2020.06.05

就業時間?勤務時間や労働時間の違いと労働基準法の定めとは

就業時間?勤務時間や労働時間の違いと労働基準法の定めとは

就業時間には労働時間や勤務時間など似たような言葉がありますが、具体的な定義はどのようなもので、ほかの言葉とそれぞれどう異なるのでしょうか。また、平均的な就業時間の長さや休憩時間、休日数、残業などに関しても、具体的にどう定義されているのか気になるところです。これらは労働基準法によって定められており、企業は遵守することが求められます。そこで、ここでは、法律にも触れながら各言葉について説明します。

就業時間、就労時間、勤務時間は基本的に同じ

「就業時間」とは、就業規則で定められた「業務を開始する時間から終了する時間まで」のことを指します。たとえば、9時に出社して5時に終業であれば、9時から5時までの8時間が就業時間です。「就労時間」とは、「使用者の指揮命令に服し、働く時間」を指します。就業時間と就労時間は、言い回しは異なりますが意味するところはほぼ同じです。さらに、「勤務時間」も就業時間と同じ意味合いで使われます。求人票などでは勤務時間で表記する会社が多いでしょう。つまり、就業時間・就労時間・勤務時間は基本的に同じものといえます。

就業時間、労働時間、実労働時間の違い

就業時間には休憩時間も含まれます。「労働時間」とは、就業時間から休憩時間を引いた残りの時間です。労働時間にはさらに次の2つがあります。

  • 「所定労働時間」
  • 「法定労働時間」

所定労働時間は、それぞれの会社が設定している労働時間のことです。法定労働時間内であれば、9時から17時、16時から24時など自由に設定できます。法定労働時間とは、労働基準法で定められている実際に働ける時間数のことです。「週に40時間・1日8時間以内」と決まっています。また、「実稼働時間」は実際に働いた時間のことです。実際の労働時間と残業時間とを足した時間が実稼働時間になります。

接客業や製造業など、ユニフォームや作業着に着替える必要のある職場は多いものです。勤務開始時間よりも早く出社して着替えることが常態化している職場も多いでしょう。しかし、実は着替えにかかる時間は労働時間に含まれます。なぜなら、ユニフォームや作業着に着替える行為は使用者が義務づけているものであり、就労時間の定義である「使用者の指揮命令に服している時間」に該当するからです。

休憩時間とは

使用者は、労働者に対して適切な休憩時間を与えることが義務づけられています。休憩時間には賃金を支払う必要はありません。これは、賃金は労働に対して支払われるものだからです。休憩時間の長さは労働基準法によって次のように決まっています。下記の左側は労働時間、右側が付与すべき休憩時間です。

  • 6時間以下:不要
  • 6時間超8時間以下:45分以上
  • 8時間超:1時間以上

たとえば、勤務時間が10時から4時までとしましょう。労働時間が4時間なので、休憩時間がなくても法的な問題はありません。勤務時間が9時から18時の場合は就労時間は9時間となり、1時間かそれ以上の休憩時間が必要です。なお、労働基準法では休憩時間の下限のみを定めています。これを上回っていれば、休憩時間が何時間になっても構いません。たとえば、勤務時間が10時から17時までで、休憩時間を1時間半としても問題はないのです。

残業は時間外労働協定(36協定)で定められている

慢性的な人手不足だったり繁忙期だったりして、就業時間内に業務が終わらず残業することはままあるものです。残業は、法的には「時間外労働」といいます。残業時間について定めた規定が「時間外労働協定」です。これは労働基準法36条に基づく規定のため、36協定とも呼ばれます。会社は労働組合(もしくは労働者の過半数の代表者)と36協定を締結し、労働基準監督署に提出することで、労働者に時間外労働をさせる法的拘束力を持つことが可能です。

とはいえ、もちろんいくらでも時間外労働をさせてよいのではなく、上限が定められています。時間外労働の上限は、休日労働を含まずに月45時間・年360時間です。36協定で定められた範囲を超えているとき、あるいは会社と労働組合や労働者の代表が36協定を締結していないときは、残業の法的拘束力はありません。たとえば、月45時間を超える残業は36協定の範囲外のため、命じられても労働者は拒否することが可能です。

時間外労働には下記の2種類あり、どちらに該当するかによって支払うべき賃金の額が異なります。

  • 法定内残業:所定労働時間を超えているが、法定労働時間内におさまる残業
  • 法定外残業:法定労働時間を超える残業

法定内残業とは、たとえば勤務時間は4時間で、1時間残業したケースなどです。所定労働時間は1時間超えていますが、法定労働時間(1日8時間)は超えていません。この場合、割増賃金は適用されず、残業に対しては所定の賃金を支払います。

一方、労働時間が8時間の職場で2時間の残業をした場合、2時間が割増賃金の対象となります。割増賃金は、通常業務の賃金を1.25倍以上で計算して算出した金額です。なお、22時から翌5時までは深夜勤務で、深夜割増も発生します。深夜割増も通常の賃金の1.25倍です。休日出勤も割増賃金の対象で、法定休日の出勤で1.25倍、法定外出勤で1.35倍以上の金額で算出します。

残業時間、深夜割増、休日出勤などの具体的な計算方法

労働者が残業や深夜勤務、休日出勤した場合割増賃金が発生することがあり、適切に計算する必要があります。具体的にどのように算出するのか、例を挙げてみましょう。

所定労働時間8時間で残業した場合

勤務時間が8時から17時(休憩時間1時間)で、19時まで働いたとしましょう。所定労働時間は8時間で、残業が17時から19時まで2時間発生しています。この2時間分を割増賃金として、通常賃金の1.25倍で計算します。

所定労働時間6時間で残業した場合

勤務時間が8時から15時(休憩時間1時間)で、19時まで働いたとしましょう。所定労働時間は6時間で、残業が15時から19時まで4時間です。所定労働時間が6時間のため、15時から17時までの2時間は法定内残業となり、所定の賃金を支払います。17時から19時の2時間は割増賃金の対象となり、通常賃金の1.25倍で計算することが必要です。

深夜割増がある場合

勤務時間が8時から17時(休憩時間1時間)で、23時まで働いたとしましょう。所定労働時間は8時間で、残業が17時から23時まで6時間発生しています。このとき、17時から22時までの5時間は時間外割増の対象として1.25倍で計算します。さらに、22時から23時までは深夜割増も加算されるため、1.5倍で計算することが必要です。

次に、勤務時間が17時から24時で、残業しなかったケースをみてみましょう。このケースでは時間外割増は発生しません。しかし、22時から24時の2時間は深夜割増の対象となり、1.25倍で計算する必要があります。

休日出勤の場合

休日出勤の賃金を計算する場合、次の2点に注意が必要です。

  • 出勤したのが法定休日(1.35倍)か法定外休日(1.25倍)かで、割増率が異なる
  • 休日であれば必ず割増されるものではなく、法定労働時間(週40時間・1日8時間)を超えた分が割増賃金の対象となる

※法定休日、法定外休日についてはのちほど詳述します。
たとえば、1日の勤務時間が8時間・土日が休みの会社で、土日ともに出勤したとしましょう。この場合、法定労働時間を超えて休日出勤をしているため、土曜日の賃金は1.25倍、日曜日の賃金は1.35倍で計算します。

1日7時間勤務・土日休みの会社だと週35時間勤務となり、法定労働時間の週40時間まで5時間あります。土日ともに出勤した場合、5時間を抜いた残りの勤務時間が割増対象です。

休日とは

休日とは、労働する義務がない日のことです。休日は、労働基準法によって法定休日と法定外休日とに分類されます。

  • 法定休日:労働基準法により会社が必ず付与しなければならない休日
  • 法定外休日:法定内休日を上回る休日

法定休日は、「1週に1日以上」か「4週に4日以上」与えることが義務付けられています。労働基準法第119条により、法定休日を与えなかった企業は6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科されます。

法定外休日は法律による定めはなく、企業が自由に定めている休日です。たとえば、週休2日制の会社であれば、1週間の休日2日のうち1日は法定外休日となります。そのほかに、国民の祝日や企業の創立記念日、お盆や年末年始を休日としている企業は多いでしょう。

有給休暇とは

有給休暇とは、賃金が発生する休暇のことです。勤務してすぐに付与しなければならないものではなく、労働者が以下の条件を満たす場合に付与します。

  • 勤務を始めてから半年以上経つ
  • 半年間の労働日の8割以上出勤している

最初は10日間を付与し、その後1年ごとに1日ずつ増やす必要があります。付与できる日数は最大で20日です。消化しきれなかった有給休暇は、2年間のみ繰り越しでき、その後は権利が消滅します。有給休暇は1日単位を基本とするものの、会社と労働者が合意したときは半日単位での取得も可能です。

有給休暇は労働者が行使できる権利です。労働者から有給休暇取得の申し出があった場合、使用者はそれを拒否することは基本的にできません。しかし、繁忙期など、労働者に休まれると困る時期もあるでしょう。このような正常な業務の妨げになると判断される場合においては、企業は取得時期をずらすように労働者に求めることが可能です。これを「時季変更権」といいます。有給休暇を買い上げて休暇の日数を減らすといったことは法令違反です。ただし、退職するなど有給休暇の権利を行使できないときは、買い取りしても違法ではありません。

なお、有給休暇はパートやアルバイトなど所定労働時間が短い労働者に対しても、一定の有給休暇を付与する義務があります。

  • 週4日・出勤3年間以上もしくは週3日出勤・5年半以上勤務している
  • 直近1年間、労働日数の8割以勤務している

以上の労働条件を満たす場合は、付与しましょう。

有給休暇は年5日の取得が義務化

有給休暇の取得率は、2018年の時点で3年連続で上昇しています。しかし、諸外国と比べると日本の取得率は圧倒的に低く、主要国のなかでは最下位です。政府は2020年までに取得率を70%にする目標を掲げ、2019年4月より働き方改革として全企業に「有給休暇の義務化」を求めています。概要は以下の通りです。

  • 対象は年10日以上の有給休暇が付与される労働者
  • 使用者が時季を指定し、年に5日間の有給休暇を労働者に取得させる
  • すでに5日以上取得している労働者に対しては、指定しなくて良い

使用者は、労働者に対して休みたい日を聞き取ります。その希望を尊重し、時季を指定して有給を取得させるという流れです。

変形労働時間制とは

繰り返しになりますが、法定労働時間は「1日8時間・週40時間以内」です。しかし、労使協定や就業規則などで定めることで、特定の日や週のみ法定労働時間を超えて働かせることができます。これが「変形労働時間制」です。1カ月単位・1年単位・1週間単位があり、事業形態に合わせてどれを導入しても構いません。ただし、変形労働時間制を導入する期間を平均して、1週あたりの労働時間が法定労働時間を超えないように調整することが必要です。つまり、労働時間を1日単位で考えるのではなく、月・年・週のくくりで計算するのです。繁忙期や閑散期がある事業所などは、変形労働時間制をうまく取り入れることで働き方にメリハリがつき、労働時間の調節がはかれます。

1カ月単位

1カ月以内の労働時間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間以内におさまるようにし、これを対象期間の法定労働時間とするものです。法定労働時間の週平均40時間を超えた分を残業時間とみなします。

1年単位

1カ月以上から1年までの労働時間を平均し、1週間あたりの労働時間を40時間以内におさめるようにし、これを対象期間の法定労働時間とするものです。1日あたりの労働時間は10時間までとし、連続勤務は6日までにしなければなりません。

1週間単位

1日10時間、1週間40時間を超えない範囲でシフトを作成します。労働者が30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店のみ導入可能です。40時間を超える労働時間が定められている週では、その時間を超えて働いた時間を残業時間として扱います。それ以外の週は、40時間を超えて働く場合に残業となります。

フレックスタイム制とは

「フレックスタイム制」とは、「9時から5時」といった一般的な勤務時間にこだわらず、労働者が自主的に始業時間と終業時間とを決定できる制度です。日本では、フレックスタイム制は1988年から導入できるようになりました。しかし、2015年度の時点で導入している企業は全体の4.3%程度と、それほど普及しているとはいえない状態です。

フレックスタイム制では、労使協定によって一定期間内の総労働時間を決めておき、その範囲に収まるように始業・終業時間を設定する必要があります。この一定期間は1カ月が上限です。また、フレックスタイム制を適用する期間を「清算期間」とよびます。総労働時間は、清算期間を平均したとき1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えないようにしなければなりません。なお、フレックスタイム制を導入する場合は就業規則等で定める必要があります。

フレックスタイム制では、必ず出勤しなければならない「コアタイム」を設けるケースが一般的です。コアタイムが始まる時間に出勤していなければ遅刻扱い、コアタイムの途中で帰宅すれば早退となります。コアタイムの前後には、「フレキシブルタイム」を設けます。この時間であれば、いつでも出勤・退勤が可能です。業務上特に必要でなければ、コアタイムを設けなくても構いません。フレックスタイム制を導入していても、労働者が総労働時間を超えて働いた場合は超えた分だけ残業代が発生します。清算期間のなかで労働時間が所定労時間に満たない場合は、減給の対象です。

労働者が満18歳未満の年少者の場合はフレックスタイム制を導入できませんので、注意しましょう。これは労働基準法60条の規定によるものです。

みなし労働時間制①事業場外みなし労働時間制

営業職で外回りをしている、出張しているなど、事業場以外で働く労働者のなかには労働時間の正確な算出が困難な人もいるものです。その場合、実際の労働時間にこだわらず、原則として所定労働時間分働いたとみなすことができる制度があります。これが「みなし労働時間制」のうちの「事業場外みなし労働時間制」です。ただし、上司の綿密な指示のもとで働いているなど、労働時間の算出が可能な場合はこの制度を適用することはできません。事業場外みなし労働時間制には、大きく次の2つがあります。

  • 所定時間分働いたとみなすケース
  • 通常その業務を遂行するのにかかる時間分労働したとみなすケース

「所定時間分を働いた」とみなすケースでは、労使協定は要りません。しかし、「通常その業務を遂行するのにかかる時間分労働したとみなす」ケースでは労使協定を締結する必要があります。また、みなし労働時間制であっても、所定・法定労働時間(1日8時間)を超えていれば時間外割増の賃金を支払わなければなりません。条件を満たせば、休日出勤や深夜勤務についても同様です。

みなし労働時間制②裁量労働制

みなし労働時間制には「事業場外みなし労働時間制」のほかに「裁量労働制」があり、裁量労働制はさらに次の2つに分かれます。

  • 専門業務型裁量労働制
  • 企画業務型裁量労働制

それぞれの特徴をみていきましょう。

専門業務型裁量労働制

実際の労働時間に関係なく、あらかじめ労使協定によって決めた時間分を働いたとみなす制度です。使用者の具体的な指示がなく、労働者自身のペースで仕事を進めたほうが良いと考えられる特定の業務で導入できます。該当するのは以下の19種類の業務です。

  1. 新商品や新技術の研究・開発、人文科学、自然科学に関する研究
  2. 情報処理システムの分析や設計の業務
  3. 新聞や出版における記事、放送番組・有線ラジオ放送・有線テレビジョン放送の番組制作や取材、編集
  4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告などのデザイン考案
  5. 放送番組や映画などの制作事業におけるプロデューサーやディレクター
  6. コピーライター
  7. システムコンサルタント
  8. インテリアコーディネーター
  9. ゲーム用ソフトウェア制作
  10. 証券アナリスト
  11. 金融工学等の知識が必要な金融商品の開発
  12. 大学における教授研究(主に研究に従事するもの)
  13. 公認会計士
  14. 弁護士
  15. 一級建築士、二級建築士、木造建築士
  16. 不動産鑑定士
  17. 弁理士
  18. 税理士
  19. 中小企業診断士

企画業務型裁量労働制

企画、立案、調査、分析に関わり、使用者が具体的に指示をするのではなく、労働者が時間配分や業務を遂行する手段を決めていく業務を対象とする制度です。実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ労使委員会で定めた時間数を働いたとみなします。

みなし残業とは

みなし残業とは、固定残業代を指します。これは、一定の残業が発生することを想定して、あらかじめ固定給に相当分の残業代を含めておくものです。あらかじめ決めたみなし残業時間内であれば、残業をしても割増賃金の対象外となります。たとえば、労働基準法で定める週40時間を超える時間外労働を行ったとしても、深夜勤務に該当する夜10時から翌5時までの勤務や休日出勤を行ったとしても、割増賃金を支給する必要はありません。ただし、みなし残業時間を超えたときは残業代が発生します。みなし残業時間は、36協定によって1カ月に最大45時間と定められています。

労働基準法で定められた就業時間や働き方について正しく理解しよう

就業時間や労働時間の定義や違いを始め、休憩・残業・休日・フレックスタイム制など働くうえで理解しておきたい用語について説明してきました。普段働いているときは、働き方についてあまり意識することはないかもしれません。しかし、労働基準法には働くうえでのさまざまな決まりが定められていて、労働者を守っています。自分の身にも関わることのため、正しい理解に努めましょう。

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