2020.04.13

職場モラハラの放置は危険!人事や経営者が知っておくべきモラハラチェック

職場モラハラの放置は危険!人事や経営者が知っておくべきモラハラチェック

相手に精神的な苦痛を与えることを目的に行われる、いじめや嫌がらせが「モラハラ」です。モラハラを放置すると、職場の環境悪化や人材流出につながるリスクがあるため、注意が必要です。この記事では、モラハラとは何か、また具体的な事例やチェック方法について紹介します。ここでの内容を押さえておけば、従業員からモラハラの相談があった際に、正しくかつ公正に対処できるようになるでしょう。

職場におけるモラハラの定義

モラハラという言葉を耳にしたことはあっても、意味を正しく理解できている人は少ない傾向です。モラハラは、正式には「モラル・ハラスメント」といい言葉・身振り、態度・メールなどの文書によって相手に精神的苦痛を負わせる「陰湿ないじめ」を指します。そもそもハラスメントは、「不愉快な嫌がらせ」という意味を持っており、モラハラという言葉は1990年代にフランスの精神科医であるマリー=フランス・イルゴイエンヌによって生み出されたものです。

モラハラと似た言葉には「セクハラ」や「パワハラ」などがあり、それぞれ全くの別物ではありません。例えば、会社の上司が自分の権力を利用して嫌がらせを行った場合、その行為は「パワハラ」でもあり、「モラハラ」にも該当するのです。これらは「ハラスメント」というくくりでは同じであり、重なる部分もあります。一方、会社の部下が上司に対していじめや嫌がらせを行った場合は、「モラハラ」ではあるものの、「パワハラ」には該当しません。それぞれに言葉は似ているものの、まったく同じ意味を持つわけではないため、使い方には注意しましょう。

なお、マリー=フランス・イルゴイエンヌは、「モラハラ」の特徴として以下の5つを挙げています。1つ目は「精神的な嫌がらせ」、2つ目は「身体的な暴力はない」ことです。3つ目は「他者に見えにくい形で行為が行われる」、4つ目は「加害者は被害者以外への人当たりが良い」、5つ目は「被害者は自分が悪いと思い込みやすい」ことが挙げられます。モラハラは、直接的な暴力がないことから周囲にモラハラの事実について気付かれにくいという特徴があります。そのため、モラハラ被害者はじわじわと精神的に追い詰められてしまい、いつのまにか精神に深いダメージを負ってしまうことも多い傾向です。

パワハラとモラハラの違い

よく耳にする「パワハラ」と「モラハラ」の違いとは、どのような点なのでしょうか。パワハラは、基本的に権力などが関係しており、「上下関係で起こる」という特徴があります。パワハラは、「パワーハラスメント」の略でありパワーとは「権力」のことです。雇用主と雇用者、上司と部下など、立場が上の人が下の人に対して権力を利用して嫌がらせをすることをいいます。パワハラは、暴言や暴力などが目立ち周囲が気付きやすいのが特徴です。被害者も、はっきりと理不尽さを感じやすい傾向にあります。

一方、モラハラは上下関係だけではなく対等な関係でも起こり得るものです。同僚、なかには部下から上司に対してモラハラが行われるケースもあります。このように、モラハラは権力がおよばないところでも起こるのが大きな特徴です。さらに、陰湿ないじめや嫌がらせが行われることが多く、周囲が気付きにくいという特徴もあります。モラハラの定義を理解していない人が多く、加害者がモラハラだと認識していないケースも少なくありません。そのため、モラハラは周囲の理解を得にくく被害者も「気のせいかもしれない」「自分が悪いだけだ」と悩みを抱え込んでしまうケースも多いのです。なお、ハラスメントを判断するのは被害者の「精神的苦痛」や「嫌悪感」であり、この点はパワハラもモラハラも同じです。

モラハラチェックリスト

モラハラは、労働基準法など法律で規定された明確なルールはありません。モラハラに該当するかどうかは、以下の項目でチェックできます。まずは、「陰口・嫌味・侮辱」です。業務上の必要範囲を超えた「バカ」「クズ」などの陰口・嫌味・侮辱などの行為は、モラハラに該当します。加害者は、被害者を攻撃することで精神的優位に立とうとするケースが多くみられます。次は「飲み会やランチに誘われない」ことです。職場の飲み会やランチにいつも誘われない場合、モラハラの可能性があります。また、「あいさつを無視される」「人間関係から切り離される」のもモラハラです。

加害者は、これらの行為によって職場での影響力をアピールしている可能性があります。さらに、「プライベートに干渉する」「周囲に言いふらす」なども場合によってはモラハラに該当します。職場でプライベートについて無理に聞き出し、それを侮辱したり周囲に言いふらしたりするような行為はモラハラといえるでしょう。加害者は、プライベートに立ち入り、その情報を握ることで被害者を自分の思うままにコントロールしようと考えるケースが多い傾向です。

さらに、「業務に必要な情報や書類が与えられない」「明らかに無理な量の仕事を押し付けられる」というようなケースもみられます。業務に直接影響がおよぶような行為が継続して行われている場合、モラハラに該当するでしょう。加害者は、業務が進まずに困っている被害者の様子を見て、楽しんでいることがあります。また、「加害者によって職場環境が悪化」している場合や、「雑用など能力に見合わない仕事を押し付ける」などのモラハラにも要注意です。

人前で必要以上に侮辱・叱咤されたり、本来の仕事を与えずに雑用ばかり押し付けたりするなどの行為は、被害者の存在価値を否定する悪質なモラハラといえます。さらに、「身体的な特徴をからかう」のもモラハラの代表例です。大声で身体的な特徴をからかい、憂さ晴らしをしているケースも多くみられます。

職場モラハラ事例(1)暴言や陰口

暴言や嫌味、侮辱や陰口などには、以下のような5つの事例があります。

#「暴言・悪口」による事例

ある日、「仕事を手伝ってほしい」と同僚に頼まれたAさんは、気持ちよくそれを引き受け、仕事を仕上げました。しかし、その仕上がりに不満を持った同僚は「こいつは使えない」と暴言を吐き、その後もAさんに対して悪口を投げかけるようになったのです。

#「加害者が集団」の事例

Bさんは複数人のチームで仕事を進めていたものの、決められたノルマを達成できませんでした。その際、Bさん以外のチームメンバーが結託し、「お前のせいだ」「仕事が遅すぎる」などの嫌味を言うようになったのです。

#「身体的な特徴を攻撃する」事例

Cさんはときどき、仕事でミスをすることがあります。そして、ミスをすると上司が「デブ」「短足」というような身体的な特徴を持ちだし、攻撃するようになりました。

#「大勢の前でつるし上げる」という事例

Dさんは仕事でミスをしました。すると、同僚が「またDさんがミスをした」と大声でミスについて言いふらして恥をかかせます。常にDさんをダメだしすることで、本人のプライドを傷つけてしまう事例です。

#「陰口」による事例

Eさんは学生時代の秘密を同僚に打ち明けましたが、同僚は会社全体にその秘密を言いふらしたのです。Eさんは、それ以来多くの人から陰口を言われるようになりました。

このような暴言・悪口は、最もわかりやすいモラハラの一つです。さらに、直接暴言を言わなくても、その様子を見て笑うのもモラハラに該当する場合があります。また、暴言や陰口によるモラハラで、多いのが「集団」による行為です。集団になることで、自分が攻撃されるのを防いでいるケースが多くみられます。また、誰かと一緒だと「ほかの人もやっている」と考え、加害者意識が薄くなることも多いといわれています。

職場モラハラ事例(2)無視・仲間はずれ

無視や仲間はずれの事例としては、以下のような5つがあります。

#事例1「ベテラン社員が新人を無視する」

新入社員のAさんは社内での評判が高く、それに嫉妬した先輩社員がAさんを無視するようになりました。

#事例2「飲み会やランチに誘われない」

Bさんは都合が悪く、会社の飲み会の誘いを断りました。その後、飲み会やランチには一切誘われなくなってしまったのです。

#事例3「必要な書類や情報がもらえない」

Cさんは、仕事で必要な書類が自分にだけ渡されていないことに気が付きました。その後も書類を渡してもらえないことが多く、その事実を上司に相談しても「気のせいだよ」と言われ、相手にしてもらえなかったのです。

#事例4「全員参加の会議に参加させてもらえない」

全員参加のはずの会議に、Dさんは「参加しなくていい」と言われました。その後も、会議に参加したくても参加ができない状況です。

#事例5「先輩社員から無視される」

Eさんは仕事熱心で、会社のためを思って先輩社員に意見や進言を行いました。すると、先輩社員から無視されてしまうようになったのです。

これらのケースのように、何らかの理由で無視・仲間はずれなどのモラハラが始まってしまうケースがあります。職場で無視されたり仲間はずれにされたりすると、情報の伝達がスムーズにいかず、業務上の支障が出て困ってしまう人も多い傾向です。

職場モラハラ事例(3)プライベートを攻撃

プライベートを攻撃するモラハラの事例としては、以下のような3つが挙げられます。

#事例1「業務に関係のないプライベートをしつこく詮索する」

Aさんは同僚に彼女がいることを話しました。すると、その同僚はことあるごとに「どんな人なのか」「顔はかわいいのか」など、しつこく聞き出そうとするようになったのです。

#事例2「趣味などのプライベートを否定したり悪口を言ったりする」

Bさんはゲームが趣味であり、それを先輩に伝えました。それ以来、先輩はその趣味をバカにしたり、人前で罵倒したりするようになったのです。

#事例3「家族や恋人について不快なほど詮索する」

Cさんの妹は、先日会社を辞めてしまいました。すると、その情報を聞きつけた同僚が「お前の妹はニートだな」とバカにするようになったのです。

こうした仕事に関係のないプライベートを攻撃してくるモラハラは、加害者側が無自覚なことが多いといわれています。しつこくプライベートについて聞かれたり、その行為に不快感を覚えていたりする場合は、モラハラだと考えたほうが良いでしょう。

職場モラハラ事例(4)仕事を妨害

仕事を妨害するモラハラには、以下のような4つの事例があります。

#事例1「明らかに終わらない量の仕事を押し付ける」

Aさんは仕事が終わらず、残業をしていました。そこに先輩が来て、「これを明日までに終わらせろ」と言い、明らかに無理な量の仕事を押し付けて帰っていったのです。

#事例2「先輩社員との対立から仕事がなくなる」

Bさんはある日、仕事のやり方が異なる上司と言い争いになってしまいました。その日を境に、Bさんは仕事を与えられなくなりました。

#事例3「扇風機の風を当てられる」

Cさんは、仕事を熱心に行い社内でも高い評価を得ている社員です。しかし、それが気に入らない同僚によって仕事中ずっと扇風機の風を当てられるという嫌がらせを受けることになりました。

#事例4「業務上に必要なメールが届かない」

Dさんの所属する部署では、業務上必要なやり取りをメールで行っています。しかし、Dさんにだけ必要なメールが届かず、仕事に支障が出てしまいました。

#事例5「ほかの人と対応が異なり業務が進まない」

Eさんの働いている会社では、作成した書類を上司に渡し修正箇所がないか確認をしてもらいます。しかし、上司は嫌がらせとして必要のない部分にまで修正指示を出し、Eさんにだけ残業をさせるようになりました。

仕事を妨害されるモラハラは精神的苦痛が大きく、被害者は休職や退職を選択することも少なくありません。また、扇風機の風を当てられ続けるモラハラは、損害賠償にまで発展したケースだといわれています。

モラハラが原因でうつ病や精神疾患に

モラハラが原因となり、被害者が精神的に追い詰められると、「精神疾患」を招くおそれがあります。モラハラが原因で起こりうる代表的な精神疾患は、「ストレス性機能障害」「抑うつ」「心身症」「心的外傷後ストレス障害」などです。また、モラハラの被害を受けていた期間の長さとストレスの強さによって、精神状態が変わってくることがあります。精神状態の推移としては、まず「自己嫌悪」、次に「感覚異常」が引き起こされるケースが多くみられます。続いて、「妄想症」「重度のうつ病」というように推移していく可能性があるため、注意が必要です。精神疾患を理由に、休職や退職などにつながるケースもみられます。

モラハラを理由に退職するケースも

モラハラが原因で、被害者が退職や転職をしてしまうケースも少なくありません。その大きな理由は、「モラハラに対抗するのに疲れてしまう」ことだといわれています。モラハラに遭うことで、仕事に対するやる気や情熱が失われてしまい、やがて転職や退職を考えるようになるのです。モラハラによる心のダメージが大きい場合、「会社に行くことができなくなる」人もいます。職場に味方がいなかったり、孤立していたりする人は、悩みを1人で抱えてふさぎ込んでしまうケースも少なくありません。

さらに、勇気を出してモラハラ上司を会社に報告したものの、状況が改善されるどころか関係が悪化し、居場所がなくなってしまう場合もあります。職場環境や人間関係の改善がみられないと、退職や転職を選択せざるを得ない状況に追い込まれてしまうのです。

職場モラハラ・パワハラの放置で会社が責任を問われる

職場のモラハラを放置した場合、会社に責任が問われる場合があるため、注意が必要です。現状として、労働基準法などの法律で直接的に規定されたルールはありません。しかし、会社には「モラハラ・いじめ・パワハラなどを防止する義務」があります。これは、労働契約法第5条の「職場環境配慮義務」によるもので、「使用者は労働契約にともない労働者がその生命・身体などの安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をするものとする」とされています。

また、パワハラの防止措置を会社に義務付けるための法制化が進められており、早ければ2020年4月にも施行される予定です。会社に義務付けられる「パワハラ防止措置」の内容は、以下の5つです。

  • 経営者の方針の明確化
  • 加害者の懲戒規定の整備
  • 相談窓口の設置
  • 社内調査体制の整備
  • プライバシーの保護・不利益取扱いの禁止

なお、厚生労働大臣は会社への勧告、改善されない場合には社名を公表できるとされています。

定期的にモラハラチェックを行い職場モラハラを未然に防ごう

職場でモラハラがあった場合、従業員の精神疾患や、休職・退職などを招くリスクが生じます。さらに、従業員からのモラハラの相談に対して適切な対処ができない場合、会社の責任を問われる場合があるため、注意が必要です。このように、モラハラは組織や会社にとって非常に大きなリスクをともないます。モラハラを未然に防ぎ、状況を悪化させないためにも、定期的にモラハラチェックを行いましょう。

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