2019.7.11
失業保険のメリットとデメリットを徹底解説!
これまで勤めていた会社を退職する場合、一定の条件を満たせば失業保険から失業手当が支給されます。転職先が決まるまで、失業保険を活用して乗り切ろうと考えている人も多いのではないでしょうか。頼りになる失業保険ですが、実はメリットだけでなくデメリットもあるので注意しなければなりません。今回は、失業保険の基礎知識や必要な手続きに加え、失業保険を受け取ることのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
そもそも失業保険とは?その目的って?
失業保険の受給資格がある人
失業保険の受給資格がない人
定年退職者は?高齢者でも失業保険は受け取れる?
失業保険の給付金額や期間はどのように決まる?
給付開始時期は退職理由によって異なる!
給付のために必要となる書類
受給のための手続き方法
給付を受けるメリット
給付を受けるデメリット
失業保険の不正受給にはペナルティが課せられる!
失業保険をもらうべきかはよく考えよう!
目次
そもそも失業保険とは?その目的って?
失業保険とは正式には雇用保険といい、会社に勤務しているあいだに給与から保険料が天引きされる公的保険制度の一種です。会社を退職した場合、転職先が決まるまで国から一定の失業手当が支給されます。管理運営を行っているのは厚生労働省ですが、実際の事務手続きや給付などは各地にあるハローワークが担当しています。このため、失業保険を受給したいときは会社や国に申し出るのではなく、自分が住む土地のハローワークに手続きを申し出なければなりません。
このような制度が定められた理由は、第一に失業者の「失業中の生活を維持するため」です。給与は労働者にとって生活の糧を得るための大切な手段であり、退職して収入が途絶えると経済的に困ってしまう人も少なくありません。そこで、失業者がそれまでの生活を維持できるよう、一定の範囲内で経済的なサポートを行うために失業保険制度が定められたのです。また、失業保険には「失業中の再就職活動を容易にする」という目的もあります。失業中は収入が途絶えてしまうため、失業者は焦って次の仕事を探してしまいがちです。短期のアルバイトや非正規雇用、興味のない仕事だったとしても、収入には代えられないと就職することも珍しくありません。
ところが、労働環境が良くなかったり、自分が本当にやりたい仕事ではなかったりした場合、せっかく就職してもすぐまた退職するなどの悪循環に陥りやすくなります。これでは自身のためになりませんし、コストと時間をかけて採用活動をしている会社にとってもマイナス面が大きくなってしまうでしょう。この点、失業保険により一定の収入が得られれば、失業者は焦って就職先を決める必要がなくなります。じっくりと自分に向いている仕事や条件の良い就職先を見極められるため、より満足感を得ながら長く働ける可能性が高まるのです。このように、失業保険には失業者がお金の心配をせず就職活動に集中し、不安定な就労状況に陥るのを防ぐという重要な役割もあるのです。
失業保険の受給資格がある人
失業保険は退職すれば誰でも受け取れるわけではなく、一定の受給資格条件を満たす必要があります。まず、会社を退職して仕事がない状態であることが大前提です。退職したとしても、期間を空けずに再就職して給与を受け取っている場合は失業保険が適用されません。また、就職する意思と能力があり、求職活動を行っていることも必要な条件です。求職活動はハローワークで所定の手続きを済ませる必要があり、個人的に転職サイトなどで求職活動しているだけでは失業保険の対象外となります。
さらに、退職前の2年間のうち、雇用保険の被保険者となっていた期間が12カ月以上あることも重要なポイントです。12カ月以上にカウントされるのは「賃金支払いの基礎となった日」が1カ月のあいだに11日以上ある月に限られます。賃金支払いの基礎となった日とは、簡単に言えば出勤日や有給取得日などのことです。つまり、会社に12カ月以上勤めていたとしても、毎月10日ずつしか出勤していなければ雇用保険の被保険者期間としてカウントされないため、受給資格がないことになります。
失業保険の受給資格がない人
会社を退職しても、場合によっては失業保険の受給資格が得られないケースもあります。たとえば、退職後は就職活動をせずしばらくゆっくりと過ごす人、退職後すぐにアルバイトなどの仕事を始める人は、失業保険を受給できません。そもそも失業保険は「働きたいのになかなか仕事に就けない人」の生活費をサポートするために定められた制度です。退職後にしばらく休養する人やすぐに働ける人などは、失業中とはみなされないため受給資格が与えられないのです。
また、妊娠や出産、育児ですぐに働けない人も失業保険の対象外となります。失業保険を受給するための条件には「就職する意思と能力」を備えていることも含まれています。妊娠や出産、育児をしなければならない場合、今すぐに働けるとは限らないため、受給資格を満たしているとはみなされないのです。同じ理由で、病気やケガなどの治療のために退職した人も、受給資格がないことになります。ただし、病気や妊娠、出産などでやむなく退職した場合は、失業保険の受給期間を延長してもらえる制度もあります。
この制度を利用すれば、育児が落ち着いたり体調が回復したりして再就職を希望する場合、あとから失業保険の給付を受けられるのです。ハローワークへ「失業保険受給期間延長申請書」を提出すれば、最長で3年間受給期間を先延ばしできるので、該当する場合はハローワークに相談してみましょう。
定年退職者は?高齢者でも失業保険は受け取れる?
定年退職をした場合でも、再就職の意思があれば、失業保険を受け取ることは可能です。ただし、60〜64歳で老齢厚生年金を受給している場合は、受給資格がないため、気をつけましょう。
65歳以上で退職した場合は、基本手当の代わりに、高年齢求職者給付金が支給されます。これは基本手当とは異なり、年金を受給していても受け取ることが可能です。高齢求職者給付金の対象となるのは、失業状態にあり、かつ離職の日以前1年間に6ヵ月以上雇用保険の被保険者であった方です。
支給を受けることができる期限は、離職日の翌日から1年である上、延長制度は設けられていません。もし、65歳以上で退職し、再就職のために給付金を申請しようと考えているのであれば、忘れないうちに申し込んでおきましょう。
失業保険の給付金額や期間はどのように決まる?
失業保険金をいくらもらえるかは、会社で働いていたときの給与の額で決まります。具体的には「1日の支給額=離職前の6カ月間の給料額の合計÷180」という計算式で求められます。これには、賞与など特別な収入は含まれません。たとえば、退職時に毎月15万円の給与をもらっていた人の場合、1日の支給額は90万円÷180=5千円となります。ただし、支給額には年齢によって上限が定められており、どんなに高い給与をもらっていた人でも上限を超えた給付は受けられません。たとえば、29歳までの人なら6395円、30~44歳までなら7100円、45~59歳までは7810円までと決まっているので注意が必要です。
給付期間は、年齢と雇用保険の加入期間、および退職理由によって決められます。自己都合退職の場合、年齢に関係なく雇用保険に加入していた期間が10年未満であれば最大で90日まで支給されます。雇用保険の加入期間が10年以上20年未満なら最大120日、20年以上なら最大150日まで受け取り可能です。会社都合退職の場合は年齢によって変わり、たとえば雇用保険に加入していた期間が5年以上10年未満の場合、30歳未満なら最大で120日まで受け取れます。30~34歳および35~44歳で退職した場合は最大で180日、45~59歳なら最大で240日、60~64歳なら最大180日までです。
このように、会社都合退職では雇用保険の加入期間と年齢によって給付金額が大きく変わります。退職日を自分である程度決められるなら、給付期間が増えるタイミングを狙って退職したほうが良いでしょう。
待機期間とは?すぐに給付されるわけではない!
失業保険は、必要書類を提出すればすぐに支給されるわけではありません。ハローワークでの事務手続きを経たうえで雇用保険説明会などに参加した後、7日間の「待期期間」を待たなければならないのです。待期期間とは、失業保険を申請した人が間違いなく失業中であることを確認するための期間であり、退職理由にかかわらず等しく7日間設けられます。その待機期間にアルバイトをしたり、知人の仕事を手伝ったりして収入を得ると、失業中とみなされず失業保険が認められない可能性もあるので注意しましょう。
待期期間が過ぎればすぐに給付金をもらえるのかというと、そうとも限りません。給付金をいつもらえるかは、退職理由によって異なるのです。退職理由には「自己都合退職」と「会社都合退職」があり、自己都合退職はさらに「正当な理由がある場合」と「ない場合」の2種類に分けられます。正当な理由とは、たとえば配偶者の転勤に同行するため退職した、家族の介護のために退職した、病気やケガのせいで働けず退職した場合などです。人間関係が嫌になった、ほかの仕事をしたくなったなどは、正当な理由がない場合に該当します。
退職後、7日間の待期期間のあとにすぐ失業保険が支給されるのは、会社都合による退職と正当な理由がある自己都合退職の2パターンだけです。もちろん、退職日以前の1年間に被保険者期間が6カ月以上あることが前提です。正当な理由がない自己都合退職だと、7日間の待期期間のあと、さらに3カ月の給付制限期間が設けられます。手続きなどに手間取ると、退職してから4カ月近くも給付を受けられないケースもあるので注意しましょう。
給付のために必要となる書類
失業保険を申請する場合、ハローワークに所定の書類を提出することになります。スムーズに手続きを進めるためにも、退職前から書類を準備しておくと良いでしょう。具体的には、離職票や雇用保険被保険者証、マイナンバー確認書類や身分証明書などが必要です。離職票や雇用保険被保険者証は前の会社から渡されるため、失くさないように大切に保管しておきましょう。また、証明写真(2枚)や印鑑、本人名義の預金通帳またはキャッシュカードなども必要なので、ハローワークに行く際は忘れずに持っていきます。
ちなみに、失業保険の手続きの期限は、退職した日の翌から1年間だけです。そのうち手続きをしようと放っておくと、あっという間に1年間経ってしまって給付を受け損ねたという事態もありえます。退職して必要書類を準備したら、忘れないうちにハローワークへ行って失業保険を請求する手続きを行いましょう。
受給のための手続き方法
失業保険は、自分が住んでいる地域を管轄するハローワークで請求手続きを行います。手続きとして最初にやるのは、会社がハローワークに提出する「離職証明書」に、自分で記名押印または自筆による署名をすることです。離職証明書は会社から直接ハローワークへ出されるため、記名するときに記載内容が正しいかどうかも忘れずにチェックしておかなければなりません。離職理由など、内容に誤りがある場合は安易に記名も押印もせずに、会社の担当者と再度話し合いましょう。
退職したら、ハローワークで「求職申込み」をしたのちに「離職票」を提出します。離職票は、退職後に会社から郵送されてきたり、会社まで受け取りに行ったりして手に入れる書類です。失業保険を受給するために欠かせない書類なので、くれぐれも失くさないようにしておきましょう。離職票を提出後、ハローワークで開かれる受給説明会に参加すると、雇用保険受給資格者証や失業認定申告書が渡されますので、こちらも大切に保管しましょう。その後、失業の認定を受けるまでハローワークの窓口で就職の相談をしたり、職業紹介を受けたりして積極的に求職活動を行い、問題なく失業認定されれば受給が開始となります。
ちなみに、失業保険は一度失業認定されれば無条件で継続給付されるわけではありません。原則として4週間に1度失業認定の見直しが行われ、求職活動の状況を記入した「失業認定申告書」の提出が求められるため、積極的に求職活動を続けなければならないのです。活動状況によっては失業認定が降りず、受給がストップする可能性もあるので注意しましょう。
給付を受けるメリット
経済面で安心できる
手続きは大変ですが、失業保険を受け取ると「経済的に安定する」という大きなメリットが得られます。全額ではないものの、退職前の給与の何割かを受け取れるため、再就職先が決まらなくてもある程度の日常生活は維持できるでしょう。生活費のために焦って就職先を決める必要もないため、自分がやりたい仕事をじっくりと探すことができます。また、失業保険は課税対象外であるため、確定申告など余計な手間がかかる心配もありません。ただし、受給できる金額や期間は人それぞれなので、自分はどれくらいお金を受け取れるのか、あらかじめ計算して計画的に求職活動を行うことが大切です。
また、失業保険を受け取るにはハローワークで手続きを行う必要があります。ハローワークは求職活動をサポートしてくれるプロの職員や設備が整っているため、効率よく就職先を探せるという点もメリットです。職業訓練を受けられたり、不安な点を相談したりすることもできますし、一般的な求人サイトには載っていない求人情報を見つけられるケースもあります。給付を受け取りつつ、このようなサポートを受けられるのは、失業者にとって大きな魅力ではないでしょうか。
給付を受けるデメリット
1.空白期間ができてしまう
働かなくてもお金を受け取れるなどメリットのある失業保険ですが、デメリットもあるので楽観視しすぎないことも大切です。まず、失業保険を利用すると「仕事をしていない空白期間ができる」という点には注意しましょう。一般的に、転職する際は前の会社を退職してからの空白期間が短いほど有利とされています。空白期間が長いと「この期間君は何をしていたの?」と企業の採用担当者から不審に思われてしまうというわけですね。
失業保険を受け取って経済的な不安が少なくなると、急いで就職活動を行う必要がなくなります。これはメリットでもあるのですが、一方でのんびり再就職先を探すことで「働かない空白期間」が長くなり、転職に不利になってしまう可能性もあるのです。また、長く働かないことで規則正しい生活から遠ざかり、心身の健康に悪影響が及ぶリスクもあります。働く意欲や活力が失われ、なかなか本腰を入れて就職活動に集中できないケースもあるので注意しましょう。
2.雇用保険の加入期間がゼロになる
失業保険を受け取るデメリットとしては「雇用保険の加入期間がゼロになる」という点も挙げられます。一度失業保険をもらうと、その時点で雇用保険の加入期間はゼロにリセットされてしまいます。ほかの会社に就職した場合、ゼロから新たに加入期間がカウントされていくのです。ここで注意したいのが、失業保険は雇用保険の加入期間が長ければ長いほど、より多くの失業手当をもらえる仕組みになっているという点です。
つまり、一度加入期間がリセットされてしまうと、次の就職先を退職したときに失業保険が少ししかもらえないということになります。このため、すぐに再就職先が見つかりそうな場合はあえて失業保険をもらわないのもひとつの選択肢です。前の会社から雇用保険の加入期間を継続させておけば「次の退職時により多くの失業保険をもらう」ことが可能になります。ただし、前の会社を退職してからほかの会社に再就職するまで、1年以上間が開くと雇用期間を継続させることができません。継続を希望する場合は、前の会社を退職してから1年未満のうちに新しい就職先を見つけるようにしましょう。
失業保険の不正受給にはペナルティが課せられる!
「働かなくてもお金がもらえるなんて」とうれしく思う人もいるでしょうが、失業保険はあくまで働きたいのに仕事が見つからない人のためのものです。決して楽をしてお金を受け取るための制度ではないので、安易に不正受給しようとしてはいけません。万が一、不正受給が発覚すれば、相応のペナルティが課されるので注意が必要です。嘘の報告や不正によって失業保険を受給したり、受給しようと画策したりした場合には、不正行為があった日以降、新たな給付が受けられなくなる可能性があります。
また、不正受給した金額を返還させられたり、返還させられた不正受給金額とは別に、不正受給金額の2倍相当額以下の納付を命ぜられたりするケースもあるのです。不正受給した金額よりも支払ったペナルティのほうが多く、損をしてしまったという事態も十分にあり得るので、不正受給は絶対にやめましょう。
失業保険をもらうべきかはよく考えよう!
いざというときに経済的な助けとなる失業保険は、求職活動を前提とした給付金制度です。この仕組みや目的をきちんと理解し、正しく活用することが大切です。また、受給することはメリットだけではないため、デメリットと照らし合わせて本当に受給するのかどうか考えなければなりません。受給資格があっても、長い目で考えて本当に受給したほうが良いのか、慎重に検討するようにしましょう。
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