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2021.2.12

誤解されがちな「メラビアンの法則」!正しい意味と活用方法とは?

ビジネスシーンでしばしば耳にする言葉のひとつに、「メラビアンの法則」というものがあります。コミュニケーションスキルの向上に役立つなど考えられていますが、どのような法則なのか詳しく知らないという人も多いのではないでしょうか。メラビアンの法則は誤解されている点も多いため、正しい知識をつけておくことが大切です。

今回は、そんなメラビアンの法則の詳しい内容と活用方法を簡単にわかりやすく紹介します。

メラビアンの法則とは?アルバート・メラビアンの実験

メラビアンの法則とは、人と人がコミュニケーションを図る際、実は「言語情報7%」「聴覚情報38%」「視覚情報55%」という割合で影響を与えていることを示した心理学上の法則です。アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンによって提唱されました。

7-38-55ルール

メラビアンの法則は別名「3Vの法則」や「7-38-55ルール」などとも呼ばれています。言語情報(Verbal)、聴覚情報(Vocal)、視覚情報(Visual)が一致していない時に、どの情報が優先され、相手の印象に影響を与えるか示した概念です。この法則はアルバート・メラビアンの実験により導き出されました。実験内容を詳しく見ていきましょう。

実験① 「おそらく」という言葉をさまざまな口調で録音し反応をチェック

「Maybe(おそらく)」という言葉をさまざまな口調で録音し、実験の参加者に聞かせて反応をチェックする実験をしました。すると、柔らかい口調の「Maybe」を聞いた人より、強い口調の録音を聞いた参加者のほうが、より強く説得力を感じたことがわかりました。言葉そのものが持つ意味よりも、聴覚から得た情報で判断が左右されたことになります。

実験② 表情と矛盾する言葉の組み合わせで受け取る印象をチェック

さらに、「好意」「嫌悪」「中立」を示す表情の写真を用意し、それぞれの表情と矛盾するイメージの言葉と組み合わせて参加者に見せ、反応を確認しました。例えば、「ありがとう」という言葉を、「怒りの表情」の写真や「不機嫌な口調」の録音と組み合わせ、参加者に聞かせ、どのような印象を持ったか質問しました。このとき、参加者が本来の言葉の意味通り「好意」を感じ取れば言葉そのものの影響力が強く、逆に「嫌悪」を感じれば視覚や聴覚から得た情報が優先されたことになります。

このような研究を繰り返し、人が言語・聴覚・視覚から得られる情報のうち、どれがどの程度優先されるかを確認していったのです。その結果、コミュニケーションには「言語情報7%」「聴覚情報38%」「視覚情報55%」の割合で影響しているという「メラビアンの法則」が導き出されました。

実験から分かる「非言語コミュニケーションの重要性」

コミュニケーションは、2つの種類に分類できます。

①言語コミュニケーション(バーバル・コミュニケーション)

言葉を使ったコミュニケーションで、会話や文字などの印刷物、声の大きさやトーンなどで構成されます。

②非言語コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)

反対に、非言語コミュニケーションは、顔の表情やジェスチャー、服装、人との距離感など、言葉以外のあらゆるものが該当します。

メラビアンが行った実験からわかったことは、「非言語コミュニケーションがいかに重要か」という点です。コミュニケーションをとる際は話の内容が重要だと思いがちですが、実際には言語情報はわずか7%しか優先されていないことがわかりました。もちろん、話の内容を正しく理解したり伝えたりするために、言葉そのものが持つ意味は重要です。しかし、実際には聴覚と視覚から得る情報が93%優先される結果となり、言葉よりも「イメージ」が影響する可能性が非常に高いことを示しています。 メラビアンの実験内容でもあったように、言葉と口調・表情などが一致していない場合、人は表情やパフォーマンスを優先して判断する傾向にあるということです。無意識のうちに、非言語コミュニケーションを重視しているともいえるでしょう。

メラビアンの法則3つの要素とは具体的に?

メラビアンの法則を語るうえで、欠かせないのが「言語情報」「聴覚情報」「視覚情報」という3つの要素です。何となくイメージはできるものの、実際の日常生活で考えると何が当てはまるのか気になるかもしれません。次は、この3つの要素について詳しくチェックしてみましょう。

言語情報

言語から得られる情報には、話の内容や、言葉そのものが持つ意味などが当てはまります。たとえば、メールやSNSなどを使って相手とコミュニケーションをとる場合、そこには基本的に文字しか存在しません。事実を明確に相手に伝えることができますが、声や表情など非言語コミュニケーションが存在しないため、本心や含みを持たせたいことなどがうまく伝わらないケースも多いです。

聴覚情報

聴覚から得られる情報には、声の大きさやトーン、速さや口調などが該当します。話の内容はさておき、怒ったような話し方なのか、明るく話しているのかなど、話し手の感情を読み取りやすいです。顔の見えない電話などでは、基本的に聴覚情報から多くの情報を得ることになります。

視覚情報

視覚から得られる情報には、相手の表情やジェスチャー、視線の動きなどが当てはまります。これらはボディランゲージとも呼ばれ、言葉では表現しにくい感情や考えなどを伝えるのにも効果的です。メラビアンの法則によれば視覚情報が影響する割合は非常に大きく、たとえば「楽しい」と口にしながらつまらなそうな表情をすれば、聞き手は「つまらないんだな」と判断する可能性が高いとされています。

メラビアンの法則の誤解

コミュニケーションをとる際、非言語コミュニケーションが非常に大きな役割を果たすことに間違いはありません。ただし、メラビアンの法則は「非言語コミュニケーションが何より大切だ」と結論付けているわけではないため注意が必要です。「第一印象は最初の3秒で決まる」とも言われていますが、非言語コミュニケーションが優先される割合が93%という実験結果だけに注目し、言語コミュニケーションを軽視して「話の内容より第一印象を重視すべき」と誤解されているケースも珍しくありません。

メラビアンの法則は、言語・聴覚・視覚においてそれぞれ矛盾した情報を得たときに、どの情報が優先されるかを調べたものです。ごく単純なコミュニケーションについて、限定された特殊な環境下での研究結果に過ぎません。日常生活のすべてのシーンで、その法則がそのまま当てはまるわけではないのです。実際の日常会話では、シンプルな言葉や表情だけでなく、もっと長く複雑な言葉やボディランゲージなどを組み合わせてコミュニケーションが行われます。得られる情報量も非常に多く、それらを複合的に利用したり判断したりしなければなりません。

このため、日常的なコミュニケーションに「言語情報7%」「聴覚情報38%」「視覚情報55%」という割合が当てはまるわけではないと、正しく理解しておくことが大切です。メラビアンの法則を拡大解釈するあまり、相手の話の内容を無視するようなことがあっては元も子もありません。非言語コミュニケーションと同様に、言語コミュニケーションも重要なのだということを理解したうえで、ビジネスに役立てていきましょう。

メラビアンの法則の具体例

笑いながら叱った場合、「笑う」は「プラスの視覚情報」、「叱る」は「マイナスの言語・聴覚情報」のため、言われた人は、視覚情報である「笑っている表情」を優先し捉える場合が多いです。そのため、叱られているにもかかわらずそんなに重く受け止めない可能性もあります。
納得いかない表情で褒めた場合、「納得いかない表情」は「マイナスの視覚情報」、「褒める」は「プラスの言語・聴覚情報」です。この場合も視覚情報を優先して捉える場合が多く、褒められていると感じない場合が多いです。
このようなメラビアンの法則を理解していることで、ビジネスの場でも活用できるシーンは数多くあります。

メラビアンの法則を活用した相手に伝わる話し方のコツ

まず1つ目が、表情や身振り手振りを活用する方法です。同じ内容の話でも表情が違うだけで伝わり方は大きく異なります。表情を豊かに、身振り手振りを交えて話すことで、自分の伝えたいことがより正確にわかりやすく伝えられます。
2つ目は、声のトーンや抑揚に注意して話すことです。これまで、「棒読みで話してしまい、相手に真意が伝わらなかった」という経験はないですか?声の高さや抑揚の変化をつけて話すことで、言葉の意味だけでなく自分の感情まで伝わりやすくなり、相手に内容を理解してもらいやすくなります。

メラビアンの法則の活用で得られるメリット

メラビアンの法則を理解し、コミュニケーションにうまく活用するとさまざまなメリットを与えてくれます。ビジネスシーンばかりでなく、日常生活のさまざまな場面でも応用できますが、今回はビジネスシーンにおける具体例を4つ上げて解説します。

商談や交渉

例えば、接客や取引先との交渉や会議でプレゼンテーションを行う場合など、ビジネスシーンを想像してみてください。どんなに魅力的な内容でも、最初から最後まで淡々とした調子で話すと相手はどう感じるでしょうか。話をつまらなく感じたり、熱意が伝わらなかったりして、失敗してしまう可能性もあります。このとき、話の内容に応じて声に抑揚をつけたりジェスチャーを取り入れたりして変化をつけると、相手の興味をひきつけ、自信や魅力を効果的にアピールすることも可能です。

上司や同僚とのコミュニケーション

上司や同僚と話をするときも、無表情で相手をするよりも、しっかり表情を出して相手に共感したり気持ちをわかりやすく表現したりすれば、より信頼を得やすくなります。相手の人柄や求められる人物像などを意識して表現することで、面接に役立つこともあるでしょう。

電話

電話では、表情やしぐさなどの視覚情報がなく、聴覚情報のみが伝達の手段となります。
視覚情報がない分、対面以上に話す内容や声のトーンに注意して話すことが大切です。聞きなじみのある言葉を使い、少し大きめに抑揚をつけて話すとわかりやすく話せます。
また、会話の間を上手く使うと、より自分の感情が伝わりやすくなるでしょう。

採用面接

応募者の合否に関わる重要な面接では、非言語情報にとらわれすぎず話す内容に着目するよう心がけることが重要です。なぜなら、面接のノウハウを学んでくる応募者も多く、ノウハウに則った非言語情報に左右されてしまうと正しい判断ができない可能性があるからです。また、応募者も採用面接を通じて「この会社が自分に合っているか」を判断しています。採用担当者も応募者から見られていることを意識し、相手に安心感を持たせる態度や話し方を心がけましょう。

TPOを意識した身だしなみを心がけたり、明るい口調や笑顔で人に接したりすることも、メラビアンの法則を取り入れたコミュニケーションスキルであり、相手に好印象を抱かれやすいというメリットが期待できるでしょう。

ビジネスへの活かし方:3つの要素を揃える

メラビアンの法則を活用すると、自分の言いたいことを聞き手により正しく伝えることができます。このとき、「言語情報」「聴覚情報」「視覚情報」の3要素をしっかり揃えることを意識しましょう。たとえば、相手に感謝を伝えるときは明るい表情や柔らかい口調にする、不満を伝えるときはかたい表情や静かな口調にするなどです。3要素をきちんと揃えることで、「嬉しく感じている」「真剣に伝えたい」などをより強く伝えられるでしょう。
もし、どれか1つでも要素が矛盾していると、聞き手は混乱してしまいます。自分の言いたいことが正しく伝わらないだけでなく、「何となく信用できない」など相手に不信感を抱かせるきっかけにもなりかねません。自分では真剣に対応しているつもりでも、相手にそれが伝わらなければ意味がないのです。特にビジネスシーンでは、たった1度の失敗が取り返しのつかない事態を招くこともあります。円滑な信頼関係を築くためにも、3つの要素を心がけることが大切です。

ビジネスへの活かし方:非言語コミュニケーションに気を配る

メラビアンの法則により、人と接するときは非言語コミュニケーションが重要であることがわかりました。ビジネスシーンでも、この点を特に理解して、見た目や話し方などに気を配ることが大切です。たとえば、服装や髪形を清潔に保ったり、しっかり聞き取れるようハキハキ話したりするなど、相手が好印象を抱きやすいイメージを心がけましょう。メラビアンの法則は、決して言語コミュニケーションを軽視して良いというものではありません。しかし、やはり非言語コミュニケーションが大きな影響を与えている事実に違いはなく、見た目や話し方がうまくいかないことで話の価値が下がってしまうことは起こり得るため注意が必要です。
話の内容や事実は変えられなくても、見た目や話し方は自分次第でいくらでも工夫できます。コミュニケーションの失敗を避けるためにも、非言語コミュニケーションにもしっかり力を入れるようにしましょう。

非対面コミュニケーションでも気をつけよう

直接相手と顔を合わせない非対面コミュニケーションの場合、つい油断して非言語コミュニケーションを軽視してしまうこともあります。しかし、どのような非対面コミュニケーションでも、非言語コミュニケーションは存在するので注意しなければなりません。たとえば、電話は自分の見た目は伝わりませんが、声のトーンや口調はありありと伝わります。視覚情報がない分、ますます聴覚情報の重要性が高まるのです。ここで油断して適当な話し方をしていると、相手が抱く印象はかなり悪くなってしまうでしょう。
たとえ相手に見えなくても、表情をつけて話すなど、非言語コミュニケーションに工夫することが大切です。メールの場合は文字だけなので、微妙なニュアンスが伝わりにくくなります。こちらが意図しない伝わり方をしてトラブルを招く恐れもあるため、細やかな記述で話のトーンが正しく伝わるように心がけましょう。

まとめ:メラビアンの法則を活用して真意が伝わるコミュニケーションを

メラビアンの法則は、見た目や話し方といった非言語コミュニケーションの重要性を伝える効果的な存在です。一方で、非言語コミュニケーションを軽視しても良いと誤解されがちなので注意しなければなりません。正しく理解すればビジネスシーンにおいてさまざまなメリットが得られるため、うまく活用してコミュニケーションに役立てていきましょう。

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参考:HRドクター「メラビアンの法則とは?ビジネスでの活用方法を7つの場面で紹介」

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