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2020.11.16

これを読めば完全理解!借り上げ社宅(住宅)のことを細かく紹介!

住居にかかる費用負担を軽減するために、社員にさまざまな支援をしている企業は珍しくありません。その中でも、時代のニーズに合わせて増加傾向にある「借り上げ社宅制度」について興味のある方もいるかもしれません。名前は知っているものの、詳しい仕組みや特徴まではわからないという方も多いでしょう。この記事では、そんな借り上げ住宅について、基礎知識からメリット・デメリット、導入時の注意点まで幅広く紹介します。

借り上げ社宅とは

借り上げ社宅とは、企業が賃貸物件を契約し、社宅として社員に貸し出す住居で、借り上げ住宅とも言います。基本的には企業が直接不動産会社などと連絡を取ったり、初期費用を支払うなどして住居を用意します。企業が貸し出すとはいえ、実際には社員が希望の住宅を選んで企業に手続きを依頼するケースが多いです。家計に占める住宅費の割合はかなり高いため、その費用を企業が支援してくれる借り上げ社宅は、社員満足度の高い福利厚生として人気が高まっています。また、社員だけでなく企業側にもさまざまなメリットが期待できるため、導入している企業も少なくありません。

借り上げ住宅と住宅手当の違い

企業が社員の住居費用軽減のために行う支援としては、借り上げ社宅のほかに「住宅手当」の制度も一般的です。両方とも結局は金銭的な支援である点は同じであり、何が違うのか疑問に感じている方も多いでしょう。まず、借り上げ社宅とは、企業が不動産会社と契約して賃貸物件を借り、それを社員に貸し出すものです。物件の借主は企業であり、社員は決められた金額の家賃を企業に支払うことになります。これに対し、住宅手当は企業が社員の住居費用の一部を負担するものであり、物件の借主はあくまでも社員本人です。家賃は企業ではなく社員が直接不動産会社や大家に支払い、企業が決めた金額の手当てを給与支給時に一緒に受け取ります。 このように、借り上げ社宅と住宅手当では、「賃貸物件の契約者は誰か」「住居費を誰に対して支払うか」という点が大きく異なります。そして、これらの点が両者のメリット・デメリットにもつながることになるのです。借り上げ社宅のメリット・デメリットについては、次の段落で従業員と企業それぞれの視点から詳しく見ていきましょう。

借り上げ社宅と社有社宅の違い

社員が希望の住宅を選び、企業が貸主と賃貸借契約を取り交わし、社員に貸し出す借り上げ社宅に対し、社有社宅は企業が物件を所有して社員に貸し出す住居です。基本的に企業側があらかじめ決めた場所に既に建っており、社員が住む場所を選べません。また、周囲に同じ企業の社員ばかり住んでいたり、門限やルールがあったりして自由度があまりないため、ニーズの低下とともに減少傾向にあります。借り上げ社宅は家族構成や用途により、場所を選択できますが、 社有社宅は会社が所有しているため、選択肢がほとんどありません。
また、社有社宅の場合は築年数が経過しているケースも多く見受けられます。
社有社宅と似た制度に社員寮があります。社員寮は単身向け、社有社宅は世帯向けというイメージで定着しています。

借り上げ社宅の初期費用にはどんなものがある?

住宅の賃貸借契約の際に掛かる敷金礼金などの初期費用は借り上げ社宅でも掛かります。下記が一般的な初期費用の項目です。すべてが掛かるわけではなく、その住宅の賃貸借契約により掛かる場合と掛からない場合があります。

敷金

敷金とは物件の賃貸借契約を新規で行う際に、貸主に支払う費用のことです。敷金は、賃料の不払いや未払いの補てんや入居中の不注意や故意による汚損や毀損(傷や汚れ)などの退去時の修繕回復に使われます。
通常生活の中での損耗や劣化は原状回復の義務はありませんが、うっかりまたは意図的な傷などは修繕義務が発生します。修繕費用は、敷金から補填される場合が多く、かかった費用を差し引いて退去時に契約者に返金されます。

礼金

賃貸借契約を行う際に、貸主に支払うお金という点は敷金と同じですが、敷金と違い、礼金として支払ったお金は退去時に返金されることはありません。もし敷金がなく、礼金のみ契約時にかかる場合には、原状回復のための費用等は退去時に支払う必要があるため覚えておきましょう。

前家賃

賃貸物件を借りる際には、初期費用の中に「前家賃」という項目で家賃が請求されます。前家賃は、入居月の家賃のことです。月の途中から入居する場合には、日割りで計算した入居月の家賃と翌月の家賃を支払うことが多いようです。ただし物件によりことなるため、借りる際には不動産会社や仲介業者に確認しましょう。

仲介手数料

仲介手数料は、賃貸住宅を借りる際に、貸主と借主の間に入って調整や契約事務などを行う不動産会社(仲介会社)に支払う手数料のことです。 仲介手数料は取引が成立したことに対する成功報酬なので、物件の賃貸借の仲介を依頼したものの、賃貸借契約が成立しなかった場合は支払う必要はありません。

火災保険料

火災保険は、火災のほか、台風や大雨などの自然災害、盗難などによって被害を受けた際に補償を受けるための保険です。火災保険への加入は任意ですが、賃貸住宅の中には、賃貸借契約の条件で火災保険への加入が必須となっている場合があります。保険料は契約期間分をまとめて支払うことが一般的です。

保証料

賃貸物件を契約する際に貸主に預けるお金として、保証金というものがあります。保証金は西日本で多い商習慣で、敷金・礼金に加えて支払うものではありません。敷金と同じような賃料不払いの補てんや原状回復利用目的で使われる費用として支払いますが、かかった費用を差し引いて返金される敷金と異なり、敷引き特約という礼金の意味合いの費用も含まれている場合もあり、敷引きの金額も差し引かれて返金されます。また、保証金の相場は敷金よりも高めです。

鍵の交換費用

前の入居者は鍵の返却しますが、合鍵を作っていることもあり、新規入居の際には鍵を交換することが一般的です。鍵の交換にかかる費用は初期費用として1〜2万円ほど掛かります。

引越し費用

引越しの際に掛かる費用は距離や荷物の量により異なります。また、引越しの多い3〜4月は価格が高騰します。引越し業者により代金の違いが大きいため複数社から見積もりを取ることがおすすめです。

借り上げ社宅の初期費用は会社負担?自己負担?

住宅を借りる際の初期費用のトータルは、家賃の4〜5ヶ月分が目安と言われています。個人で住宅を借りる際には個人で負担しますが、この費用をすべて賄うとなると大きな出費です。借り上げ社宅の場合、基本的には法人契約のため、会社が負担することが一般的です。福利厚生の面からも、初期費用は会社負担にしている会社が多いようです。ただし、法律的には、企業が負担しなければならないわけではないため、社宅管理規定で一部を従業員が負担するように定めることもできます。トラブルを回避するためにも、借り上げ社宅を新たに導入する際には社宅管理規定をきちんと定め、社員に周知することが重要となります。

【従業員】借り上げ住宅のメリット

手続きの負担が少ない

通常、賃貸物件を借りるには、不動産会社とやり取りして希望条件に合う物件を探し、契約書を交わして敷金・礼金などの初期費用を振り込まなければなりません。入社や転勤時、社員は引越しや転居にともなう手続き、業務の引き継ぎなどさまざまなことを済ませる必要があります。これに加え、住居探しや不動産会社とのやり取りを行うのは大きな負担です。この点、借り上げ社宅は企業が手続きを進め、あとは入居するだけの状態に整えてくれるため、社員の負担は大きく軽減されます。 家賃も借主である企業が支払うため、振り込み手続きや、家賃引き落とし用の口座開設手続きなどもする必要がありません。不動産会社と直接契約する一般的なケースと比べ、社員が負担する家賃も抑えられることがほとんどです。

初期費用が抑えられる

住宅を借りる際には初期費用が掛かります。借り上げ社宅の場合、企業が契約者となるため、会社が負担することが一般的です。住宅を借りる際の初期費用は賃料の4〜5ヶ月分と言われていますが、その費用を個人で支払わずに済むのはメリットと言えるでしょう。ただし、個人で負担すると社内規定で定めている場合もあるため、企業の社内規定がどのようになっているかを確認するようにしましょう。

所得税の節税効果

借り上げ社宅では、基本的に企業が決めた住居費を給与から天引きという形で支払います。その分収入額が減って所得税も少なくなるため、節税効果を得られるのです。 また、住宅手当を受け取る場合、給与にプラスされて支給されることで社会保険料まで高くなってしまいます。住宅手当を受け取りながら昇給した場合、社会保険料の値上げ幅によっては、逆に手取りが減ってしまう可能性もあるほどです。借り上げ社宅であれば、住宅手当と違って見た目の給与が増えないため、このように所得税や社会保険料などの面で不利になる心配もありません。

家賃や更新料の負担が軽減される

借り上げ社宅の契約更新料なども会社が負担してくれるため住み始めてからの費用負担も少なく済みます。借り上げ社宅の家賃は、会社が設定することができます。従業員の所得の計算上、賃貸料相当額の50%以上に設定すると給与として計上する必要がないため、一般的には50%以上で設定されることが多いようです。個人で借りるより低額で済むところも利点と言えます。

【従業員】借り上げ住宅のデメリット

借り上げ社宅を導入した場合、従業員は3つのデメリットに注意が必要です。

自由度が制限される

社員の都合に合わせた立地や間取りなど、好きな物件に住めない可能性があります。社員寮と比べるとある程度物件の選択肢は増えるものの、企業と付き合いのある不動産会社や、所定の物件の中から選ばなければならないケースも珍しくありません。指定された物件の中に気に入ったものがなければ、不満を感じながらの生活になってしまうこともあるでしょう。

社会保障額が減る可能性がある

社会保険料は給与の額によって決まるため、住居費が天引きされて給与が減ると、社会保険料も少なくなります。現時点での負担が減るのは良いのですが、社会保険料は年金や医療、労働災害や失業などさまざまな社会保障給付の基礎となるものです。このため、社会保険料が減ると受け取れる社会保障額まで減り、将来経済的に困る可能性もあるので注意しましょう。

退職時に退去しなければならない

借り上げ社宅は企業と不動産会社との契約で借りているものなので、企業を退職すれば退去を求められる可能性が高いです。将来的に転職を考えている場合などは、慎重にライフプランを練って計画的に住宅を決める必要があります。

【企業】借り上げ住宅のメリット

借り上げ社宅は、社員だけでなく企業にとってもさまざまなメリットがあります。

節税効果

給与から天引きする借り上げ社宅なら給与の支給額が減るため、節税に繋がります。契約した物件の家賃は非課税または福利厚生費として経費扱いになるため、節税効果があるのです。それだけでなく、社員の見た目の給与が減るため社会保険料が減り、企業が負担する社会保険料も減ります。社員が企業に支払う家賃は非課税の雑収入となり、企業の利益になる点も魅力です。

従業員エンゲージメント向上につながる

労働者からの人気が高い借り上げ社宅を導入していることで、求人の際にアピールすることもできます。福利厚生が充実した企業だというイメージが広がれば、より人材が集まりやすくなるでしょう。すでに働いている社員に対しても、家賃や税金の負担を軽減できることで、モチベーションやエンゲージメントを高める効果も期待できます。このほか、自社が物件を所有する場合と比べ、建物を管理する費用や手間がかからないという点も大きなメリットです。

【企業】借り上げ住宅のデメリット

数多くのメリットがある一方、デメリットにも注意しなければなりません。

予想外の費用が発生してしまうリスクがある

企業が不動産会社と物件の長期賃貸借契約を交わした場合、予想外の費用が発生してしまうリスクがあります。長期賃貸借契約では契約年数が決まっており、社員が入居していなくても家賃を支払ったり、解約時に高額な違約金を請求されたりすることも少なくありません。また、通常なら物件に住む人が負担する敷金や礼金、退去時の原状回復費用なども、企業が負担しなければならないケースがほとんどです。

事務作業が発生する

借り上げ社宅を利用する社員が多いほど、契約手続きや支払手続きなど事務的な手間も増えるため、本来の業務の生産性が低下する恐れもあります。

借り上げ住宅の注意点

借り上げ社宅は節税効果があるだけでなく、充実した福利厚生の対外的なアピールになるなどさまざまなメリットがあることがわかりました。しかし、メリットだけを重視して導入を決めるのはおすすめできません。実際に導入するにあたって注意するべき点はほかにもいくつかあり、事前にしっかりルールを決めて導入しないとトラブルのもとになる恐れもあります。次は、借り上げ社宅を導入する際に注意したい4つのポイントについて、具体的に見ていきましょう。

借り上げ社宅の注意点①賃貸借契約は会社が行う

そもそも借り上げ住宅とは、企業が不動産会社と直接賃貸借契約を交わした住居のことを指します。つまり、契約の名義は法人でなければなりません。もし、社員本人が賃貸借契約を交わしていると、企業が家賃の一部を負担していたとしても借り上げ住宅とは認められないのです。契約以外にも、敷金・礼金や火災保険料など、契約に付随して発生する費用を社員が支払っていると、法人の契約と見なされないこともあるので注意しましょう。借り上げ住宅と認められなかった場合、企業が支払う家賃分が給与と見なされ、課税対象になる可能性もあるので要注意です。

借り上げ社宅の注意点②光熱費は従業員が負担する

借り上げ住宅は、あくまでも社員が住む住居の費用を企業が支援するという制度です。費用の対象となるのは家賃のみであり、水道光熱費など社員の生活にかかる費用については企業が負担することはありません。生活費は原則として社員自らが負担しなければならず、仮に企業が水道光熱費まで支援すると、その分は社員に利益があったと見なされて給与扱いになってしまいます。住宅手当を受け取るのと変わらず、税金や社会保険料の対象となって余計に負担が増えることもあるでしょう。

借り上げ社宅の注意点③社宅規定を作る

借り上げ社宅を導入する際は、事前に明確な社内規定を作成しておくことが一般的です。いくら企業が用意した住居とはいえ、実際に住むのは社員であるため、利用上のルールを決めておかないとトラブルが発生する恐れもあります。トラブルの内容によっては不動産会社とのもめごとに発展したり、スムーズな入退去ができず業務に支障が出たりする可能性もあるので注意しなければなりません。家賃のうち社員と企業が負担する金額や責任を負う範囲、住居に住める人の範囲、退去条件など、特にトラブルになりやすい項目を規定に定めておくと良いでしょう。これらの規約に違反した場合、どのように対処するかという点も明確に決めておくことが大切です。
なお、社内規定単独で作成するのではなく、就業規則も忘れずに整備しておきましょう。就業規則は、労働基準法によって労働基準監督署への届け出と、社員への周知徹底が義務付けられています。特殊な法的性質を持っており、社員が借り上げ住宅の規定に合意したことの証明にもなるので、トラブル予防に役立ちます。

借り上げ社宅の注意点④一定以上の家賃を受け取る

企業が借り上げ住宅で家賃を支払った場合、その金額を「地代家賃」として経費に計上することが認められています。経費は非課税なので企業にとって大きなメリットになりますが、借り上げ住宅なら必ず地代家賃になるわけではありません。地代家賃と見なされるためには、実際にその物件に住む社員などから、一定以上の家賃を受け取る必要があるのです。もし、企業が家賃を全額負担していたり、ほんの少ししか受け取っていなかったりすると、家賃相当額を現物支給したと判断される可能性もあります。こうなると、その住居は借り上げ住宅ではなくなり、家賃が非課税対象にならないため注意が必要です。
国税庁は、借り上げ住宅に住む社員から賃料相当額の50%以上を受け取っていれば、給与とは見なさないと定めています。賃料相当額については後述するので、内容を確認したうえでしっかり守るようにしましょう。

賃貸料相当額について

借り上げ住宅の家賃が給与と見なされないためには、賃料相当額の50%以上を社員が企業に支払う必要があります。たとえば、賃料相当額が4万円だった場合、借り上げ住宅として認められるには、そのうちの50%となる2万円以上を社員が負担しなければなりません。仮に社員が1万円しか支払っていなければ、本来の賃料相当額4万円との差額である3万円が、給与として課税対象になります。ここで言う賃料相当額とは、賃貸借契約書に記載された一般的な家賃のことではありません。
賃料相当額は、「その年度の建物の固定資産税課税標準額×0.2%」「12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3)」「その年度の敷地の固定資産税課税標準額×0.22%」の合計で計算されます。建物と敷地の固定資産税課税標準額は、固定資産税の課税明細書や固定資産課税台帳を確認したり、固定資産評価証明書を取得したりすると確認可能です。多くの場合、賃貸借契約書に記された家賃より安いことが多いので、社員に支払わせる家賃を決める際は事前によく確認しておきましょう。
ただし、業務の都合により、勤務場所から遠くに住むのが難しい社員に対しては、家賃の全額を企業が負担したとしても借り上げ住宅と認められることがあります。早朝・夜間勤務のある看護師や旅館スタッフなどが該当するので、合わせて確認しておくと良いでしょう。

借り上げ住宅については専門家のサポートを受けよう

借り上げ住宅は、社員にとっても企業にとってもメリットが多く、求人を出す際のアピールにもなることから非常に魅力的な福利厚生です。その一方で注意点やデメリットもあり、企業と社員それぞれが仕組みや特徴を理解したうえで活用しないと、思わぬ損をすることもあります。メリットを最大限に生かしつつスムーズに運営するためにも、専門家にしっかり相談して導入を進めましょう。

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