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2022.4.18

カンパニー制と事業部制の違いは?基礎知識から運営のポイントまでまとめ

日本では特に大企業において、カンパニー制という経営形態が多く見られます。このカンパニー制がどういうものか知っているでしょうか。似たような制度に事業部制や持株会社制があります。その違いを理解できている人、カンパニー制の明確な意味合いや導入する上でのメリット・デメリットを理解している人はあまり多くないでしょう。そこで今回は、カンパニー制についての基礎知識をさまざまな角度から徹底解説します。

カンパニー制って何?

カンパニー制とは、社内で展開している事業組織をそれぞれ独立した会社として扱う経営形態です。そうして、人材や財政、物資など経営に必要な権限のすべてを委譲します。多角的な事業を行っている会社の多くがこの制度を取り入れており、日本国内では1994年にソニーが導入したことで大きな話題となりました。その後、1997年の独占禁止法の改正による持株会社の解禁によって導入企業が増え、トヨタ自動車やみずほ銀行など多くの大手企業がカンパニー制を導入しています。

多角経営を行っている企業の多くがこの制度を導入しているのは、各事業分野において差異的かつスピーディーな意思決定ができるためです。社内の事業部の場合、上司の判断を仰いだり会計上の許可を取ったりする際にどうしても時間がかかってしまいます。また、さまざまな社内の意見を取り入れることによって独創的なチャレンジができなくなってしまうことも往々にしてあるものです。権限を委譲されたカンパニー制であれば、こうした大企業であるが故の弊害を減らすことができるというわけです。

カンパニー制では個々のカンパニーに会計上の独立性までも担保されているのが大きな特徴です。そのため、事業の経営を行ううえで自由度が高い一方、経営におけるリスクも背負うことになります。どの事業が業績を上げており、どの事業がそうでないのかがより明確になるのです。

カンパニー制を導入する理由は?

そもそもなぜカンパニー制に対する注目が集まっているのでしょうか。その大きな理由として挙げられるのは、カンパニー制が事業部制の欠点を補えるからです。たとえば、事業部制ではそれぞれの事業部に利益追求の役割が求められているにも関わらず、そのための重要な意思決定を単独で行えないといった問題点がありました。利益責任と裁量権の間に大きな乖離があることが十分な利益を出す妨げとなっているケースが多く見られたのです。しかし、より独立性の高いカンパニー制であれば、迅速な意思決定をすることができます。経営判断の際、チャンスを逃してしまう確率をより低く抑えられるのです。

また、カンパニー制によって組織を細分化すれば、より弾力性の高い経営が行えるようになります。たとえば、万が一、社内のカンパニーが経営に失敗してしまったとしても、そのことはすぐに明らかとなります。そのため、必要以上の損害を出す前に事業から撤退することができるのです。顧客ニーズが多様化し、柔軟性のある行動をとることが求められている時代に適した制度だといえるでしょう。さらに、責任の所在が明確になるカンパニー制の導入によって企業内競争を生むことができます。失敗だけでなく成功もすぐに明らかとなるからです。社内での競争が活発になることは、市場でのその会社の競争力をより強化することにつながります。

カンパニー制と類似制度の違いとは?

カンパニー制と似たような制度で代表的なものとして、事業部制や持株会社制などが挙げられます。とはいうものの、実際にこれらは何が異なるのかを説明できない人も多いでしょう。そこで、この段落ではカンパニー制と類似制度の違いについて紹介します。

事業部制

事業部制とは、社内に顧客ニーズに対応した事業部門を設置する経営形態です。事業部制では事業部門に業務管理や予算決めの権限を与えることが健康的な経営のための前提となります。事業部制において各事業部はあくまでもその会社の一部門のため、事業の売上や損失も本社のものとなります。事業部制を導入するメリットとして挙げられるのは、本社機能の効率化です。事業部制にすることで本社の事業自体に割くリソースを節約し、企業そのものの活動における経営判断に注力できるようになるわけです。

事業部の分け方は大きく製品別、地域別、顧客別の3つがあります。事業部制はカンパニー制と同じように事業を単位として経営裁量を委譲する制度ですが、カンパニー制ほど権限はありません。たとえば、人事や経営、重要な意思決定については本部が権限を握っています。各事業部は常に本部の判断を仰ぎながら経営を前に進めていかなければなりません。一方、カンパニー制は独立採算制なので、法的には社内計上扱いではあるものの、実質は本社とは別会社という扱いです。そのため、投資や採用、人材配置といったことに関する意思決定の権限も譲渡されています。意思決定や判断のスピードに関しては、どうしてもカンパニー制に劣るでしょう。

また、事業部制には事業部間の交流が減少しやすいデメリットもあります。そうしたことから社内のコミュニケーションが滞りがちになるケースも多いので、そうならないよう、社内間の交流を促す何らかの対策をとる必要があります。

持株会社制

持株会社制とは、本社が自社では経済活動を行わず、投資目的ではない傘下企業や事業を、株式を所有することによって支配している組織形態です。一般的にはホールディングと呼ばれており、〇〇ホールディングスといった名称の会社はこの持株会社制のことを指します。持株会社制における本社が持ち合わせている権利は、投資権や人事権、意思決定の権利などです。種類としては、他社の支配だけを行う純粋持株会社と事業活動を行いながら他社支配を行っている持株会社が存在します。

カンパニー制との違いは、支配している子会社の法律上の扱いにあります。カンパニー制の場合、本社とカンパニーは法律上では同じ企業内で運営されているものとされるのに対し、持株会社においては、本社と子会社は法律上別会社扱いとなるのです。このことは、企業買収や事業売却などをしやすくなるといったメリットにつながります。また、傘下の会社への権限の委譲が簡単なため、雇用の受け皿として利用することが可能となります。

一方、デメリットはグループ内の連携が難しくなることです。持株会社と子会社の間は支配関係にあるものの、子会社同士の間には支配関係のような結びつきがあるわけではありません。そのため、同じグループ会社であるとはいっても連携するのが難しく、場合によっては無駄が生じることもあります。また、子会社化するために株式を50%以上保持しなければならないという資金コストがかかることも、持株会社制のデメリットのひとつです。

カンパニー制のメリットとは?

それでは、カンパニー制には一体どのようなメリットがあるのでしょうか。まず挙げられるのは、カンパニー制を導入することで各カンパニーの意思決定が早くなることです。カンパニー制では経営判断に必要な投資や人事に関する権限がすべて移譲されるため、各カンパニーは独自の判断だけで重要な意思決定を行えるようになるのです。また、経営資源を社内で自由に配分する権限も与えられるので、市場の変化や顧客ニーズへの対応力増加が期待できます。

さらに、同じ会社でありながら事業の独立性を構築できるため、同じゴールを目指しながらも個性や独立性を重視したシステムを構築できるメリットもあります。このことは社員のモチベーションアップにつながるでしょう。それだけでなく、それぞれのカンパニーが競争意識を持ち、各組織の能力が向上することも期待できます。これらに加え、社内で企業の経営を体験する人材が増えるといったメリットもあります。カンパニー制では各カンパニーが独立採算制を採るため、経営的な視点を持つ人材が必要不可欠だからです。実際に会社を経営した体験を持つ人材を確保できることは、会社にとって大きなメリットとなるでしょう。

カンパニー制のデメリットとは?

一方、デメリットとしては、カンパニー制は事業部制よりも横のつながりが希薄化してしまうことが挙げられます。なぜなら、カンパニー制では各カンパニーの内部で経営が完結してしまうためです。経営に関する多くの権限が委譲されているため、カンパニー間をまたいだ交流をする必要性がなくなってしまうのです。そうすると各カンパニー間での情報共有が行われにくくなり、本来であれば多角経営で得られるはずのシナジー効果が生まれにくくなります。

また、カンパニー制では各カンパニーにおける収益への責任が明確になります。その結果、結果至上主義に陥りやすくなるといったデメリットもあるので注意が必要です。最悪の場合、カンパニーが不正を行ったり、犯した不正の隠ぺいをしてしまったりすることを誘発する危険性があります。

そのほか、カンパニー制を導入したことで経営コストが増加してしまうケースもあります。本来であれば本部に集約されていた人事権や総務・経理といった管理部門が、カンパニー制では各カンパニーに重複して設置されるためです。損益計算書や賃貸対照表などもカンパニーそれぞれで作成することになり、各カンパニーが背負う業務の煩雑化が進んでしまいます。

カンパニー制を運営する上でのポイントは?

カンパニー制を運営する際に気をつけなければならないこととして、まず本部や本社が各カンパニーの業務に干渉しないことが挙げられます。カンパニー制ではそれぞれのカンパニーが独立採算制の下で柔軟に決断・行動できるというのがもっとも大きなメリットです。本部や本社がカンパニーの経営に口出しすると、このメリットが活かされなくなってしまいます。

カンパニー制は会計上においても各カンパニーが独立した存在とみなされるようになります。そのため、会計関連の監視体制を強化して経営の透明性を確保することが大切です。また、カンパニー制では重複した管理部門が必要となるためにコスト増となる可能性があることを忘れてはなりません。そのため、導入の際にはどのようにコストカットするのかを考えておくことも重要なポイントです。

そのほか、カンパニー制を導入する場合には経営者や本社だけでなく、各カンパニーの社員もカンパニー制のメリットとデメリットをしっかり把握している必要があります。カンパニー制の導入が原因で各カンパニーの社員間に必要のない摩擦を生んでしまっては意味がないからです。そのためにも、本部や本社は人事管理や業績評価におけるフェアな統一の基準を定めることが重要です。各カンパニーの社員にカンパニー制に対する理解を深めてもらうためには、事前に数回に分けて説明を行うとよいでしょう。

自社の状況からカンパニー制の導入を慎重に判断する

社会の流れが急速に変化していく中、企業が生き残るために重要なことは競争力を維持することです。社会の流れに合わせて会社の制度を変えるということも、そのひとつの方法です。とはいうものの、カンパニー制にはメリットとデメリットの両方があります。導入する際には事前に自社の状況をしっかり把握し、現在のニーズに本当に合致するのか、導入によって利益をより得られるのかをあらかじめしっかり検討することが大切です。

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