2020.02.19

組織が若返る?役職定年を導入するメリットと従業員に与える影響について

組織が若返る?役職定年を導入するメリットと従業員に与える影響について

組織の若返りを狙いとして、役職定年を導入している企業は少なくありません。しかし、役職定年制度は、従業員とその家庭にまで影響を与えるので、メリットばかりに注目して導入すると思わぬ問題に直面する可能性があります。そこで、役職定年を導入している企業の実態や、効果的な導入のために注意すべき点などについて説明します。

役職定年とは

役職定年とは、管理職に就いている従業員がある年齢に達すると管理職を離れる制度です。大企業を中心に導入が進んでいて、500人以上の企業では4割弱が取り入れている制度という調査結果もあります。役職定年を実施する年齢については、各企業によって異なりますが、一般的に55歳を対象にしているケースが多いです。通常の定年による退職とは異なり、役職定年ではあくまでも「役職」のみを退くことが特徴だといえます。そのため、役職を退任した従業員は、一般職や専門職などとして引き続き業務にあたることになるのが基本です。

役職定年を導入すると、従業員にとっては実施される年齢になると、管理職手当が支給されなくなるので給与が下がるリスクがあります。そのため、すでに雇用している従業員の人生設計に大きな影響を与える可能性はゼロではありません。また、管理職が一般職になることで責任のある仕事を任される機会は減ってしまい、モチベーションを維持できなくなる可能性があります。役職定年制度は、責任の大きさやキャリアにも影響するので、従業員にとって影響の大きい制度だといえます。

役職定年制度がはじまった背景

現代の日本では「60歳定年制」が一般的ですが、その制度が定着したのはそれほど昔の話ではありません。実は60歳定年制は、1986年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の改正が行われるまでは、55歳を定年にしている企業が多かったのです。55歳を定年として給料や退職金の計算をしていた企業にとって、雇用期間を5年も延長することは簡単ではありませんでした。当然のことながら、人件費が高騰すれば企業経営は苦しくなります。そこで、コストダウンを目的として導入されたのが役職定年です。

コストダウンを目的として導入された側面を持つため、一般的に役職定年を迎えた管理職の給料はダウンします。しかし、日本では健康寿命の高齢化や年金の支給額減少による所得の確保といったことから、現在では企業は65歳まで雇用機会を確保しなければいけないこととなっています。つまり、55歳で役職定年になったとすると、あと10年は雇用期間が続くことになるのです。従業員は雇用期間が延びたことで収入を得る期間は長くなりましたが、55歳までに比べると低い賃金で働かなくてはいけない期間も伸びてしまいました。

役職定年による給料ダウンの実態

管理職の待遇には、職務に対応した手当てが含まれるケースが一般的です。役職定年を迎えて管理職でなくなってしまうと手当もなくなるため、年収は下がる場合が多いです。実際に人事院の「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態」によると、役職定年になった管理職の年収は平均で約2割減少しています。管理職だった当時の年収が600万円程度である場合には、年収450万円程度になることが想定されているので、従業員にとっては生活面でかなり厳しくなることが予想されます。

一部の企業では給与水準を維持する取り組みを行っている企業もありますが、その数は調査対象のうち、1割にも届きません。役職定年を迎えた課長・部長の約8割が給料ダウンとなっているのが現状です。役職定年は、従業員のファイナンシャルプラニングにも大きなインパクトを与える制度だといえます。基本給や賞与、管理職手当のうち、役職定年で減額される項目で特に大きいのが管理職手当です。「基本給は低いけど管理職手当で生活を維持している」という従業員の場合、役職定年後の生活が苦しくなる可能性があります。

役職定年が従業員のライフプランに与える影響

役職定年は「年齢にかかわらず第一線で働き続けたい」と考える従業員にとっては、業務内容だけでなく給与面でもデメリットのある制度です。そのため、役職定年については「考えていない」「あまり考えたくない」という従業員も少なくありません。しかし、55歳という年齢は、住宅ローンが残っていたり、子どもの学費がかかったりと出費が多くなる年代にあたります。そのため、いつまでも現実に目を背けていると、自分自身のみならずその家族に対しても迷惑をかけてしまう可能性があることを従業員は理解しておかなければいけません。

また、55歳という年齢は年金が支給されるまで、あと少しという年齢です。つまり、老後の備えについても考えておかなければいけない時期なので、収入が突然減ってしまうと人生設計の変更を余儀なくされる事態になるかもしれません。そのような事態を避けるため、従業員には役職定年について早めに考えて役職定年による収入の変化をファイナンシャルプランニングに組み込んでもらうように促すことが大切です。

企業が役職定年を導入するメリット

役職定年を導入するメリットとしてはコストダウンが挙げられますが、それだけではありません。たとえば、「企業内の世代交代を促進できる」というメリットがあります。日本型の企業文化は、これまで終身雇用をベースにしている企業がほとんどでした。終身雇用型は従業員の安心感につながるというメリットはありますが、企業によっては「いつまでたっても管理職ポストがあかずに昇進できない」というデメリットもあります。特に少子高齢化が進んでいる日本では、労働人口の構成も逆ピラミッド型になっており、若手にとってはなかなか管理職に空きがないと感じられるのが現状です。

役職定年制度があれば、管理職ポストに強制的に空きを作ることができるので、有能な若手を新たに管理職にしやすくなります。結果的に、組織を若返らせる新陳代謝のような効果が生まれ、企業にとって新しい価値観を導入する機会にもつながるのです。世代交代が進まず、時代の波に乗り切れていないと感じる企業にとっては、非常に大きなメリットをもたらしてくれるでしょう。また、「どうせ昇進できない」という理由から若手のモチベーションが低下することも防いでくれる効果も期待できます。活気あふれる職場にしたいと考える企業に向いている制度です。

企業が役職定年を導入するデメリット

企業が役職定年を導入するうえで、注意しなければいけないデメリットは「管理職のモチベーション低下」です。なぜなら、役職定年を導入すると「年齢要件を満たすと企業への貢献の有無にかかわらず、強制的に役職を降りなければならない」からです。特にこれまで管理職として組織に貢献してきたと自負している場合ほど、役職がなくなり一般職となってしまうと意欲が減退する傾向があります。場合によっては、役職がなくなることに納得できなかったり、組織に裏切られたと感じたりするケースも珍しくありません。

企業側に多くのメリットをもたらす役職定年ですが、企業業績を支えているのは多くの従業員であることを忘れてはいけません。特に企業に貢献してきた役職者の意欲が下がっている状況を若手社員が見ると、自分の将来に不安を感じてしまう恐れがあります。すると、若手社員のモチベーションにも悪い影響を与えかねません。企業としては、役職定年を迎えた従業員にも仕事に意義を見出して働き続けてもらうための環境づくりが求められます。

役職定年によるモチベーションダウンを食い止めるには

役職定年によって心理的にネガティブな影響を受ける人が多いなかで、管理職のプレッシャーから解放されて気が楽になったり、意欲が増したりする人がいるのも事実です。このようなポジティブな変化をする人は、役職定年に備えて仕事との向き合い方を考えたり、自分のキャリアについて具体的なイメージを作っていたりする場合が多いです。つまり、役職定年を迎えた際のモチベーション低下を食い止めるためには、早めに将来のキャリアデザインを従業員に考えていてもらうことだといえます。

これからどのようにして組織に貢献できるかを「セカンドキャリア」として考えてもらえるように、企業として積極的に支援することが重要です。たとえば、一部の企業ではキャリアデザイン研修を行っています。役職定年をする人は、それまでに築き上げてきた仕事のノウハウやスキルを豊富に持っているはずです。それをどのようにして活かしていくかを前向きに捉え、次の目標を持ってもらうようにします。新しい目標は何も社内だけのものとは限りません。必要に応じてグループ企業などへの出向や転籍なども活用して、新しい働き甲斐を見つけてもらうのも1つの選択肢だといえます。

役職定年を迎えた従業員は異動させるべきか

役職定年で管理職を離れると、これまで部下だった人が上司になるといった具合に、上下関係が入れ替わることがあります。若手の管理者にとっては自分の元上司が部署内にいるというのは仕事がやりにくく、悩ましい問題です。また、元上司にとっても元部下の指示命令を聞かなければいけなくなるので、プライドが邪魔をしてトラブルに発展するケースもあります。そのような問題を解決する方法として、役職定年を迎えた従業員を異動させる企業があるのは事実です。

しかし、役職定年後も知識や経験を活かして活躍してもらうために同じ部署で働き続けることが重要であれば、無理に異動させないというのも1つの方法です。その場合は、今後どのような役割を部署内で担ってもらうのがよいかについて考えることも必要になります。一方で、本人にとって働き甲斐のある職務に就いてもらうためには、役職定年のタイミングで異動を行うことが有効な場合があるのも間違いありません。そのため、異動の有無については、部署の状況や元上司と部下の関係性などを考慮して柔軟に対応していくことが大切です。

役職定年制度はセカンドキャリアの支援とあわせて導入しよう

役職定年は、組織の若返りや人件費のコストダウン、若手のモチベーションアップなどのメリットがあります。しかし、役職を退任した後も組織への貢献を続けてもらうために、役職定年後の仕事や生活におけるデメリットについても理解したうえで適切な対策が必要です。役職定年制度の導入は、従業員のセカンドキャリア支援とあわせて検討していきましょう。

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