2020.05.01

業務委託契約のひとつ「委任契約」とはどんな契約?

業務委託契約のひとつ「委任契約」とはどんな契約?

働き方の多様化によりフリーランスとして活動する個人や法人が増えています。また、IT技術の進歩によって条件に合った企業を探して外部に仕事を任せることも容易になりました。それに伴い企業の業務委託が増加し、契約書を作成しなければならないケースも増えてきています。この記事では業務委託のひとつである「委任契約」のポイントや契約締結時の注意点を解説します。

業務委託の2つの契約形態とは

企業が外部に業務を委託する場合には、「請負契約」か「委任契約」の2つの契約形態があります。後ほど詳しく説明しますが、納品物・成果をあげることを契約するのが請負契約、業務自体に対して報酬を支払うことを契約するのが委任契約です。企業は目的に合わせてどちらかの形態を選ぶか決めることになります。ただし、実際には委託業務の一部を請負契約、その他を委任契約などとすることも少なくありません。この場合、「請負契約」と「委任契約」の混合形態として扱われます。これら全ての契約において企業と外部の受託者の関係は対等です。両者の間に実質的な指揮監督関係がある場合には「雇用契約」が結ばれます。

業務の結果を目的とした「請負契約」

請負契約は業務を完成させて成果や納品物をあげることを目的にした契約です。そのため、業務を完了したけれど結果が出ていない場合は対価が発生しません。業務が未完了の場合も同様です。請負契約をするケースは、たとえばデザイナーにパッケージデザインを依頼するような場合です。請負契約を交わすと、デザイナーに納期までにデザインを納品する義務が発生します。営業代行の場合も請負契約が適しています。たとえば、ある期間で売上を100万円上げるなどが目標の場合です。売上金を決めずに売上の何%の報酬を支払うという形での契約もできます。

業務の遂行を目的とした「委任契約」

委任契約は、業務を遂行することを目的とした契約です。業務をしさえすれば対価が発生することが請負契約との大きな違いです。たとえば、新入社員研修を外部に委託する場合は、外部機関は研修するだけで対価が発生します。もし、新入社員が熱心に学ばず成果がでなくても対価に影響を与えることはありません。「成果がなくても対価が発生することで委託側が損失を受けるのではないか」と考える人もいるでしょう。しかし、委任契約では受託者に「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)」が発生し、業務遂行にあたって細心の注意を払うことが義務付けられています。

契約形態の選び方のポイント

請負契約と委任契約のどちらの契約形態を選ぶかは、委託する業務内容によって異なります。納品物や成果が目的でそのプロセスは関係ないなら請負契約を選び、業務を遂行すること自体が目的の場合は委任契約を選びましょう。たとえば、店舗経営において繁忙期のみ業務委託したいケースがあったとします。この場合、注文を受けて商品を制作し顧客に納品するなどの成果を目的にするなら請負契約を選び、店番を任せるなど事務処理を頼むだけの場合は委任契約を選びます。

請負契約と委任契約の比較

請負契約と委任契約における契約目的の違いは、請負契約が業務の完成を目的にするのに対し、委任契約は業務の処理を目的としていることです。受託者の報酬請求権の違いは、請負契約では依頼者が予測した成果を出せたときに報酬請求権が発生するのに対し、委任契約では業務を処理すれば報酬請求権が発生します。一般的に、請負契約では業務の実施によって成果を出す義務がありますが、委任契約にはこの義務がありません(厳密には契約内容によります)。受託者の業務の責任に関しては、請負契約の場合は業務の成果に対する責任を負います。これを「完成義務」「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」といいます。一方、委任契約の場合は業務の過程に対する責任(善管注意義務)が生じます。

請負契約と委任契約という分類方法の他にあるのが「成果納入型」と「役務提供型」という業務委託契約書の形式での分類です。成果納入型はその名のとおり成果物が発生する業務内容に用いられます。そのため、原則的には請負契約です。役務提供型は企業のシステム保守など特定の役務を提供する委託業務に適用します。業務の処理を目的としているため、一般的に委任契約になります。ただし、たとえば設備移設の役務を担う場合では、当然ながら移設が完了していなければ契約の意味がありません。そのため、こうした業務内容の場合、委任契約ではなく請負契約の方が適当なケースもあります。

委任契約と準委任契約

ここまで委任契約という用語を使ってきましたが、法律上は「委任契約」と「準委任契約」に分けられます。委任契約とは法律行為に関する契約のことです。たとえば税理士に業務を委任するなどは法律行為にあたるので委任契約となります。民法第643条(委任)には「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」(※1)と書かれています。一方、準委任契約は法律行為でない事務の委託です。たとえば、プログラマーやデザイナーに委託する業務は法律行為ではないので準委任契約になります。民法第656条(準委任)には「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する」(※2)と書かれています。この記事のように委任契約と準委任契約をまとめて委任契約として使うこともありますが、実際に契約を交わす際は明確な区別が必要です。

(※1)WIKIBOOKS_https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC643%E6%9D%A1(引用日:2020.3.7)
(※2)WIKIBOOKS_https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC656%E6%9D%A1(引用日:2020.3.7)

委任契約における受託者の義務・責任1:委託業務に着手する義務

委任契約における受託者の義務は5つあり、1つ目が委託業務に着手する義務です。当然ですが、契約したからには契約した内容を果たす義務が生じます。民法第541条(履行遅滞による解除権)には「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる」(※1)とあります。なお、この法律は委託業務に関してだけでなく、民法の契約全般に適用される法律です。もし受託者がこの義務を守らない場合、委任者は契約を解除できます。

(※1)WIKIBOOKS_https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC541%E6%9D%A1(引用日:2020.3.7)

委任契約における受託者の義務・責任2:期限を守る義務

受託者の2つ目の義務は、期限を守る義務です。期限を過ぎれば遅滞の責任を取らなければなりません。民法第412条(履行期と履行遅滞)で「1 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う」(※1)と定められています。この条文にあるように法律では期限のことを「確定期限」と呼んでいます。なお、ビジネスではあまりありませんが、期限を明確に決めない「不確定期限」の契約の場合に遅延の責任が発生するのは、期限がきたことを受託者が知ったときです。また、期限を定めない場合は委任者から請求を受けたときです。

(※1)WIKIBOOKS_https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC412%E6%9D%A1(引用日:2020.3.7)

委任契約における受託者の義務・責任3:再委託はできない

受託者は委任された業務を自ら行う義務があります。第三者に再委託することはできません。これは委任者が契約した内容が実行されない恐れがあるからです。ただし、委任者が認めた場合ややむをえない事情がある場合は、再委託ができるケースもあります。民法第104条には「委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない」(※1)と書かれています。

再委託をした場合でも委任者に対する責任は移りません。この根拠となっているのが民法第105条の「1 代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う」(※2)という内容です。しかし、「2 代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない」(※3)という条文もあります。つまり、委任者から再委任先を指定された場合は、責任の所在が移るのです。けれども、再委任先が信用できない相手と知りながら再委任をした場合、受託者が責任を負わなければなりません。

(※1)WIKIBOOKS_https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC104%E6%9D%A1(引用日:2020.3.7)
(※2)WIKIBOOKS_https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC105%E6%9D%A1(引用日:2020.3.7)
(※3)WIKIBOOKS_https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC105%E6%9D%A1(引用日:2020.3.7)

委任契約における受託者の義務・責任4:最低限の注意を払う義務

4つ目の義務は、最低限の注意を払う義務であり、これは先に解説した「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)」のことです。民法第644条には「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」(※1)とあります。善管注意義務とは、受託者の社会的な地位や職業、能力などを客観的に考えた結果、常識的に取るべき誠実な行動、姿勢のことです。しかし、その義務は契約に関係する法令や契約内容によって変わってくるうえ、具体的にどのような義務が生じるのか客観的な基準がありません。そのため、両者の意見が対立したときは、最終的に裁判所が判断を下します。

(※1)WIKIBOOKS_https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC644%E6%9D%A1(引用日:2020.3.7)

委任契約における受託者の義務・責任5:報告義務

民法第645条(受任者による報告)には「受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない」(※1)とあります。つまり、委任者から問い合わせがあればいつでも現状報告する義務がありますし、業務が完了したときや期限が来たときも報告しなければなりません。

(※1)WIKIBOOKS_https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC645%E6%9D%A1(引用日:2020.3.7)

委任契約を結ぶ際の注意点

委任契約を結ぶ際に特に注意しておきたいのは、情報漏洩のリスクです。業務委託は外部への委託になるため、最低限のデータは渡さなければなりません。たとえば発送業務における顧客データなど、委託をする企業の機密情報や個人情報の一部を渡さなければならないことも多いので、信頼できる相手か十分に確認したうえで契約を交わすことが重要です。法律的な情報漏洩の防止策としては守秘義務(秘密保持義務)について契約を交わすのが一般的です。

委任契約は成果物がないため、なかには手を抜くような業者もいます。委任契約は守秘義務を怠らず、なおかつスムーズに業務を遂行できる相手と契約しましょう。善管注意義務がありますが、基準があいまいなので満足できる事務処理をしてくれないなどのケースも考えられます。誠意を持ってスムーズに業務を遂行してくれるかどうかということについて、実績や評判などを確かめたうえで業者を選定することが必要です。

請負契約を結ぶ際の注意点

請負契約の場合は納品物、成果が重要です。極端な話、作業が滞ったり試行錯誤があったりしても、納期までに結果が出れば依頼した側として問題ないはずです。しかし、成果物が出ないときは報酬を支払う必要はありませんが、多くの場合、自社の業務に影響が出るのは避けられません。請負契約は業務をきちんと仕上げてくれる相手を選びましょう。また、納期だけでなく、希望した水準以上の成果物であるかも重要です。初めて契約する取引先の場合は、過去の実績を問い合わせたり、成果物のサンプルを見せてもらったりしたほうが安全です。修正に迅速に対応してくれそうかなどということも併せてチェックしておきます。

委任契約でよくあるトラブル

ここでは委任契約でよくあるトラブルを6つ紹介します。

1つ目は遂行するべき業務を契約で明確にしておかなかったため、委任者と受託者が後でもめるケースです。請負契約と違って成果物がない委任契約では特に注意が必要です。当然ながら、契約書に書かれていないことをする必要はないので、たとえ誠意を持った業者などであっても希望する対応をおこなってもらえないことも考えられます。

2つ目は報酬を巡るトラブルです。たとえば残業が発生した場合には追加で支払うのか、それとも固定報酬なのかなどを明記しておく必要があります。また、支払いは前払いか後払いか、一括か分割かなどもしっかり決めておきましょう。

3つ目によくあるトラブルの原因は、業務を処理する際にかかった諸費用の分担です。初期費用はできるかぎり細かく見積って分担を決めておくのはもちろん、追加発生しそうな費用も想定しておき、どちらが負担するのかあらかじめ決めておきましょう。

4つ目は報告義務に関するトラブルです。委任契約では委任者からの問い合わせに受託者は常に応じる義務があります。ただし、納期までは委任者が請求する権利はありません。納期の前倒しなどをすると契約違反になってしまうため発言には注意しましょう。

5つ目でよくあるトラブルは委任契約中に受託者が委任者から受け取った物品の引き渡しです。委任契約は事務処理を行うことを依頼されているだけなので、物品を委任者に返す必要があります。長期に渡る委任契約では自分の所有物のように勘違いしてしまう受託者もいます。委託前や委託業務中の物品管理を記録に残しておくことがトラブル回避に必要です。

6つ目は業務に関する責任問題です。たとえばコールセンター業務を委託した際に、顧客とのトラブルで生じた賠償問題をどちらが負担するかなどが考えられます。このトラブルは契約段階で細かく規定していないことが原因であることがほとんどです。必要なら法律の専門家などに相談するなどして、漏れのない委任契約書を作成しましょう。

準委任契約書の書き方を紹介

準委任契約書には決まったフォーマットはありませんが、Webサイトで無料ダウンロードできるテンプレートなどを使うのが便利です。しかし、業務の内容や目的によって記述するべき内容は異なります。以下の8項目の内容は多くのケースで必須の項目になるので、まずこれらからチェックしていきましょう。不慣れな場合は弁護士や行政書士に作成を依頼する方法もあります。

必ず必要なのは「業務の目的」です。目的が明確に記述されていないと業務の遂行の方向性がずれてしまうため、抽象的・大雑把すぎる内容はよくありません。次に必要なのは「業務の遂行方法」です。手順やルールについてできるだけ具体的に細かく書きましょう。ただ、全てを書くのは難しいので「**に関する業務の一切を含む」などの条項を設けて漏れがないようにするのが一般的です。「業務遂行に関する禁止事項」も項目を設けて記述しておきましょう。

また「契約期間」も必要です。初めの契約期間はもちろん、継続して委託する可能性がある場合は自動更新の有無なども明記しておきます。「報酬と報酬の支払時期」には報酬の額、支払い時期について明記します。追加業務で生じる報酬や、分割か一括支払いかなども書いてあると後々トラブルになりにくいはずです。業務過程で著作権やその他の知的財産権が発生する場合は「著作権や知的財産の帰属」についても記述が必要です。自社の機密情報を受託者に渡す場合には「秘密保持」に関する項目も欠かせません。細かな規定に関しては、秘密保持契約書など別の書類にすることも一般的です。また、万一のために「損害賠償」の項目を設け、契約違反などがあったときの損害賠償について記述しておきましょう。

準委任契約の印紙と金額は?

準委任契約書を提出する際には原則的に収入印紙は要りません。準委任契約の契約書は非課税文書であり、印紙税法に特に規定されていないからです。ただし「印紙税法別表第一 課税物件表」が定めている「第1号文書」や「第7号文書」にあたる場合は、特別に印紙が必要になります。第1号文書の定義は印紙税法別表第一 課税物件表に「無体財産権(特許権や商標権など)の譲渡に関する契約書」と書かれています。たとえば、システム開発業務委託契約書・プログラム業務委託契約書・アプリ業務委託契約書などは第1号文書です。

7号文書の定義は印紙税法施行令第26条に「売買の委託に関する契約書」「売買に関する業務の継続委託に関する契約書」と書かれています。代理店契約書・販売店契約書・アフィリエイト契約書などが第7号文書です。第1号文書の印紙税額は契約書に書かれた契約金額によって変動します。たとえば、1万円未満は非課税、100~500万円は2,000円、1,000~5,000万円は2万円、1~5億円は10万円などと決まっています。第7号文書は一律4,000円です。

会社を強化するために委任契約を活用していこう

業務委託をする企業が増えてきました。請負契約や委任契約の契約書を作成する機会も増えるため、担当者は目的に応じてどちらを選択するべきか決める必要があります。また、契約に関する義務や注意点についての知識を持ち、契約書に記述するべき内容を理解しておくことなども重要です。契約前の準備を怠らないことで業務効率を向上させましょう。

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