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2019.12.13

残業代(残業手当)の計算方法とは?正しい計算の流れや勤務体系別の計算方法を解説

労働者が時間外労働、いわゆる「残業」をした場合、会社側は労働者に対して残業代(残業手当)を支払う必要があります。残業代を支払うことは法律で規定された法定事項です。規定の残業代を支払わない場合、事業者に罰則が適用されたり労働者から未払い残業代の支払いを求められたりするので注意が必要です。

そこで、この記事では残業代(残業手当)の計算方法や支払いに関する注意点を詳しく解説します。労務担当者ではなくても、自身の残業代がきちんと支払われているか確認するために、残業代の計算の仕方をしっかり確認しておきましょう。

目次

残業とは?「所定内労働」と「法定労働時間」を押さえておこう

「残業」というと、定時を超えて働くことをイメージする方が多いのではないでしょうか。そもそも残業の定義とはなんでしょうか。

残業には、割増賃金の支払いが義務付けられている「法定外残業」と割増賃金の支払いが必要ない「法定内残業」の2種類があります。それぞれ解説する前に、「法定労働時間」と「所定労働時間」について抑えておきましょう。

法定労働時間とは

法定労働時間とは、労働基準法によって規定された労働時間のことをいい、1日8時間・週40時間以内が法定労働時間にあたります。

所定労働時間とは

所定労働時間とは事業者毎に定められた始業時間から終業時間までの時間のことです。所定労働時間は法定労働時間の8時間以内であれば会社毎に自由に決定することができます。ちなみに、所定労働時間に休憩時間は含みません。

例えば、勤務時間は10時〜17時と就業規則で定められている場合、所定労働時間は7時間となります。とはいえ、所定労働時間も8時間に設定されていることも多く、法定労働時間と所定労働時間の違いがわかりにくいケースもあります。

残業代を支払うケースは「所定労働時間を超えて働いたとき」

法定労働時間と所定労働時間の違いがわかったところで、残業代が支払われるケースについて見ていきましょう。

法定労働時間と所定労働時間の2種類の労働時間のうち、残業代が支払われるのは「所定労働時間を超えて働いたとき」です。具体的には、所定労働時間が7時間で、労働者が8時間働いた場合、1時間分の残業代が発生します。つまり、所定労働時間が法定労働時間の8時間以内でも、所定労働時間を超えた部分は残業代を支払わなければいけません。ただし、この場合は所定労働時間は超えているものの、1日8時間という法定労働時間は超えていません。このような場合の残業のことを、「法定内残業」と言います。

一方、所定労働時間も法定労働時間も超えて残業した場合、すなわち「1日8時間、1週間40時間」を超過した場合は、「法定外残業」(または「法外残業」「法定時間外労働」)と言います。法定外残業の場合は、割増賃金を支払う必要があります。

割増賃金については、労働基準法の第37条で下記のように定められています。

「使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」

割増賃金の算出には、割増率の理解が大切です。割増率については、「残業代の割増率とは?」にて詳しく解説します。

ここまでの内容をまとめると、法定労働時間でも所定労働時間でも、それぞれの規定時間を超えて働いた場合は、残業代を支払うか割増賃金を支払う必要があり、いずれも金銭の支払いが必要になる、ということになります。

法定内残業と法定外残業の違いなどについては、次の章で詳しく解説します。

残業の種類

残業には大きく分けて「法定内残業」「法定外残業」「深夜残業」の3種類があります。ここでは、残業の種類について1つ1つ詳しく解説していきます。

法定内残業

法定内残業とは、会社側が定めた所定労働時間を超えた残業のことです。所定労働時間は事業者が働く時間を自由に決定できるものですが、法定労働時間は1日8時間と決まっています。

したがって、法定労働時間を超えていなくても、所定労働時間を超えていた場合、残業代を支払わなければいけません。これを法定内残業といい、法定内残業の場合、残業代は通常の給与を基礎時給に換算した金額に残業時間を掛けた金額(基礎時給×残業時間)を支払います

法定内残業はあくまでも通常の労働時間に収まる範囲内の残業です。したがって、割増賃金の支払義務はなく、就業規則や労働契約の規定をもとに残業代を決定します。正社員やパートタイマー、アルバイトなど雇用形態は関係なく、すべての労働者に対して一律に支払う必要があるのが法定内残業の残業代です。

法定外残業

法定外残業とは、法定労働時間である「1日8時間」「1週40時間」を超える労働のことをいいます。

法定外残業の場合、残業代に一定の割増率を掛けた金額(残業代×割増率)を労働者に支払わなければいけません。法定外残業に対する残業代の割増率は、原則として賃金の1.25倍です。法定外残業時間が月60時間を超える部分については割増率が1.5倍となります。

また、法定労働時間を超える場合は、36(サブロク)協定を締結する必要があるので注意しましょう。
36協定とは、労働基準法第36条に記載されている事業者と労働者との間の協定のことをいいます。労働基準法第36条は、法定労働時間、法定休日を超えて業務を行う場合、その定める範囲において労働させることができると規定した法規です。

「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。」

参考:e-GOV 法令検索(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

事業者と労働者の間において、事前に法定外残業に対する書面を作成し、所轄労働基準監督官に届出をすることで法定労働時間を超えた労働を従業員に行わせることができ、事業者は基本的に届出をする必要がある書類になります。

36協定について詳しくは以下の記事も参考にしてください。

深夜残業

深夜残業とは、就業時間が午後22時から翌5時の時間帯に働く残業のことをいいます。

事業者によっては深夜帯に業務を行う必要がありますが、時間帯が深夜帯に当たる場合、所定労働時間及び法定労働時間に収まっていたとしても割増賃金を支払わなければなりません。深夜残業の割増率は法定外残業と同じ1.25倍です。

ただし、就業する時間が法定外残業かつ深夜残業である場合、深夜残業の割増率2割5分が法定外残業の割増率1.25倍に加算されます。つまり、「法定外残業の割増率(1.25倍)+深夜残業の割増率(0.25倍)=1.5倍」となり、通常賃金に割増率1.5倍を掛けた金額が残業代となります。

さらに、法定外残業の時間が月60時間を超えた部分に関しては割増率が1.5倍となるため、この時間が深夜残業に当たる場合、「1.5+0.25=1.75倍」の割増率です。休日労働の場合は割増率が1.35倍になります。休日労働+深夜労働の場合は「1.35+0.25=1.6倍」の割増率です。

それぞれの労働者がどの時間帯に働いているか、月に何時間の残業を行っているかによって賃金は大きく変わります。残業代の未払いとならないためにも、正確に労働時間を管理することが大切です。

この章のまとめ

① 残業には、「法定内残業」「法定外残業」「深夜残業」の3つがある。

② 法定内残業は、雇用形態に関わらず誰にでも一律に残業代を支払う必要がある。

計算式は、基礎時給×残業時間

③ 法定外残業は、残業代×割増率の割増賃金を支払う。割増率は、原則として賃金の1.25倍。ただし、法定外残業時間が月60時間を超える部分については割増率が1.5倍

④ 就業時間が午後22時から翌5時の時間帯に働く深夜残業の場合、所定労働時間及び法定労働時間に収まっていたとしても割増賃金を支払う必要がある。深夜残業の割増率は法定外残業と同じ1.25倍。ただし、就業する時間が法定外残業かつ深夜残業である場合は、割増率は1.5倍になる。

⑤ 法定外残業の時間が月60時間を超える、かつ、この時間が深夜残業(午後22時〜5時)に当たる場合の割増率は1.75倍

また、休日労働の場合は割増率が1.35倍。休日労働+深夜労働の場合の割増率は、1.6倍になる。

残業代の計算式と各要素の求め方

1時間あたりの残業代は、基本的に「1時間あたりの基礎賃金×割増率」で求めることが可能です。すなわち、1日あたりの残業代は、下記の計算式で求めることができます。

残業代=1時間あたりの基礎賃金×残業時間×割増率 

ただし、1時間あたりの基礎賃金は単純に日給を労働時間で割れば良いという訳ではありません。残業代の計算に必要な要素の求め方について詳しく解説します。

基本給と基礎賃金の違い

残業代の計算をする際に、「基本給」と「基礎賃金」という2つの要素が混合してしまうケースがあります。2つの違いを整理して、正確に残業代を計算しましょう。

基本給

基本給は労働する対価として支払う給与のベースとなる金額です。会社で働いた場合に必ず支払う金額であり、基本給には手当も含まれています。残業代の計算で使用するのは基本給ではなく、下記の手当などを抜いた基礎賃金になります。

・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・住宅手当
・結婚手当など臨時に支払われた賃金

基礎賃金

基礎賃金とは、基本給から労働基準法で定められた一部の手当やボーナスなどを差し引いた金額を指します。上記でも述べたように、残業代の計算で使用するのは基本給ではなく、基礎賃金になります。
例えば、基本給30万円のうち、家族手当を3.5万円、通勤手当を1.5万円支給されている場合、基礎賃金の計算式は「30万円ー(家族手当3.5万円+通勤手当1.5万円)=25万円」となり、基礎賃金は25万円となります。

1時間あたりの基礎賃金

毎月の勤務日数は土日、祝日の有無によって変化します。さらに、有給休暇や育児休暇といった休暇を取った場合も考慮しなければいけません。また、1時間あたりの基礎賃金を正確に求める際は、一部の手当(通勤手当や家族手当など)やボーナスを月給(基本給)から差し引く必要があります

そこで、月給制の場合、より正確に1時間あたりの基礎賃金を計算するには、「1ヶ月の基礎賃金÷1カ月の平均所定労働時間」で求める必要があります。1カ月の平均所定労働時間とは、1カ月間の所定労働時間を1年間の平均から求めた数字です。つまり、1年間で見たときの所定労働時間と勤務日数から1カ月あたりの所定労働時間を算出し、月給から除算することで1カ月の平均所定労働時間が求められます。

例えば、基礎賃金が25万円、1ヶ月の所定労働時間160時間と仮定した場合の1時間あたりの基礎賃金を求める計算式は、「1時間あたりの基礎賃金=1ヶ月の基礎賃金(25万円)÷1ヶ月の平均所定労働時間(160時間)」となり、1時間あたりの基礎賃金は1562円になります。

残業時間

残業時間は基本的に所定労動時間を超えた分を残業時間として計算します。もう少し正確に定義すれば「労働時間のうち、会社との雇用契約や就業規則によって定められた始業時間と就業時刻までの間の勤務時間」です。

ここでいう労働時間とは「労働者が使用者の指揮監督下にある時間」のことをいいます。
つまり、労働者が実質的に使用者の指揮監督下にあれば始業時刻や終業時刻前後の時間でも労働時間(残業時間)に該当します。

ただし、使用者の指揮監督下にない休憩時間や遅刻、有給休暇などは実働時間に含まれません。休憩時間であっても、使用者から指示があればすぐに作業に戻らなければならない状態(指示待ち)時間は労働時間に該当します。

通勤時間は基本的に労働時間に該当しませんが、使用者の指示により物品の移動をしている場合や用務先への移動時間などは労働時間に当たります。

割増率

割増率は、法定労働時間外で労働した時間に対して一定の利率を掛けて割増した賃金を支払うときに使う割合です。法定外労働や深夜労働によってそれぞれ割増率が決まっています。

基本的に割増率は加算されるものではなく、それぞれ規定の割合を通常の賃金に掛けて支払うものです。しかし、深夜労働に関しては割増率が加算されます。例えば、法定外労働の場合1.25倍、深夜労働も1.25倍のため、合算して1.5倍の割増率になります。

また、法定労働時間が月60時間を超える部分の割増率は1.5倍です。さらに、深夜残業にも該当する場合、1.75倍が割増率となります。2023年3月31日までは、費用負担の大きさから、この規定は小売業・サービス業・卸売業以外の事業者で、「資本金3億円以下、または常時使用する労働者が300人以下」の中小企業には適用されず、一定の基準を超えた大企業のみに適用される規定でした。しかし、2023年4月1日に法改正が実施され、月60時間超えの残業割増賃金率は、大企業・中小企業ともに1.5倍(=50%)になりました。

さらに、割増率は月の総残業時間や深夜帯、休日出勤かどうかによっても異なります。もっとも、商業・映画・演劇・保健衛生業及び接客娯楽業であり、常時使用する労働者が10人未満の事業者には特例が認められています。この特例措置では、週の法定労働時間を44時間としており、週44時間を超えない場合であれば残業代の割増は必要ありません。

勤務体系別の残業代の考え方

残業代は労働時間や時間帯だけでなく、勤務体系によっても違いが生じます。そこで、ここでは勤務体系別の残業代の考え方を解説していきます。

裁量労働制

裁量労働制とは、あらかじめ設定された時間を働いた時間とみなす勤務体系のことをいいます。通常の勤務体系と大きく違うのは「勤務時間帯が決められず出退勤が自由」という点です。

通常の勤務体系では、所定労働時間として出勤時間と退勤時間が規定されています。一方、裁量労働制には出勤と退勤の概念がありません。1日のうちどの時間帯で働いても良いのが裁量労働制です。

裁量労働制では、勤務時間は「みなし時間」として計算されます。
例えば、みなし労働時間が8時間と設定されていた場合、6時間働いた日も8時間労働として扱うということです。逆に、10時間働いた日でも8時間分の給料として計算されます。もっとも、裁量労働制でも、1カ月単位の総労働時間が法定労働時間を超えている場合、残業代が発生します。裁量労働制でも残業代は発生しますが、一般的には月の残業時間をあらかじめ規定し、固定額を支払う形式です。

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、労働者が始業時刻と終業時刻を決めることができる勤務体系のことをいいます。例えば、出勤時間を1時間早める代わり退勤時間も1時間早めたりすることが可能です。

フレックスタイム制における残業代は、月単位、または年単位で精算します。具体的には、月単位の場合、30日で171.4時間、31日で177.1時間、年単位の場合は365日で2085.7時間を超えた分は残業扱いです。したがって、1日で8時間以上働く日があっても、精算時に実働時間の合計が所定労働時間を超えていなければ残業に該当しません。
フレックスタイム制は1日の出退勤の時間を労働者の判断に委ねるだけで、労働時間をみなし時間とするわけではありません。労働時間自体は実労働時間で計算し、月単位で集計しているだけです。

一方、裁量労働制は労働時間自体をみなし労働時間とし、残業代を固定で支払う制度になります。残業時間が規定以上でも以下でも固定額が支払われる仕組みです。

変形労働時間制

変形労働時間制とは、月単位、または年単位で労働時間を調整する勤務体系のことをいいます。上記で紹介したフレックスタイム制も変形労働時間制の1つです。

変形労働時間制では、月単位・年単位で労働時間が計算されるため、1日に何時間働いたとしても月単位で見たときに法定労働時間内に収まっていれば残業代は発生しません。ただし、変形労働時間制でも、あらかじめ設定した日・週以外で法定外労働時間を超えた場合、残業代を支払う必要があります。

変形労働時間制は、勤務時間が不規則になりがちな職種や土日出勤が多い業種で積極的に採用されている勤務体系です。また、シフト制や繁忙期や閑散期がある業界でも変形労働時間制を取り入れることで、年単位で見たときには残業代が発生していないという処理をすることができます。

管理職

労働者が管理監督者の場合、労働基準法は残業代の支払いをする必要がないと規定しています。

管理監督者に残業代が支払われない理由は「経営者に近い権限を与えられているから」「始業終業時間が自由」「他の社員と比較して高い待遇・給与を受けているから」です。こうした状況であれば、労働基準法は管理監督者に残業代を支払う必要はないとしています。

しかし、実際には「名ばかりの管理職」というケースが多く見られます。管理監督者として要件を満たしていない名ばかり管理職の人は残業代が発生するので注意が必要です。名ばかりの管理職としての要件とは、「出退勤の時間を自由に決められない」「重要事項の決定会議に出席できない」「役職手当がない、もしくは少額(1~3万円程度)」などです。

名ばかりの管理職に該当するかどうかは、個別具体的な勤務状況によって異なります。労働者が名ばかりの管理職に該当するかどうかはきちんと確認しておきましょう。

年俸制

年俸制とは、年単位で労働契約を結び報酬を支払う勤務体系です。年単位で評価が行われるため、1年間で結果を出せば年俸は上がり結果が出なければ下がります。

年俸制と聞くと「残業という概念がないのでは」と思う人も多いかもしれませんが、年俸制でも基本的に残業代は支払う必要があります。いかに年俸制といえども、使用者と労働者の関係は変わらず労働基準法が適用されるからです。したがって、法定労働時間以上の労働時間がある場合、残業代が発生します。年棒制においても労働時間を把握しておくことが大切です。

ただし、年俸制でも残業代が発生しない場合があります。それは、「個人事業主と業務委託契約を結んでいる場合」です。個人事業主は税金・給与・社会保障において労働基準法では保護されないため、残業代は発生しません。

日給制

日給制とは、1日単位で金額を定めて、勤務日数に応じて賃金を支払う勤務体系のことです。日雇いの労働者や派遣労働者を使用する場合に利用される勤務体系になります。

日給制の場合でも、労働者は労働基準法によって保護されるため、所定労働時間を超えた場合、残業代を支払う必要があります。

例えば、日給1万2000円、所定労働時間が8時間として1時間残業した場合、残業代は1875円です。

計算式としては

「1万2000円÷8=1500円(時給)」
「1500円×1.25=1875円」

になります。所定労働時間である8時間を超えた1時間の残業は法定外残業となり、1.25倍の割増率が適用されます。

残業代の平均はいくら?

一般的にはどのくらいの残業が行われ、残業代はいくら支払われているのでしょうか?

厚生労働省のデータによると、一般労働者とパートタイム労働者を合わせた残業代は17,357円/月です。一般労働者のみの場合は23,997円/月、パートタイム労働者のみの場合は2,678円/月となっています。(参考:毎月勤労統計調査 令和2年分結果確報)しかし、業界や職種によっても異なるので詳しく調べていきます。

業界・職種別にみた残業代の平均額

最初に、業界ごとの1カ月あたりの残業は以下の通りです。所定外給与が残業代にあたります。

産業現金給与総額(円)所定外給与(円)所定外労働時間(時間)
鉱業,採石業等533,60427,41215.0
建  設  業584,54523,00416.3
製  造  業533,00822,14916.4
電気 ・ ガス業1,142,34750,24017.5
情 報 通 信 業835,26729,15317.2
運輸業,郵便業503,46040,22027.1
卸売業,小売業543,22614,53512.0
金融業,保険業968,16925,76013.3
不動産・物品賃貸業634,08517,95814.0
学 術 研 究 等786,94023,71716.0
飲食サービス業等298,38012,55116.6
生活関連サービス等382,1608,66210.1
教育,学習支援業975,0616,32114.8
医 療,福 祉543,43517,1857.1
複合サービス事業745,60715,4548.5
その他のサービス業420,17818,38114.5
(参考:毎月勤労統計調査 令和2年分結果確報)

残業代が最も多いのは『電気・ガス』業界で50,240円/月、最も少ないのは『教育・学習支援』業界で6,321円/月でした。上記からわかる通り業界や職種によって、残業代や残業時間が大きく左右されます。業界平均を目安に残業を見直しましょう。

残業代のおすすめ計算ツール

残業代の計算ツールとは、残業の時間を入力することで、実際の残業代を自動計算してくれるツールです。おおまかな残業代を算出してくれる簡易的なものから、正確な計算をしてくれるツールまでさまざまです。また、勤務体系に合わせた計算ツールも存在するので、有効活用しましょう。

簡易的な計算ツール「Keisan

法定時間外労働、法定休日、深夜労働、月60時間超の割増の有無を入力することが可能です。残業代計算用の作られた電卓のような仕組みになっています。固定残業代制の方にも対応しており、こちらから利用可能です。

細かく計算可能なエクセルシート「給与第一

裁判所でも活用されており、訟訴資料としても利用できるほど正確です。入力する手間はかかりますが、漏れなく正確に残業代を計算したい人にはおすすめの計算シートです。

みなし残業とは?基本給と固定残業代の関係

最近では残業代の計算などを効率化する手段として、みなし残業の導入を検討する企業も増えています。みなし残業は、実際の残業時間とは関係なく、残業を一定時間行なったとみなして、賃金を支払う制度です。毎月一定の残業時間を想定し、固定残業代として従業員に支給するため、基本給に残業代が含まれていると勘違いされている場合がありますが、基本給と固定残業代は分かれており、基本給に含まれているわけではありません。

みなし残業だから残業代は出ないと勘違いしてしまう場合がありますが、想定していた時間を超過した場合、企業は残業代を支払わなければなりません。この制度のもとで働く場合はきちんと押さえておきましょう。

このみなし残業を取り入れる場合には、基本給と残業代の設定を明確に区別する必要があるなど、一定の条件を満たしていないと違法になる場合があるため、導入の際には注意が必要です。

みなし残業について詳しくは以下の記事も参考にしてください。 

労働者から残業代の未払いを請求された場合の対応方法

労働者から未払いの残業代の請求があった場合、まず残業代や労働時間の計算が正しいかどうかを確認しましょう。

請求されている残業代が本当に発生しているのか、精査する必要があります。労働者の残業代計算方法は合っているのか、労働時間の計算は合っているのかを事業者側でも再計算し残業代が発生しているのであれば、支払いに対応しなければいけません。

また、計算する際には「そもそも労働者に割増賃金を請求する権利があるのか」も確認しておきましょう。残業代の請求権は労働基準法第150条によって、2年間で時効消滅すると規定されています。消滅時効が成立している残業代に関しては、時効の援用をすることで支払い義務を免れます。

もし、残業代の支払いに関して当事者間で話し合いをしても解決しない場合は、弁護士に相談しましょう。

企業側が把握しておきたい残業代に関する注意点

残業代に関する労働者と企業側のトラブルは年間で1000件以上(100万円以上の残業代請求があった企業)も発生しています。残業代に関するトラブルを回避するため、ここでは残業代の支払いに関する注意点を紹介します。

残業代の未払いは労働基準法違反にあたる

労働者は労働基準法によって雇用・給与・税金・社会保障などを保障、保護されています。事業者は労働基準法を遵守しなければならず、規定を破った場合、罰則の適用や罰金が科せられる場合もあります。

残業代の未払いは労働基準法違反にあたり、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されるため注意が必要です。労働基準法違反は会社の信用にもかかわるため、未払いがないように正しく労働時間や残業代の計算を行いましょう。
残業代の未払いが発覚しても、いきなり罰則や罰金が科せられるわけではありません。労働者からの申告や相談を元に、所轄の労働基準監督署から是正勧告が行われます。この是正勧告を受けても改善が見られない場合、事業者の逮捕や罰金が科せられるので、是正勧告を受けた場合は速やかに対応しましょう。

無断で残業する労働者を出さない

労働者の中には残業代を目的として、無断で残業をする人がいます。事業者側が把握していない部分での残業をさせてしまうと後々トラブルになります。

経営に関しても、人件費が高騰してしまうため無駄なコストがかかってしまうでしょう。そのため、就業規則等で「残業は会社側からの指示があった場合のみ」など事前に規定を定めておく必要があります。

残業はあくまでも「監督者の指揮監督下にあった場合」に発生するものです。事前にしっかりと取り決めをしておき、無断で残業する労働者を出さないように注意しましょう。

残業代は原則1分単位で計算する

事業者によっては残業代に関して「10分未満、15分未満は切り捨て」などと規定している会社もあります。しかし、原則的に残業代は1分単位で発生します。日々の労働時間について10分未満や15分未満は切り捨てるという計算は、残業代の未払いになってしまうので注意が必要です。

ただし、1カ月の時間外労働時間を計算する際に1時間未満の端数が生じた場合、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることは認められています。

日々の労働時間に関して10分未満や15分未満を切り捨てて処理しないようにしましょう。

残業代は正しく計算して必ず支払おう!

残業代に関するトラブルは事業者にとっては経営リスクの1つです。長期化すればするほど支払わなければならない残業代も高額になります。さらに、状況によっては罰則の適用や罰金を科せられる場合もあるため注意が必要です。

今回紹介した残業代の計算方法を理解し、忘れずに社員に残業代を支払いましょう。細かな点も見逃さず、正確に残業代を支払うことが長期的に見てトラブルを防ぐ最善の方法です。

そして、残業代を正確に支払うためには、従業員の労働時間を正しく管理することが重要です。 

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