項目基準1:達成とアクション

ある目標を達成するために行ったアクションを評価するための評価項目です。

項目例

  • 実際にどのくらい成果を出しているか
  • 指示される前に自分で考えて動いているか
  • さまざまな情報源にアクセスしているか

項目基準2:支援と人的サービス

従業員や顧客に対して、最適な対応ができているかなどを評価します。他者が求めていることを察知し、適切なサポートを行えているかどうかは定量的な指標では測りにくい項目です。だからこそ、コンピテンシー評価の一項目として取り入れて見るとより良い評価につながるでしょう。

項目例

  • 相手の立場になって考えて行動できているか
  • 物事を客観的に見れているか
  • 自分の感情だけで動いていないか

項目基準3:インパクトと影響力

従業員の発言や行動が業績に与えたインパクトや影響力に関する評価項目です。例えば、ほかの従業員の悩みに耳を傾け解決を後押しした、チームの議論に貢献した、などの例が当てはまります。

項目例

  • 傾聴力
  • 議論力
  • 提案力

項目基準4:マネジメント・コンピテンシー

所属するチームをマネジメントし、目標達成に貢献したかどうかを判断する評価項目です。あくまで「コンピテンシー評価」のため、マネジメント能力そのものを評価するのではなく、マネジメントの姿勢や取り組みを評価することが大切です。

項目例

  • 部下への配慮はどうか
  • チームメンバーと積極的に関わろうとしているか

項目基準5:認知コンピテンシー

状況やタスクに対して、深い理解をしているかどうかを判断する評価項目です。相手の言動や状況を額面通りの意味として受け止めるだけでなく、さらに自分なりに詳しく分析し行動できたかどうか、専門的な知識を高めているかなどが評価されます。

項目例

  • 物事を詳しく分析し、そこから効果的な戦略を立てられるか
  • 専門性を高めて、活用できているか

項目基準6:個人の効果性

個人の効果性では、自己管理ができているか、柔軟性があるか、積極的な取り組みができているかなどを評価します。

項目例

  • さまざまな分野に積極的に挑戦し、成果を生み出しているか
  • グループや組織に対応する行動特性をもっているか
  • ストレスがかかりやすい環境でも結果を出せているか

ここまで紹介したコンピテンシー評価の項目例をまとめると以下の通りです。

コンピテンシー内容項目の具体例
達成とアクション個人の職務に対する姿勢やアクションを指す・実際にどのくらい成果を出しているか・指示される前に自分で考えて動いているか・さまざまな情報源にアクセスしているか
支援と人的サービス他の人たちのニーズに応えるための努力を指す・相手の立場になって考えて行動できているか・物事を客観的に見れているか・自分の感情だけで動いていないか
インパクトと影響力個人がもつ、他の人たちへの影響力。特定のインパクトや効果を与える願望を指す・傾聴力・議論力・提案力
マネジメント・コンピテンシーチームワークや協調を促すマネジメント力を指す・部下への配慮はどうか・チームメンバーと積極的に関わろうとしているか
認知コンピテンシー「分析的思考」「概念的思考」「技術的・専門職的・管理的専門性」の3つを指す・物事を詳しく分析し、そこから効果的な戦略を立てられるか・専門性を高めて、活用できているか
個人の効果性個人と他者を比較したときの成熟度の一部を指す・さまざまな分野に積極的に挑戦し、成果を生み出しているか・グループや組織に対応する行動特性をもっているか・ストレスがかかりやすい環境でも結果を出せているか

参照:コンピテンシー・ディクショナリー

コンピテンシー項目の具体例は下記の記事でも詳しく紹介しています。

コンピテンシー評価の導入ステップ

コンピテンシー評価を導入するにはどのような手順を踏んだら良いのでしょうか。ここでは、コンピテンシー評価の導入ステップをご紹介します。

①評価基準の検討

コンピテンシー評価の基準には、「共通基準」と「個別基準」の2種類があります。

共通基準:従業員全員に当てはまる基準
個別基準:職種や部署によって差異がある基準

部署によって、業績につながるコンピテンシーが異なる場合があります。自身の部署ではなかなか発揮しづらいコンピテンシーが評価項目になっている、といったことが起こると、人事評価への納得感を下げる要因になってしまいます。評価基準の検討は慎重に行いましょう。

②従業員への説明

コンピテンシー評価に限らず、どのような評価制度を運用するにしても、新しい評価手法を導入する場合は従業員への説明を必ず行いましょう。評価内容や導入目的、企業・従業員へのメリットについて説明しないままでは、従業員の不満や評価の形骸化を招いてしまいます。

「新しい評価制度を運用します」という告知に留まらず、疑問や不安をもつ従業員が現れた際には、一人ひとりへの説明をしっかりと行いましょう。

③ 評価者の育成

部下の評価を正しく行うためには、上司(評価者)の育成が肝心です。評価制度の目的の理解促進や、どのような評価項目で評価を行うのか、評価は何段階あるのか、など具体的な評価方法をしっかりインプットできる機会を設けましょう。

④評価の実施・見直し

評価者・被評価者が評価手法を理解し、十分に評価を実施できる段階になったら、いよいよ評価を実施します。コンピテンシー評価の場合は、「コンピテンシー評価シート」を作成することで、評価を実施するケースが多いです。コンピテンシー評価シートの書き方については、後ほど解説します。

評価の実施後、従業員へのアンケートやヒアリングを元に随時評価項目を見直すことがより良いコンピテンシー評価制度を運用するポイントです。あいまいな評価項目はなるべくなくし、評価者・被評価者双方が迷わず評価できる状態を目指しましょう。

コンピテンシー評価シートの書き方

コンピテンシー評価シートの「概要」と「記載する項目」、「運用する上での注意点」について解説します。コンピテンシー評価をより効果的なものにするため、しっかり押さえておきましょう。

コンピテンシー評価シートとは?

コンピテンシー評価シートとは、コンピテンシー評価制度を運用する際に使用される、自社に適したオリジナルのシートです。シートには、役職や等級などによって目指すべき姿や行動指針が記載されています。実際に運用する際には、数字や記号を入れて評価します。

また、シートを作成する際には、目指すべき姿や行動指針を具体的かつ分かりやすく示さなければいけません。コンピテンシー評価は上司だけでなく、従業員自らも自己評価するものです。

具体的に定められていなかったり、文面が難しくイメージがわかなかったりすると、適切な評価ができなくなります。コンピテンシー評価シートを作成する際は、行動イメージがわくように具体例などを入れておくとよいでしょう。

コンピテンシー評価シートに記載する項目

コンピテンシー評価シートに記載する項目は、主に以下の3つです。

  • 分類された評価項目
  • 各評価項目の具体的な評価軸
  • 各評価項目の尺度

公平かつ正当な人事評価を実現するためには、コンピテンシー評価シートの書き方も重要です。それぞれ具体例を挙げながら解説するので、参考にしてみてください。

分類された評価項目

「コンピテンシー評価の項目例」で紹介した6つの評価項目を参考にコンピテンシー評価の評価項目を選定しましょう。

各評価項目の具体的な評価軸

定めた各評価項目を、どのような軸で評価するのかを決めます。たとえば、上司またはチームリーダーの場合、マネジメントの項目は「目標やルール、仕事の進め方を部下に指導し、徹底させる」「経営方針や会社のビジョンなどを部下にわかりやすく落とし込んで理解させ、それに則った行動をさせる」などが評価軸になります。

営業関連の職種であれば、支援と人的サービスが重視されやすく、「相手の立場に立って話を聴く」「相手の能力や必要としているものを正確に把握して対応する」などが挙げられるでしょう。

このように、項目や基準ごとに評価軸をすべて落としこんで明確にします。評価項目の分類法には定型や決まりはないので、自社に適したオリジナルの分類法を策定することが大切です。

各評価項目の尺度

評価尺度とは、S・A・Bなどの記号や1・2・3などの数字で評価を表すもののことです。すなわち、コンピテンシーにレベル分けを設定するイメージです。評価するための「基準」と「項目」に対して、どういった尺度で評価するのか曖昧になってしまうと、正確な人事評価が実現できません。尺度を決定することは、基準と項目の設定と同じくらい重要なのです。

評価尺度には「共通基準」と「個別基準」があります。共通基準は会社全体で使用する共通の尺度であり、個別基準は個々人の目標や項目に沿って落とし込んだ尺度のことをいいます。

共通基準の場合は「評価者が期待した要求」に対して、下回った・できた・上回ったで評価します。組織に共通する基準を尺度にすることで、公平な人事評価を実現することが可能です。

また「個別基準」では、可能な限り具体的な尺度を設定することで、従業員一人ひとりが求められていることや足りない部分を自覚しやすくなります。

コンピテンシーのレベルを明文化することで、人事評価に利用しやすくなるほか、公平性の担保なども期待できます。

コンピテンシー評価を運用する上での注意点

コンピテンシー評価には、以下3つの注意点があります。

  • 成果を上げることを目的にする
  • 完璧にコンピテンシーを満たせる人はいないと認識しておく
  • 定期的に見直しや更新を行う

注意点を知っておくことで失敗を防げます。それぞれ詳しく解説するので、参考にしてみてください。

成果を上げることを目的にする

コンピテンシー評価の目的を見誤らないようにしましょう。そもそもコンピテンシー評価の目的は「成果を上げること」です。多くの従業員は、コンピテンシーモデルとして定めたものに沿って行動することが目的になってしまう傾向にあります。

あくまでもベースとなるのは、「成果を上げるためにすべき行動」なので、目的である「成果を上げること」が達成できないと意味がありません。

コンピテンシー評価を効果的なものにするためには、成果を上げることが目的であることをしっかりと理解し、ただ行動するだけにならないように注意を促す必要があります。会社としては、従業員や評価者に周知し、目的がブレないよう配慮しなければいけません。

完璧にコンピテンシーを満たせる人はいないと認識しておく

コンピテンシーを完璧に満たす人はいません。なぜならコンピテンシーとは会社にとっても理想像であり、簡単に項目を満たしたり超えられたりするものではないからです。完璧に満たすことが必要なのではなく、モデル行動を行いながら強みを伸ばして弱みを減らしていくことが重要と言えます。

また、コンピテンシー評価でモデルを定めると、会社は従業員に理想を押しつけすぎてしまう傾向がある点にも注意が必要です。これでは、従業員のモチベーションが下がり、離職する恐れもあります。あくまでも、行動基準の目安や目指すべき姿として活用することがポイントです。

さらに、コンピテンシー評価を導入すると、各従業員の弱みや強みが浮き彫りになるため、1人の従業員の弱みを他の従業員がカバーしたり、どうすれば改善できるかを考えたりすることで、チーム力が高められます。

定期的に見直しや更新を行う

コンピテンシー評価は、一度作成したら終わりではありません。市場の変化や経営体制など、環境が変われば定期的に見直しや更新が不可欠です。もし見直さずに運用してしまうと、適切でないモデルに沿って行動をしてしまうため、結果につながりません。成果が上がらないと、当然ながら運用する意味がなくなります。

コンピテンシー評価の策定や更新は大変な作業ですが、効果のあるものとして運用するためには、定期的な見直しや更新が必要です。

コンピテンシー評価における自己評価の書き方

実際に評価される側に立って考えてみると、自己評価をどのような書き方にすればよいのか迷うものです。従業員が自己評価を書くときのポイントを、運用側が理解しておくことも重要と言えます。自己評価を書く際のポイントは、以下の5つです。

【自己評価を書く際のポイント5つ】

  • 自分を客観的に見て評価をする
  • 具体的な数字を用いてプロセスや結果を書く
  • 失敗・反省・問題点も含める
  • 改善点を具体的に書く
  • 自分が考えているよりも1段階高く評価する

自分を客観的に見て評価をする

自己評価を付けるときは、過小評価や過大評価になってはいけません。まずは、自分の働きを客観的に見てどうだったのか、フラットな気持ちで振り返ってみることが重要です。

「あれだけ頑張ったのだから周りにも評価されているはず」と考えて付けた評価は、根拠がない上に評価する側とのギャップが生じる恐れがあります。「自分の努力がどれだけチームや組織に貢献したのか」「どのような影響を与え、どんな成果につながっているのか」など、客観的な事実に基づいて評価することが大切です。

具体的な数字を用いてプロセスや結果を書く

「成功した」「うまくいった」「貢献した」など、抽象的な評価の書き方では、評価する人からの納得が得られません。必ず数値を用いて、具体的に示すことが大切です。たとえ、数値化が難しい業務や職種でも、なるべく数値を用いて表現するようにしましょう。

たとえば部下の指導に関して自己評価をする際は、「部下の生産性が○%向上した」「欠勤が目立っていた部下の欠勤日数が○日に減った」といったように、数字を用いたほうが納得されやすいものです。正しい評価が付けられるので、人事評価に対して不満を抱くこともなくなるでしょう。

失敗・反省・問題点も含める

自己評価には良いところだけでなく、失敗したことや反省すべきこと、問題点も含めることが重要です。悪かったことを報告すると評価が下がってしまうと心配する人もいるかもしれませんが、ネガティブな要素も盛り込むことで、自分のことを正しく理解できていると認識してもらうことができます。その結果、より説得力のある自己評価になります。

ダメだったところを自ら振り返って反省することも、ビジネスマンとして求められる重要な要素です。自分の悪いところや課題を洗い出して受け止めるスキルがあることを、自己評価を通じてアピールできます。

改善点を具体的に書く

上で挙げた失敗や反省、問題点を書いたら、それに対する改善点を必ず書くようにするのも欠かせないポイントです。ダメだったところをどのようにして改善するのかを明記することで、より説得力が増します。また、改善しようとする姿勢を見せられるので、意欲の高さをアピールし、高評価につなげられるはずです。

改善点を書くときは、抽象的ではなく具体的な行動内容にするのがポイントです。「気をつける」ではなく、何をどう気を付けるのか、そのためにできることなどを詳しく書きましょう。

自分が考えているよりも1段階高く評価する

自分が思っている評価よりも1段階高く書いておいたほうが、上司からの評価は高くなる傾向にあります。上司は自己評価で出した基準の前後で評価しがちです。

自己評価で3をつけると、上司は2〜4あたりで付けることが多いため、自分が思っているよりも低い評価を付けられる可能性が高まります。1段階上の基準にしておくことで、低く付けられるリスクを減らせるのがメリットです。

ただし、自己評価を高く付けすぎてしまうと、「自分のことをよく理解できていない」「客観的に自分を見れていない」と思われ、マイナスなイメージを与えてしまうこともあります。あくまでもプラスするのは1段階だけであり、それ以上は止めておくのが無難です。

自己評価の書き方を例文で紹介

自己評価の書き方のポイントを押さえたところで、実践に役立つ例文もチェックしておきましょう。今回は、自分に適した例文を見つけやすいよう、以下の職種別に部下と上司のケースに分けて紹介します。

  • 営業職
  • 事務職
  • 企画・マーケティング職
  • コンサルタント職
  • クリエイティブ職

入れるべき内容やポイントもあわせて紹介するので、参考にしてみてください。

例1:営業職

営業職は業務成績が数値で表れるので、他の部署に比べると比較的書きやすいという特徴があります。目標や今後の課題などは数値化し、明確なものにしましょう。

部下のケース

実績を伝えた上で、どのような取り組みを実施したのかを具体的に記します。改善点に対しては、これからの取り組みとして、自分なりに課題をあげましょう。

【例文】

今年度の売上目標100万円に対し、110万円を売り上げた。既存顧客へのアプローチを積極的に行い、確実な売上につなげられた結果だと思う。

ただし、新規顧客では20件を目標にしていたが、10件に留まった。売上目標は達成しているものの、新規顧客は達成できなかったので、B評価とする。次年度では新規顧客を確保できるよう、新規開拓に力を入れる。

上司のケース

営業職は数値化しやすいため、部下の売上や業績などは一目瞭然です。しかし、上司は結果だけでなく、他の部分にも目を向けなければいけません。その従業員が他のメンバーをどうフォローしたのか、どんな動き方をしていたのかなど、定性的な部分も評価することが重要です。

【例文】

目標達成率110%は大変素晴らしい結果である。後輩へのアドバイスも的確で、チーム全体を見れている。今後はチームリーダーとしても活躍できるだろう。しかし、新規顧客の確保については目標に達していないので、次年度では新規開拓にも力を入れてほしい。自分なりに優先順位を付けることが課題になるだろう。

例2:事務職

事務職は成果を数値化しづらく、定性的な項目が多いため、自己評価しにくい職種です。毎回同じ評価にならないよう、日常業務のなかで数値化できるものはないか探ってみましょう。

部下のケース

毎日同じ作業の繰り返しで、ほとんど変化のない事務職は自己評価しにくいものです。しかし、数値化しにくい目標でも、なるべく定量化して書くことで、自分なりに評価を付けやすくなります。

【例文】

業務日報のフォーマットを見直したことで、引継ぎの際に起こりやすいミスを減少することができた。前年度のミスは10件に対し、今年度のミスは3件。これにより、ミスを修正する手間が省け、作業効率も上がった。

しかし、発注ミスをしてしまったため、先方に迷惑をかけてしまった。今後同じミスが起きないよう、発注する際はダブルチェックを徹底する。

上司のケース

定量化しづらい目標が多い分、上司は部下をしっかりと見て、定性的な部分を評価できるようにしなければいけません。毎日同じ作業の繰り返しでも、ルーティンワークをこなすのが早くなっている、残業時間が減っているなど、部下の変化や努力に気付いてあげましょう。

【例文】

引継ぎ時に起こりやすいミスが減少したことで、他の業務に支障が出づらくなった。業務日報のフォーマットの見直しは今まで誰も提案してこなかっただけに、高く評価できる。他の業務でも見直せるところがあれば、積極的に提案してもらいたい。

発注ミスは単純なミスだっただけに、しっかり確認しておけば防げていた。ダブルチェックを導入し、今後同じミスをしないよう徹底してほしい。

例3:企画・マーケティング職

企画やマーケティング職は、仕事内容によって「評価が分かりづらいもの」と「分かりやすいもの」があります。新商品の開発や販売促進に関わるエピソードがあれば、積極的に記載するべきです。また企画が途中段階の場合は、結果を数値で表せないので、自分のポジションやどのようなことで貢献したのかを書きましょう。

部下のケース

企画やマーケティング職の業務は、データの精査やリサーチを行い、企画を作って交渉することです。コンピテンシー評価シートには、どのように動いてどんな企画を通したのかなどを書きましょう。また、プロジェクトの結果など業務のなかで数値化できるものは、それも示します。

【例文】

昨年売り出した商品の売上が伸び悩んでいたので、原因を独自に調査した結果、単に知名度の低さが原因ではないかと予測。そこで、メディアへの露出を増やすことで、商品名検索数が前年よりも30%アップした。それに伴い、売上も前年比150%を達成した。

同じように伸び悩んでいる商品が多々あるので、それぞれの原因解明と改善に力を入れたいと思う。

上司のケース

数値化できるものだけでなく、そうでない部分も見た上で評価することが重要です。たとえば、プレゼン能力やデータ分析の仕方など、定性的な部分も評価に記載するとよいでしょう。

【例文】

プロジェクトチームでは常に先頭に立ち、みんなを引っ張っている姿が見られる。行動力もあり、指示を受ける前に自分なりに課題を見つける姿勢は高く評価できる。また、調査力にも長けているので、今回のように売上が伸び悩んでいる商品の見直しにも成功したのだろう。今後もその能力を活かし、即戦力として活躍してほしい。

例4:コンサルタント職

コンサルタント職の業務は、クライアントの問題を解決することです。顧客に対して行った対応について振り返って評価しましょう。顧客に成果が出ている場合は、その旨もしっかり報告します。

部下のケース

クライアントに対してどのようなことをしたのか、抱えている問題に対してどのような解決策を提案したのかなどを具体的に記載します。

【提案】

新商品を販売するための広告プランの依頼を受けた。いくつか候補を提出したが、イメージが違うようで、決定に躊躇していた。そこで、顧客の意図や考えているアイデアを深掘りし、さらに費用の削減を提案したところ採用された。

結果的には、顧客が掲げていた目標販売数を大きく超え、今回のプロジェクトに満足してもらえた。

上司のケース

コンサルタント職もまた他職種と同様、定性的な部分も見て評価することが重要です。さらに、クライアントとの関係性に注目することもポイントになるでしょう。

【例文】

顧客が抱えている課題に気付いた上で、当初の案を改善し、プロジェクトを成功させたことについては高く評価できる。顧客の要望を真摯に受け止めようとする姿勢は、他の従業員も見習うべき見本となる。

改善すべき点として、入念にヒアリングやミーティングをしておけば、もっと早くプロジェクトを進められていたのではないかと思われる。顧客が抱える課題や要望に対して敏感になれるよう、ヒアリング力を高める必要があるだろう。

例5:クリエイティブ職

デザイナーや編集などを行うクリエイティブ職は、1人で作業して成果を出すことがほとんどです。そのため、周囲との団結力や協調性を高めるよりも、自分のスキルを上げることがとても重要です。

部下のケース

クリエイティブ職は自分のスキルを高めることが重要なので、成果に加えて自分のスキルアップのために何をしたかもアピールするとよいでしょう。意欲的に取り組む姿勢や向上心をアピールできます。

【例文】

新しいアイデアを生むために、デザインの関連書籍を毎月3冊ずつ読んでいる。幅広いジャンルに適したデザインが描けるようになり、今期のWEBサイト受注率は前年よりも10件増やすことができた。

また、納期に遅れが生じないよう、周囲のスタッフに支援してもらっている。おかげで、今期も納期遅れは0件で、計画的かつ余裕のある行動ができている。

上司のケース

部下のスキルアップに励む姿を評価するのは当然のことです。加えて、クリエイティブ職は人とのコミュニケーションの機会が減りがちなので、そんななかでどうやって人と接しているかなども見てあげるとよいでしょう。評価される側にとっては、自分では気付きにくい改善すべき点を知れるきっかけになるはずです。

【例文】

向上心が高く、仕事に対して意欲的に取り組む姿が見られる。WEB開発に向けた業務に携わっており、周りと連携を取りながら、さまざまなアイデアを出してくれる。

また納期は、今まで一度も遅れたことがない上に、余裕をもって行動できている。スケジュール管理がうまくできているところは、当たり前ではあるものの、できていない人も多いので、高く評価できるだろう。

人事評価システムならタレントマネジメントシステム「CYDAS」

コンピテンシー評価とは、人事評価制度の1つです。仕事で結果を出している人の行動特性をもとに、評価基準を定めます。評価される側としては、評価に対して納得感や公平性が高まるので、業務に対するモチベーション向上につながります。

また、評価する側にとっても、評価基準を満たしているかどうかで判断できるので、評価しやすいという点がメリットです。成果主義が浸透するなか、主観に左右されることなく公平に評価できるコンピテンシー評価を導入する会社は増えています。

しかし、コンピテンシー評価を導入したばかりの会社や検討中の人事担当者にとっては、うまく運用できるか不安になるでしょう。そこでおすすめなのが「CYDAS」です。

CYDASとは、「働く」をスムーズにするための人事評価システムツールのことです。さまざまな評価制度に対応しており、人事はもちろん現場の従業員も使いやすいコンピテンシー評価を導入することができます。

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人事評価

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