2019.12.17

育児介護休業法ってどんな法律?育児・介護の休暇のポイントとは

育児介護休業法ってどんな法律?育児・介護の休暇のポイントとは

2017年、育児・介護休業法が大幅に改定されました。企業の担当者のなかには、そもそも育児・介護休業法とはどのような制度なのか、どのような目的のためにつくられたのかなどと気になっている人もいるでしょう。この記事では、育児・介護休業法について紹介するとともに、改定後の内容、企業に求められる義務について解説します。

育児介護休業法について知ろう!

「育児・介護休業法」は、働く人たちが仕事と育児、あるいは仕事と介護を両立できるようにするための支援制度です。正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいますが、長いため、一般的には育児・介護休業法と呼ばれています。育児休業に関しては、もとを辿れば女性公務員のみを対象とした法律でしたが、現代では一定の条件さえ満たしていれば、職種や性別を問わず制度を利用することが可能になりました。育児・介護休業法には、育児や介護をする必要がある労働者に対して、労働時間を柔軟に調整したり、休暇を取りやすくしたりする内容が盛り込まれています。

具体的な内容としては、所定外労働・時間外労働の制限があります。この制度を利用することによって、労働者は残業を免除、あるいは残業時間をある程度制限することが可能です。ただし、適用には条件があるので注意しましょう。ちなみに、「所定外労働」は就業規則などによって会社が定めた労働時間を超える勤務のことを指し、「時間外労働」は労働基準法で定められた法定労働時間(1日8時間または週40時間)以上の勤務のことを指します。また、育児・介護休業法には、深夜勤務を制限する内容や、短時間勤務制度の利用に関する内容も盛り込まれています。

さらに詳しくみていくと、育児のための具体的な支援制度には「産前産後休業」「育児休業」「子どもの看護休暇」などの育児に直結する内容のほかに、「転勤への配慮」などがあります。一方で、介護のための支援制度には「介護休業」や「介護休暇」が挙げられます。育児・介護休業法に関する支援制度の利用は労働者に与えられた権利であるため、労働者からの申し出があった場合、企業はこれに対応する義務があります。こうした制度が正しく運用されるためには、企業側の理解が欠かせないのです。

なぜ育児介護休業法が制定されたのか?

育児介護休業法が制定された背景には、現代の日本が抱えている「少子化問題」があります。現実問題として、仕事と育児、あるいは仕事と介護を両立するのは容易なことではありません。実際に、育児や介護に専念するために仕事を辞める労働者は少なくないでしょう。裏を返せば、仕事を辞めたくない労働者にとっては、育児という選択肢を選ぶことが難しく、すなわち、出産に結びつかない現状があるのです。そこで、法律によって育児支援を充実させることによって、出産を前向きに考えられる女性を増やし、少子化対策とすることを目的としています。

制度が浸透すれば、女性は育児中の休業やブランクを気にせず、企業の労働力としてキャリアを続行することができるでしょう。また、高齢化社会である現代では、家族の介護に直面する労働者が増加傾向にあります。育児や介護に関するこうした背景から、労働者が育児・介護休業をとりやすい環境を整えることで、企業側にとっても戦力の確保や雇用の安定化をはかれるというメリットがあります。ひいては、日本全体の労働力を向上させ、国力強化につなげていくことも期待できるでしょう。

2017年1月に改正された内容

育児・介護休業法は2017年1月に大幅に改正されています。たとえば、それまでは介護休業の分割取得は認められていませんでしたが、改正により年間で3回までの介護休業の分割取得が可能になりました。ちなみに、通算で93日という日数には変わりありません。また、改正前は40%だった介護休業給付の給付率が67%に引き上げられました。介護休暇に関しても、改定前は1日単位で年間5日まで取得可能とされていましたが、改正によって取得単位を柔軟化したため、さらに細かく半日単位での取得が認められています。

介護を目的とした短時間勤務制度は介護休業と通算して93日とされていましたが、改定によって別々に考えられることになりました。短時間勤務制度は、利用開始から3年以内に2回以上の利用が可能です。また、介護のための所定外労働の免除を申請することもできます。一方で、育児休業に関しては、取得条件が緩和されました。改定後は、過去1年以上の勤務実績や、子供が1歳6カ月になるまでに雇用契約が切れないことが条件になっています。子どもの看護休暇も取得単位が柔軟化されたため、半日単位での取得ができるようになりました。ちなみに、看護休暇というのは、子どもが病気やケガの治療や予防接種を受けるために、通常の有給休暇とは別に取得できる休みのことです。

妊娠や出産におけるハラスメント

現代社会では、日々さまざまなハラスメントが問題になっています。妊娠や出産におけるハラスメントもその一つです。こうしたハラスメントには「制度を利用することへの嫌がらせ」と「妊娠・出産したことに関する嫌がらせ」の2種類があります。たとえば、「制度を利用するなら辞めてもらう」などの不当な解雇を示唆するものや、男だからという理由で育児休業の希望が認められないなどのケースは、制度を利用することへの嫌がらせにあたります。妊娠・出産に関する制度は女性社員のみが対応となりますが、育児休業や介護休業については男性社員も対象です。企業は、この権利を不当に奪うことはできません。

また、妊娠・出産した女性に対する性的発言や退職を促す発言、不当に業務を制限することは、妊娠・出産したことに関する嫌がらせに該当するでしょう。こうした妊娠・出産などを理由とする不利益取扱いは、男女雇用機会均等法9条3項で禁止されています。また、育児休業・介護休業などを理由とする不利益取扱いは育児・介護休業法10条や16条で禁止事項として記載されています。さらに、2017年1月からは、上司や同僚による不適切な言動に対して、事業主は防止措置をとることを義務づけられました(男女雇用機会均等法11条の2、育児・介護休業法25条による)。

マタニティハラスメントを防止するための企業の義務

マタニティハラスメントを防止するため、企業には5つの措置が義務づけられています。

1つ目は、「方針の明確化および周知・啓発」です。たとえば、企業はマタニティハラスメントの加害者となった場合、どのような処分が下されるのかなどのハラスメントに関する具体的な方針を定め、全体に周知しなければいけません。その上で、妊娠・出産・育児・介護に関わる制度の利用について、労働者に継続的に伝え、理解してもらう努力が必要になります。

2つ目は、「相談窓口の設置」です。相談窓口の担当者は、労働者が安心して相談できる環境を整えると共に、相談内容に関して適切に対応できるよう努める必要があります。

3つ目は「マタニティハラスメントが起こてしまった場合の迅速かつ適切な対応」です。残念ながらマタニティハラスメントが起こってしまった場合、企業は正確な事実確認を行ったうえで、すみやかに被害者への配慮、加害者への処分を行う必要があります。また、事実確認ができた場合も、できなかった場合も、再発防止のための対策を講じなければいけません。

4つ目は、「マタニティハラスメントの原因の解消」です。ハラスメントが起こる背景には、知識不足や業務の割り振りに対する不満など、必ず何らかの原因や背景があります。企業は妊娠・出産・育児・介護に関わる制度の利用を望む労働者ばかりにフォーカスするのではなく、そのほかの労働者の実情に応じた業務体制を整えることが求められるでしょう。

5つ目は、「当事者たちのプライバシーの保護」です。なお、企業でマタニティハラスメントが行われた場合、厚生労働省の行政指導が入るケースもあります。悪質な場合は社名を公表される可能性もあるため注意しましょう。

育児休暇・育児休業のポイント

育児休業というのは、子どもの育児に専念するために会社を休める制度のことです。取得できる期間は、一般的に子どもが生後8週間から1歳になるまでの間とされていますが、保育所に入れないなどの事情がある場合には、1歳6カ月まで延長できます。1歳6カ月以上であっても、引き続き保育所に入れないなどの事情を抱えている場合は、再度申し込むことで最長2歳まで延長が可能です。それに伴って、育児休業給付金も子どもが2歳になるまで給付される仕組みになっています。

育児休業の取得に労働者の性別は関係なく、1歳未満の子どもがいる家庭であれば、会社に申し出ることで育児休業を利用できます。夫婦で取得することも可能です。育児の対象者となるのは実子だけではなく、特別養子縁組の監護期間中の子や、養子縁組里親に委託されている子も対象に含まれるので覚えておきましょう。なお、有期雇用契約の労働者の場合は、育児休業を取得するために「過去1年以上継続して雇用されていること」と「子供が1歳6カ月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこと」の2つの条件を満たしている必要があります。

介護休暇・介護休業のポイント

育児休暇は、介護が必要な対象家族1人につき、年間で5日まで取得できる休みのことです。介護の対象者が2人いる場合は、最大で年間10日まで取得することができます。育児休暇は、正社員だけでなくパートやアルバイト、派遣社員や契約社員も取得の対象となります。ちなみに、被介護者として認められるのは、配偶者(事実婚を含む)、実父母、配偶者の父母、子、同居かつ扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫です。育児休暇の取得には、「雇用期間が半年以上である」「要介護状態の対象家族を介護する、日々雇用以外の全労働者である」などの条件があります。介護休暇の取得が認められる介護の内容は、食事や排泄などの日常生活に欠かせない介護だけではありません。そのほかにも、病院への送迎や買い出し、各種事務手続きの代行といった間接的な内容も含まれています。

育児介護休業法を利用しやすい職場を目指そう

育児・介護休業法の内容は、まだまだ一般に広く浸透しているとはいえません。企業の担当者でさえ勉強しなければ知識を得られないのですから、一般の労働者であればなおさら知らない部分が多いでしょう。大切なのは、取得希望者以外にも広く制度に対する理解を促すことです。育児・介護休業法を利用し、労働者が介護休暇や育児休暇を取りやすい職場をつくるためには、企業側の理解や努力が必要不可欠なのです。

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