2022.5.19
法律違反になる場合も?振替休日の仕組み・期限について理解しよう
振替休日の仕組みをしっかり理解していますか。振替休日や代休は、会社の規則に応じて取られるべきものです。割増賃金や休日手当の計算も必要になるため、その仕組みを正しく理解していないと、法律違反に問われてしまうこともあります。そこで今回は、特に代休との違いから、振替休日の仕組みや期限などについて紹介します。
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目次
振替休日とは
国民の祝日に関する法律第3条第2項によれば、『「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする』と定められています。たとえば、日曜日が祝日だったなら、その翌日の月曜日が休日になることがあります。この場合、休日になった月曜日が振替休日です。このように、振替休日とは休日と祝日が重なったとき、直近の平日を休日にすることによって休日が減らないようにするための制度です。
一方、ビジネスの世界では、本来の休日と勤務日を入れ替えることを振替休日といいます。たとえば、日曜日が祝日で、月曜日が振替休日になったとしましょう。カレンダーに従えば、月曜日も会社は休みになるはずです。しかし、会社の休日は、その会社の就業規則によって決められます。そのため、振替休日となった月曜日は、会社によっては休日とは扱わず、通常の勤務日として扱うこともできるわけです。
完全週休二日制の会社において、本来なら休日である土日のいずれかに出勤したとします。通常なら休日と扱われている日に出勤したのですから、一般的にいえばこれは休日出勤です。しかし、その休日出勤はあらかじめ振替休日で他の勤務日と入れ替えられていたとします。その場合、その休日出勤は「勤務日に出勤した」ものとして休日出勤とは扱われません。つまり、会社のカレンダーをあらかじめいじって休日と出勤日を入れ替えているので、休日に出勤しても休日出勤にはなりませんし、代わりに休んだ日も代休とはならず「休日に休んだ」ものとして扱われるということです。
代休とは
振替休日とは違って、代休の場合は休日出勤がそのまま「休日出勤」として扱われます。あらかじめ社内のカレンダーをいじって所定の休日と勤務日を入れ替えているわけではないので、休日に出勤したらそれは休日出勤になりますし、代わりに休んだ日は代休として扱われます。つまり、休日出勤した対価として、他の勤務日を免除するのが代休です。代休は法律で決められているわけではなく、あくまで就業規則で定められる社内慣例的な制度です。主に労働基準法の1週1休の原則を順守するために規定されます。
振替休日と代休は、似ているようで実は全く異なります。この2つの制度の顕著な違いは、休日と勤務日を「あらかじめ」変更していたのか、それとも「事後に」変更したのかどうかです。あらかじめ変更していれば振替休日、事後に変更したのだとすれば代休となります。会社に勤めていれば、急な依頼で休日に出勤することもあるでしょう。その場合は、代休の制度が適用されます。急な依頼ではなく、あらかじめ所定の休日に出勤することが勤務カレンダーで決まっていたなら、それは振替休日です。
振替休日と代休の賃金計算方法
振替休日と代休の違いをなぜ理解しておかなければならないのかといえば、それぞれ賃金の計算方法が異なるからです。休日に出勤すれば、通常なら休日手当が付されます。しかし、休日に出勤しても、振替休日の場合は休日出勤とは扱われないため休日手当も支払われません。これに対して、代休制度の場合は、休日に出勤したら休日出勤として扱われます。そのため、当然のごとく休日手当が支払われます。このように、振替休日と代休では、休日手当の有無という点で大きな違いがあるのです。
労働基準法によれば、休日出勤を行わせた場合には、通常の35%割増で賃金を支払わなければならないと規定しています。この割増賃金が一般に休日手当と呼ばれるものです。振替休日の場合、休日と勤務日を入れ替えているだけなので、休日手当を支払う必要はなく、社員はいつもと変わらない給料で働くことになります。一方、代休の場合は休日手当が付されるため、35%の割増賃金で計算しなければなりません。つまり、代休制度で休日出勤した社員は、その日に限っていつもより高い給料で働けるということです。
割増賃金が発生するかどうかは、あらかじめ休日と勤務日が入れ替わっていたかどうかで決まります。最初から入れ替わっていれば割増賃金も発生しませんが、後から入れ替わったのであれば割増賃金が発生します。
振替休日でも割増賃金の支払いが必要なパターン
振替休日として、休日と勤務日をあらかじめ入れ替えていても、場合によっては割増賃金の支払いが必要になるケースがあります。労働基準法では、1日8時間または週40時間を超えて労働者に労働させた場合、時間外手当として25%の割増賃金を支払うよう義務付けています。たとえば、1日8時間、週40時間を就業規則で定めている会社で、第1週の休日と第2週の勤務日を入れ替えて振替休日にしたとしましょう。
この場合、第1週の総労働時間は、通常より1日分増えて勤務したので、就業規則の週40時間を超える48時間となります。労働基準法の規定に従えば、この8時間の超過分に関しては、時間外手当として25%の割増賃金を支払わなければなりません。このように、振替休日であっても、労働基準法が定める労働時間との兼ね合いで、割増賃金での支払いが必要になるパターンがあります。
休日労働の種類
振替休日や代休、また休日手当の支払いなどを理解するうえでは、休日労働の種類についても詳しく知っておかなければなりません。以下、休日労働の種類に関して、法定休日労働と法定外休日労働の違いについて解説します。
法定休日労働
法定休日とは、労働基準法35条に定められている休日のことです。この法律によれば、使用者は労働者に対して最低でも週に1回、月に4回以上の休日を与えなければならないとされています。もし、この定められた法律を破って、週に1回未満、月に4回未満の休日しか与えなかった場合、使用者は違法性を問われます。法定休日を与えることは使用者の義務であり、違反すれば6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる場合もあるので注意が必要です。この法定休日に労働者が労働を提供すれば、法定休日労働となります。
法定外休日労働
法定外休日とは、使用者と労働者との間で独自に取り決めた休日をいいます。国が定める法定休日は、あくまで最低限度の休日を保障するものに過ぎません。特に、労働基準法では法定休日だけではなく、1日8時間、週に40時間という労働時間の取り決めもあるため、法定休日だけしか休日を設定していない場合、労働基準法が定める労働時間の上限に抵触してしまう恐れもあります。
そのため、使用者と労働者が同意したうえで、就業規則などによる会社独自の休日を設けて、法定休日と労働時間の上限との差を埋めているというわけです。このように、法定休日とは別に、就業規則などで会社独自に設けた休日を法定外休日と呼びます。この法定外休日に出勤すれば、それは法定外休日労働として扱われることになります。
振替休日の期限はある?
通常の振替休日では、第1週の休日を勤務日にした場合、第2週の勤務日を休日に入れ替えるというように、休日と勤務日はなるべく近い日で設定されます。ただ、振替休日の制度では、入れ替えとなった休日に関して、法律的に定められた期限はないとされています。たとえば、第1週の休日を勤務日に振り分けたとしても、振替となる休日を必ず第2週までに入れなければならない決まりはありません。そのため、あくまで法律上は振替休日をいつ入れても良いということになっているのです。
通常、休日出勤が決定した時点で、振替休日の日程も事前に決められることになります。こうした振替休日の特性からしても、その期限はそもそも存在しないのです。一方、労働基準法第15条では請求権に関して定められています。これに則れば、振替休日は2年で消失する可能性もあります。つまり、就業規則に振替休日のルールが明示されているなら、そのルールに則って運用しなければならないということです。
振替休日の期限がないのは、あくまで労働基準法の4週間に4日という休日が確保されているからこそです。また、会社側が独自に作成した就業規則に則って振替休日の制度が運用されているなら、わざわざ国が別の法律で期限を設ける必要はないという理屈も通ります。実際、振替休日の明確な期限が存在しなくても、ほとんどの企業では1カ月以内の消化を目安に振替休日を与えるというルールが慣例化しています。
法律違反になることはある?
振替休日や代休が未消化のまま累積している場合、労働基準法違反に該当する恐れがあります。通常、割増賃金は通常の賃金と合わせて支払わなければなりません。しかし、振替休日や代休といった特殊なケースでは、25%や35%といった割増部分のみ支払い、通常の賃金は支払わないというケースが多く見られます。これは、通常の賃金を代わりに与える休日の賃金と相殺して支払おうとするために起こる現象です。
しかし、いわゆる「全額払いの原則」に従えば、まだ取得していない休日の賃金を休日出勤の賃金と相殺して割増部分のみ支払うことは違法と見なされます。このことからいっても、未消化の振替休日や代休が累積している状態は、労働基準法違反に該当してしまう恐れがあるのです。振替休日や代休は、速やかに消化するのが企業としてのあるべき姿です。もし、未消化分の振替休日や代休が累積してしまっているなら、すぐにでも日程を組んで休日を消化させたり、賃金の支払いをもって清算したりするなどの対応を取ったほうが良いでしょう。
振替休日の制度を整えましょう
振替休日は、労働者の同意を得られれば、就業規則によって会社が独自に定められます。労働環境を整備する意味でも、振替休日の制度を設けていない会社は、新しく就業規則を定めて環境を整えましょう。ただ、制度を設けた以上は、正しく休日を与え、かつ正しく賃金の計算をしなければなりません。社員が気持ちよく振替休日を取れるように、しっかりした制度を設けて、きちんと運用できるように努めましょう。
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