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2020.6.29

SMARTの法則とは?目標の立て方や具体例も紹介

競争の激しいビジネス社会において、実現可能な目標を設定することはとても重要なことでしょう。目標設定の方法として「SMARTの法則」が注目を集めています。SMARTの法則とは、5つの成功因子から成る目標設計の方法のこと。こちらの記事では、SMARTの法則の特徴や具体的な目標の立て方、法則を活用するポイントなどについて詳しく解説します。

SMARTの法則とは

「SMARTの法則」とは、目標達成の可能性を高めるために効果的な目標設定方法のことです。SMARTの法則は「Specific」「Measurable」「Achievable」「Realistic」「Time-bound」の5つの要素で構成され、これらの要素を目標設定に取り入れることの必要性を示しています。

この法則を初めて提唱したのはジョージ・T・ドラン氏です。彼は自身の論文『There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and objectives』の中で、SMARTという言葉を使用しました。SMARTの法則はその後、数多くの経営コンサルタントや公演家などの著名人によってブラッシュアップされてきました。たとえば、世界的に有名なコーヒーチェーン スターバックスでは、Time-boundの代わりに「Time Sensitive(期限に見合った)」が指標として用いられています。

目標設定が重要な理由

ビジネスにおいて目標設定が重要とされる理由として、従業員のパフォーマンスが上がる点が挙げられます。SMARTはこれまでにさまざまな研究の対象となってきましたが、これらの研究によると、目標設定を行った場合と行わなかった場合とで大きな違いが見られたといいます。もちろん、目標設定を行った際に良い結果が出たのです。また、目標の難易度を適切に上げることができれば、目標に向かって従業員のエンゲージメントが高まる可能性についても言及されています。これらのことからも、SMARTの法則は企業にとって、目標達成実現のための効果的な方法と考えられています。

SMARTの法則による目標の立て方

SMARTの法則による目標の立て方1:Specific(具体性)

まず、目標を設定する際には「Specific(具体性)」である必要があります。Specificには「具体的な」「明確な」「特定な」などの意味があり、抽象的ではなくより具体的な目標の重要性が説かれています。目標設定が抽象的だと、目標達成のためにどんな行動を起こせばいいのかわかりづらくなる可能性が高いのです。ただ漠然と、「全力を尽くして行動する」「売れる商品を作る」「社員一人ひとりがスキルアップを目指す」などの抽象的な目標を設定しても、実際にどう行動していいのかわからないという場面は多いでしょう。誰が見ても明確に理解できる、具体性を持った目標設定が必要になるのです。

上司が「優秀な部下を育てたい」と考えるときには、具体的に「どのように優秀な部下」であるかを設定する必要があります。たとえば、「顧客の訪問件数を増やし、新規契約を一つでも多く取れる部下」や「顧客のニーズを読み取った企画立案ができる部下」など、具体性を持って目標を設定しましょう。具体的な目標設定ができれば、どのようなアクションを起こせばいいかが明確になります。

さらに、明確な目標には個人はもちろん、チーム全体のパフォーマンスも向上させる効果が期待できます。目標設定のポイントとしては、なるべく「Who(誰が)」、「What(何を)」、「When(いつ)」、「Where(どこで)」、「Why(なぜ)」の5Wを意識して盛り込むことが大切です。

SMARTの法則による目標の立て方2:Measurable(計量性)

SMARTの法則によると、設定する目標は「Measurable(計量性)」である必要があります。業務の進捗度や目標の達成率を確認するためには、指標を用いた目標の数値化(可視化)が欠かせません。たとえば、部下とのコミュニケーションの向上を目標とする場合、「部下と多くのコミュニケーションを図る」と「毎週1回、30分程度の面談を行いコミュニケーションを図る」では、どちらがより効果的かわかるでしょうか。後者は数字で目標設定しているため、誰が見ても達成度合いがわかる内容となっています。

また、Measurableの要素を活用できれば、効率的にPDCAを回すことも可能です。具体的に計量化できる指標を用いて、「目標実現のために実行できたか」、「実際に効果はあったか」などを検証することができます。一般的に、仕事における理想の未来像や目標とするポジションなど、数値化が難しい抽象的な目標を「定性目標」と呼び、売上高や契約数などの数値で表すことができる目標を「定量目標」呼びます。このように、数値で可視化できる定量目標を意識して設定することで、チームのモチベーションを維持したり、連携力を高めたりすることが可能となるでしょう。

SMARTの法則による目標の立て方3:Achievable(達成可能性)

さらに、SMARTの法則では、目標設定は「Achievable(達成可能性)」であるべきと説いています。ビジネスにおいては高い目標を設定しがちですが、あまりにも非現実的な目標だとかえってうまくいきません。たとえば、仕事で活かせる知識を得るために、1日に5冊の本を読むという目標を設定したとしましょう。仕事や食事以外の時間をすべて読書にあてたとしても、毎日5冊もの本を読み続けるのは実現が難しいものです。目標が達成できないことで当初のモチベーションをなくし、行動しなくなったり、業績効率が悪化したりというケースも多く見られます。高い目標でありながらも、実現可能な目標を設定することが重要です。

SMARTの法則による目標の立て方4:Relevant(関連性)

「Relevant(関連性)」も目標設定において重要な要素です。設定した目標を達成することが、どんな成果をもたらすかを意識することで、モチベーションを向上しやすくなるというメリットがあります。具体例として、ここでは月間の契約成約数を30件に設定したとしましょう。営業が思うようにいかずモチベーションが低下してしまうことはよくありますが、目標を達成することでどんなメリットがあるかを考えてみることがポイントです。たとえば、自身のインセンティブがどれくらい増えて、欲しかったものを買うことができるといったものでもいいでしょう。要は、「何のために目標を達成するのか」「目標を達成したらどんなことがあるのか」を考えて設定することが大切です。

SMARTの法則による目標の立て方5:Time-bound(期限)

効果的な目標設定に欠かせないのが「Time-bound(期限)」です。いくら設定した目標が具体的で可視化できるもの、目標の先にあるものとの関連性が明確であるものでも、期限が決まっていないとモチベーションを維持することは難しくなります。また、とりあえずやってみる、後回しにするなどの行動は、業務の生産性や作業効率を大きく損なう可能性もあるので注意が必要です。ここでは、新商品の開発を例にとってみましょう。新商品開発の際に期限が設定されていない場合、従業員はいつまでにどんなアクションが必要かが目に見えず、日々淡々と仕事をこなすことが容易に想像できます。

また、期限が決まっていないと、他社に似たような商品を先に開発されてしまう可能性もあります。期限があるからこそ、人は日程的な計画達成も考えることができるのです。期限を意識した目標を設定することで「今何をするべきなのか」の具体的なアクションを明確にすることができます。期限がなくダラダラと仕事をしていては非効率的です。適度な緊張感を持って目標達成に取り組むためにも、期限を設定することはとても重要なのです。

SMARTの法則を使った目標設定の具体例

SMARTの法則を使った目標設定の具体例1:人事採用

企業にとって、企業の業績に貢献する優秀な人材を採用することは重要なことです。人事採用においても、ぜひSMARTの法則を使用した目標設定を行いましょう。人事採用には新卒採用・中途採用がありますが、どちらにおいても具体的かつ可視化できる指標を設定することが必要です。たとえば、採用活動における指標としては、採用人員数や応募者数、面接回数、オファー数、オファー承諾数、オファー承諾率などがそれにあたります。また、採用後の目標には、入社後の採用者の満足度や配属先上司の満足度、採用人員の平均在職期間なども項目に入れましょう。

SMARTの法則を使った目標設定の具体例2:人事全般

配置や異動、人事評価などに関する人事全般においても、SMARTの法則を活用できます。まず、配置や異動などでは、配置に関する従業員の満足度や、配属先上司の満足度、異動希望者の人数などの項目で、具体的な目標設定が効果的となります。また、人事の評価においては、評価の結果集計や分析、評価システムの構築などにおいて目標を設定することが可能でしょう。さらに、公平性が求められる人事評価においては、誰が見ても明らかになるよう数値で判断ができる目標設定が望ましいとされます。目標設定の例としては、従業員の残業時間数や有給消化率、離職率、KPI達成率なども挙げられます。

SMARTの法則を使った目標設定の具体例3:人材育成現場

人材育成の現場においては、従業員の成長を期待したプログラムの策定が必要となり、ここでもぜひSMARTの法則を活かしましょう。人材育成やキャリア開発に必要な研修を実施する場合も、研修の実施数や参加率、研修の満足度などの指標を具体的な数値で管理することをおすすめします。また、資格取得者数やTOEICなどの試験の平均スコア、外部講座を受講した際の人事評価なども有効な指標となります。OJTで実施される機会が多い人材育成においては、OJTプログラムの実行率や満足度なども目標設定に加えましょう。

SMARTの法則を活用するポイント

SMARTの法則を活用するポイント1:行動目標も意識する

目標には2種類あり、それはこうありたいと願う理想像である「成果目標」と、成果目標を達成するために行うべきアクションの「行動目標」です。一般的に目標の意味で使われるのは成果目標のことで、行動目標を意識している人はそれほど多くないでしょう。しかし、成果目標だけでなく、行動目標を設定することで目標の達成率を大きく上げることができるのです。たとえば、成果目標にプロジェクトリーダーに抜擢されるという目標を設定したとしましょう。

このとき、「一つひとつの仕事に丁寧に取り組む」「業界に必要な専門知識を身につける」「必要な資格を取得する」などが具体的な行動目標となります。行動目標を設定することで具体的なアクションが明確になり、効率良く目標の達成を実現できるのです。

SMARTの法則を活用するポイント2:目標管理もPDCAを回す

SMARTの法則の効果をより高めるためには、PDCAサイクルをしっかりと回すことも重要なポイントとなります。「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Act(改善)」の4つの段階を実施することで計画の成功率や質を高めることができるPDCAサイクル。PDCAを回す際には、「現在の行動が目標達成に対して有効なのか」「設定した目標や指標は現実的であったか」「外部環境に変化はないか」などをモニタリングしながら、必要があれば目標や行動を変更することも必要となります。

SMARTの法則を活用するポイント3:SMARTの発展パターンも活用する

前述した通り、SMARTの法則はさまざまな著名人によって発展型が提唱され、ドラン氏が示した内容とは異なる要素も生み出されています。企業や個人にとって最適な目標設定を行うためにも、それぞれの要素がどのような目的のもとに生み出されたのかを知ることは大切です。これらの要素にも意識を向けることで、より質の高い目標設定が実現できるでしょう。たとえば、「Achievable」の派生としては、「Accountable(確認可能か)」「Action-oriented(行動を促すことが可能か)」「Attainable(目標に到達することができるか)」「Agreed upon(同意は取れているか)」などが挙げられます。

また、「Realistic」の派生には、「Reasonable(合理的な目標か)」「Relevant/Relation(上位目標との関連性はあるか)」「Result-based(成果に基づいているか)」「Rewarding(やりがいがあるか)」など、「Time-bound」の派生には「Time-line(スケジュールは適切に組まれているか」「Timely(達成期限が長過ぎないか)」「Trackable(目標達成に向けた取り組みの経過が追跡可能か」などがあります。

FASTの法則との違いは?

SMARTの法則の他に、目標設定に有効とされるのが「FASTの法則」です。FASTの法則とは、「Frequent(頻繁に)」「Ambitions(野心的な)」「Specific(具体的な)」「Transparent(透明性のある)」の4つを要素とする法則で、マネジメント専門家のドナルド・サル氏とチャールズ・サル氏によって定義されました。SMARTの法則は、比較的実現可能な目標を効果的に設定する手段として活用される傾向があるのに対して、FASTの法則はより野心的で挑戦的な目標を設定する場合に効果的となることが特徴です。どちらにもそれぞれメリットとデメリットがありますが、時には野心的な目標を掲げることでより優れた成果を発揮することが可能となるでしょう。

たとえば、「世界一を目指す」という目標を掲げた場合、少なくとも日本一にはなることができるかもしれません。ただし、あまりにも目標が野心的になりすぎると達成の可能性が低くなり、モチベーションが下がることにもつながるので気をつけましょう。また、両者に共通することとして、目標設定後には定期的にその目標を評価することが大切です。「現在の行動は目標に近づいているものなのか」を都度確認し、目標達成へ向かって効率的にアクションが取れるようにしましょう。

SMARTの法則を発展させた法則

SMARTの法則は提唱者によって頭文字が異なる発展型があります。代表的なものが「SMARTER」や「SMARTTA」、「SMARRT」などでしょう。SMARTERとは、SMARTに「ER」が追加されたものです。このERとは「Evaluated(上司の評価)」と「Recognized(承認された)」という意味を持ち、上司の評価や承認を得られたかを指標とする考え方です。また、SMARTTAは「TA」が加わったもので、「Trackable(目標へ向けての取り組みの経過を把握できる)」と「Agreed(当事者間の合意がある)」を意味しています。Trackableであることで、現在どのレベルに到達しているのかや、次にどのようなアクションを起こすべきなのかを判断することができます。

また、それぞれのチームメンバーが自分の考えだけで目標を設定しても全体としての目標の実現は難しいでしょう。Agreedを意識することで、誰もが納得して取り組める目標を立てることができます。SMARRTはSMARTに「R」がもう一つ付け加えられた形で、「Realistic(現実的であるか)」を指標に加えたものです。内容的にはSMARTのAchievableと同様の意味と捉えると良いでしょう。SMARTにさらにこのような要素を加えることで、より合理的で具体的な目標を設定することができます。

SMARTの法則を使った目標を達成するポイント

SMARTの法則をもとに目標を達成するためには、押さえておきたい3つのポイントがあります。まずは、目標を達成するための行動をスケジュールに組み込むことです。たとえ目標を設定しても、毎日のスケジュールに組み込まれていないと目標達成に近づけないことがあります。「今月は15社にアポを取る」という目標を設定したら、「毎日午前中に5社に営業の電話をかける」などの行動を設定するといいでしょう。2つ目のポイントは、定期的に目標を見直すことです。たとえ目標を設定しても、企業の現状に適した目標でなければ意味がありません。また、実現不可能な目標の場合、従業員のモチベーションを下げる可能性もあります。

一方、実現が簡単すぎる目標では企業が成長することはできないでしょう。企業にとって必要な目標であるためにも、定期的に目標や行動を見直すことがおすすめです。また、3つ目のポイントとなるのが、業務上のさまざまな行動を見直して目標の達成につながらないことはやめることです。「いつ、どのような行動を起こしたのか」を記録しておくことで、無駄な時間をあぶり出し、なくすことができるはずです。

SMARTの法則を取り入れて、達成できる目標を

こちらの記事では、SMARTの法則について解説しました。企業は実現可能な高い目標を設定することで成長できると考えられています。SMARTの法則の5つの要素「Specific」「Measurable」「Achievable」「Realistic」「Time-related」をしっかりと理解し、具体的で数値化できる目標を設定することが重要です。SMARTの法則をうまく活用して、企業の目標達成や従業員のモチベーションアップに役立ててみてはいかがでしょうか。

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参考:『仕事・人生・自分』を変える学びのメディア『Life&Mind +』:成果が変わる目標の立て方|心理スキルを使った具体的な6つの方法

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