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2022.2.7

OKRの具体的な目標例と設定方法を紹介

OKRは目標管理手法のひとつで、目標と主要な結果を設定した上で個人・組織のパフォーマンスを連動させる仕組みです。OKRにより定量目標も設定されるため、目標を達成するために取り組むべき行動が具体的になります。より高い目標へのチャレンジも促す手段としても有効ですが、モチベーション低下などのリスクを招かないようOKRを導入する際は適切な運用方法を考えておく必要があります。

この記事ではOKRの設定方法や目標例、実際にOKRを導入している企業の事例を紹介します。

OKRとは

OKRとは、企業の経営目標を実現するために必要な成果を具体化した上で、チームや個人ごとに目標と求める結果を細分化していく手法です。100%の目標達成を前提としていないため、高い目標へのチャレンジを促す効果も期待できます。アメリカのインテル社が開発した目標管理手法で、日本でもメルカリなどの成長企業を中心に導入が進んでいます。

OKRは「Objectives and Key Results」の略語でObjectivesは目標、Key Resultsは主な結果という意味です。個人目標やチーム目標が企業の目標と連動しており、社内で意思疎通を図りながら企業の方向性を共有できます。1つの目標に複数の成果指標が設定されるので、個人が取るべき行動も具体化されます。週次・月次など高い頻度で進捗確認を実施することで、スピード感をもった業務遂行や業務の進め方に関する柔軟な軌道修正が可能です。複数の成果を積み重ねて、企業の共通目標への到達を目指すのがOKRの特徴と言えます。

OKRの設定における注意

OKRは高い目標にチャレンジしながら個人・チームの成長を目指す手法なので、60~70%の達成度で成功だと判断するのが一般的です。

努力と工夫によって目標を達成できると実感できることで、モチベーションの向上につなげられると同時に一段と高い目標にチャレンジする気持ちが生まれます。したがって、高すぎる目標を設定すると挑戦する意欲が削がれ、生産性が下がる恐れがあるので注意が必要です。100%達成できるOKRを設定した場合も、仕事への物足りなさから挑戦心が失われる可能性があるため、個人の能力とのバランスが取れた目標を設定するようにしましょう。

OKRと人事評価を切り離して考えることも、安心してチャレンジできる環境を整えるためには重要です。人事評価が目標の達成度と連動していると、低い評価を受けたくないと考えて高い目標設定を避ける可能性があります。個人の潜在能力が引き出されなかったり組織の士気が低下したりする恐れもある点にも注意が必要です。

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OKRの設定例

OKRでは、目標(O)と主な結果(KR)がツリー状に構成されています。そのため、最初に企業としての目標・主な結果を設定した上で、チームと個人それぞれが目標・主な結果を具体化していくのが一般的です。最初に個人やチームに目標と主な結果を提示させて、経営層が企業が目指す方向性を取捨選択する方法もあります。企業・チーム・個人の、OKRの目標例を紹介します。

企業全体のOKR

企業全体のOKRはチーム・個人が目標を立てるための指標となるだけでなく、企業の経営目標やビジョンを明確に示す役割も果たしています。そのため、経営戦略と連動させながらチームや個々のメンバーのやる気を引き出す言葉でOKRを設定すると効果的です。

企業全体の目標設定例(O)

・今期はA商品でトップシェアを獲得する

・新規に参入したビジネスを全国展開する

・提供する商品・サービス全体の顧客満足度を向上させる

企業全体の目標は必ずしも数値化する必要はありませんが、チームや個人が目指す中期・長期的なゴールを具体化できる言葉で設定するようにします。目標の数は1個が理想的ですが、目標の数が多くなるほど本当に実現したい目標が曖昧になり業務量も分散されるため、2~3個に絞り込むのが無難でしょう。

企業全体としての成果例(KR)

・トップシェアを獲得するために、A商品の売上を全社で1億円アップさせる

・ビジネスの全国展開に向けて、全国に支店を5ヶ所展開させる

・顧客満足度向上を目指すため、リピート客を1,000人増やす

企業全体の目標をベースに、現実的に実現できる成果を設定します。目標の達成度合いを明確化できるよう、定量目標として数値化することが大切です。チームや個人が企業目標の達成に力を注げるよう、企業の目標達成に大きな影響を与える成果を3~5個に絞り込むようにします。

チームのOKR

チームのOKRは企業全体のOKRと連動すると同時に、個人にとって身近な目標としても機能します。個人単位での実現は難しくても、チームワークなら目標達成を見通せる難易度でOKRを設定しましょう。チーム全体の士気向上を目指すために、チーム目標の達成度合いが個人の人事評価と連動しないと明確にしておくことも大切です。

チーム目標の設定例(O)

・既存の営業先にA商品の魅力を改めてプレゼンする

・既存の営業先から、新規参入ビジネスに関する反響を聞き取る

・顧客からの意見や感想をインタビューして、分析する

企業全体が目指す成果に対応する形で、チームとして決めたスケジュールの中で実践できる目標を設定するようにします。チーム全体の目標を達成するために、一人ひとりが努力したくなる言葉で目標を具体化しましょう。

チームとしての成果例(KR)

・XチームはA商品の売上を3,000万円獲得する

・Yチームは東北エリアで新規参入ビジネスの顧客を5件獲得する

・Zチームは関西エリアの顧客5,000人にコンタクトを取る

チームとして実現すべき数値目標を具体化していきます。OKRで設定する成果はノルマと異なるため、100%の達成は難しいけれど60~70%ほどの達成度なら目指せるという前提で設定するようにするとチームの中で一人ひとりのチャレンジを促せるでしょう。

個人のOKR

個人のOKRはチームのOKRを踏まえ、役職や経験・能力に応じて設定します。チームの成果にも直結するため、目標の達成度に応じて柔軟に軌道修正していく姿勢も必要です。チームメンバー全員に共通する目標と個人別の目標の2パターンを設定すると、個人が成長しながらチームにも貢献する風土づくりにもつなげられます。

個人目標の設定(O)

・Dさんは既存顧客のフォローに加えて、Eエリアで新規顧客を開拓する

・F課長は新規参入ビジネスに関する、東北エリアのマーケティングを実施する

・Gさんは商品に関する顧客からの意見・感想を分析する

リーダー・管理職には高い専門性や他部署との連携が伴う目標を、一般職(メンバー)には実務に直結する目標というように、チームとして実現すべき成果を個人に分配する形で目標を設定します。進捗度合いに応じた軌道修正を念頭におき、短期間で実践・振り返りができる目標を設定するとよいでしょう。

個人ごとの成果例(KR)

・DさんはA商品の売上を500万円獲得する

・F課長は2022年7月に東北営業所を開設できるようプランを立てる

・Gさんは兵庫県の顧客1,500人から商品の意見・感想をインタビューする

チームの数値目標を意識した上で、個人ごとに実現すべき成果を数値化します。自分自身で考えて成果を設定するのが基本ですが、同じ方向性で目標達成を目指せるよう、必要に応じてチームメンバーや上司と話し合うことも大切です。

KPIツリーについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

OKRの設定方法

OKRでは目標を具体的な数値で設定した上で、個人・チーム・企業が一丸となって目標達成と成長を目指していきます。目標の具体化にあたっては「SMARTの法則」を活用すると便利です。ちなみにSMARTの法則は、5つの要素で成り立っています。

・Specific:具体的である

・Measurable:数値で測定できる

・Achievable:同意している・達成できる

・Relevant:関連性がある

・Time-bound:期限が設定されている

OKRの設定方法を5つのステップに分けて紹介します。

目標(Objectives)を設定する

最初に、企業の経営戦略やビジョンに基づいて全体の目標を設定します。簡単に達成できる目標だと業務への士気が高まりにくく、反対に難易度が高すぎるとモチベーションが下がる社員が出る可能性があります。高みを目指す意識が生まれるように、60~70%前後の成果を出せる目標を設定するとよいでしょう。企業としての目標は1個が理想的ですが、複数の事業を展開している場合には事業ごとに目標を設定するとわかりやすいです。企業の目標が決まった後に、チーム・個人の目標へと展開していきます。

進捗を確認した上で必要に応じて軌道修正ができるよう、目標達成までの期間は1ヶ月前後、長くても四半期で区切るようにします。

成果指標(Key Results)を設定する

企業やチーム・個人の目標が決まったら、目標達成への取り組みを具体化する形で成果指標を設定します。達成度を客観的に把握できるように、目標を数値化することが大切です。1つの目標につき2~3個の成果指標を決めると、業務の方向性や優先順位をはっきりと決めることができ、目標達成に向けて集中して取り組めます。

成果指標は目標設定と同様に、60~70%ほどの成果を出せれば成功という考え方で設定するようにします。目標が数値化されていないと達成度を正確に把握できず、行動のプロセスも不透明になってチーム内の統率が取れなくなる恐れがあるのでご注意ください。

OKRを共有する

目標達成に向けて足並みがそろった行動を取れるように、設定した目標と成果指標(OKR)はチーム全体に共有しましょう。個人・チームで設定したOKRはすべて企業のOKRとつながっているため、企業の経営戦略やビジョンの浸透にも効果を発揮します。

個人ごとのOKRも同僚と共有することで、目標達成に向けて切磋琢磨する環境が組織の中に生まれ、コミュニケーションも活性化されます。次回以降にOKRを設定する際に、さらなる高みを目指そうという意識も芽生えるでしょう。ビジネスチャットや業務管理ツールを活用するのも、きめ細かくコミュニケーションと進捗確認を進めるためには有効です。

振り返りをおこなう

OKRは月ごと・四半期ごとでの目標達成を前提としているため、こまめに進捗を確認した上で目標達成への取り組み内容について振り返りを行うことが大切です。

スケジュールどおりに行動が進んでいない、あるいは目標の達成度が思わしくない場合には原因を究明した上で、必要に応じて軌道修正して目標達成を目指していきます。週に1度を目安にチェックインミーティングを実施し、現状の課題や解決策を共有するとよいでしょう。単独での目標達成が難しくても他のメンバーやチームの協力があれば達成可能ならば、共同でOKRの達成を目指す方法も考えられます。

OKRは人事評価と必ずしも連動しないため、個人目標の振り返りの場として1on1を活用するのも効果的です。

成果を測定し評価する

OKRによる目標達成の期間が終了したら、設定した目標と実現できた目標との整合性を確認するためにスコアリングによる評価を行います。スコアリングにより個人・チームの達成度を測定した後に、企業全体の成果も数値化します。OKRによる目標達成度を人事評価にそのまま反映させると、次回以降のOKRがスムーズに進まなくなるので注意が必要です。

目標が未達だった場合には、業務の進め方や組織の背景などを細かく分析した上で次回以降のOKRを設定します。また、目標を達成できた場合にはレベルの高い目標を設定すると、個人やチームの成長につなげられるでしょう。

SMARTの法則については、こちらの記事で詳しく解説しています。

OKRの導入例

アメリカのシリコンバレー企業だけでなく、国内でも成長戦略の一環としてOKRを導入する企業が増えてきました。近年では、業務改善を通じて持続的な経営を目指すために、老舗企業でもOKRを導入する事例もみられます。OKRを導入して、目標を共有しながら成長を続けている企業の事例を紹介します。活用方法を参考にしながら、自社に合ったOKRのやり方をぜひ検討してみてください。

Googleの事例

世界的なIT企業のGoogleでは四半期ごと・1年ごとにOKRを設定して、全社ミーティングの中で前期の評価と次期のOKRを公表してすべての社員に目標と達成すべき成果を明確にしています。

Googleでは組織として3~5個の目標を立て、それぞれに目指すべき成果指標を3つほど設定しています。目標達成によって実現できる状態や到達点を、具体的かつ客観的な言葉で明確化しているのが特徴です。70%達成できれば成功と言える目標設定を前提としており、仮に目標が未達だとしても一定の成長を遂げられるよう工夫されています。

目標達成の確実性を高めるために、四半期の半ば頃に期初に設定したOKRを検証して、個人・チームの状況を把握した上で軌道修正が行われます。最新情報を共有しながらリソースの配分を最適化したり、時には目標そのものを取り下げたりするなど、運用の柔軟さもみられます。

メルカリの事例

フリマアプリを運営するメルカリでは、チームや個人がとるべき行動をわかりやすくするため、主な結果(KR)をシンプルに設定しています。3ヶ月ごとにOKRの見直しと評価を実施している他、週ごとの進捗確認も実践しています。週初めのチェックインミーティングでは進捗や目標達成までの課題を共有し、週末のウィンセッションで成果物を確認する流れです。チーム全体で情報を共有しながら、達成感も味わえる仕組みが構築されています。

OKRの設定では「ワクワクする目標か」「五分五分の確率で達成できるか」に重点を置き、チャレンジできる目標を立てられるよう1on1を通じてサポートしています。個人のモチベーション低下を避けるために、90%達成できる目標や20%の達成で良しとする目標など、設定する達成度合いを変化させているのも特徴です。

適切なOKRの設定にはマネジメントシステムを活用しよう

OKRを導入することで企業・チーム・個人が共通の方向性をもって目標実現を目指し、チャレンジへの意欲を高めながら生産性の向上も実現できます。目標達成への道筋が行動・数値で明確化されるので簡単に進捗状況を確認でき、必要に応じて個人単位・チーム単位で柔軟な軌道修正も可能です。企業の経営目標やビジョンの共有ツールとしても活用できるので、社内のコミュニケーションの活性化にも効果を発揮します。

OKRを適切に運用して企業と社員双方の成長につなげるには、タレントマネジメントシステムの活用が効果的です。

サイダスのタレントマネジメントシステム「CYDAS」では、OKRをはじめとするさまざまな目標管理手法に対応、目標達成に取り組むプロセスを一元管理できます。社員の適性や将来のキャリアに関する希望も見える化できるため、社員の成長も促せます。1on1ミーティングの実施を支援する「1on1 Talk」機能も搭載、目標達成に向けた効果的なフィードバックも可能です。さらに、メッセージを通じてメンバーに企業理念を浸透させることもできます。

OKRで設定した目標と結果をきめ細かく管理して、自社ならではのOKRを実現するためにCYDASの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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