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2022.2.15

人的資源とは?意味・特徴・活用事例を紹介

働き方改革が進む中、組織の生産性を高めて企業の経営戦略を推進していくためには、労働者一人ひとりを経営資源と位置づけて有効活用することが大切です。労働力人口の減少も進んでおり、適材適所の人材配置をはじめ個人の適性や希望に応じた教育・研修の実施も、従業員を有効活用に向けた戦略的な人事施策として求められています。

この記事では人的資源の意味・特徴や、組織の中で人的資源を有効に活用する方法を紹介します。人的資源管理を実践している企業事例も紹介するので、導入時の参考にしてみてください。

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人的資源とは

人的資源とは、企業が経営戦略を推進していく上で必要不可欠な経営資源です。主な経営資源は「ヒト・モノ・カネ・情報」の4種類ですが、その中でもヒトは最も重要な資源として位置づけられています。人的資源を活用するにあたり、具体的な意味合いや人的資本との違い、ヒト以外の経営資源の特徴についても確認しておきましょう。

人的資源の意味と英語

人的資源は英語で「Human Resource」と呼ばれ、人間そのものが企業の資産・財産だという意味です。後述する人的資源管理というマネジメント手法が生まれたのを機に、組織の中で従業員(人材)の重要性が再認識されるようになりました。従業員個人にとどまらず、スキルや能力の発揮によって生み出される経済的価値も人的資源に含まれます。

人的資源であるヒトは、他の経営資源であるモノ・カネ・情報を活用できる唯一の存在です。ヒトが立てた戦略に基づき、資金を使って集めた情報や人材を利用した上で経営目標の達成を目指していきます。ヒトがいなければ、経営そのものが成立しないのです。

また、人的資源を従業員に限定せず、企業のステークホルダーも含めるという考え方もあります。顧客や取引先に販売した商品・サービス(モノ)でカネが生み出され、情報のフィードバックを受けられる関係性があるからです。株主も、投資という形で企業にカネを提供して間接的に企業経営に参加しているため、広く考えると重要な経営資源といえるでしょう。

人的資源と人的資本との違い

人的資源(Human Resource)は持っている能力や生み出す価値にかかわらず、人材そのものを経営資源として位置づける考え方です。労働力としてカウントでき、業務の状況などに応じて適材適所に配置できますが、従業員の数が不足すると業務の遂行に影響する場合があります。

一方、人的資本(Human Capital)は人材が持っているスキルや技術・知識などを資産と位置づける考え方です。数値化は難しいものの会社経営に必要不可欠な要素で、人材の教育研修に投資することで技術・知識が高まれば、企業の生産性向上につながります。近年では、人材の価値を最大限に引き出して企業価値向上を目指す「人的資本経営」という考え方も登場しています。

労働力として人的資源を有効に活用するだけでなく、従業員が技術や知識を高められるよう教育研修に投資していくことで企業の価値を高め、持続的な成長を実現できるようになります。

ヒト以外の経営資源

ヒト以外の経営資源である、モノ・カネ・情報の特徴についても説明します。なお「ヒト・モノ・カネ・情報」とは別に、時間や知的財産・ブランドも経営資源と位置づける考え方もあります。

カネ(財務資本)

カネ(財務資本)とは現金・預貯金を意味し、企業の経営に必要不可欠な資源です。株式・債券といった投資家から調達した資金や金融機関からの融資も含まれており、経営資源を調達する財力や信用力を表すバロメーターとしても用いられています。

従業員の採用・教育研修や給与の支払はもちろん、設備投資や新しい事業を展開するためにもお金は必要です。お金を配分する場面や金額が企業の命運を左右する場合もあるので、スピーディーな経営判断を下せるよう健全な財務状況を保ち続けることが重要です。黒字倒産にならないよう、キャッシュフローをプラスに保つ必要もあります。内部留保を増やすことも大切ですが、適材適所への投資が企業の成長を後押しします。

モノ(物的資本)

モノ(物的資本)とは、事務所や店舗・工場として使っている土地・建物(不動産)をはじめ企業の設備や備品(動産)など、企業の運営をサポートする資源です。材料や商品だけでなく、顧客に提供するサービスも「モノ」として位置づけられます。新商品の開発や店舗の立地などを通じて、モノ自体が経済的価値を生み出す場合もあります。

モノを購入・生産するだけでなく、良好な状態を維持するためにもお金は必要です。拠点の賃料や光熱水費といった固定費が発生するきっかけにもなります。土地・建物や一定額以上の設備・備品には固定資産税も課せられます。経営に悪影響を及ぼさないよう、必要性を見極めた上で所有するモノを決めることが大切です。

情報(組織資本)

情報(組織資本)とは顧客情報や取引先・競合相手に関する情報、取引状況や顧客対応などを記録したデータベースなどの資源で、情報資産と呼ばれることもあります。企業や組織が持つノウハウ・コネクションや知的財産権、企業活動の積み重ねで得られた評判なども重要な経営資源の一つです。

経営層や従業員の経験・知見によって情報を分析し、企業の経営戦略に取り入れて経済的な価値を生み出すこともできます。反対に、情報が外部に漏れると企業の独自性や評判を損ねる恐れがあるので取り扱いには注意が必要です。個人情報の保護や情報の発信方法に配慮することで企業のイメージアップにつながり、経営面にもメリットをもたらすでしょう。

人的資源の特徴

経営学者のピーター・F・ドラッカーは、人的資源を「最も生産的でありながら、最も変化しやすい資源であり、最も大きな潜在能力をもつ資源」と定義しています。さらに、従業員に成長のきっかけを提供し、人的資源として有効活用することが経営者の責務であると提唱しています。言い換えると、人材の能力を最大限に発揮できれば企業の生産性を向上できるということです。人的資源の2つの特徴について確認しておきましょう。

育成できる

人的資源であるヒトは他の経営資源とは異なり、育成することで企業に大きな経済的価値をもたらします。モノ・カネ・情報も適切に活用していけば企業の価値を高めますが、ヒトがいなければ生み出されない経営資源です。

ヒトには感情もあり、言葉でコミュニケーションを取りながら自発的に行動する能力も備わっています。個人の意向を確認しながら、能力・特性に応じて育成することで業務範囲を広げていけます。潜在能力を引き出せれば、仕事の質を高めてさらなる経済的価値を生み出すこともできるでしょう。また、知識や経験を積み重ねることでヒトは成長し、モノ・カネ・情報の効果的な活用方法も身につきます。仕事に関係するヒトと協力しながら、最適な方法で経済的価値を生み出していけるようになるのです。

今の状況だけを見るのではなく、将来的な発展を見据えて経営層と連携しながら戦略的人事を進めていくことが企業の成長にとっては大切です。

流動的

ヒトは一人ひとりが異なる感情や意思を持っており、おかれた環境によっても変化します。そのため、すべてのヒトに等しく効果を発揮できる管理手法が存在しないのが人的資源の特徴です。従業員も同じ企業や組織にとどまり続けるとは限らないため、他の経営資源と同様に流動的な存在といえます。

万人に同じ効果を期待できる管理手法が存在しないといっても、得られる効果が異なる前提で企業・組織の目標達成などの共通の目的をもってヒトを管理することは可能です。従業員の状況に応じて向き合い方を変えたり、システム化によって人事情報を集約したりして、人的資源の活用方法も改善できるでしょう。

また、従業員は企業内でも仕事の役割や内容が変化するほか、新卒採用・中途採用や退職などでも新陳代謝していきます。近年では働き方が多様化しており、自分の能力を発揮できる場や優れた給与・労働環境を求めて転職する人も少なくありません。

人的資源管理(人的資源マネジメント)とは

人的資源管理とは、従業員であるヒトを経済資源として明確に位置づけた上で、経営目標を達成するために戦略的にヒトを活用する制度を構築・運用するマネジメント手法です。英語では「Human Resource Management(HRM)」と表現されるため、人的資源マネジメントと呼ばれることもあります。戦後にアメリカで普及した考え方で、日本では1990年代から注目されるようになりました。

人的資源管理の考え方が生まれる前は人事労務管理(Personal Management)の考え方が主流で、従業員は企業の生産活動に必要なコストとして捉えられていました。企業が利益を最大化するために、集団としての労働者を規律によって管理する点に主眼が置かれていたのが特徴的です。現在でも、企業や職場の秩序を守るために人事労務管理が実践されています。

しかし、終身雇用制度の崩壊や働き方の多様化によって、ヒトが持つ能力を活用して目標達成を目指すことが経営戦略の推進に効果的だという考え方に変化しました。つまり、従業員個人の経験や性格を重視し、人材育成を通じて知識・技術を活用しながら企業の利益を追求していくのが人的資源管理なのです。

HRMについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

人的資源管理の目的

人的資源管理の目的は、人的資源を適材適所に配置して従業員・組織がパフォーマンスを最大限に発揮できる環境をつくり、企業の経営目標を達成することです。

経営目標の達成には、ヒトの手によってモノ・カネ・情報を効果的に活用する行動が欠かせません。経営資源の配分方法や人材育成の方法、業務の進め方などもヒトが考えて実践していきますが、目標を共有したりパフォーマンスを最適化するために、上司や管理職によるマネジメントも行われます。つまり、ヒトがヒトを管理して経営資源の効果的な活用につなげていくわけです。

ヒトを効果的に活用するために、人材の採用をはじめ人事評価制度の実施や給与の見直し、昇進や配置転換などさまざまな人事施策も実施されます。人事施策を通じて組織を活性化させ、生産性やモチベーションの向上にもつなげていきます。企業が経営目標を達成していくには、経営戦略との整合性を取りながら人材をマネジメントしていくことが大切なのです。

人的資源管理における課題

組織と人材の因果関係は複雑である上、人それぞれの思惑によっても目標達成に向けた行動方法は変わります。そのため、人的資源管理の結果で業績が変動したのかどうかがわかりにくいのが課題です。人的資源管理と業績変動との因果関係の有無が証明されていない点にも留意が必要です。

例えば、経営戦略の実現を優先して人的資源管理を実践する場合(ミシガンモデル)は、業績が向上すれば貢献度に応じてヒトの価値が高まります。その反面、従業員の能力開発や適切な評価が難しく、パフォーマンスの最適化につながらない可能性があります。

また、企業と従業員が協調して組織の成長を目指す場合(ハーバードモデル)は、良好な関係性が保たれているのかどうかがわかりにくい点が課題です。特に、部下が上司に意見を伝えにくい状況だと、仕事や組織の状態を十分に把握できないだけでなく、人的資源管理の成果が表われていると誤解する可能性もあります。

従業員一人ひとりの状態に目を配り、人材のマネジメントに取り組んでいく姿勢も必要でしょう。

人的資源を有効活用する方法

人的資源を有効に活用して経営目標を達成するためには、従業員の希望や能力に応じて人材育成に取り組み、適材適所へ配置することが大切です。従業員の成長度合いやパフォーマンスを確認するための、人事評価制度の実施も欠かせません。必要に応じて、経営層と連携しながら人事制度を見直していくとよいでしょう。人的資源を有効に活用する方法を紹介します。

育成・教育に力を入れる

大切な経営資源である従業員のパフォーマンスを高めるには、企業の教育研修制度を充実させ、希望や能力に応じた育成メニューを提供することが大切です。教育研修の中で従業員が自分の潜在能力に気づき、新たなチャレンジにつなげられる可能性も秘めています。

例えばOJTの場合は、職場の上司や先輩が実務を通じて業務を指導します。知識・技術の伝達だけでなく、指導する項目ごとに考えをまとめさせたり日報などを通じて振り返りの機会を与えたりすると、自分で考えて行動する力が身につきます。業務に関する知見を広げるために外部の研修を受講させる、Off-JTの実施も有効です。近年では、社員のキャリアプランを把握した上で企業の人事施策に基づいて能力開発を行う、キャリアディベロップメント(CDP)という手法も注目されています。

適材適所に人材を配置する

教育研修の成果や従業員の希望をふまえた上で適材適所に人材を配置することも、人的資源を有効活用する方法の一つです。

人材の配属先を決める前に、企業の経営課題や実現したい目標を確認した上で、必要な能力や業務に適した人物像を明確にします。配属先の部署の業務内容を洗い出したり人間関係の情報を収集したりしておけば、具体的な情報をもとに配属先を検討できます。配属された人材が安定したパフォーマンスを発揮できるよう、従業員のキャリアプランや希望する働き方についても確認しておくとよいでしょう。

適材適所の人材配置を成功させるためには、経営戦略や配属先の業務に関する情報、そして従業員に関する情報を収集しておくことが大切です。1on1や評価面談などを活用して上司と部下がコミュニケーションを継続することも、情報収集には有効でしょう。

適切な評価を行う

目標の達成度合いや業績・組織への貢献度を適切に評価し、従業員に開示することも人的資源を有効に活用するためには重要な取り組みです。評価に応じた昇給・昇格を行えば従業員のモチベーションが高まり、人的資源の有効活用にも効果を発揮するでしょう。

業務の成果だけにとらわれず、目標達成に取り組む姿勢や業務の進め方などの行動面にも着目した評価を行うことで、自分自身で能力を高めようという姿勢が生まれます。潜在能力に気づくことができれば、仕事の質が高まると同時に対応できる業務の幅も広がるでしょう。人事評価に対する従業員の納得感が高まれば離職率の低下につながり、人的資源や情報の外部への流出を避けられるなど経営の安定にもつながります。

人的資源管理に取り組む企業事例

人材育成や適切な人材配置・評価制度の実施など、人的資源管理を実践する企業が増えています。人的資源管理に意欲的に取り組んで成果をあげている、国内外の企業の事例を紹介します。

サムスン電子

世界最大級のエレクトロニクスメーカーであるサムスン電子では、「人材第一」の経営哲学のもとで1993年に質重視の経営方針に切り替え、人事面でも社員教育やグローバル人材の育成に力を入れています。個人の職務能力を高めるだけでなく、経営理念や企業の価値観に関する教育を繰り返し行い、企業全体にメリットをもたらす行動特性を従業員に共有しているのが特徴的です。

「マネジメント人材育成制度」では、経営マインドやリスクマネジメント能力など、グローバルな経営人材として必要な知識・能力を育成しています。経営センスと技術力を兼ね揃えた管理者を育成するために、エンジニア出身者にも門戸が開かれています。

社内の人材育成だけでなく、成果主義による評価の徹底や優秀な社外人材の積極的なスカウトに取り組むなど、国際的な競争に打ち勝つための人的資源管理に意欲的な企業です。

株式会社大分銀行

株式会社大分銀行では、従業員一人ひとりと向き合う人的資源管理を実践するために、サイダスのタレントマネジメントシステム「CYDAS」を導入しています。

すべての従業員と面談を行い、キャリアに関する考え方や将来身につけたいスキルなどをキャリアプランシートという形で見える化し、従業員一人ひとりの成長を支援しているのが特徴です。過去の経験だけでなく、従業員の希望や将来像を大切にした人材配置を実践しており、ミスマッチの発生を防いでいます。グループ企業の業務情報も公開し、従業員自身が潜在能力を見つけて業務に活かすチャンスも提供しています。

従業員の志を大切にした上で、従業員の能力や可能性を引き出す人的資源管理に取り組む企業です。CYDASサービスサイトでは、動画付きで導入事例を公開しています。

人的資源管理にはタレントマネジメントシステムを活用

人的資源は最も重要な経営資源として位置づけられており、モノ・カネ・情報を活用しながら企業を成長に導き、経済的価値をもたらす存在です。人的資源の管理ではすべての従業員に同じ効果を期待するのは難しいですが、適性・能力や希望に応じて従業員を育てることで組織の活性化につなげられます。業務の成果・姿勢に対する適切な評価を行うことで、従業員のモチベーションが向上し、適材適所への人材配置とあわせて人的資源の有効活用が実現します。

人的資源の有効活用や適切な人的資源管理を実践して企業の成長につなげるためには、タレントマネジメントシステムの活用が効果的です。

サイダス社が提供する「CYDAS」は、「働きがい」を生み出すメカニズムが詰まったタレントマネジメントシステムです。人材情報を一元化し、目標管理や1on1、フィードバック機能など、さまざまな機能を組み合わせてサイクルを回すことで、一人ひとりのワークエンゲージメントを高め、組織を強くします。資料は無料でダウンロード可能です。お気軽にご覧ください。

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