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2023.3.7

ダイバーシティとは?「多様性」に取り組む意味をわかりやすく解説

近年、「ダイバーシティ」という言葉を見かける機会が増えています。世界的に重要視されているダイバーシティは、日本政府による働き方改革でも推進されており、企業の長期的な社会活動において必要不可欠な要素の1つとされています。

本記事では、ビジネスにおけるダイバーシティの定義や日本で重視されている背景、政府による取り組みなどをわかりやすく解説します。ダイバーシティについて正しい理解を深め、企業の経営計画や人事施策に活かすために、ぜひお役立てください。

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ダイバーシティーとは「多様性」

「ダイバーシティ(Diversity)」とは、日本語で「多様性」という意味の英単語です。ビジネスの現場では、「個人や集団の間に存在しているさまざまな違い」といった捉え方をし、人種や性別、年齢、宗教、価値観、障がいの有無などにおいて、異なる属性を持った人々が組織や団体の中で共存している状態を示します。

ダイバーシティの考え方は、アメリカ国内のマイノリティや女性が、差別のない人材採用や社会的に公正な処遇を要求する運動から広がったとされています。企業では、多様なバックグラウンドを持つ人材を登用、活用することで、組織の生産性や競争力を高める経営戦略としても認知されています。

ダイバーシティ&インクルージョン

ダイバーシティは、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」という言い方もされます。「インクルージョン(Inclusion)」とは、日本語で「受容」や「統合」という意味を持つ英単語であり、「ダイバーシティ&インクルージョン」は「多種多様な人々が集まる組織や集団において、お互いの考え方や個性の違いを受け入れ、共に成長していくこと」を示します。

ダイバーシティという単純に多様な人材がまとまっている「共存」状態から、全員の多様性を活かしながら企業の成長と個人の満足度の向上につなげる、という共存共栄を目指すのが「ダイバーシティ&インクルージョン」の概念です。

関連記事:【わかりやすく解説】インクルージョンとは?ダイバーシティとの違い

ダイバーシティ経営(マネジメント)とは?

「ダイバーシティ経営」は、多様性を活かした企業マネジメント手法のことで、ダイバーシティマネジメントとも呼ばれます。簡単にまとめると、「個人の多様性をマネジメントし、ビジネス的優位性を持てるよう組織を管理すること」です。

経済のグローバル化や少子高齢化が進む中、多様な人材の受け入れは雇用対策や競争力向上につながることから、ダイバーシティは経営戦略の要件として位置付けられています。

2つのダイバーシティ

ダイバーシティは幅広い要素で構成されていますが、大きく分けて2つの種類があります。ここでは、人種やジェンダーなど外見で判断しやすい「表層的ダイバーシティ」と、宗教や価値観など見た目では判断しにくい「深層的ダイバーシティ」という2つについて解説します。

表層的ダイバーシティ

「表層的ダイバーシティ」には、自分の意思で変えることができない生来の特性や、自分の意思で変えることが困難な属性が含まれます。該当する要素としては、以下が挙げられます。

  • 人種
  • 年齢
  • ジェンダー
  • 障害
  • 民族的な伝統
  • 心理的能力
  • 肉体的能力
  • 特性

一般的に、多くの人が他人と自分を区別する際に使う傾向のある特徴が含まれます。

深層的ダイバーシティ

「深層的ダイバーシティ」は、表面的には同じに見えても、内面的には大きな違いがあり、それによって問題が複雑化する側面を持っているものを指します。具体例としては、以下のような項目です。

  • 宗教
  • 第一言語
  • 教育歴
  • 職務経験
  • 組織上の役職・階層
  • 収入
  • 働き方
  • コミュニケーションの取り方
  • 価値観
  • 性的傾向

深層的ダイバーシティは、他人が気付きにくいがゆえに見落とされがちなため、周りがどう理解して活用していくかが重要な課題といえます。

日本でダイバーシティへの取り組みが重視される背景

アメリカやヨーロッパなど海外とは企業文化が異なる日本でも、近年は特にダイバーシティ経営を積極的に取り入れる企業が増えています。その背景には、少子高齢化の進行による労働力の減少や、価値観や働き方の多様化、企業グローバル化による競争の激化といった要素が関係しています。

少子高齢化など労働力人口の減少

総務省の資料データによると、生産活動の中心にいる15歳以上65歳未満の「生産年齢人口」は、1995年にピークとなった後、減少の一途をたどっています。また、国内の総人口も2008年から減少傾向にあります。

また、厚生労働省の「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)」では、15歳以上のうち就業者と完全失業者を合わせた労働力人口は、前年に比べて5万人も減少したと公表されています。以上より、今後も労働力人口の減少が加速すると想定できます。

企業や業界によらず、労働者を確保することが大きな課題とされる中、女性や高齢者、障がい者、外国人といった多様な人材によって労働力を補う必要があります。

価値観の多様化・人材の流動性の高まり

価値観の多様化や人材流動の高まりも、ダイバーシティが求められる要因の1つです。働き方やキャリアに対する考え方の多様化が進み、政府が推進する働き方革命やワークライフバランスの重視が広まっている中、従来からの年功序列や長期雇用といった日本の企業文化に変化が見られます。

また、副業解禁やリモートワークの浸透を受けて、雇用形態にこだわらず、理想の仕事や職場を求めて転職をする人も増えています。企業側は、多様化する人材のニーズに応えつつ、他社との人材獲得競争で遅れを取らないためにも、ダイバーシティを活かして採用力を高める必要があります。

グローバル化による競争の激化

国内市場の飽和による内需の減少により、企業の海外進出やグローバル化が加速しています。グローバル化に対応するためには、外国人材の活用が必要不可欠であり、受け入れ体制を整える必要があります。

ダイバーシティの推進により、国籍や人種を問わずに優秀な人材の採用や育成に注力できるため、グローバル化の推進と事業拡大につながります。また、世界の顧客のニーズに焦点を当て、多様な価値観にマッチする商品やサービスを開発、提供することは、長期的な事業安定を目指す上でも重要です。

政府におけるダイバーシティへの取り組み

日本政府でも近年さまざまなダイバーシティへの取り組みを促進しています。ここでは、経済産業省が提唱する「ダイバーシティ2.0」と、厚生労働省が働き方革命の一部として進める「ダイバーシティ推進施策」について紹介します。

経済産業省が目指すダイバーシティ2.0

経済産業省が提唱する「ダイバーシティ2.0」は、企業経営におけるダイバーシティを促進させることを目指す取り組みです。2017年3月にガイドラインが策定され、2019年6月には改訂版がリリースされました。

「2.0」と付いているのは、女性の雇用や登用を受け身的に増やした結果、単なる形骸化となってしまった前身の「ダイバーシティ 1.0」と区別するためです。「ダイバーシティ2.0」では、「多様な人材の能力を最大限に引き出し、中長期的な企業価値の向上につなげる」ダイバーシティ&インクルージョンの状態を目指し、長期的かつ継続的に取り組む経営戦略として位置付けられています。

厚生労働省のダイバーシティ推進施策|働き方改革の一貫

厚生労働省では、働き方革命の一貫としてダイバーシティ促進に役立つ施策を推進しています。2016年4月に施行された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」は、女性が社会で活躍できる環境を整備するための法律です。

2022年4月には改正版が施行され、自社内の女性の活躍状況の把握と分析結果の公表を義務付ける対象企業が拡大されました。また、厚生労働大臣の認定制度を策定し、女性の社会的活躍に役立つ取り組みを実施している企業の認知拡大を支援しています。

企業がダイバーシティ経営に取り組む目的とメリット

企業が積極的にダイバーシティ経営に取り組むことで、企業と従業員双方にとってさまざまなメリットが期待できます。ここでは、多様な人材を活かして戦略的にダイバーシティ経営を行う目的やメリットについて解説します。

新たな視点によるイノベーションの創出

ダイバーシティ経営の実現によって、組織におけるイノベーションの創出が進むことが期待されています。ダイバーシティとイノベーションには相関関係があることが、企業の調査などによって明らかになっています。

バックグラウンドが同じような人材を集めても、革新的なアイデアは生まれにくいでしょう。一方で、多様な視点を持つ人が異なる意見を持ち寄ることで、新しいひらめきが生まれるため、新商品や新サービスの開発につながります。

グローバル市場における競争力の強化

ダイバーシティのある組織では、多様な人材が活躍しており、同質的な人材で構成される組織よりも環境変化に強い傾向があります。個人の多様性を受け入れた上で、経験や価値観の異なる人材が自分の能力を発揮できれば、事業拡大や利益向上が見込めます。

多様性の強い企業は、組織における柔軟性が高く、目の前に表れた課題を効率的に乗り越えられる力を備えています。そのため、世界経済や国際情勢における変化の早いグローバル市場においても強い競争力を維持し、生き残れる可能性が高いといえます。

人材確保と定着率の向上

ダイバーシティの推進は、多様かつ優秀な人材の確保と定着率の向上につながる、というメリットもあります。幅広い属性の人材を採用し、各個人が活躍できる土壌を整備することで、働きやすい企業という認知が広まり、企業の採用能力が高まります。

その結果、採用枠への応募母数が増え、多様なスキルを持つ優秀な人材の獲得と離職防止が見込めます。また、日本国内に留まらない採用活動において、外国人を含む人材をスムーズに受け入れることが可能です。

ダイバーシティに含まれる多様性の一例と課題

ここからは、ダイバーシティに含まれる多様性の例と課題について解説していきます。ダイバーシティの重要性が叫ばれる中で、LGBTや障がい者雇用といった言葉を耳にしたことがあっても、意味や現状の課題についてはない人もいるでしょう。ダイバーシティについての理解を深めるために、ぜひお役立てください。

女性の活躍

女性の社会的な活躍は、ダイバーシティ推進と完全にイコールではないものの、日本では中心的施策として進められています。とはいえ、世界的に見ても日本における女性の働きやすさは低く、早急かつ大幅な改善が必要とされています。

女性の管理職数の増加や、育児休業や介護休業など仕事と子育ての両立支援策だけでは不十分です。ダイバーシティ実現のためには、女性のニーズを聞き入れながらも、同質的な捉え方ではなく、個人単位で能力を引き出せる環境や施策を整える必要があります。

LGBT(性的少数者=セクシュアル・マイノリティ)

LGBTは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害者)の頭文字を取った総称です。性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)を表す1つの言葉として使われています。

性的マイノリティは、性的指向(セクシャルオリエンテーション)と性自認(ジェンダーアイデンティティ)の2種類に大別されます。日本でも近年少しずつ関心が高まってきていますが、G7のメンバー中でLGBTの権利としての同性婚が認められていないのは日本だけと、取り組みが遅れている現状が指摘されています。

LGBTなどの性的指向は外から見えない属性でもあり、研修などを通して理解を深める必要があります。

年齢の多様性

年齢の多様性は、年功序列や長期雇用が根付いている日本企業において、ダイバーシティ経営に対する大きなハードルとなっています。「エイジ・ダイバーシティ」とも呼ばれるこの課題は、働き方の多様化や労働力の確保といった課題にも関わっており、一定の年齢層への偏見や差別を解消できていない日本企業の問題の1つです。

2015年に改正された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者等雇用安定法)」では、希望する人は全員65歳まで雇用するよう義務付けられました。2021年4月から施行されている最新の改正法では、定年の引き上げ(70歳まで)や定年制の廃止などの導入に努めるよう定められています。各企業で制度が適切に設置、運用されているかを確認し、必要に応じて改善を行う必要があります。

障がい者雇用

障がい者の能力や特性を企業や職場でどう活かすかも、ダイバーシティの重要な課題です。法定雇用率の達成を目標の1つとして掲げ、ノウハウも知識も経験も少ない中で安易な障がい者雇用を進める、という形式的な方法を取る企業もありますが、ダイバーシティにはつながりにくいでしょう。

障がい者のダイバーシティのためには、雇用の義務や福祉も欠かせませんが、個人が持つ特性や能力を最大限発揮できる環境や体勢を整えることが大切です。

まとめ

日本でもダイバーシティへの関心が高まっている現在、企業の価値創造や組織のあり方における重要な課題の1つとして認識する流れが強まっています。ダイバーシティ経営の意味や目的を正しく理解し、適切な施策を実行することで、ダイバーシティのメリットである企業組織の活性化やイノベーションの加速が実現します。

多様性というと、高い意識が必要な社会問題として身構えてしまう人もいるかもしれませんが、身近な人との関係において、自分との価値観や属性の違いについて関心を持ち、知見を深めることこそダイバーシティの大切な第一歩です。

この機会に、障がい者雇用やLGBTなどさまざまな多様性について理解を深め、ダイバーシティ経営のための環境整備やマネジメントについて検討を進めましょう。

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