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2019.5.28

人事評価を徹底解析!MBOの重要性と運用に役立つITツール

人事評価にMBOを取り入れることで、従業員のモチベーションアップをはかりたいと考えている人事担当者も多いのではないでしょうか。MBOを効果的に取り入れるためには、メリットやデメリットをよく理解した上で、人事評価のトレンドをうまく取り入れながら運用していくことが重要です。そこで、MBOの重要性や正しい運用方法、運用を助けるITツールについても紹介していきます。

「MBO(目標管理)」とは?

MBO

「MBO」は「Management By Objectives(目標による管理)」の略で、企業における目標管理制度についての概念です。もともとは経営学者であるピーター・ドラッカーが提唱したもので、人材の評価や育成といった側面も持った考え方になっています。MBOでは、従業員ごとに目標設定を行うのが前提です。ただし、目標は各自が勝手に決めればよい訳ではなく、あらかじめ上司と話し合って合意を得るようにします。その上で最終的に目標を達成できたかどうかを確認すれば、それを人材の評価とすることができます。

このような「目標による管理」は、従業員ひとりひとりの能力開発にもつながる手法です。また、目標を適切に設定できれば、個々の従業員だけでなく企業としての成長にも繋がっていきます。しかし、導入や運用の方法を誤れば、さまざまな弊害が出てくることにもなりかねません。適切に活用するには、MBOについての正しい知識が大切です。

MBOのメリット・デメリット

MBOを導入する企業は増えていますが、必ずしも成功しているとは限りません。成功確率を高めるには、MBOのメリットとデメリットの両方を知り、その導入目的を事前によく理解しておくことが大切です。

MBOを導入するメリット

MBOには、適切な目標を設定することで、従業員のモチベーションがアップするというメリットがあります。適切な目標とは、達成するために行うべき行動が明確にわかるような具体的な目標のことです。目標が具体的であれば、従業員は何をすべきかを自ら理解し、主体的に行動できるようになります。また、目標達成のための業務を日々やり遂げていくことには、従業員の成長を促す効果があります。その積み重ねにより、ひとりひとりの能力が引き出されていくのです。

従業員ごとの成長を、企業の人事評価に活かせることもメリットのひとつです。各自が目標達成に向けてどのような能力を獲得してきたのかをフィードバックすれば、企業全体の目標と照らし合わせて、今後の人材育成を的確に計画することが可能になるでしょう。

MBOを導入するデメリット

MBOにおける従業員各自の目標設定は、組織として達成したい目標や解決したい課題とリンクしたものでなければなりません。そのためには、各自の現在の能力を上司が把握している必要があります。個人の能力が不明瞭な状態では、どのような目標なら達成可能なのかもわからないからです。実際にMBOを導入し、具体的な目標を決めようとする際には、このような問題に直面するケースもあるでしょう。企業の現状にもよりますが、MBOの導入当初には、適切な目標設定が難しいというデメリットがあるのです。

個人としての目標達成や能力獲得よりも、組織としての目標ばかりが優先されてしまう恐れがあるという点も、MBOのデメリットのひとつです。この場合、各自の目標は上意下達のノルマのようになるでしょう。従業員にとっては主体性の薄れた目標となり、ストレスを感じたりモチベーションが低下したりといった結果につながります。また、ノルマさえ達成できれば評価されるという考えから、与えられた目標以外のことへの関心が薄れたり、向上心がなくなるといった弊害もあります。

MBOについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

MBOの正しい運用方法・落とし穴

MBOを実践する際には、目標が適切でなかったり上司によるサポートが不十分だったりすると、どうやって目標を達成したらよいのかがわからなくなるなどの落とし穴があります。こういった事態を避けるために知っておくとよい、MBOの運用方法について紹介します。

目標設定の独断は避ける

目標は高すぎても低すぎてもモチベーションの低下につながります。従業員自身が目標を考えるとき、その達成が昇給・昇格に直結するとなると、楽に達成できそうな内容にしてしまうかもしれません。反対に、上司があまり高すぎる目標を与えてしまうと、達成すること自体が困難になってしまいます。MBOにおいては、適切な目標のレベルについて従業員と上司とが話し合うことが大切です。その上で、双方の合意のもとで目標を決定するのです。

目標設定には自主性を持たせる

上司から一方的に与えられた目標には、どうしても「やらされ感」が生じてしまいます。モチベーションアップのためには、従業員自らが目標を考えることが大切です。そして、個人の目標が組織全体の目標と合致するように、かつ具体的な行動につながる目標となるように、上司と従業員との間で話し合って調整を行います。こうして決めた目標は、達成することで個人としての成長と組織への貢献を両立できるため、モチベーションの向上につながるものとなるでしょう。

PDCAサイクルを心がける

どの企業でも、定期的に従業員の評価を行うのが一般的でしょう。定期的な評価は、MBOにおいては目標の達成状況を確認することにあたります。目標を決める際には、達成までの期限が合わせて設定されるということです。目標達成の確率を上げるためには、従業員各自がPDCAサイクルをまわすことが効果的です。自ら行動計画を立て(Plan)、実行し(Do)、成果を確認し(Check)、改善方法を考える(Act)というサイクルです。また、上司に相談しやすい環境を作ることも大切です。こまめにアドバイスをもらえるようになれば、従業員の問題解決能力は効率よく向上していくでしょう。

進捗確認やフォローを怠らない

目標達成に向けて行動する中で孤独感を感じるようなことがあると、従業員はモチベーションを喪失してしまうかもしれません。そのような事態を避けるためには、各自が上司との信頼関係を築くことが重要です。MBOにおける上司の役割は、部下が目標を達成できたかどうかを評価することだけではありません。部下が目標を達成できるようにフォローすることも大切なのです。そのためには、こまめに小規模なミーティングを行い、進捗確認などを行うとよいでしょう。また、もし困っていることがあれば相談に乗り、場合によっては目標を見直すことも必要です。

目標達成の基準やビジョンを共有する

目標達成に向けた各自の行動は、組織の目標に沿ったものでなければなりません。そのためには、企業全体や部門単位での全体目標を明確にし、従業員に示すことが大切です。各自が常に全体目標を把握していれば、組織としての一体感が増し、ひとりひとりの行動もより的確なものになります。また、目標達成のビジョンを上司と部下が共有することもポイントです。いつまでに何ができれば目標を達成できたと言えるのかが共有されていれば、従業員各自の自己評価と社内評価との間にギャップが生じてしまうリスクも避けることができるでしょう。

▼目標管理システムの導入時に知っておきたいポイントとは?▼

MBOとOKRの共通点と違いとは?

OKR or MBO

「OKR」は「MBO」とよく比較される目標管理の手法のひとつです。両者には、似ている部分も多くあります。これらの共通点と違いについて、解説していきます。

「OKR」とは?

「OKR」とは、「Objective and Key Result(目標と主な成果)」の略で、目標設定とその管理に使われる手法です。米・インテル社で開発され、GoogleやFacebookなど数多くのグローバル企業が導入し成功を収めたことにより、日本の企業でも取り入れられることが増えています。

OKRではまず、会社が達成するべき目標(Objective)をすべての従業員の主要な成果(Key Result)に落とし込みます。そして、従業員がKey Resultを達成することで、会社のObjectiveを達成していくというのがOKRの考え方です。OKRは、全社員を対象としている場合が多く、経営トップをはじめ全従業員の目標や役割を組織レベルで明確化していきます。目標達成に向けて社内でのコミュニケーションが活発になることで、組織全体のコミットメント能力が上がるといった社風そのものにも関わってくる取り組みです。

MBOとOKRの共通点

MBOとOKRは、似ている部分があります。従業員ひとりひとりが達成する目標と組織の目標との方向性を一致させるという点で、MBOとOKRは共通しています。どちらも、個人の目標を達成することが組織の成果につながるということを各従業員に意識させ、主体性を持たせることが目的です。また、人材育成を兼ねた目標管理手法であるということも、双方の共通点と言えるでしょう。

MBOとOKRの違い

MBOとOKRでは、異なる点もあります。OKRは、企業や組織の業績を伸ばすことに注力した、組織全体で取り組む人材育成の意味合いが強い手法だと言えます。そのため、OKRでは目標管理と報酬制度を結びつけずに分離しています。これに対し、MBOは報酬を決定するための評価制度という色合いが濃い手法です。部署ごとに主に個人と上司との間でコミュニケーションをとることで、目標の達成を促し成果に応じた正しい評価を行うことが目的です。

MBOは評価制度としての意味合いが強いため、運用の仕方を間違えると半ば強制的で一方的な制度になってしまうという弊害もあります。成果を重視しすぎると従業員の自主性を欠いてしまったり、目標を達成できなかった場合にモチベーションが低下してしまったりというような問題も起きてしまいます。このような問題を避けるためには、評価する側のマネジメント力を強化し、制度への理解を深めて正しい運用を心がけることが重要です。

MBOとOKRの違いについては下記の記事で詳しく紹介しています。

MBOのヒントとなる人材評価のトレンド

従業員の目標達成度合いを評価に適正に反映させるため、多くの企業が取り入れている人材評価のトレンドを紹介します。MBOを運用していく上でのヒントとなるでしょう。

タイムリーなフィードバック

人材評価というと、以前は四半期ごとや半年ごとなど、ある程度まとまった期間ごとに行われることが一般的でした。しかし、長期的な期間を対象にした評価では、その間の出来事を振り返るのに時間がかかったり、どうしても直近の成果ばかりが反映されてしまったりといった欠点もあります。そのため、リアルタイムでの人材評価を行う企業が増えてきています。MBOでの進捗管理においても、頻繁にタイムリーなフィードバックを行うことは効果的です。密なコミュニケーションは、目標の達成度合いを高め、従業員のモチベーションアップにもつながるでしょう。

人事評価の共有・オープン化

従業員の評価や報酬に結びつく等級などの人事情報は、非公開としている企業が一般的でした。しかし、これらの情報を従業員に公開することがトレンドになっています。情報がオープンになることで、従業員は自身への評価に対し、より納得することができます。評価や等級そのものでなくとも、MBOを運用する際には評価の指標や評価プロセスを明確にし共有していくことが、個人の成長を促進するためにも効果的です。

モチベーション・成長志向の尊重

個人の成長志向やモチベーションの向上を尊重し、成長のためのフィードバックを行うことも、人事評価を行う際のトレンドになっています。個人の目標を組織の目標とリンクさせ、目標達成が組織の成果にもつながるということを各従業員に意識させることは、MBOの目的とも共通する点です。また、モチベーションが上がることで自主性が引き出され、実際に離職率が低下したという事例もあります。

OKRを取り入れた目標設定

OKRは、個人の目標を企業全体の目標と結びつけて設定します。また、定量的な指標を用いることで目標の達成度合いを明確に評価できます。そのため、MBOによる人事評価にOKRの手法を組み合わせれば、従業員の「自主性がなくなる」、「ノルマ管理になってしまう」といったMBOのデメリットを補うことが可能です。実際に、Googleやメルカリなどの成長企業では、従来の人事評価制度にOKRを取り入れることで成功を収めています。

OKRについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

複数の意見を総合した全方位型の評価

人事評価の情報をオープン化することは、複数のメンバーからの評価やサポートが可能になるということも意味しています。上司と部下といった関係性に依存しない、フラットな組織体系を生み出すことができるでしょう。また、複数人からの意見をまとめて人事評価を行うことで、属人化による評価の偏りをなくすことができます。各従業員の成長度合いを人事評価に生かしていくといった、MBOとの連動も実現することが可能です。

MBOの導入事例

実際にMBOを導入して成功した企業の事例を紹介します。

グリー株式会社

ソーシャル・ネットワーキング・サービス「GREE」を運営するグリー株式会社は、2007年からMBOによる目標管理を導入しました。5段階の指標で目標の達成基準を明確化することと、1on1による定期的な振り返りを実施することで、個人の成長を促した結果、組織目標の達成も実現しています。MBOの導入を成功させるため、マネージャー向けの「1on1研修」を実施することによって、上司と部下の信頼関係を構築する1on1の実践に成功しました。社内アンケート調査を実施した結果、「1on1に満足している」と答えた社員は全体の7割に上っており、「1on1研修」などの取り組みによる効果がデータを見ても分かります。

同社では半期のサイクルで目標設定と振り返りを実施しています。期初に部門ごとの目標を決定し、部門目標を元に上司と話し合いをし、各個人の目標や達成基準、達成するためのアクションプランを設定していくのです。設定した各個人の目標については、週次で実施している1on1の場で進捗状況の確認や状況に応じた見直しなどを行っています。各個人の目標は、半期ごとに5~6個程度を設定し、全体を100%として目標ごとのウェイトを設定しています。目標ごとの達成基準は、5段階の指標で明確化されているので、上司と部下の間で認識のズレが起こらないように工夫されています。このようにして、グリー株式会社ではMBOを導入してから、各個人の成長と組織目標の達成を実現することができたのです。

税理士法人 赤坂共同事務所

税理士法人 赤坂共同事務所は、「banto」と「CYDAS」を活用してMBOを導入しました。MBOを導入することになったきっかけは、クライアントである中小企業の経営者に「人周り」の情報を提供するためでした。また、クライアントサービスの一環として、自社でMBOをテスト運用した結果を情報提供することだけでなく、自社のスタッフに対しても人事や労務業務への動機づけができる副次的な効果への期待もありました。

会計事務所は、3ヶ月ごとに仕事の内容や忙しさが変化することが特徴で、設定した目標を半期も継続して運用することができません。そのため、会計事務所ならではの短期で変化する目標に対応することができる目標管理と評価を連動させるシステムが必要でした。

そのようなニーズに対応することができるツールを検討した結果、「banto」と「CYDAS」がマッチしたため導入を決定しました。具体的には、コロナ禍で変化した働き方に合わせた目標管理や従業員同士の連携を効率的に行うための進捗管理に「banto」を活用し、四半期ごとに設定している目標管理などには「CYDAS」を活用しています。ツールをそれぞれを使い分けることによって、従業員一人ひとりが能動的に考え、主体的に行動することを手助けできるよう心がけているとのことです。

赤坂共同事務所の「CYDAS」導入事例の詳細は下記をご覧ください。

人事のトレンドを導入!MBOには多機能ITツールを活用しよう

MBOの仕組みをよく理解し、人材評価のトレンドを押さえた運用をしていくことで、従業員のモチベーションアップをはかることができます。社内のコミュニケーションを円滑にし、オープンな目標管理と評価を行うことは、結果的に企業の成長にも繋がっていくでしょう。それには、MBOをサポートするサービスを上手に活用することがおすすめです。

タレントマネジメントシステム「CYDAS(サイダス)」の目標管理機能なら、お使いの目標管理シートをそのままシステム化できます。無料デモも承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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