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2021.7.30

【徹底解説】ビジネスでよく使われるストーリーテリングとは?

ストーリーテリングは、映画や小説、スピーチなどで幅広く使われている技法で、ビジネスにおいても業種を問わずさまざまに活用されています。しかし、ストーリーテリングの意味や効果的な使い方について詳しく知っていない企業担当者や経営者も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ビジネスにおけるストーリーテリングについて基本的な意味から具体的な手法、メリットなどを徹底解説していきます。

ストーリーテリングって何?

ストーリーテリングの元来の意味は、聴衆に物語を語ることです。たとえば絵本や紙芝居などを子どもたちに向けて直接話して聞かせるような行為がストーリーテリングのイメージです。ストーリーテリングは映画や小説、広告、プレゼンなどあらゆる分野で用いられています。いずれの場合も、多くの人がすでに心の内に持っているストーリーのひな型を利用して、聞き手の記憶に残り感情に訴えかけやすくするのが特徴です。

ビジネスの世界では、本当に売りたいものは当然、商品やサービスです。しかし、それらを売ろうと努力するほど、仕様や機能の詳しい説明やスペックの優秀さを一方的にアピールするだけになってしまいかねません。ストーリーテリングは、自社の商品や自社自身、ひいては顧客までストーリー化して共感を呼び起こせるのが特徴です。話の展開に興味を持ってもらうことで好感を得やすく、信頼感やロイヤリティを獲得しやすいメリットがあります。たとえばSNS広告やWebコンテンツにおいては、ストーリーテリングを用いて離脱率を抑え自社サイトへのアクセスを増やせるでしょう。結果として売上や利益の向上につながることから、業種を問わず、マーケティングにストーリーテリングが活用されています。

ストーリーテリングを上手に用いると、新たな価値観の提示や人生観についての問いかけなど、スケールの大きな内容や抽象的なコンセプトを自社の商品・サービスに関連付けて語ることも可能です。このような内容は感情に訴えやすく記憶に残りやすい面があるため、人の心を動かすきっかけとして、各企業のブランディングや企業理念の表明などで活用されています。

ストーリーテリングを活用するメリット

企業がビジネスにストーリーテリングを活用すると、どのような利点があるのでしょうか。ここでは3つのメリットを紹介します。

自社商品の価値をわかりやすく伝えることができる

ストーリーテリングのメリットの1つ目は、自社のビジネスモデルや商品の価値をより鮮明に伝えることができ、大きな効果を得られることです。たとえばAppelのiPhoneは発表当時においても、客観的に説明すればパソコンに電話機能を付けたデバイスといわれても仕方がありませんでした。しかし、スティーブ・ジョブズはそれを「電話の再発明」と表現し、新たな価値観を提示したことで聴衆にインパクトを与えました。仮に類似商品があったとしても、ストーリーテリングによって自社製品を個性的にみせたり、差別化を図ったりすることは可能です。ストーリーテリングは、いわばカメラワークのような役割を果たし、ポイントが明確になり問題や課題を整理できるからです。つまり、消費者がその商品・サービスから受け取れる利益を理解しやすくします。

iPhone発表時においても「従来の携帯電話はキーボードが邪魔」「音楽プレーヤーを別に持ち歩かなければならない」など、聴衆の不満に寄り添いながら説明を進めています。そして「早く全貌を知りたい」という聴衆の欲求が最高潮に達したタイミングを見計らって新製品iPhoneを発表しました。起業家が投資家に向けて発表をする場合には、自社製品でどのような問題が解決できるのか、効用は何か、新しい価値観などをストーリー仕立てで背景から順に紹介すると、自社商品・サービスならではの価値や個性を訴求できます。

顧客の共感を呼ぶことで覚えてもらうことができる

ストーリーテリングを用いたマーケティングは、顧客の共感を得やすいのもメリットです。ストーリーテリングを用いた広報活動では、基本的に物やサービス自体でなく、それらから利益を受ける人を主役にするからです。「ステーキを売るなシズル(sizzle: ジュージューとおいしそうに焼ける音)を売れ」というマーケティングの教えがありますが、ストーリーテリングにも商品自体ではなく顧客の気持ちを重視する特徴があります。顧客の感情や五感、過去の体験などを刺激できれば、聞き手が初対面であったとしても疑似体験を味わってもらい、同じ体験を経験したいと思ってもらえます。プレゼンやセミナーにおいては、聴衆とプレゼンターとの距離を縮め、会場の一体感を生むことにも役立つでしょう。周りの顧客も巻き込みながら話を進められるのもストーリーテリングのメリットです。

また、ただ淡々と説明するのと違い、聴衆の心を動かせられるぶん記憶への定着を高められます。実際、商品を直接紹介せずに社会問題や環境問題などを訴えたスピーチや広告などが記憶に残り、多くの顧客の第一想起(ある分野において真っ先に思い浮かぶ企業やブランド)を獲得した成功事例もめずらしくありません。顧客に企業や商品・サービスに対する好感や信頼感などを持ってもらうことは、長期的に良好な関係を築くために重要です。何か問題が起きたときや解決したい課題が出てきたときに、コンタクトを取ってもらいやすくもなります。

ビジネスアイデアを印象的かつ具体的に伝えることができる

競争が激しい業界においては、特定の処理速度や実績などをアピールしたいことがよくあります。しかし、データシートやスペック表を広告に載せただけでは、カタログと変わりがありません。自社製品の強みや、ビジネスアイデアなどを印象的・具体的に伝えるには、ストーリーテリングによる数字や事実への肉付けが不可欠です。特に市場に出回っていない新たな商品やサービスを知ってもらう場合や、前例のないビジネスアイデアをマネジメント層に理解してもらう場合などは、ストーリーテリングのあるのとないのとでは効果が大きくちがってきます。このようなケースでは「結局どれぐらい効率化できるのか」「いくら利益が上がるのか」など、表面的な数字で商談が決裂したり、稟議が却下されたりすることがしばしばです。しかし、ストーリーテリングによって「どのようなプロセスで顧客ニーズに応えられるのか」「潜在顧客の行動パターン」などを示して訴えれば具体性が増し、印象的にみせられます。

ストーリーテリングってどうやって構成するの?

ストーリーテリングには幾つかのフレームワークがありますが、いずれにおいても共通している重要ポイントが3つあります。1つ目は、ビジネスにおいてストーリーテリングを用いる場合は、原則として「従業員」か「顧客」を主人公にすべきことです。ここでいう「従業員」とは、自社商品の優れた点や長所を一番知っている人です。このような従業員を通じて商品を紹介することで、内部の仕様や構造を具体的に解説できます。また、「顧客」とは企業が商品を販売したいターゲットとして設定した特定の属性を持った人や企業です。直面する問題や解決方法などを顧客目線で提示することで、共感を増したり具体的な利益をイメージさせたりしやすくします。ストーリーの登場人物が聞き手の共感を得るには、聞き手のペルソナ設定が重要です。どこまでペルソナを絞り込むかはターゲットの範囲によりますが、一般的には範囲を狭めるほど具体性が増します。ストーリーを作る前段階として、聞き手またはユーザーを詳しくリサーチしておきましょう。

2つ目のポイントは独自性です。ありきたりなストーリーや演出では聞き手の心には刺さらないので、独自の観点や内容を盛り込むことが重要です。たとえば「エクストラガム」は、ガムを食べ物としてではなくコミュニケーションツールとして捉えたCMを作り、成功を収めました。人を主人公にすれば、さまざまな角度や新しい概念で自社商品の魅力を訴求できます。3つ目はリアリティです。ストーリーテリングにおいては、顧客が持っているであろう悩みや課題などを提示することで「これは自分・自社について語られているのだ」と思ってもらうことが重要です。登場人物の設定やストーリー展開、細部の演出などにこだわり、疑似体験に引き込むように工夫します。また、顧客が得られる利益がニーズとずれていないか、現実的なものとして認識できるかというリアリティも大切です。たとえば、健康食品によって得られる健康的な生活は年齢層によって違うでしょう。実際に達成できそうな状況や目標から外れないようにストーリーを作ることが大切です。

ストーリーテリングのフレームワークと具体例

実際にストーリーテリングを活用するには、どのような点を意識してストーリーを作成すればよいのでしょうか。ここでは、ストーリーテリングの代表的なフレームワークとその具体例を解説します。

コネクションプロット

コネクションプロットというフレームワークでは、「人と人」や「人と社会」などのつながりを軸にプロットを展開していくフレームワークです。たとえばイギリスのビール醸造会社であるアドナムス・サウスウォルドは、企業活動を通じて社会貢献をしていることをCMや広告などでアピールしています。地球環境保護のための醸造方法を紹介したり、必要な資源を地元から調達することで地域社会やコミュニティの維持に貢献していることを紹介したりしました。こうした活動により、地元住人たちからはもちろん、考え方に賛同する人たちから好ましい反応や共感を獲得できます。実際、アドナムス・サウスウォルドに限らず、企業ポリシーをアピールする広告はしばしばみかけます。

このフレームワークが有効なのは、企業がさまざまなコミュニティに接していく場合や社会とのつながりを意識している場合です。具体的な事例で考えれば、たとえばリモートワークによって多様な働き方を推進するためのソリューションを提供していたり、社会復帰のための保険を販売したりしているようなケースが考えられるでしょう。このような商品やサービスは企業が人と人、あるいは人と社会をつなげる橋渡しを担うことになるため、訴求力や説得力が高くなります。また、一定の実績を持つ企業がステータスを高めるためにも有効です。社会貢献度の高さや企業理念のすばらしさなどをアピールすることで、違う角度から自社の評価を高められます。

クリエイティビティプロット

クリエイティビティプロットは、天才発明家や伝説的な存在である創業者などが、画期的なビジネスモデルやアイデアで新しい商品・サービスを提供するまでのストーリーを描くようなフレームワークです。たとえばウィスキーの醸造会社やハイブランドのブランドストーリーなどは、クリエイティビティプロットでつくられた代表的な広告といえます。クリエイティビティプロットのメリットは、天才発明家による新しい発見や、創業者の不屈の魂、常識を覆す画期的なアイデアなどに聞き手が憧れを抱き、その一環に加わりたい願望を持ちやすいことです。たとえばハイブランドの洋服が対象ならば、広告によって気持ちが高揚し、同じファッションで街を歩きたいと思うかもしれません。

ワークマネジメントツールを提供しているアメリカの企業のアサナ(Asana)の創業者は、元Facebookの共同創業者であったダスティン・モスコヴィッツとジャスティン・ローゼンシュタインです。桁外れの成功を収めたことから、シリコンバレーのビジネスパーソンなどからは、生ける伝説のような存在といえるでしょう。アサナの広告戦術は、この著名な創業者2人をクローズアップし、Facebook成功の背景にアサナが貢献したことを強調したクリエイティビティプロットでした。アサナはもともとFacebook開発プロジェクトチームのワークマネジメントに使われていたため実績は十分です。Facebook開発にどれだけアサナが有効に機能したのかアピールすることで、その広告に触れた見込み客は自社のミッション達成のためにぜひ活用したいと考えます。画期的なプロジェクト管理ツールを導入することで、Facebookやアサナのように飛躍的に生産性を高めたいと考え、導入を決める企業も多いのではないでしょうか。

クリエイティビティプロットが効果的なのは、自社の商品やサービスが独創的で先進的なケースです。アサナのように創業者や経営者にカリスマ性があるなら、なおよく機能するでしょう。画期的なビジネスモデルを提示している勢いのあるスタートアップ企業が、クリエイティビティプロットを用いて出資者を募ることにより、中長期的な信頼関係を構築できるなどの成果も期待できます。

チャレンジプロット

チャレンジプロットは弱者や挑戦者を主人公に設定し、その人が大企業や既得権益の支配する環境に立ち向かって偉大なチャレンジをしていくようなストーリーです。エンターテインメントでいえば「ロッキー」や「半沢直樹」などをイメージするとわかりやすいかもしれません。このようなストーリーは世界中の広告や作品の定番といえます。チャレンジプロットは広い層に受け入れられやすく、共感を喚起し人の心を動かす強い力があるのが特徴です。

アメリカのオンラインアイウェアショップ「ワービー・パーカー」は、チャレンジプロットを活用して多くの顧客の共感や支持を獲得し、業績向上を達成しました。アイウェア関連の商品の仲介業は、グローバル企業の寡占状態が続いています。そのため、アイウェアメーカーはグローバル企業に有利な価格で折り合わざるを得ません。アイウェアメーカーの利益は減り、消費者も割高の価格で購入しなければならないのが現状です。ワービー・パーカーはこの状況を打破するため、零細企業でありながら、生産から販売までの全プロセスを自社で行いました。グローバル企業の仲介マージンをなくしたぶん、低価格で高品質なアイウェアを提供できているということです。

ワービー・パーカーの広告効果を高めたのは、チャレンジプロットならではの消費者を巻き込む力です。巨大企業による不公正な市場構造に異議を唱え、零細企業でありながら、業界のタブーに挑むチャレンジャーであることをチャレンジプロットによって印象付けたのです。こうした広告活動によって、消費者は低価格なアイウェアを入手できるだけでなく、社会的意義も感じられるようになりました。ワービー・パーカーの事例は、チャレンジプロットによって商品以外の付加価値を加えられることを教えてくれます。

チャレンジプロットに向いているのは、ビジネスをスタートしたばかりや、技術はあるものの時代の流れによって規模を縮小した場合など、現時点で多くのシェアを獲得できていない企業です。どの場合でも、消費者の共感を呼べる要素があるかどうかが重要なポイントです。たとえば、地球環境保護の理念を掲げて、再生可能エネルギーの開発に挑むベンチャー会社などは共感を呼びやすいのではないでしょうか。また、自分の家族のハンデキャップを克服するためや、同じ課題を抱えた同業者たちを助けるために商品を開発したといったような経緯がある企業においても、チャレンジプロットを活用できるかもしれません。

ストーリーテリング成功のためのポイント

ストーリーテリング成功のための重要なプロセスは、聞き手・受け手が誰か明確にしておくことです。ペルソナを明確に決めることが、顧客ニーズを満たすことや潜在顧客の関心を引くストーリー作りの土台になります。自社の商品・サービスの特徴や開発経緯なども考え、先に紹介したフレームワークを選び、顧客が具体的に実感や共感を得られる物語構成を目指しましょう。潜在ニーズを把握できていないと、企業の熱意やアピールが空回りしてしまいます。WebやSNSにおけるアクセス分析やDMのアンケートを集計するなどによって、常に顧客の悩みや課題などをリサーチすることが重要です。ただし、顧客が自分のことをよく知っているとも限りません。マクドナルドがアンケート結果をもとに打ち出したヘルシー路線が大失敗し、逆にボリュームアップしたハンバーガーが大ヒットしたという事例などもあります。顧客の本当のニーズを深く理解することで、多くの顧客が共感でき、ビジネスで成功するストーリーが作れます。

スティーブ・ジョブズ

ビジネスではありませんが、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業生たちにしたスピーチはあまりに有名です。「ハングリーであれ。愚か者であれ」で閉められるこのスピーチは、基本的にはチャレンジプロットが活用されています。ジョブズは「人生の意義がわからず悩んだ青年期」「アップル社の追放から復帰まで」「がんからの奇跡的な回復と生きる意味を新たにした現在」の3つに分けて困難に向き合ってきたプロセスや自己の成長を語ります。そして、最後には「ハングリーであれ。愚か者であれ」を3度も繰り返し、全体を通じて伝えたいことを素直に訴えて、卒業生たちの記憶に残るように努めています。構造がシンプルでわかりやすいため、ストーリーテリングの入門としても好例です。

JOY

JOYの「ミラクルモップ」は手を汚さずにモップをしぼれる画期的な商品で、吸水力もずばぬけていました。しかし、通販番組で商品をアピールしても、なぜか全く売れなかったといいます。そこで、JOYの創業者のジョイ・マンガーノは方向転換を図ります。シングルマザーとして働きながら子育てをするなかで商品のアイデアが閃いた経緯や、商品に対する自分の想いなどを重点的に語るようにしました。ブランドストーリーという意味ではクリエイティビティプロットに近く、また、チャレンジプロットを利用して同性の共感を得やすい工夫もみられます。自社商品やサービスを単なる物としてではなくカメラの前の自分というフィルターを通じて紹介することで、新たな価値を訴求できた成功事例のひとつです。

レッドブル

エナジードリンクを製造するレッドブルは、同価格の競合他社に比べるとドリンクの量が少ないにもかかわらず、販売本数で大きく差をつけてシェアを獲得しています。その大きな理由は、エナジードリンクで真っ先に思い浮かぶブランド(第一想起)として確固とした地位を築いているからです。レッドブルのCMは「日常→事件→教訓」という構成で統一されています。たとえば、「小魚が海を泳いでいる→小魚がサメに襲われる→レッドブルを飲んでサメを撃退する(レッドブルで元気になろう)」といったプロットです。こうしたストーリーは顧客の潜在意識に残りやすく、顧客に魅力を定着させるうえで効果的です。また、話の骨格は「ベタ」である一方、イラストと世界観で独自性を出すことにも成功しています。同じパターンを長年継続する方法もマーケティング戦略として検討してみてはどうでしょうか。

ストーリーテリングの力を活用してビジネスを飛躍させよう

ストーリーテリングについて理解が深まったでしょうか。人にとってストーリーとは自分や世界を理解するための枠組みであり、日々の物事を理解するうえで大切なものです。それゆえストーリーテリングを利用すれば、聞き手の共感や信頼性を得ることが容易になります。プレゼンから商談化につなげるきっかけにしたり、ストーリー性の高い広告を制作して認知度向上やブランディングを行ったりするなど、積極的に利用していきましょう。

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