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2021.10.19

多能工とは?多能工化を進めるポイント・メリットは何でしょうか?

少子高齢化が進む現代では将来的に労働人口が減少し、人材不足に悩まされる企業が増えると予想されています。そんな中、限られた人材を最大限に活用する方法として「多能工」が注目を集めていることを知っていますか。

今回は、多能工の基礎知識をはじめ、多能工化を進めるメリット・デメリット、多能工化を進めるポイントなど気になる情報を解説していきます。

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多能工と単能工の違い

多能工とは、幅広い知識やスキルを持ち、1人で複数の業務や工程を行える人材のことです。もともとは世界的大企業であるトヨタ自動車が始めた仕組みで、現代では製造業を中心に数多くの企業で多能工が育成されるようになりました。多能工が増えれば、忙しい業務や工程が発生したとき労働力を集約し、従業員にかかる負担を分散したり作業スピードを向上させたりすることができます。多能工のことを「マルチスキル」、企業内で多能工を数多く育成することを「多能工化」「マルチスキル化」と呼ぶ場合も多いので、覚えておきましょう。

これに対し、深い知識やスキルを持ち、1つの業務に特化した人材のことを「単能工」と呼びます。単能工はその業務のスペシャリストであり、イレギュラーな事態にも効果的に対応できるため重宝されます。大量生産が必要な場合などに活躍する一方、その業務にのみ集中するため全体の流れや達成度を把握しづらく、作り過ぎなどの問題が起きることもありました。高度経済成長期が過ぎ、多品種少量生産が主流となってきた現代では特に、単能工よりも多能工が必要とされるようになっています。

多能工化が生まれた背景

多能工化を最初に取り入れたのは、誰もが知る大手自動車メーカーのトヨタ自動車だと言われています。以前のトヨタ自動車では、生産ラインごとに作業員を配置し、特定の作業を担当するというスタイルをとっていました。ところが、作業はすべて同じ量やスピードで行われるものではなく、作業ごとに忙しいタイミングや作業量などが異なります。このため、ある作業員が多忙を極める横で、別の作業員はのんびり作業を進めるという事態も起きていたのです。これでは貴重な時間と労働力を無駄にしてしまうと考えたトヨタ自動車は、必要な時に必要な人材を必要な場所へ供給する「ジャストインタイム」というシステムを考案しました。

1人の作業員が複数の作業を行えるようになれば、手の空いた作業員が忙しい作業員のところへ応援に行き、作業を分担することができます。そこで、作業員にさまざまな作業を行えるよう十分な知識やスキルを教育し、臨機応変な人材配置を可能にしたのです。柔軟な労働者管理ができるだけでなく、労働力の余剰を防ぐことで生産性向上も期待できるため、多能工化は多くの企業の注目を集めることとなりました。

多能工のメリット

多くの従業員にさまざまな業務知識やスキルを教育するには、時間も手間もコストもかかります。それにもかかわらず多能工を育成するのは、大きなメリットが期待できるためです。多能工にどのようなメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。

業務の可視化や均整化

多能工を導入する最大のメリットは、作業員ごとに担当する業務を可視化・均整化できることです。複数の業務に対応できる多能工がいれば、イレギュラーな事態が起きて労働力が必要になったときでも迅速に人手を確保できます。業務量に応じて担当者の数を増やせば、誰か1人に業務が集中する心配もありません。業務が分散されれば完了までの時間を短縮でき、残業の抑制や納期遅れの予防などにも役立つでしょう。従業員を動かすことが容易になるため、必要に応じたバランスの良い人員配置もできるようになります。また、多くの従業員がさまざまな業務に触れることで業務内容や進捗状況を共有化できるため、課題点や改善策が見つかりやすくなる点も魅力です。

組織の柔軟化

時代の変化にともない、現代では幅広い事業や業務に取り組む企業が増加しています。消費者のニーズや働き方の多様化が進む状況では、企業も市場に柔軟に対応しなければ生き残れない可能性が出てきたのです。多能工の育成は、この企業の柔軟化にも役立ちます。従業員の多くが複数の業務に対応できると、責任者やその業務のスペシャリストがいない場合でも、各自が必要な判断のもとスピーディーに対処できるようになります。対応可能な従業員が増えればそれだけ業務や事業に対するアイデアも出やすくなるため、変化を続ける市場のニーズにもうまく応えられるようになるでしょう。

チームワークの強化

多能工の育成には、従業員どうしのチームワークを強める効果もあります。さまざまな業務に対応するということは、従業員が普段から密に連携を取り合い、お互いにフォローし合う環境が整っているということです。日々このような環境で働いていれば、自然と連帯感が育まれ、チームワークは向上しやすくなります。お互いの業務内容や進捗度の理解もできるため、対立したりストレスをためたりするリスクも軽減できるでしょう。業績を上げるためには、組織が一丸となって取り組むことが欠かせません。目標管理や人事評価で一体感を持たせるのも良いですが、自然と育まれたチームワークほど強い絆はないでしょう。

長い目で企業を順調に運営していくという面でも、多能工によるチームワークの強化は大きな魅力です。

多能工のデメリット

さまざまなメリットが期待できる多能工ですが、一方で導入や運用にあたってデメリットもあるため注意しなければなりません。メリットを最大限に発揮するためにも、デメリットをあらかじめ押さえて対策を考えておきましょう。

評価制度を見直さないといけない

多能工を新たに導入する場合、それに対応した評価制度を作らなければなりません。複数の業務を担当する多能工にはさまざまな知識やスキルが必要となり、負担が大きい存在でもあります。従来と同じ評価制度では、「負担が増えたのに評価が変わらない」と従業員のモチベーションやエンゲージメントの低下を招いてしまうかもしれません。これでは、生産性の向上やチームワークの強化といった多能工のメリットを生かせないでしょう。このため、業務内容やスキルに見合う適切な評価制度を新たに準備する必要があるのです。適切な評価制度は、従業員に適度な緊張感と責任感を持たせる効果もあるため、生産性の向上につなげることもできるでしょう。

育成に時間がかかる

どれほど優秀な人材でも、最初から業務を完璧にこなせるわけではありません。複数の業務をこなす多能工の場合、覚えなければならない知識やスキルも多くなるため、それだけ育成に時間がかかるというデメリットがあります。多能工の育成はOJTによって行うケースが多いでしょうが、そのためにはまずOJTリーダーを育成しなければなりません。リーダーの育成後にやっと従業員本人の育成が始まるだけでなく、従業員の意欲を高めるようなOJTプランを考える必要もあるため、活躍できる多能工の育成にはかなりの時間と労力がかかるのです。多能工を育成すると決めたら、長い目で根気強く取り組む覚悟が必要になります。

多能工化を進めるポイント

多能工化を導入する場合、失敗を避けるために押さえておきたい重要なポイントが2つあります。これを知らずに導入を進めると思ったような効果を得られない可能性もあるため、十分に注意しておきましょう。

業務を洗いだした後に業務を可視化する

多能工化を導入する際は、まず多能工に任せたい業務の内容を明確に洗い出すことが大切です。業務を洗い出しておかないと、従業員の構成やOJTのプランなど多能工化の詳細を決めることができません。自社の業務を優先度順に並び変え、業務ごとに多能工化の対象にするかどうかを考えましょう。その後、多能工として育成する従業員を選定します。自社で働くすべての従業員を多能工化するのが理想ではありますが、対象とする従業員が増えるほど育成にかかる時間と労力も増し、企業側の負担が大きくなってしまいます。このため、全員ではなく適性がある特定の従業員を集中的に育成したほうが良いでしょう。

また、対象となる業務の作業内容を明記したマニュアルを作成し、従業員にわかりやすいよう可視化することも大切です。

多能工化の事例

多能工化のイメージをつかむには、実際に多能工化を成功させた事例を参考にするのが一番です。たとえば、エンジニアリング会社である「アールエヌゴトー」では、施行の前工程を担う作業員の不足により、工事開始が遅れるケースがあることに悩んでいました。そこで多能工化を進め、複数の作業員で行っていた作業を1つの班で完了できるよう構成した結果、遅延の減少や現場での顧客対応力の向上といった改善が見られるようになったのです。

また、リゾート運営会社である「星野リゾート」では、従業員の分業制を見直して全員がフロント・客室・レストランサービス・調理補助などの業務を行えるよう教育しました。部門の壁を越えて忙しい業務をカバーし合い、生産性が向上して経営難のリゾート施設を再生させることに成功しています。さらに、多能工を最初に始めたトヨタ自動車では、生産ラインにかかわらず作業を分担することで柔軟な人材配置が可能になり、作業員数の削減を実現しました。それでいて作業員1人1人の知識やスキルは向上したため、コストカットしながら高品質かつ十分な数の自動車を生産でき、業績アップにつながったのです。

多能工について理解は深まりましたか?

複数の業務をこなせる多能工には、業務の平準化や生産性向上以外にも、チームワークの強化などさまざまなメリットが期待できます。ただし、育成計画の作成や評価制度の整備など、企業側に負担となる注意点もあるため、導入は慎重に進めなければなりません。ITが発展し続ける現代日本で生き残るためにも、多能工化による柔軟な組織づくりを目指してみてはいかがでしょうか。

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