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2021.3.3

人事担当者は必見!辞令の基礎知識から法的拘束力まで解説!

会社勤めの経験があれば、「辞令」という言葉を知らない人はまずいないのではないでしょうか。実際に、会社の内部においては当たり前のように辞令の交付が行われています。しかし、その詳しい扱い方について知っているという人は意外と少ないものです。そこで、今回は辞令の交付方法や法的拘束力など、人事担当者であればぜひ知っておきたい事柄について紹介していきます。

辞令とは

一言でいえば、辞令とは企業や雇用主が従業員に対して通知する公文書です。具体的には、就職希望者の「新規採用」に始まり、「人事異動」「転勤」「昇給」「減給」「昇進」「降格」「免職」「復職」などの決定を通知する際に作成する書類のことを指します。まず、辞令に官職や役職などに任免する旨の文書を記し、対象となる人物に直接渡すのが一般的です。ただ、辞令という言葉には任免を本人に伝えることのほかに、従業員全員に広く内容を示すという意味合いも含まれています。したがって、辞令の内容に関しては本人のみに通知される場合もあれば、社内報や掲示板などで社員全員に公表されるケースもあるのです。
ちなみに、辞令というものは特に法律で規定されているものではないため、辞令がない企業も数多く存在します。自然発生的に普及していったといわれており、現在では特に大企業でよく使用されています。ちなみに、辞令を採用しているのは日本だけではありません。海外でも辞令の習慣が定着している企業や国は数多く存在しているのです。

辞令の交付方法

辞令の意味が理解できたなら、次に学ぶべきはそれを企業がどのような方法で交付しているかです。具体的な方法を知っていなければ、自分が辞令を出す立場になったときに困ってしまいます。そこで、本段落では辞令の交付方法を、「内示」と「辞令交付式」の2つに分けて説明していきます。

内示

辞令とは従業員の任免を本人に伝えると同時に、その事実を公にする行為でもあるわけですが、多くの場合は前段階として、最初に内示を行うのが一般的です。内示とは事前に本人あるいは直属の上司に、近々辞令がおりる事実を内々に告げることを指します。口頭や個別書類で伝えられることが多く、内示を行ってしばらくしてから公示するという流れになります。そして、内示を受けた者は正式な辞令がおりるまでに必要な手続きや引き継ぎを行い、スムーズに異動や転勤などができるようにしておくわけです。ちなみに、内示から辞令までの期間は企業や状況によっても異なりますが、大体1週間~1カ月程度が目安となります。
それから、内示はあくまでも限定した人物のみに内々に伝えられるものなので、その内容を他人に話すのは厳禁です。「どうせすぐに正式な辞令があるから漏らしても問題ないだろう」と思う人もいるかもしれませんが、人事異動などの情報の漏洩は個人情報保護法違反にあたります。そのため、漏洩の事実が発覚した時点で処罰の対象になるおそれがあるのです。したがって、内示を受けた従業員はもちろん、内示を出す側も情報が外に漏れないように十分に注意する必要があります。

辞令交付式

企業や雇用主が辞令を交付する際には辞令交付式が開催される場合があります。たとえば、入社式のなかで行われる配属先の辞令交付がそれです。もちろん、辞令交付式はすべての企業で行われているわけではありません。開催するケースが多いのは主に大企業であり、それもセレモニーとして位置づけられる場合に限定されています。つまり、本人にとって望ましくないような辞令であり、お祝いムードに相応しくないケースでは基本的に辞令交付式は開催されないというわけです。
以上の点から、辞令交付式は式典の色合いが強いといえます。そのため、式に出席する際には服装に気を付けなければなりません。男性は華美にならないように心がけ、アイロンのかかった白いシャツの上にシンプルなデザインのネクタイを合わせてスーツを着用するのが原則です。一方、女性はスーツに準じる服装にブラウスを合わせるなどといった具合に、フォーマルな格好を意識することが重要なポイントとなります。

辞令の法的拘束力は?

辞令の交付は法律的な根拠が存在しないため、法的拘束力はないといえます。しかし、だからといって、辞令を無視してもよいというわけではありません。なぜなら、労働契約書を締結した時点で会社は従業員に対して人事命令を出す権利を有し、従業員はその命令に従う義務があるからです。確かに、辞令の交付についての法律は存在しないものの、労働契約書は労働契約法という法律に基づいて作成されます。そして、辞令は連絡ではなく、命令にあたるため、その方針や意向には従わなくてはならないというわけです。
ちなみに、辞令の多くは書面で発令されますが、辞令を発令する権限を持つ人間であれば口頭でも効力が発揮されます。ただし、採用辞令に関しては労働基準法によって労働条件や基本給などの明記が義務付けられているため、書面で発令する必要があります。一方、退職に関しては退職願いや退職届を提出する形を取るのが一般的です。したがって、たとえ退職辞令がなかったとしても、それらが人事担当者に届いた時点で退職が認められることになります。

辞令の存在意義

辞令に法的拘束力はないものの、辞令を発令するという行為自体には重要な意義があります。まず、辞令として書面化されることによって証拠として機能します。たとえば、口頭でのみ伝えた場合は言った・言わなかったで双方に認識の相違が生じるおそれがありますが、辞令という形で書面が残っていれば、それが証拠となり、トラブルを回避することができるわけです。したがって、口頭のみでも法的に問題がなかったとしても、辞令は書面にして残しておくのが無難だといえます。
また、昇格などの辞令の場合は書面にして渡すことで、従業員のモチベーションを高めるといった効果も期待できます。ちなみに、辞令交付式はその効果をより高めるものでもあるのです。そうしたケースでは辞令を厚紙に印刷して手渡すのが一般的です。さらに、辞令を書面で渡すそのほかの意義としては、一度に多くの従業員に効率良く通知できるという、利便性の高さを挙げることができます。

辞令の拒否

辞令の内容は必ずしも従業員の意に沿ったものであるとは限りません。そこで気になるのが、実際に辞令が交付された際に従業員がそれを拒否することができるかどうかです。その点を踏まえ、本段落では辞令の拒否に関する問題について解説していきます。

基本的には拒否できない

前述の通り、辞令はいわば企業からの命令書です。したがって、辞令を拒否することは基本的にはできません。企業と従業員は労働契約の締結を前提とした関係であり、そのため、企業側には従業員に対して人事に関する命令を下す権利があるのです。そもそも、一般的には採用時に、転勤・配置転換・人事異動などの可能性がある旨を企業側が説明し、従業員はそれを承諾したうえで入社しているはずです。そうした点から考えても、従業員が辞令を拒否するのは非常に困難だといえます。仮に、それでも辞令を拒否した場合、企業側は労働契約書の内容に違反したという理由により、その従業員にペナルティを課すことができます。そして、最悪の場合は解雇となるわけです。

拒否が認められるケース

辞令を拒否することは基本的にはできないとはいえ、例外は存在します。たとえば、辞令の内容が法令に反する場合は人事命令を拒否することが可能であり、違法性を指摘された企業側としては法律と照らし合わせながら、辞令の修正を模索することになります。また、入社時の取り決めと齟齬が生じた場合も同様で、よくあるのが近隣以外の転勤はないと説明を受けていたのにも関わらず、遠方への転勤を命じられたなどといったケースです。さらに、人事権の範囲を超えた辞令に対しても拒否できる可能性があります。
実際、ある裁判においては、「従業員には親を介護しなければならないという家庭の事情があるにも関わらず、転居を伴う出向を命じるのは人事権の乱用にあたり、無効である」という判決結果が出ているのです。しかし、いずれのケースにしろ、拒否の理由を企業側が是としなかった場合は公の場で争うしかなくなり、最終的な判断は裁判所の手に委ねられることになります。

辞令の書き方

辞令を書面にして作成する際には最低限記載すべき項目があります。具体的には、「辞令の公布日」「辞令を受ける人物の所属部署・役職・氏名」「辞令を出す側の企業名あるいは責任者の氏名及び役職」「辞令が実行される日の日付」「辞令の内容」の5点です。原則として、辞令は横書きで、上から「辞令の公布日」「辞令を受ける人物の氏名(所属部署と役職は本文に組み込まれる場合もあり)」「辞令を出す側の企業名あるいは責任者の氏名及び役職」の順に記します。そして、少し間隔を開けて横書きの中央部分に「辞令」の文字を書き、その下に「辞令が実行される日の日付」と「辞令の内容」を本文としてまとめます。
たとえば、昇進なら、「○年○月○日付けをもって××部××課課長の任を解き、同日付をもって××部部長に任命します」といった具合です。あとは必要に応じて、「より一層職務に励み、我が社の発展に貢献されることを期待します」などの一文を添え、本文の右下に「以上」と記せば完成となります。その他にも、採用・転勤・出向・降格と辞令の種類はさまざまですが、いずれにしても、なるべく簡単明瞭な短文で明記することが基本です。また、受け取る側のことも考え、誤解の余地のない丁寧でわかりやすい文面を心がけることも大切です。

辞令のトラブル対処法

トラブルを避けるために重要なのは、まず就業規則や労働協約の仕組みについて理解し、それらを活用できるようにしておくことです。そして、前もって自社の就業規則や労働協約では配置転換や出向がどのように規定されているかを確認しておきましょう。そのうえで、それらに反しない形で辞令の内容をまとめ、対象となる従業員に事前に同意を得ておけば、無用なトラブルは回避できるはずです。
また、従業員の家族構成を事前に把握しておき、出向や配置転換を行う際には、家庭の事情を加味しながら辞令の内容を検討することも大切です。それから、転居が必要となる出向や配置転換などを行う場合は、辞令を出す前になるべく早めに内示をしておくとトラブルの防止につながります。

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