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2019.8.7

成果主義のメリットとデメリットとは?うまく浸透させる方法

従来の日本では終身雇用制度や年功序列制度が一般的だったものの、時代が進むとともに減少してきました。一方で成果主義に注目し、取り入れる企業も多くなってきています。ただ、成果主義を成功させるためには、正しい知識を持ち、導入方法を理解していなければなりません。そこでこの記事では、成果主義のメリットとデメリットや、うまく浸透させる方法などについて詳しく解説します。

成果主義とは?

そもそも成果主義とは、業務遂行の過程と結果を基準として社員の評価を行うという考え方です。もちろん、単純に年齢や勤続年数、学歴などで評価が左右されることはありません。また、経験値が高いからといって評価が上がるということもない考え方です。終身雇用制度や年功序列制度が当たり前だった時代には、勤続年数が長くなれば昇進したり昇給したりしました。しかし、成果主義では仕事で成果を上げられなければ昇進も昇給もしないばかりか、場合によっては降格や減給もあり得ます。

成果主義と実績主義の違い

終身雇用制度や年功序列制度とは違い、仕事での結果が評価に反映するものとして実績主義もあります。ただし、実績主義では、基本的に業務の結果だけが評価の対象になる考え方です。そのため、たとえば高い売り上げを達成していれば、どんな方法を用いたのかという過程は問われません。一方で、成果主義は結果に加えて、何をどうやったかという過程も評価の根拠に含まれるという点で違いがあるのです。

日本と海外の成果主義の状況

成果主義はもともと、欧米で主に採用され、中国でも取り入れられている賃金制度です。終身雇用や年功序列のような制度がない欧米では、どれだけ業務で成果を上げられるかが判断基準とされるのも無理はありません。

お隣の韓国では日本と同様にもともとは年功序列制度が取られていました。ただし、日本よりも一足早く、すでに1960年代後半から1970年代の初めごろに成果主義の導入が始まり、日本よりも成果主義化が進んでいます。

一方、日本で成果主義が注目されるようになったのは1990年代に入ってからです。その頃から実際に成果主義を導入する企業が増えるようになりました。ただし、なかなか機能せず、せっかく成果主義を取り入れてもいい結果が得られなかったケースが多かったのも事実です。

長年終身雇用制度や年功序列制度が当たり前だった環境では、成果だけで判断される考え方がすぐに馴染まなかったということもあるでしょう。

成果主義の導入が進んでいる背景

成果主義が注目されはじめた1990年代はバブルが崩壊し、それまで常識だったことが当たり前でなくなりました。年功序列制度では勤続年数が長くなるほど労働者にとっては安定した収入が約束されています。一方で、企業にとっては年長者が増えれば増えるほど支払う給与が上がり、人件費が莫大になっていくということなのです。
もちろん、優秀な人材で高い給与を支払うだけの成果を上げているならば問題はないでしょう。しかし、年功序列制度では、年長者で成果を上げていない社員がいたとしても、給与を下げるわけにはいきません。

バブル崩壊で業績が悪化した企業にとっては、コスト削減が課題でした。そこで、かさむ人件費を削減するための方法のひとつとして、成果主義を導入する企業が1990年代後半になってから増大したのです。

また、終身雇用制度が普通だった時代とは異なり、契約社員や派遣社員として働く人が増えたように、雇用制度が多様化したことも成果主義導入のきっかけになっています。

成果主義のメリットとは?

1.社員のモチベーションアップにつながる

成果主義では業務の結果や、結果に至るまでの過程などを評価してもらえるため、頑張って成果を上げれば認められ、収入アップも望めます。そのため、社員のモチベーションアップにつながるというのがメリットのひとつです。

一方、年功序列制度では長年勤務しているだけで給与が上がっていきますが、それが能力に見合っているかどうかはわかりません。しかし、成果主義の場合は業務の成果や過程が評価に反映されるため、評価の公平性を実現することも可能です。社員にとっては、年齢に左右されることなく自分の仕事を評価してもらえることは励みになるでしょう。

2.人件費を効果的に削減できる

そして、成果主義では実際にどれだけ成果を残しているかということが支払う給与にも反映されることになります。つまり、成果の上げられない社員に対して高い給与を支払う負担が少なくなるということです。そのため、成果主義を導入することで成果を上げていない社員に支払う給与を抑えることができ、人件費を効果的に削減できます。

成果主義のデメリットとは?

1.職種によっては評価の基準が難しい

成果主義では実際に行った業務の成果や過程が評価の対象になります。明確な営業成績が現れる職種や売上高のように販売した実績がはっきりと数字で示される場合は、評価もしやすいでしょう。

しかし、業務の成果を数字で出しにくい職種では、評価の基準を設けること自体が難しいこともあります。たとえば、総務課や経理課などの事務職などです。

また、長期間研究や開発を続けてはじめて成果が現れる仕事の場合、途中の段階でははっきりした成果が認められないこともあります。だからといって、成果主義を導入するならば評価をしないわけにはいきません。つまり、職種によっては評価の基準が難しいという点がデメリットのひとつです。

2.社員が個人主義に走ってしまう可能性がある

業務の成果が評価基準になることで社員のモチベーションアップにつながるものの、自分の成果を上げるために個人主義に走ってしまう懸念もあります。

チームワークが必要な業務の場合は弊害が出る可能性があるほか、顧客を奪い合ったり、業績アップにつながらない仕事を軽視したりする可能性が出てくるのもデメリットです。

3.社員の定着率が悪化する恐れがある

また、評価がわかりやすい部署とわかりにくい部署で評価の差が大きくなってしまうこともあります。評価されにくいと感じる部署では社員の定着率が悪化する恐れがあるのもデメリットだといえるでしょう。

成果主義を浸透させる方法

成果主義の人事制度を導入するときは、メリットとデメリットを適切に判断し、まずは評価の基準を明確にすることがポイントです。

バブル崩壊後、年功序列制度が当たり前でなくなってきたといっても、長年慣れてきた制度や環境を突然変えると馴染めないこともあります。ビジネスに限らず、日本では従来個人の能力を重視するというよりは、周囲と調和することや協力することを大切にしてきました。特に年配の世代では成果主義に対して反発する人がいる可能性もあるでしょう。

そのため、明確な基準を設け、まずは制度に関して社員に納得してもらうことが大切なのです。
そして、評価基準がルール化できたら、ルールに従って正しく社員の業務を評価できる人材を育成することも重要になってきます。ルールだけ整えても、正しい評価が得られないならば、実務の中では機能しません。評価担当者が正しい評価をできないと、社員は頑張っても認められないと感じ、モチベーションが下がってしまう可能性もあります。

成果主義を導入して成功した事例

日本で成果主義を導入して成功している企業として、花王の例があります。

成果主義というはっきりした評価制度を導入する以前の1965年から、花王では社員の能力開発支援には力を入れはじめていました。まだまだ年功序列制度が当たり前だった高度成長期の時代です。その頃に社員がモチベーションを持って仕事に取り組めるような目標管理も導入しています。

その後、改良を加えながら制度を充実させ、2000年ごろには現行の成果主義の制度が整えられました。花王では社内で「職群制度」と呼ばれており、一般社員から管理職を除く主任クラスまでについて、職種ごとに役割等級の仕組みを変えています。成果主義では職種によって評価基準を設けにくいことがあるというデメリットがありましたが、花王の制度はその点に配慮されているのです。
たとえば、結果の出るのが先になるような研究部門では、長期的な研究成果も評価に含まれています。また、生産部門でも単に結果だけではなく、習熟度が評価に加味されるなど、すべての部門で評価が一律ではありません。部門ごとに適した評価基準を設定することで、導入に成功した例だといえるでしょう。

成果主義を導入して失敗した事例

花王が成果主義を導入して成功した一方、富士通と三井物産では導入するのに失敗しました。

富士通

富士通は成果主義を導入するにあたって、社員自身に目標を設定させています。

成果主義は業務の結果や過程が評価の対象になるため、もちろん目標を達成できれば評価が上がることを期待できるでしょう。一方で、目標が達成できなければ評価も下がるわけですから、社員が目標を設定する際に達成しやすい目標しか設定しないという事態にもなりかねません。

実際に富士通では、次第に社員が簡単な目標を設定するようになってしまったため、モチベーションをアップさせるという成果主義のメリットにはつながらなかったのです。また、簡単に達成できるような目標では、スキルアップにつなげることもできませんでした。

三井物産

三井物産が行った成果主義の取り組みでは、仕事の結果のみで完全に評価するという体制を取ったことが原因です。

結果を得るためにどうするかという過程を他の社員に知られてしまうと他の社員も成績を上げてしまい、自分が成果を上げる強みを失ってしまうことになりかねません。そのため、ノウハウなどが上司から部下へ、先輩から後輩へ伝わらなくなったのです。

三井物産が導入した成果主義は、行き過ぎた成果主義が失敗につながったという事例です。

成果主義の浸透に有効なサイダスのCYDAS PEOPLE

サイダスが提供している「CYDAS PEOPLE」は企業が目標管理を行うにあたって利用することができるクラウドサービスです。

企業が業績を達成するための方法として、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとったPDCAサイクルという考え方があります。CYDAS PEOPLEでは、このPDCAサイクルにおいて目標設定から達成確認に至るまで、視覚的に捉えることが可能です。そして、他のサービスと人事情報を連携させることもでき、人事考課にも生かすことができます。
従来では人事に関することや目標設定などについて、エクセルを使って作成することも多かったはずです。また、紙媒体を使用して運用することも普通だったでしょう。しかし、CYDAS PEOPLEでは、目標設定をチェックしたり、評価者によってばらつきのある認識を是正したりという作業もサポートしてくれるというのがメリットのひとつです。また、可視化されたデータを社員が共有することもできます。

成果主義を正しく導入すればメリットが大きくなる!

欧米では一般的で、中国や韓国も早くから取り入れている成果主義でも、年功序列制度や終身雇用制度が馴染んでいた日本では必ずしも効果を発揮するとはいえないところもありました。そのため、まだまだ日本では完全な成果主義を導入している企業が少なく、導入しても失敗してしまったところもあります。しかし、花王のように成果主義を取り入れて効果を発揮している成功例があるのも事実です。

今回挙げたように、成果主義には確かに個人主義に走ってしまう懸念や、職種によっては評価基準を設定しにくいというデメリットもあります。しかし、適正に導入すれば社員のモチベーションをアップさせてくれるでしょう。

その結果、業績を上げることにもつながり、企業にとってメリットが大きくなる可能性を秘めています。要は成果主義を正しく理解し、自社に適したルールを作ることができれば、成果主義を導入して成功することにつながるのです。

人事システムなども活用しながら、適切な目標管理と評価を行い、是非成果主義の導入を成功させてください。

目標管理による人事評価をサポートする、CYDAS PEOPLEの目標管理アプリケーション。自社で現在運用している評価シートをそのままシステム化できる柔軟性を持ち合わせています。さらに、面談記録を評価と紐づけて管理できるため、その評価に至ったプロセスを可視化。提出いただいた評価シートを元にテンプレートを設定してお渡しするため、導入後すぐにご利用いただけます。
1on1を支援するツールなどを利用し、対話による信頼関係を構築でき、さらなる納得感を向上を促せます。詳しい資料は以下からダウンロードください。

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