働きがいを応援するメディア

2022.6.28

【2020年施行】労働者派遣法の改正とは?改正点や目的などを徹底解説

「労働者派遣法」は、1986年の制定以来、数度の改正を繰り返し、特に2012年以降は大幅な改正が行われている法律です。2020年には「働き方改革」を実現するため、その一環として見直しが行われており、派遣労働者を雇用するすべての企業に改正労働者派遣法への対応が求められています。この記事では、改正労働者派遣法の内容や施行日などについて紹介していきます。

人材情報を一元化するなら、タレントマネジメントシステム「CYDAS」

労働者派遣法とは?

労働者派遣法は、正式名称を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」といい、労働市場のマッチングが適正に行われることと、派遣社員の権利を守り雇用を安定させることを目的として1986年に制定されました。

制定以前は派遣という働き方自体が認められていませんでしたが、高度成長期以降、労働力の確保などの面から需要が高まったことで認可された背景があります。当初は特定の業務に限定し、派遣期間を区切って認められていた派遣労働ですが、バブル経済の高まりと崩壊、リーマンショックなど労働を取り巻く環境の変化に伴って改正され、2004年には建築、港湾、警備、医療の4業種を除く全業種で派遣業務が可能になり、2015年には全業種において3年間の派遣期間が定められました。

2020年の改正労働者派遣法について

労働環境の変化に伴い、これまでにも数度、労働者派遣法は改正されてきました。2020年の改正は、「同一労働・同一賃金」の実現が大きな目的であり、派遣元となる派遣会社や人材会社、派遣労働者を受け入れる派遣先企業は、改正について理解しておく必要があります。この段落では、2020年の改正労働者派遣法の改正目的や公布日・施行日などについて紹介します。

改正目的

2020年の労働者派遣法改正は、「働き方改革関連法」の制定に伴って行われるものです。「働き方改革」は、長時間労働の是正、非正規雇用の格差改善、多様な働き方の実現を大きな柱としており、「働き方改革関連法」では、働きすぎを防ぐための労働時間制度の創設と、正社員・非正規社員間の不合理な格差の是正を求めています。中でも、労働者派遣法の改正で特に目的とされているのは、不合理な格差の是正です。派遣労働者は、所得・待遇の不安定さやキャリア形成の難しさで問題となってきましたが、「同一労働・同一賃金」を実現することで、多様な働き方が広く容認され、人手不足の現状を打破することができると考えられています。法改正により、同じ内容の職務を行っている正社員と非正規社員の間で格差が生じないように、派遣先と派遣元が派遣労働者に対して均等で均衡のとれた労働環境を確保することが義務付けられました。

公布日・施行日

労働者派遣法の改正を定めている「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」の公布日は2020年7月6日、施行日は2020年4月1日です。これにより、事業規模に関わらず、すべての派遣元、派遣先に対して改正労働者派遣法が一斉に施行されました。ちなみに、中小企業におけるパートタイムや有期雇用労働者への適用は2021年4月1日です。この改正により「同一労働・同一賃金」が導入され、同内容の職務に携わっている場合、雇用形態に関わらず同等の賃金を支払う義務が生じることになりました。

改正労働者派遣法の改正内容とは?

改正労働者派遣法が施行されると、これまでとどのような点が変わるのでしょうか。この段落では、労働者派遣法の改正点について特に取り上げて紹介します。

待遇決定方式の厳格化

改正労働者派遣法でポイントとなるのは、「同一労働・同一賃金」です。この実現のために、派遣元は「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2つから賃金の取り決めを選ぶことになりました。どちらを採用するかの決定権は派遣元にあり、派遣先企業は取り決めに従って情報の提供などをする必要があります。「派遣先均等・均衡方式」とは、派遣先の従業員と平等でバランスの取れた待遇を受けることができることを意味し、派遣先で同じ内容の仕事を行っている従業員の賃金を元に、派遣労働者の賃金を決定する方式です。「派遣先均等・均衡方式」が選ばれた場合、派遣先企業は、比較対象となる従業員の賃金に関する情報を派遣元に提供しなければなりません。

「労使協定方式」とは、派遣会社と派遣労働者との労使協定で賃金を決める方式です。この場合、派遣先企業の従業員の賃金は直接的な比較対象となりません。派遣元は、派遣先企業と同地域で同程度の能力、経験のある人が同等の業務を行った場合の平均的な賃金を元に、その金額と同等以上の賃金を提示しなければならないと定められています。派遣先企業は、比較対象となる従業員の賃金情報を提供する必要はありませんが、地域性や能力を十分に考慮して賃金が決定されるため、派遣労働者に不利益が生じることはありません。労使協定が適切でない場合などは、派遣先均等・均衡方式が採用されます。

派遣元による情報提供の義務付け

「同一労働・同一賃金」を実現するためには、派遣先企業で働く人の賃金などに関する情報が必要です。派遣先均等・均衡方式の場合、派遣労働者の賃金は、派遣労働者と同じ内容の業務を行う「比較待遇者」の賃金をもとに算出されるからです。このため、改正労働者派遣法では、派遣先企業は派遣元に対して、賃金に関する情報提供の義務を負うことが定められました。派遣先は比較待遇者の賃金情報を提供する必要があり、行われない場合は、労働者派遣契約を結ぶことができません。比較待遇者の待遇に変更があった場合にも情報提供が必要です。ただし、義務付けられているのは比較待遇者の情報のみであり、全従業員の賃金情報を提供する必要はありません。

派遣会社から派遣社員への説明義務

派遣会社は、雇い入れ時や派遣時に、派遣労働者に対して「派遣先均等・均衡方式、または労使協定方式により講じられる措置」や「賃金決定の詳細な方法」について、説明義務を負うよう定められました。そのほかにも、昇給・退職手当・賞与の有無や、労使協定の対象かどうか、派遣労働者から申し出を受けた場合の苦情処理について、明示する必要があります。派遣会社は派遣労働者側から回答を求められた場合にも説明義務があり、派遣社員及び比較対象労働者の待遇を決定するにあたって考慮した事項や、労使協定に定めた公正な評価などについて、説明をしなければなりません。改正労働者派遣法では、派遣労働者が回答を求めたことを理由に解雇や不利益な取り扱いを行うことを禁じており、派遣労働者の権利が強く保障されています。

行政ADRの整備

労働者派遣法の改正により、行政ADRの整備が行われます。ADRとは「Alternative(代替)」「Dispute(紛争)」「Resolution(解決)」の略で「裁判外紛争解決手続」と訳されます。これまで、労働におけるトラブルが起きても、派遣労働者が訴訟提起をすることは難しく、泣き寝入りをせざるを得ない状況がありました。行政ADRでは、都道府県労働局長によって紛争解決援助や紛争調停が行われるため、訴訟以外の手続きで労働者を救済することができるようになり、派遣労働者は自分の権利を主張しやすくなります。派遣労働者と派遣先、派遣元の間で「派遣先均等・均衡待遇」や「労使協定に基づく待遇」「待遇差の内容・理由に関する説明」などに違反するトラブルが発生した場合は、個別紛争解決制度を利用するのではなく、行政ADRを用いて無料で迅速に解決を図ることが可能です。

改正内容を踏まえて対策を準備しよう

「働き方改革」の推進により、改正労働者派遣法に基づいて労働環境が改善され、派遣労働者は、能力に応じた所得を得られるようになります。派遣先企業や、派遣元である派遣会社にとってもニーズに合った労働力の確保に役立つと考えられますが、ルール違反にならないように運用するためには、改正労働者派遣法について把握しておくことが重要です。

働きがいのある組織づくりを推進するなら、タレントマネジメントシステム「CYDAS」がおすすめです。詳しくは無料ダウンロード資料やサービスサイトをご確認ください。

Category

労務管理

Keyword

Keywordキーワード