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2023.2.3

エッセンシャルワーカーとは?意味や支援の取り組み内容・対象となる職種一覧を紹介

新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、エッセンシャルワーカーの重要性が注目されています。コロナ禍によるリモート化が進む一方で、感染リスクを伴いつつも、物理的対応が必要となるエッセンシャルワーカーの重要性が高まっているのです。

本記事では、エッセンシャルワーカーの意味や対象となる職種を紹介します。また、エッセンシャルワーカーが抱える問題や、サポートするために行われた取り組み内容も解説するので、エッセンシャルワーカーを雇用する経営者や企業の人事担当者の方はぜひ参考にしてください。

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目次

エッセンシャルワーカーとは

エッセンシャルワーカーとは、日常生活を維持するために不可欠な職種に就いている人々のことです。エッセンシャルワーカーがいないと、日常の生活は成り立たなくなります。それほど重要な存在ということです。

ここでは、エッセンシャルワーカーについてより詳しく解説します。

エッセンシャルの意味

エッセンシャル(essential)には「必要不可欠」「本質的なさま」「きわめて重要な」などの意味があります。労働者の意味をもつワーカー(worker)を組み合わせることで、エッセンシャルワーカーという言葉が誕生しました。

その意味のとおり、エッセンシャルワーカーとは日常生活を維持するために欠かせない職業の人々のことです。具体的には医療従事者や警察官、消防士、運輸業者などが挙げられます。景気に左右されることなく、どんな状況の中でも不可欠な存在であるため、生活必須職従事者と呼ばれることもあります。エッセンシャルワーカーの対象となる職種は、今後もなくなることはないでしょう。

エッセンシャルワーカーが注目されるようになった背景

エッセンシャルワーカーが注目されるようになったのは、前述のとおり2020年から流行した新型コロナウイルス感染拡大が大きく影響しています。感染症が広まる中、政府は不特定多数の接触を防ぐために、多くの人に外出自粛を呼びかけました。これにより、在宅勤務やリモートワークの普及が促進され、出社せずに勤務できる環境を整える企業が増えたのです。

その一方で、外出自粛の対象とならなかったのがエッセンシャルワーカーです。エッセンシャルワーカーは感染リスクと隣り合わせの中働くことを求められ、存在が重要視されるようになりました。それに伴い、エッセンシャルワーカーへの支援やサポート体制が不十分であることが浮き彫りとなり、海外では待遇や対策の不満からストライキが起きた国もありました。これらの理由から、エッセンシャルワーカーへの注目度が高まったのです。

また、少子高齢化による労働人口が減少している中、エッセンシャルワーカーも減少しつつあります。エッセンシャルワーカーが不足すれば、生活が成り立たなくなる恐れがあります。早急な対策や支援活動が必要とされていることも、注目されるようになった理由の一つです。

ブルーカラーやホワイトカラーとの違い

エッセンシャルワーカーと混同されやすい言葉に、「ブルーカラー・ホワイトカラー」があります。ブルーカラーとは、建設業や製造業など作業着を身につけて仕事をする人々のことです。主に、肉体労働や職人技が光る職種などで働く人が該当します。一方のホワイトカラーは、事務やITなど、スーツや制服を身につけてオフィスで仕事をする人々のことです。パソコンを使ったり事務的な作業をしたりすることが多い人が該当します。

ブルーカラーは自宅勤務が難しく、コロナ禍でも現場で作業しなければいけないといった点から、エッセンシャルワーカーと混同されることがあります。しかし、ブルーカラー・ホワイトカラーはあくまでも業務の違いで区分けした言葉です。エッセンシャルワーカーは生活に不可欠な職種を指しており、業務内容で区分けしているわけではありません。そのため、エッセンシャルワーカーとブルーカラー・ホワイトカラーは別ものといえます。

関連記事:ブルーカラーとは?仕事例からホワイトカラーとの違いまで解説!

エッセンシャルワーカーとされる職種一覧

ここからは、エッセンシャルワーカーに属する職種を紹介します。対象となる職種は国によって異なります。日本では明確な定義はありませんが、政府は新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言時に「事業の継続が求められる事業者」として、次の職種を挙げています。

1.看護師・薬剤師などの医療従事者

医療従事者は代表的なエッセンシャルワーカーです。コロナウイルス感染拡大で最も活躍した職種といっても過言ではありません。病気やケガは誰にでも起こることなので、医療従事者が不足する事態だけは避けたいところです。

なお、厚生労働省では以下の職種を医療従事者に属するものと定めています。

医師・看護師・准看護師・薬剤師・助産師・保健師・診療放射線技師・臨床検査技師・衛生検査技師・歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・理学療法士・作業療法士・義肢装具士・臨床工学技士・言語救命士・救急救命士・管理栄養士

コロナ禍において医療従事者は、高いリスクを抱えながら業務を行わなければなりません。医療従事者が陽性または濃厚接触者に該当すれば、医師や看護師が不足する事態となるでしょう。

2.保育士・介護士などの福祉関係者

保育を仕事とする人や、介護サービスに携わっている人もエッセンシャルワーカーに含まれます。

また、保育が必要な幼い子どもをもつエッセンシャルワーカーが就業し続けるためには、保育士の存在が不可欠です。しかし、コロナ禍によって休園になった場合、子どもを預ける場がなくなるため、エッセンシャルワーカーは休まざるを得なくなります。休園が長引けば、社会機能がストップする恐れすらあるでしょう。

そのほか、老人ホームに入所している方や一人暮らしをしている高齢者をサポートする介護士も社会にとって不可欠な存在です。高齢者は免疫機能が低いため、こまめな消毒や換気などの感染予防対策がとても重要です。高齢化が進む日本では、介護士不足が問題になっています。介護士の負担がさらに増えれば、介護士不足が深刻化する可能性があります。

3.警察官や消防士などの保安に従事する人

警察官や消防士は、犯罪や事故、火災などさまざまなトラブルに対応する職種です。人々が安心して暮らすために欠かせないエッセンシャルワーカーと言えるでしょう。

警察官や消防士といった職種は、専門的な知識と経験が求められるため、欠勤が出てもすぐに増員できるわけではありません。コロナ禍によって人員不足となれば、過重労働につながります。人々が安心して暮らせる日常を守るためには、状況に合わせた適切な体制の構築が急務です。

4.スーパーやコンビニなどの小売販売業者

食料品や日用雑貨などは、生活するうえで決して欠かせません。そのため、スーパーやコンビニなどで働く小売販売業者もエッセンシャルワーカーに含まれます。

スーパーやコンビニなどには不特定多数の人が来店します。とくに、レジでは人との距離が近くなるため、感染症リスクが高い職種でもあるのです。マスクや手袋をつけての接客や、ソーシャルディスタンスの呼びかけなど、慣れない業務が増えたことで、不安や不満を抱えるスタッフは少なくないでしょう。

5.農業・漁業などの1次産業従事者

食を支える農業や漁業などに従事する労働者もエッセンシャルワーカーです。農作物などは収穫時期が限定されるため、働くことを止めれば農作物は枯れてしまいます。場合によっては、食糧難を招く恐れもあるでしょう。私たちが食材に困ることなく生活できているのは、1次産業従事者がいるからこそです。

しかし、コロナ禍によって飲食店の営業自粛、学校給食の休止などが影響し、販売先に困った生産者は少なくありませんでした。さらに、海外からの技能実習生を受け入れている生産者にとっては、入国規制の影響により人手不足が問題となっています。

6.宅配業者や郵便局員などの運輸業者

運輸業者は食料品や医薬品など、さまざまな物資を届ける職種です。私たちが快適な生活を送るためには必要不可欠です。エッセンシャルワーカーに属する運輸業者には、次のような職種が該当します

宅配業者・郵便局員、鉄道会社職員・トラック運転手・バス運転手・交通局の職員・宅配スタッフ・倉庫内のスタッフ

とくに、ICT(情報通信技術)が発展・普及した今、ネットショッピングの需要は高まっており、宅配業者を利用する人が多くなりました。加えて、コロナ禍によって外出自粛が呼びかけられたことで、ネットショッピングの利用者は増加傾向にあります。運輸業者がストップすれば、生活に支障が出るのはもちろん、社会機能の維持が危ぶまれるでしょう。

7.地方銀行や信用組合などの金融機関の職員

現金の入出金や振込、融資の相談などの業務を担う金融機関の職員もエッセンシャルワーカーに属します。地方銀行や信用組合などは、地域住民や企業にとって欠かせない存在です。とくに、電子マネーやクレジットカードをもっていない個人にとっては、金融機関がストップすればお金が引き出せず生活に困ることになるでしょう。

金融機関の職員は不特定多数の顧客と接することが多いため、コロナ禍においては十分な感染対策が必要です。普段の業務と並行しながら行う必要があるため、業務負担が増えたことによる不平不満が生まれやすいと言えるでしょう。

8.学校教員や大学教授などの教育関係者

教育関係者もまた、エッセンシャルワーカーに含まれます。ICT教育が普及したことで、リモートでの授業が可能になりました。とはいえ、リモート授業にはさまざまな課題があるため、遠隔で学ぶだけでは限界があります。

例えば、ネットワーク環境によって授業に遅れが生じる可能性があります。また、自宅にネットワーク環境がない生徒もいるでしょう。教育格差が生まれる原因になり兼ねないため、日本では直接的な授業が必要な状況です。

9.ゴミ回収業やライフライン関連の職種などインフラ事業者

ゴミ回収業や水道・電気・ガスなどのライフライン関連の職種は、日常生活を維持するために不可欠です。人々の生活を支える職種に該当するため、インフラ事業者もエッセンシャルワーカーとみなされています。

インフラ事業者の重要性は、自然災害時の対策を見ると一目瞭然です。水道・電気・ガスなどがなければ生活が成り立たないため、災害時には機能の維持が優先されやすくなっています。

また、ゴミ回収業においては、コロナ禍による感染リスクが懸念されました。外出自粛によって家庭で出るゴミの量が増加したからです。ゴミの中には使用済みのマスクやティッシュなども含まれているため、感染リスクが高まる可能性があります。作業員が感染し人手不足に陥れば、ゴミの回収は滞り、衛生環境が悪化する事態となり兼ねません。

10.市役所や区役所など行政に関わる公務員

地域住民が安心して暮らせるようサポートする、市役所や区役所などで働く公務員もエッセンシャルワーカーに含まれます。業務内容は、戸籍や住民票の手続き処理、社会福祉に関する相談・支援活動など、多岐にわたります。

コロナ禍においては「10万円一律給付」や、コロナ関連による助成・減免・貸与などイレギュラーな対応が増えたことで、職員には大きな負担がかかりました。さらに、保健所で働く職員は、コロナ感染者の人数確認や対応に追われ、激務を要する事態となりました。

エッセンシャルワーカーが抱える問題

社会基盤として不可欠な存在であるエッセンシャルワーカーですが、次のような問題を抱えながら働いている人がほとんどです。

  • 待遇が悪い・低賃金
  • 人手不足による負担が大きい
  • 感染症のリスク
  • メンタルヘルスの不調

それぞれの問題点と改善すべき点について詳しく解説していきます。

待遇が悪い・低賃金

エッセンシャルワーカーが抱える問題に、待遇や賃金への不満が挙げられます。例えば、医療従事者や福祉関係者、運輸業者などでは肉体労働を伴うことが多くあります。加えて、24時間体制が必要な職種では、夜間勤務が必要になるため、生活バランスを崩しやすい傾向にあります。エッセンシャルワーカーの中には、介護が必要な家族や子どもがいる人も少なくありません。仕事とプライベートの両立が難しく、待遇の悪さに不満を抱きやすくなります。

またエッセンシャルワーカーは、感染症リスクと隣り合わせで働くにもかかわらず、賃金はそこまで高くありません。そもそも体力的な労働負担も大きいこともあり、労働に対して賃金が見合っていないと不満を抱く人は少なくないのです。

この問題を解決するためには、労働環境の改善が必要です。具体的には、柔軟性のある勤務形態の導入や、業務内容に対する賃金の見直しなどが求められるでしょう。

人手不足による負担が大きい

エッセンシャルワーカーとされる職種の中には、人手不足が課題となっているところが多くあります。人手不足の現場では、1人あたりに課せられる業務が多く、大きな負担となっています。また、エッセンシャルワーカーの業務内容は社会基盤の維持に不可欠なため、休むわけにもいきません。長時間労働や業務過多、さらには休めないといったケースが見受けられます。

業務の負担が大きければ、人手不足はさらに深刻化する可能性があります。十分な労働力を確保するためにも、待遇の改善や賃金の見直しなどが必要です。また、感染症のリスクが高いことも離職につながる理由の1つなので、十分な感染対策の取り組みも求められます。

感染症のリスク

エッセンシャルワーカーが担う業務は、生活に欠かせないことばかりです。そのため、感染症が蔓延している状況下でも働くことを求められます。また、エッセンシャルワーカーは、リモートワークできない現場での仕事従事者でもあることも感染症のリスクを高める理由の一つです。このように感染リスクの高さから、エッセンシャルワークに対し「命に関わるリスクを伴う仕事」といったイメージが定着しつつあります。

感染症のリスクを改善するためには、マスクや手袋、消毒液などの十分な感染対策に加え、ワクチン接種しやすいようにシフトを調整するなどの工夫が必要です。

メンタルヘルスの不調

エッセンシャルワーカーが担う業務は責任が重く、精神的に大きな負担がかかります。長時間業務にあたることも多いため、ストレスを発散できずに溜めこむケースは少なくありません。とくに、医療従事者や警察官、消防士などは人の命に関わることが多い職種です。精神的ストレスが大きく、心や体に不調が起こりやすいため注意が必要です。

また、エッセンシャルワーカーは感染リスクを伴いやすい点から、差別や偏見を受けやすい職種でもあります。差別や偏見によるダメージでメンタルヘルスが不調になることもあるため、適切なケアが求められます。

このようなことが起きないよう、国民一人ひとりがエッセンシャルワーカーに対して尊敬する意識づくりが必要です。そのためにも、国や自治体が率先して支援するなど、エッセンシャルワーカーに対して敬意を示す姿勢を見せることが大切です。

エッセンシャルワーカーに行われた政府の支援

人員不足や業務過多などの事態を受け、政府はエッセンシャルワーカーに対して次のような支援を行いました。

  • 厚生労働省による医療従事者向けの補助金制度の新設
  • ブルーインパルスの飛行

どのような取り組みなのか、詳しくみてみましょう。

厚生労働省による医療従事者向けの補助金制度の新設

厚生労働省は令和2年6月に「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金」の事業を発表しました。厳しい状況下で日々業務にあたる医療従事者に対し、最大20万円の慰労金を給付したのです。医療従事者を労うとともに、モチベーション維持や離職防止につなげることを目的としています。

また、厚生労働省では、感染拡大防止対策や適切な医療提供の準備にかかった費用を補助する「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」を新設しました。例えば、感染患者とその他の患者が混在するのを防ぐための動線確保や、マスク・消毒液・アクリル板などを用意するのにかかった経費などが補助の対象となります。病院では、新型コロナウイルスに対応できる環境を早急に整えることが可能になりました。

参考:新型コロナウイルス感染の拡大に対応する医療人材の確保の考え方及び関係する支援メニューについて|厚生労働省

ブルーインパルスの飛行

令和2年5月、航空自衛隊に所属するアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」は、東京都上空の飛行を実施しました。新型コロナウイルスへの対応に追われる医療従事者に対し、敬意と感謝を示すことを目的とした取り組みです。

この取り組みはニュースでも大きく取り上げられ、飛行の様子を中継する番組もありました。病院から手を振る医療従事者の姿が見られたり、街からは歓声が上がったりするなど、エッセンシャルワーカーだけに限らず、コロナ禍によって落ち込んでいた日本を沸かせた出来事となりました。

参考:ブルーインパルスによる飛行機の実施について|航空自衛隊

エッセンシャルワーカーに行われた自治体の支援

エッセンシャルワーカーに対して支援を行ったのは政府だけではありません。各自治体でも、次のような支援が実施されました。

  • エッセンシャルワーカーへの感謝メッセージを募集
  • 事業継続支援給付金を支給
  • 人員不足を補う代替要員の支援
  • ゾーニングの徹底とガイドラインの作成

それぞれの支援について紹介します。

エッセンシャルワーカーへの感謝メッセージを募集

埼玉県川島町では、「感染リスクと戦いながら、昼夜問わず働くエッセンシャルワーカーへの感謝メッセージを募集しています。エッセンシャルワーカーに感謝し、応援するとともに、このつらい状況を一緒に乗り越えていこう」という目的で行われている取り組みです。寄せられたメッセージは町ホームページにて公開されており、誰でも閲覧可能です。

メッセージは医療従事者をはじめ、介護職員や運輸業者、ゴミ収集車の職員、スーパーやコンビニの店員など、さまざまなエッセンシャルワーカーへの感謝のメッセージが寄せられています。どれも心温まるメッセージばかりで、中には海外から寄せられたものもあります。業務過多により疲労しているエッセンシャルワーカーにとって、癒されたり励まされたりする取り組みとなっているでしょう。

参考:「ありがとう」エッセンシャルワーカーの皆さんへ、感謝・応援メッセージを募集!|川島町

事業継続支援給付金を支給

青森県おいらせ町では、新型コロナウイルスの感染拡大により経済的な影響を受けた町内小規模の事業者に対し、事業継続支援給付金を支給しました。

対象となったのは、飲食店・タクシー業・自動車運転代行業・露天商・卸売業・小売業・サービス業です。令和3年1〜10月のうち、連続する2ヵ月間の売上合計が昨年同月比で20%以上減少した事業者に、一律10万円を給付したのです。

また、おいらせ町としては、売上減少によって経営が危ぶまれていた企業の事業継続が可能となり、街の衰退の食い止めにもつなげられています。

参考:【令和3年度】事業継続支援給付金を交付します|おいらせ町

人員不足を補う代替要員の支援

東京都では、介護保険サービス事業所等を対象に、新型コロナウイルスによる人員不足を補う代替要員の支援を行っています。対象となる事業所に勤めている職員が感染もしくは濃厚接触者となり、出勤できず人手不足が生じた場合、都が代替職員を派遣し、人手不足の解消を図ることを目的とした取り組みです。派遣する際に発生する経費は都が負担するため、事業所の経費負担はありません。

本支援事業の対象職種は、介護職員・生活相談員・サービス提供責任者・介護支援専門員・介護職員です。福祉に関わるエッセンシャルワーカーの欠勤は、社会生活に影響を及ぼす可能性があります。人手不足を懸念した、早めの予防策といえるでしょう。

参考:代替職員の確保による応援体制強化事業|東京都福祉保健局

ゾーニングの徹底とガイドラインの作成

ゾーニングとは病原体によって汚染されている区域と、汚染されていない区域に区分けすることです。主に入院病棟で必要とされることであり、安全な医療提供と感染拡大防止のためには欠かせない取り組みです。

国立国際医療研究センター 国際感染症センターでは、新型コロナウイルスの集団発生が起きた際に、一般病棟で行うゾーニングのガイドラインを作成しました。ガイドラインがあることで、医療関係者は迷うことなく適切に対応できるようになります。

参考:急性期病院における新型コロナウイルス感染症アウトブレイクでのゾーニングの考え方|国立国際医療研究センター 国際感染症センター

エッセンシャルワーカーに対する法人による支援の事例

エッセンシャルワーカーに対して支援する取り組みは法人でも行われています。法人による取り組みとして以下5つの事例を紹介します。

  • 日本看護協会の事例
  • スーパー・ドラッグストアの事例
  • 国際興業グループ事業協同組合の事例
  • ダイアナ株式会社の事例
  • 株式会社JHATの事例

事例の中には、あまり知られていないものもあります。私たちが知らないところでエッセンシャルワーカーを支援する取り組みは広まりつつあるのです。

日本看護協会の事例

公益社団法人日本看護協会では、新型コロナウイルス対策において看護職不足を懸念しました。そこで、看護職の確保を目的とした取り組みを実施しました。具体的には、4月7日に政府により発令された緊急事態宣言を受け、翌日の8日にe ナースセンター求職登録者・届出制度登録者約5 万人の看護職に対して、復職依頼のメールを一斉送信したのです。メールを読んだ人々からは復職を希望する声が寄せられ、696人の看護職が就業することになりました。

また、ブランクのある看護職の人がスムーズに復職できるよう、感染管理認定看護師による感染管理の講義や実習などの研修を実施しています。現場から離れていることや、感染症に対する不安の軽減に努めています。

参考:ナースセンター登録者へ一斉メール、その成果|日本看護協会

スーパー・ドラッグストアの事例

スーパーやドラッグストアでは、パートやアルバイトを含む全社員に対し、特別手当を支給する動きが見られました。コロナ禍によって外食や外出する機会が減ったことで、スーパーやドラッグストアの利用者は急増しました。感染リスクのある状況の中、休まずに就労してくれる社員に対し、企業は特別手当という形で慰労と敬意を示したのです。

例えば、イオン株式会社では2020年4月に、グループで働く全社員に対し、特別手当を支給しました。特別手当の資金の一部には、役員の月額報酬(10〜30%)の6ヵ月分が充てられています。役員は自主返納という形で、社員に対して敬意を示したのです。また、新型コロナウイルス感染症が拡大したことで厳しい経営環境が続く中、役員が減額することで現場の社員と危機感を共有するといった狙いもあります。

ほかにも、株式会社ライフコーポレーションや株式会社ベルク、オーケー株式会社、スギホールディングス株式会社などで全社員に特別手当を支給しています。いずれも雇用形態にかかわらず、現場で働く社員に対する感謝と慰労の気持ちを形であらわした取り組みです。

国際興業グループ事業協同組合の事例

国際興業グループ事業協同組合は、九州を地盤とするタクシー会社です。組合には約1,200人のタクシー運転手が所属しています。国際興業グループ事業協同組合では新型コロナウイルスが広がり始めた2020年4月に、全運転手に対して2万円の特別手当を支給する取り組みを実施しました。

コロナ禍によって外出自粛や県外への移動自粛が呼びかけられる中、人通りは大きく減少しました。その結果、タクシー業界は業績が悪化し、廃業するケースも増えたのです。国際興業グループ事業協同組合もまた厳しい経営に陥りましたが、運転手の中には収入が大幅に減少した人もいたため、金銭面での支援が最優先だと考えました。収入が減り不安を抱えていたタクシー運転手にとって特別手当は、組合へのエンゲージメントを高め、モチベーション維持につながったでしょう。

ダイアナ株式会社の事例

レディースの靴やバッグを販売するダイアナ株式会社では、エッセンシャルワーカーにスニーカーをプレゼントする「ダイアナエッセンシャルワーカー応援スニーカーキャンペーン」を実施しました。日頃の感謝の気持ちを込めた支援活動です。

当初は1,000足の予定でしたが、多くの反響があったため、最終的には1,300足をエッセンシャルワーカーにプレゼントしています。

参考:ダイアナシオフィシャルサイト

株式会社JHATの事例

ホテルを運営する株式会社JHATでは、エッセンシャルワーカーがホテルを気軽に利用できるよう格安で宿泊できる支援を実施しました。支援の内容は、上野新御徒町にある「ICI HOTEL」の客室を30連泊以上限定で提供したものです。宿泊を希望するエッセンシャルワーカーは、1室1泊(食事なし)2,000円で利用できます。

なお、本支援ではエッセンシャルワーカーに対して感謝や慰労の気持ちに賛同する人たちが、JHATを通じて支援できるところも特徴の一つです。ホームページから「エッセンシャルワーカーに1日分の宿泊提供を支援(2,000円)」「エッセンシャルワーカーに10日分の宿提供を支援(20,000円)」など、さまざまある支援内容から選び、寄付するという形でエッセンシャルワーカーの暮らしをサポートします。

自宅に高齢者や持病のある家族がいるエッセンシャルワーカーにとって、大きな手助けとなったでしょう。
参考:lエッセンシャルワーカーへの支援のお知らせ|株式会社JHAT

エッセンシャルワーカーを支援する取り組みは今後の課題

日常生活を維持するためには、エッセンシャルワーカーは不可欠な存在です。しかし、業務過多や人手不足、業務に見合わない待遇など、さまざまな問題を抱えているため、離職する人が少なくない状況です。このままでは、人手不足が顕著となり、社会基盤が崩れる可能性があります。今後もエッセンシャルワーカーへの感謝や敬意を示す取り組みが求められるでしょう。

また、エッセンシャルワーカーを雇用する企業はもちろん、一般企業においても社員一人ひとりの貢献を可視化するなどエンゲージメント向上につなげる取り組みが必要とされています。企業の業績アップや社員の離職低下、採用コストの削減などにつながるため、エンゲージメントを高める意義は大きいと言えるでしょう。

ただし、部分的・一時的な取り組みでは社員のエンゲージメント向上にはつながりません。サイダスが提供する「CYDAS」は、社員の働きがいをつくり出すタレントマネジメントシステムです。組織と個人それぞれの視点から視覚的にアプローチし、社員に働きがいをつくる仕組みが整っています。社員のエンゲージメントを高めて組織の結束力を高めたいとお考えの方はぜひご相談ください。

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