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2024.7.31

コンピテンシー評価とは?評価シートの書き方や例文、項目例、 導入ステップを解説 


こんにちは!働きがいを応援するメディア「ピポラボ」を運営するサイダス編集部です。 
今回のお題は「コンピテンシー評価」。最近では、従業員を公平に評価するために、コンピテンシー評価を導入する企業が増えています。しかし、コンピテンシー評価のことをよく知らないと、導入するべきか判断に迷うものです。 

そこで今回は、コンピテンシー評価が自社に必要かどうか判断できるよう、概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。また、コンピテンシー評価項目の具体例や、コンピテンシー評価を導入する際のポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 

コンピテンシー評価とは|定義を解説 

Competency complex like a puzzle - pictured as word Competency on a puzzle pieces to show that Competency can be difficult and needs cooperating pieces that fit together, 3d illustration

コンピテンシー評価とは、仕事において高いパフォーマンスを発揮する人材(=ハイパフォーマー)に共通する行動特性(コンピテンシー)を評価基準として行う人事評価制度のことです。コンピテンシー評価は別名「行動評価」と呼ばれることもあります。コンピテンシーについては、のちほど詳しく解説します。 

コンピテンシー評価は、従業員のスキルや知識ではなく、行動特性を評価するものであり、「どのような行動が成果に結びついているのか」「なぜその行動をとったのか」など、より具体的な行動や思考を評価します。 

営業職を例にすると、高い成績を上げている従業員には、「常に市場や競合他社の調査を行っている」「プレゼンテーション能力が高い」など、何かしら特性があります。コンピテンシー評価では、その特性をロールモデル化し評価基準に定めます。これにより、努力した従業員ほど評価されるようになり、従業員のモチベーション向上につながるのです。 

さらに評価基準が具体的に定められることで、他の従業員は改善すべき点や身につけるべきスキルなどを具体的に把握できるようになります。うまく運用できれば、会社全体のスキルアップにもつながっていくでしょう。 

コンピテンシーとは?

「コンピテンシー(competency)」とは、「優れた成果を出す人材(ハイパフォーマー)の行動特性」という意味です。コンピテンシーは日本語で、「行動特性」と言われることもあります。 

業務上の職務において、好成績を収めている人材には共通点(行動特性)があり、その行動や思考パターンを分析し模倣することで、優れた成果を出す人材と同じレベルの成果を上げることができるという考え方です。 

コンピテンシーと氷山モデル

コンピテンシーという概念が注目されたのは、1970年代にアメリカのハーバード大学の心理学者・D.C.マクレランド教授がアメリカ国務省の職員採用で行った調査です。 

この調査では、採用選考の基準としていた学歴や知能テストの成績とその後の実績との相関性はなく、高い成果を上げている人の中には、思考パターンや行動に共通点があることが明らかになりました。そして、この調査により、コンピテンシーが「優れた成果を出す人材の行動特性」を意味する概念として確立されました。 

さらに、マクレランド教授は、人の行動には、目にみえる「スキル・知識・態度」と目には見えない「動機・価値観・行動特性・使命感」があり、目に見えない部分の方が成果を出す人の行動に大きな影響を与えていることを明らかにしました。この考えは「氷山モデル」と呼ばれ、コンピテンシーの基礎となっています。その後、コンピテンシーは、マクレランド教授に従事したボヤティズや、スペンサー夫妻などにより研究が進められてきました。 

コンピテンシー評価と他の評価制度の違いとは

ここでは、コンピテンシー評価と混同しやすい「能力評価(職能資格制度)」「バリュー評価」「業績評価」との違いについて見ていきましょう。 

コンピテンシー評価と職能資格制度(能力評価)の違い

職能資格制度(能力評価)とは、業務に必要な能力や適性を備えているかどうかを評価基準とし、従業員の能力や適性、勤務態度、行動などを評価する手法です。従来の人事評価制度といえば、職能資格制度(能力評価)が一般的でした。 

一方、コンピテンシー評価は、優れた業績を上げている従業員に共通する行動特性(コンピテンシー)と合致した行動や思考ができているかという点に着目し、従業員の行動を評価します。コンピテンシー評価は、能力評価よりも具体的なため、成果主義とも相性がいいです。よって、成果主義が浸透している現代において、コンピテンシー評価を導入する企業が増えてきたといえるのでしょう。

 コンピテンシー評価 職能資格制度(能力評価) 
評価基準優れた業績を上げている従業員に
共通する行動特性に合った
行動や思考ができているか 
業務に必要な能力や
適性を備えているかどうか 
評価項目従業員の行動 従業員の能力や適性、勤務態度、行動 

コンピテンシー評価とバリュー評価の違い

コンピテンシー評価と似た評価制度として「バリュー評価」があります。 
バリュー評価とは、企業が設定した価値観(行動規範)に沿った行動であるかを基準とする評価制度です。一方、コンピテンシー評価は、優れた業績を上げている従業員の行動特性に沿った行動をしているかどうかを評価基準にしています。バリュー評価もコンピテンシー評価も、どちらも従業員の行動を評価する制度ですが、評価基準が異なるのがポイントです。 

 コンピテンシー評価 バリュー評価 
評価基準優れた業績を上げている従業員に
共通した行動特性に沿った
行動をしているかどうか 
企業が設定した価値観(行動規範)に
沿った行動であるか 
評価項目従業員の行動従業員の行動 

コンピテンシー評価と業績評価の違い

業績評価とは、特定の期間に設定した目標の達成度に基づいて従業員を評価する制度です。コンピテンシー評価が、ハイパフォーマー人材の行動特性に着目するのに対し、業績評価は業績の達成度を評価基準にします。 

業績評価は、別名「成果評価」とも呼ばれるように、会社の売上高や成果に対する貢献度により評価されます。また、業績が上がると従業員の評価に影響するため、勤務意欲の向上や企業全体の業績アップにつながります。 

業績評価とコンピテンシー評価は、組み合わせて活用することにより、バランスのとれたより良い人事評価制度を整える効果が期待できます。業績の達成度だけでなく、業績を達成するためのプロセスを評価することで社員の納得感が高まるでしょう。 

 コンピテンシー評価 業績評価 
評価基準優れた業績を上げている従業員に
共通した行動特性に
沿った行動をしているかどうか 
業績の達成度 
評価項目従業員の行動 会社の売上高や成果に対する貢献度 

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コンピテンシー評価のメリット 

コンピテンシー評価には、以下6つのメリットがあります。 

【コンピテンシー評価6つのメリット】 

① 即戦力人材が効率良く育成できる
② 目指すべき目標が明確化するため行動しやすい(モチベーションの向上) 
③ 人事評価に対する納得感や公平性が高まる
④ 評価者側も評価が行いやすくなる
⑤ 企業のミッションやビジョンを浸透できる
⑥ 自社に合った人材の採用に活用できる 

コンピテンシー評価を導入することで、今抱えている課題を解決できる可能性があります。それぞれのメリットを解説するので、導入を検討中の方は参考にしてみてください。 

① 即戦力人材が効率良く育成できる

コンピテンシー評価を導入することで、現場の実態に即した評価が行えるようになるため、即戦力人材を効率良く育成することができます。 

コンピテンシー評価においてロールモデルになるのは、その現場で高い成果を挙げている従業員です。実際に好成績を収めている従業員の行動が評価基準になるため、現場に適した実践的な評価基準が定められます。その現場に必要なスキルが明確化されるため基準が分かりやすくなり、必要な人材を迅速に育成することが可能です。 

また、コンピテンシー評価を導入すると、どのような行動・考え方をすると成果を出せるのかが、正しく明確に伝えられるため、新入社員や既存社員を育成する際にも役に立ちます。コンピテンシー評価を上手に人材育成に活用しましょう。 

 
② 目指すべき目標が明確化するため行動しやすい(モチベーションの向上) 

コンピテンシー評価を導入すると、「どのような行動をとるとロールモデル人材に近づけるのか」や「どのような考え方をすると成果を上げられるのか」が把握できるため、目指すべき目標が明確になり、自分で考えて行動しやすくなります。 

加えて、改善すべき点が見えやすくなるところも魅力のひとつです。成果を上げられない原因を知ることができるので、自分の行動を見直すきっかけにもなり、間違った方向に努力することを防ぐことができます。 

③ 人事評価に対する納得感や公平性が高まる 

コンピテンシー評価は、業績や成果につながる行動特性が評価項目とされます。したがって、コンピテンシー評価を導入することで評価基準が明確になり、納得感のある客観的で公平な評価を実現できます。自分に下された評価に対しての理解が得やすく、納得感を高められるのがポイントです。 

評価基準が不透明な会社は、従業員から不満や不信感を抱かれやすく、「頑張っても仕方がない」とモチベーションの低下や離職につながることもあります。一方で、コンピテンシー評価制度があると、「何を基準に評価されているのか」「何をすると評価が上がるのか」が明確であるため、評価に真摯に向き合って努力しようという気持ちに働きかけることが可能です。 

④ 評価者側も評価が行いやすくなる 

被評価者(評価される側)だけでなく、評価者(評価する側)も評価を実施しやすくなるのもコンピテンシー評価を導入するメリットのひとつです。 

コンピテンシー評価の評価基準は「行動」であり、ロールモデルとして定めた行動基準を満たしているかそうでないかで評価できるため、評価者側はあいまいな判断をすることなくスムーズな評価を行うことができ、人事評価に費やす時間も削減することができます。 

⑤ 企業のミッションやビジョンを浸透できる 

コンピテンシー評価を導入すると、企業の経営戦略やビジョンと評価項目の方向性を合わせやすくなります。コンピテンシー評価は、ハイパフォーマーの行動特性を基準とした評価なため、企業のミッション・ビジョンとコンピテンシー評価基準を合わせれば、社内全体に企業ビジョンが浸透しやすくなります。 

自社に合った人材の採用に活用できる 

コンピテンシー評価は採用時にも役立ちます。自社で作成したコンピテンシーの評価項目を参考にすることで、求めている人材かどうかを判断しやすくなるのが特徴です。採用後は、その人に適した部署への配属が可能になり、離職率の低下や業務の生産性向上につなげられます。優秀人材の獲得のためにもコンピテンシー評価の導入を検討してみましょう。採用時のコンピテンシー評価に関して詳しく知りたい方はこちらの関連記事をご覧ください。 

コンピテンシー評価のデメリット 

メリットがある反面、覚えておくべきデメリットもあります。コンピテンシー評価のデメリットは、以下の3つです。 

【コンピテンシー評価のデメリット】

① コンピテンシーを定めるのが難しい 
② 定めたコンピテンシーが適切とは限らない
③ 環境の変化に対応する柔軟性に乏しい 

コンピテンシー評価を導入してから後悔しないよう、しっかり押さえておきましょう。 

① コンピテンシーを定めるのが難しい

コンピテンシーを定めるまでの道のりは長く、どう設定すべきかを考えるのも難題です。 
コンピテンシー評価を導入するには、コンピテンシーの分析やロールモデルの設定を必ず行わなければいけません。また、コンピテンシーモデルは職種や役割によって異なるため、全職種・全役割においてコンピテンシーを定めなければならず、導入するまでに手間と時間がかかります。 

コンピテンシーを定める際には、成果を上げている従業員をロールモデルとして定義するだけでなく、詳細なヒアリングを何度も行った上で、その従業員がもつ行動特性を洗い出して言語化することが必要です。誰もが納得するようなコンピテンシーの定義を設定するためには、精度の高いヒアリング力と分かりやすく言語化するスキルが求められます。 

コンピテンシー評価の導入手順についてしっかり学びたいという方は、本記事の「コンピテンシー評価の導入ステップ」を参考にしてください。 

② 定めたコンピテンシーが適切とは限らない 

一度コンピテンシーを定めても、それが理想の評価基準になるとは限りません。そもそも会社は、成長とともに業務内容や業務の範囲が変わるため、理想とするコンピテンシーモデルも変わります。その度に修正しなければいけないので、導入した後も試行錯誤を続けることが必要です。 

③ 環境の変化に対応する柔軟性に乏しい 

コンピテンシー評価は、「(現状)活躍している人材に共通する行動特性」を評価基準にしているため、急な環境の変化に弱く、柔軟性が低い評価手法だと言われています。場合によっては、業務内容や組織図、経営体制など会社の環境が変わると、最初からコンピテンシーを定め直さなければならない可能性もあるので、人事担当者の負担が増えることは否めません。 

コンピテンシー評価の項目例 

評価項目に設ける内容は、会社によって異なるものです。一から作り始めるのは手間や時間がかかる上、経験がなければ失敗する恐れもあります。そこで、行動項目を決めるときは、「コンピテンシーディクショナリー」をもとに作成するのがおすすめです。 

コンピテンシーディクショナリーとは、コンピテンシーをモデル化するときに重要とされる考えやベースのことです。「達成・行動」「援助・対人支援」「インパクト・対人影響力」「管理領域(マネジメントコンピテンシー)」「知的領域(認知コンピテンシー)」「個人の効果性」の6つの領域に分類されています。 

コンピテンシーディクショナリーはさまざまな分野で適用できるように設計されているので、異なる職種や役割に対応しています。それぞれ詳しく解説します。 

項目基準1:達成・行動

ある目標を達成するために行ったアクションを評価するための評価項目です。 

項目例 

・実際にどのくらい成果を出しているか 
・指示をされる前に自分で考えて動いているか 
・さまざまな情報源にアクセスしているか 

項目基準2:援助・対人支援 

従業員や顧客に対して、最適な対応ができているかを評価します。他者が求めていることを察知し、適切なサポートを行えているかどうかは定量的な指標では測りにくい項目です。だからこそ、コンピテンシー評価の一項目として取り入れて見るとより良い評価につながるでしょう。 

項目例 

・相手の立場になって考えて行動できているか 
・物事を客観的に見ることができているか 
・自分の感情だけで動いていないか 

項目基準3:インパクト・対人影響力 

従業員の発言や行動が業績に与えたインパクトや影響力に関する評価項目です。例えば、ほかの従業員の悩みに耳を傾け解決を後押しした、チームの議論に貢献した、などの例が当てはまります。 

項目例 

・傾聴力 
・議論力 
・提案力 
・影響力 

項目基準4:管理領域(マネジメントコンピテンシー) 

所属するチームをマネジメントし、目標達成に貢献したかどうかを判断する評価項目です。あくまで「コンピテンシー評価」のため、マネジメント能力そのものを評価するのではなく、マネジメントの姿勢や取り組みを評価することが大切です。 

項目例 

・部下への配慮はどうか 
・チームメンバーと積極的に関わろうとしているか 

項目基準5:知的領域(認知コンピテンシー) 

状況やタスクに対して、深い理解をしているかどうかを判断する評価項目です。相手の言動や状況を額面通りの意味として受け止めるだけでなく、さらに自分なりに詳しく分析し行動できたかどうか、専門的な知識を高めているかなどが評価されます。 

項目例 

・物事を詳しく分析し、そこから効果的な戦略を立てられるか 
・専門性を高めて、活用できているか 

項目基準6:個人の効果性 

個人の効果性では、自己管理ができているか、柔軟性があるか、積極的な取り組みができているかなどを評価します。 

項目例 

・さまざまな分野に積極的に挑戦し、成果を生み出しているか 
・グループや組織に対応する行動特性をもっているか 
・ストレスがかかりやすい環境でも結果を出せているか 

ここまで紹介したコンピテンシー評価の項目例をまとめると以下の通りです。 

コンピテンシー 内容 項目の具体例 
達成・行動 個人の職務に対する姿勢やアクションを指す ・実際にどのくらい成果を出しているか 
・指示をされる前に自分で考えて動いているか 
・さまざまな情報源にアクセスしているか 
援助・対人支援 他の人たちのニーズに応えるための努力を指す ・相手の立場になって考えて行動できているか 
・物事を客観的に見れているか 
・自分の感情だけで動いていないか 
インパクト・対人影響力 個人がもつ、他の人たちへの影響力。特定のインパクトや効果を与える願望を指す ・傾聴力 
・議論力 
・提案力 
・影響力 
管理領域 チームワークや協調を促すマネジメント力を指す ・部下への配慮はどうか 
・チームメンバーと積極的に関わろうとしているか 
知的領域 「分析的思考」「概念的思考」「技術的・専門職的・管理的専門性」の3つを指す ・物事を詳しく分析し、そこから効果的な戦略を立てられるか 
・専門性を高めて、活用できているか 
個人の効果性 個人と他者を比較したときの成熟度の一部を指す ・さまざまな分野に積極的に挑戦し、成果を生み出しているか 
・グループや組織に対応する行動特性をもっているか 
・ストレスがかかりやすい環境でも結果を出せているか 

参照:コンピテンシー・ディクショナリー 

▼コンピテンシー項目の具体例はこちらの記事でも詳しく紹介しています!▼ 
コンピテンシー評価シートとは?書き方やサンプル・項目例を紹介 

コンピテンシー評価の導入ステップ

コンピテンシー評価を導入するにはどのような手順を踏んだら良いのでしょうか。コンピテンシー評価の導入ステップは、以下の通りです。 

【コンピテンシー評価の導入ステップ】 

① ハイパフォーマーやモデル対象の分析
② コンピテンシー項目の洗い出し
③ コンピテンシーモデルの作成
④ 評価基準の検討
⑤ 企業のミッション、ビジョン、経営戦略とのすり合わせ
⑥ 従業員への説明
⑦ 評価者の育成
⑧ 評価の実施・見直し 

ここから、各ステップについてご紹介していきます。 

① ハイパフォーマーやモデル対象の分析

企業内で優れた成果を挙げている既存の従業員をモデルとして選出し、念入りなヒアリングを行います。ヒアリングを行った後は、その企業のハイパフォーマーの行動特性を分析していきましょう。 

ハイパフォーマーの分析では、業績や金額といった定量的なデータはもちろんのこと、数値化できない定性的な部分も大変重要です。この分析は、コンピテンシー評価の軸となるものです。企業のスタイルとハイパフォーマーの行動特性にギャップがないように、時間をかけて慎重に進めていきましょう。 

➁ コンピテンシー項目の洗い出し 

①で分析をしたのち、コンピテンシー項目の洗い出しを行います。このステップは、モデル対象者の特性をコンピテンシーディクショナリや他社事例などを参考にしながらコンピテンシー候補を出していくものになります。 

項目の洗い出しをするときは、より具体的であり、できるできないを明確に分けられる表現にしましょう。また、企業に最適なものであるかをきちんと判断するのが大切です。固定概念に捉われることなく、その企業らしいコンピテンシーを作成しましょう。 

③ コンピテンシーモデルの作成 

次に、コンピテンシーモデルを作成します。コンピテンシーモデルとは、実際の業務にコンピテンシーを落とし込むことで作られる行動モデルのことを意味します。 

コンピテンシーモデルには「モデル型」「理想型」「ハイブリッド型」の3種類があり、それぞれの型の意味は以下の通りになります。

モデル型:社内のハイパフォーマー分析から導き出す 
理想型:企業理念やビジョンなどをもとに理想的な人物を描く 
ハイブリット型:モデル型と理想型を上手に組み合わせながら導く 

どの型を使うかは、企業によってさまざまですが、社内にモデルにふさわしい人材がいない場合には「理想型」でコンピテンシーモデルを作成することが一般的です。企業に適したコンピテンシーモデルを選出しましょう。 

④ 評価基準の検討 

①から③までの作業をもとに「共通基準」と「個別基準」の二つの基準を作成するとよいでしょう。 

共通基準:従業員全員に当てはまる基準 
個別基準:職種や部署によって設定された基準 

部署によって、業績につながるコンピテンシーが異なる場合があります。自身の部署ではなかなか発揮しづらいコンピテンシーが評価項目になっているといったことが起こると、人事評価への納得感を下げる要因になってしまいます。評価基準の検討も慎重に行うことが大切です。 


⑤ 企業のミッション、ビジョン、経営戦略とのすり合わせ 

このステップでは、企業のビジョンや経営戦略に即しているかをチェックし、②で洗い出したコンピテンシー項目を精査していきます。 

企業のビジョンに即さない項目は、公平な評価するうえで機能しない可能性が高くなるため、除外していきます。コンピテンシー評価を厳選し、丁寧にブラッシュアップをすることで、企業に合った評価項目を完成させることができます。 

⑥ 従業員への説明 

コンピテンシー評価に限らず、どのような評価制度を運用するにしても、新しい評価手法を導入する場合は従業員への説明を必ず行いましょう。評価内容や導入目的、企業・従業員へのメリットについて説明しないままでは、従業員が不満を抱くだけではなく、評価制度の本来の機能や役割を失ってしまいます。 

「新しい評価制度を運用します」という告知に留まらず、疑問や不安をもつ従業員が現れた際には、一人ひとりへの説明をしっかりと行いましょう。 

⑦ 評価者の育成 

部下の評価を正しく行うためには、上司(評価者)の育成が肝心です。評価制度の目的の理解促進や、どのような評価項目で評価を行うのか、評価は何段階あるのか、など具体的な評価方法をしっかりインプットできる機会を設けましょう。 

⑧ 評価の実施・見直し 

評価者・被評価者が評価手法を理解し、十分に評価を実施できる段階になったら、いよいよ評価を実施します。コンピテンシー評価の場合は、「コンピテンシー評価シート」を作成することで、評価を実施するケースが多いです。(コンピテンシー評価シートの書き方については、後ほど解説します。) 

評価の実施後、従業員へのアンケートやヒアリングを元に随時評価項目を見直すことがより良いコンピテンシー評価制度を運用するポイントです。あいまいな評価項目はなるべくなくし、評価者・被評価者双方が迷わず評価できる状態を目指しましょう。 

コンピテンシー評価シートの書き方 

コンピテンシー評価の導入が完了したら、次は「コンピテンシー評価シート」を作成します。ここからは、評価シートの「概要」と「記載する項目」、「運用する上での注意点」について解説します。コンピテンシー評価をより効果的なものにするため、しっかり押さえておきましょう。 

コンピテンシー評価シートとは?

コンピテンシー評価シートとは、コンピテンシー評価制度を運用する際に使用される、自社に適したオリジナルのシートです。実際に評価を実施する際には、役職や等級などに応じた目指すべき姿や行動指針が記載されたシートに数字・記号を入れていきます。 

また、シートを作成する際には、目指すべき姿や行動指針を具体的かつ分かりやすく示さなければいけません。コンピテンシー評価は上司だけでなく、従業員自らも自己評価するものです。 

具体的に定められていなかったり、文面が難しくイメージがわかなかったりすると、適切な評価ができなくなります。コンピテンシー評価シートを作成する際は、行動イメージがわくように具体例などを入れておくとよいでしょう。 

コンピテンシー評価シートに記載する項目 

コンピテンシー評価シートに記載する項目は、主に以下の3つです。 

① 分類された評価項目 
② 各評価項目の具体的な評価軸 
③ 各評価項目の尺度 

公平かつ正当な人事評価を実現するためには、コンピテンシー評価シートの書き方も重要です。それぞれ具体例を挙げながら解説するので、参考にしてみてください。
 

① 分類された評価項目 

「達成・行動」「援助・対人支援」「インパクト・対人影響力」「管理領域(マネジメントコンピテンシー)」「知的領域(認知コンピテンシー)」「個人の効果性」の6つの評価項目を参考にコンピテンシー評価の評価項目を選定しましょう。 

② 各評価項目の具体的な評価軸 

定めた各評価項目を、どのような軸で評価するのかを決めます。 

(例1)上司またはチームリーダーの場合 
「目標やルール、仕事の進め方を部下に指導し、徹底させる」 
「経営方針や会社のビジョンなどを部下にわかりやすく落とし込んで理解させ、それに則った行動をさせる」 

(例2)営業関連の職種の場合 
「相手の立場に立って話を聴く」 
「相手の能力や必要としているものを正確に把握して対応する」 

このように、項目や基準ごとに評価軸をすべて落としこみ明確にします。評価項目の分類法には定型や決まりはないので、手間や時間はかかりますが、自社に適したオリジナルの分類法を策定することが大切です。 

③ 各評価項目の尺度 

評価尺度とは、S・A・Bなどの記号や1・2・3などの数字で評価を表すことです。イメージとしては、コンピテンシーにレベル分けを設定するような感覚に近いです。 

評価するための「基準」と「項目」に対して、どういった尺度で評価するのか曖昧になってしまうと、正確な人事評価が実現できません。尺度を決定することは、基準と項目の設定と同じくらい重要です。 

評価尺度には「共通基準」「個別基準」があります。共通基準は会社全体で使用する共通の尺度であり、社内での公正な評価を実現させるために必要不可欠です。一方、個別基準は各職種や部署に合わせた基準を指し、個々人の「目標達成度」を評価する際に活用されます。 

このように、二つの基準をもとにコンピテンシーのレベルを明確化することで、人事評価に利用しやすくなるほか、公平性の担保なども期待できるでしょう。 

コンピテンシー評価を運用する上での注意点 

コンピテンシー評価には、以下3つの注意点があります。 

① 成果を上げることを目的にする
② 全ての項目を満たす人はいないと認識しておく 
③ 定期的に見直しや更新を行う 

これらの注意点を知っておくことで失敗を防げます。それぞれ詳しく解説するので、参考にしてみてください。 

① 成果を上げることを目的にする 

コンピテンシー評価の目的が「コンピテンシーモデルとして定めたものに沿って行動すること」になりがちですが、そもそもの目的は「成果を上げること」であることを見誤らないようにしましょう。 

コンピテンシー評価を効果的なものにするためには、成果を上げることが目的であることをしっかりと理解し、ただ行動するだけにならないように注意を促す必要があります。会社としては、従業員や評価者に周知し、目的がブレないよう配慮しなければいけません。 

② 全ての項目を満たす人はいないと認識しておく 

コンピテンシー評価の項目を全て満たす人はいません。なぜならコンピテンシーとは会社にとっても理想像であり、簡単に項目を満たしたり超えられたりするものではないからです。モデル対象に近づくために、強みを伸ばして弱みを減らしていくということを念頭に置く必要があります。 

また、会社は従業員に理想を押しつけすぎてしまわないように注意しましょう。これでは、従業員のモチベーションが下がり、離職する恐れもあります。あくまでも、行動基準の目安や目指すべき姿としてモデルを活用することがポイントです。 

そのため、従業員同士弱みを補い合いながら、協力して目標を達成するような環境づくりの手段の一つとして活用していきましょう。 

③ 定期的に見直しや更新を行う 

コンピテンシー評価は、一度作成したら終わりではありません。市場の変化や経営体制など、環境が変われば定期的に見直しや更新が不可欠です。もし見直さずに運用してしまうと、適切でないモデルに沿って行動をしてしまうため、結果につながりません。成果が上がらないと、当然ながら運用する意味がなくなります。 

コンピテンシー評価の策定や更新は大変な作業ですが、効果のあるものとして運用するためには、定期的な見直しや更新が必要です。 

人事評価システムなら「COMPANY Talent Management」シリーズ 

コンピテンシー評価とは、人事評価制度の1つです。仕事で結果を出している人の行動特性をもとに、評価基準を定めます。評価される側としては、評価に対して納得感や公平性が高まるので、業務に対するモチベーション向上につながります。 

また、評価する側にとっても、評価基準を満たしているかどうかで判断できるので、評価しやすいという点がメリットです。成果主義が浸透するなか、主観に左右されることなく公平に評価できるコンピテンシー評価を導入する会社は増えています。 

しかし、コンピテンシー評価を導入したばかりの会社や検討中の人事担当者にとっては、うまく運用できるか不安になるでしょう。そこでおすすめなのが「COMPANY Talent Management」シリーズです。 さまざまな評価制度に対応しており、人事はもちろん現場の従業員も使いやすいコンピテンシー評価を導入することができます。 

さらに、目標管理の課程とデータを活用することで、高度な分析も可能です。より効果的なコンピテンシー評価が実現できるので、企業力を高めたい方にもおすすめです。まずは気軽に、資料請求をご利用ください。 

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