2019.12.13

残業代を正しく求めよう!計算方法や勤務体系別の残業代の考え方

残業代を正しく求めよう!計算方法や勤務体系別の残業代の考え方

労働者が時間外労働、いわゆる「残業」をした場合、会社側は労働者に対して残業代を支払う必要があります。残業代を支払うことは法律で規定された法定事項です。規定の残業代を支払わない場合、事業者に罰則が適用されたり労働者から未払い残業代の支払いを求められたりするので注意が必要です。そこで、この記事では残業代の計算方法や支払いに関する注意点を詳しく解説します。

残業代の仕組みについて

労働時間には大きく分けて「法定労働時間」と「所定労働時間」の2種類があります。法定労働時間とは、労働基準法によって規定された労働時間のことをいい、1日8時間・週40時間以内が法定労働時間にあたります。一方、所定労働時間とは事業者毎に定められた始業時間から終業時間までの時間のことです。所定労働時間は法定労働時間の8時間以内であれば会社毎に自由に決定することができます。ちなみに、所定労働時間に休憩時間は含みません。

2種類の労働時間のうち、残業代が支払われるのは「所定労働時間を超えて働いたとき」です。具体的には、所定労働時間が7時間で、労働者が8時間働いた場合、1時間分の残業代が発生します。つまり、所定労働時間が法定労働時間の8時間以内でも、所定労働時間を超えた部分は残業代を支払わなければいけません。さらに、法定労働時間の8時間を超えた場合には、割増賃金を支払う必要があります。

残業代の割増率とは?

一定の残業には割増率と呼ばれる利率を掛けた金額を労働者に支払う必要があります。割増率とは、労働者が残業をしたとき、増額分の賃金を求めるために使用する割合のことです。残業代の割増率は、労働基準法によって細かく規定されています。事業者は法定労働時間以上(1日8時間、週40時間)の労働をした労働者に対して、一律に支払う義務があるのです。

原則として、法定時間外労働の割増率は通常賃金の1.25倍と定められています。法定労働時間内の賃金は通常換算の基礎時給で計算し、法定労働時間外の労働時間に割増率を掛けた金額を賃金に加算する形です。割増率は月の総残業時間や深夜帯、休日出勤かどうかによっても異なります。もっとも、商業・映画・演劇・保健衛生業及び接客娯楽業であり、常時使用する労働者が10人未満の事業者には特例が認められています。この特例措置では、週の法定労働時間を44時間としており、週44時間を超えない場合であれば残業代の割増は必要ありません。

残業の種類

残業には大きく分けて「法定内残業」「法定外残業」「深夜残業」の3種類があります。ここでは、残業の種類について1つ1つ詳しく解説していきます。

法定内残業

法定内残業とは、会社側が定めた所定労働時間を超えた残業のことです。所定労働時間は事業者が働く時間を自由に決定できるものですが、法定労働時間は1日8時間と決まっています。したがって、法定労働時間を超えていなくても、所定労働時間を超えていた場合、残業代を支払わなければいけません。これを法定内残業といい、法定内残業の場合、残業代は通常の給与を基礎時給に換算した金額に残業時間を掛けた金額を支払います。法定内残業はあくまでも通常の労働時間に収まる範囲内の残業です。したがって、割増賃金の支払義務はなく、就業規則や労働契約の規定をもとに残業代を決定します。正社員やパートタイマー、アルバイトなど雇用形態は関係なく、すべての労働者に対して一律に支払う必要があるのが法定内残業の残業代です。

法定外残業

法定外残業とは、法定労働時間である「1日8時間」「1週40時間」を超える労働のことをいいます。法定外残業の場合、残業代に一定の割増率を掛けた金額を労働者に支払わなければいけません。法定外残業に対する残業代の割増率は、原則として賃金の1.25倍です。法定外残業時間が月60時間を超える部分については割増率が1.5倍となります。また、法定労働時間を超える場合は、36(サブロク)協定を締結する必要があるので注意しましょう。

36協定とは、労働基準法第36条に記載されている事業者と労働者との間の協定のことをいいます。労働基準法第36条は、法定労働時間、法定休日を超えて業務を行う場合、その定める範囲において労働させることができると規定した法規です。事業者と労働者の間において、事前に法定外残業に対する書面を作成し、所轄労働基準監督官に届出をすることで法定労働時間を超えた労働を従業員に行わせることができます。この協定のことを通称「36(サブロク)協定」と呼び、事業者は基本的に届出をする必要がある書類になります。

深夜残業

深夜残業とは、就業時間が午後22時から翌5時の時間帯に働く残業のことをいいます。事業者によっては深夜帯に業務を行う必要がありますが、時間帯が深夜帯に当たる場合、所定労働時間及び法定労働時間に収まっていたとしても割増賃金を支払わなければなりません。深夜残業の割増率は法定外残業と同じ1.25倍です。ただし、就業する時間が法定外残業かつ深夜残業である場合、深夜残業の割増率2割5分が法定外残業の割増率1.25倍に加算されます。つまり、「法定外残業の割増率(1.25倍)+深夜残業の割増率(0.25倍)=1.5倍」となり、通常賃金に割増率1.5倍を掛けた金額が残業代となります。

さらに、法定外残業の時間が月60時間を超えた部分に関しては割増率が1.5倍となるため、この時間が深夜残業に当たる場合、「1.5+0.25=1.75倍」の割増率です。休日労働の場合は割増率が1.35倍になります。休日労働+深夜労働の場合は「1.35+0.25=1.6倍」の割増率です。それぞれの労働者がどの時間帯に働いているか、月に何時間の残業を行っているかによって賃金は大きく変わります。残業代の未払いとならないためにも、正確に労働時間を管理することが大切です。

残業代の計算式

基本的な残業代は「残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率」で求めることが可能です。1時間あたりの基礎賃金とは所定労働時間を時給で換算したときの賃金のことをいいます。計算式は「月給÷(1日の所定労働時間×1カ月の勤務日数)」です。具体例としては、「月給25万円÷(所定労働時間8時間×1カ月の勤務日数20日)=1時間あたりの基礎賃金:1562円」となります。1時間あたりの基礎賃金に残業時間と割増率を掛けた金額が残業代です。例えば、深夜残業なしで1カ月の法定外残業が30時間、1時間あたりの賃金が1704円だった場合、「30時間×1704円×1.25=6万3900円」が残業代になります。深夜残業や休日残業、月の法定外残業が60時間を超える場合、割増率が1.25倍から1.5倍や1.6倍となる計算です。

残業代の計算に必要な各要素の求め方

ここでは、残業代の計算に必要な各要素の計算方法を紹介していきます。上記では細かな部分を省略して解説しましたが、実際の計算方法はもう少し複雑です。正確な残業代を計算するためにも、きちんと把握しておきましょう。

1時間あたりの賃金

上記で1時間あたりの賃金の計算式を紹介しましたが、毎月の勤務日数は土日、祝日の有無によって変化します。さらに、有給休暇や育児休暇といった休暇を取った場合も考慮しなければいけません。そこで、より正確に1時間あたりの賃金を計算するには、「月給÷1カ月の平均所定労働時間」で求める必要があります。1カ月の平均所定労働時間とは、1カ月間の所定労働時間を1年間の平均から求めた数字です。つまり、1年間で見たときの所定労働時間と勤務日数から1カ月あたりの所定労働時間を算出し、月給から除算することで1カ月の平均所定労働時間が求められます。

例えば、月給が18万円、1カ月の平均所定労働時間が176時間の場合、「18万÷176時間=1023円」が1時間あたりの賃金です。ただし、注意点として1時間あたりの賃金を正確に求める際は、一部の手当やボーナスを月給から差し引く必要があります。差し引く手当・ボーナスは、通勤手当や住宅手当、家族手当などです。その他にも別居手当、子女教育手当、臨時に支払われた賃金などが該当します。

残業時間

残業時間は基本的に所定労動時間を超えた分を残業時間として計算します。もう少し正確に定義すれば「労働時間のうち、会社との雇用契約や就業規則によって定められた始業時間と就業時刻までの間の勤務時間」です。ここでいう労働時間とは「労働者が使用者の指揮監督下にある時間」のことをいいます。

つまり、労働者が実質的に使用者の指揮監督下にあれば始業時刻や終業時刻前後の時間でも労働時間(残業時間)に該当します。ただし、使用者の指揮監督下にない休憩時間や遅刻、有給休暇などは実働時間に含まれません。休憩時間であっても、使用者から指示があればすぐに作業に戻らなければならない状態(指示待ち)時間は労働時間に該当します。通勤時間は基本的に労働時間に該当しませんが、使用者の指示により物品の移動をしている場合や用務先への移動時間などは労働時間に当たります。

割増率

割増率は、法定労働時間外で労働した時間に対して一定の利率を掛けて割増した賃金を支払うときに使う割合です。法定外労働や深夜労働によってそれぞれ割増率が決まっています。基本的に割増率は加算されるものではなく、それぞれ規定の割合を通常の賃金に掛けて支払うものです。しかし、深夜労働に関しては割増率が加算されます。例えば、法定外労働の場合1.25倍、深夜労働も1.25倍のため、合算して1.5倍の割増率になります。

また、法定労働時間が月60時間を超える部分の割増率は1.5倍です。さらに、深夜残業にも該当する場合、1.75倍が割増率となります。もっとも、この規定は一定の基準を超えた大企業のみに適用される規定です。小売業・サービス業・卸売業以外の事業者で「資本金3億円以下、または常時使用する労働者が300人以下」の中小企業には月60時間を超える部分の割増率は適用されません。

勤務体系別の残業代の考え方

残業代は労働時間や時間帯だけでなく、勤務体系によっても違いが生じます。そこで、ここでは勤務体系別の残業代の考え方を解説していきます。

裁量労働制

裁量労働制とは、あらかじめ設定された時間を働いた時間とみなす勤務体系のことをいいます。通常の勤務体系と大きく違うのは「勤務時間帯が決められず出退勤が自由」という点です。通常の勤務体系では、所定労働時間として出勤時間と退勤時間が規定されています。一方、裁量労働制には出勤と退勤の概念がありません。1日のうちどの時間帯で働いても良いのが裁量労働制です。裁量労働制では、勤務時間は「みなし時間」として計算されます。

例えば、みなし労働時間が8時間と設定されていた場合、6時間働いた日も8時間労働として扱うということです。逆に、10時間働いた日でも8時間分の給料として計算されます。もっとも、裁量労働制でも、1カ月単位の総労働時間が法定労働時間を超えている場合、残業代が発生します。裁量労働制でも残業代は発生しますが、一般的には月の残業時間をあらかじめ規定し、固定額を支払う形式です。

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、労働者が始業時刻と終業時刻を決めることができる勤務体系のことをいいます。例えば、出勤時間を1時間早める代わり退勤時間も1時間早めたりすることが可能です。フレックスタイム制における残業代は、月単位、または年単位で精算します。具体的には、月単位の場合、30日で171.4時間、31日で177.1時間、年単位の場合は365日で2085.7時間を超えた分は残業扱いです。したがって、1日で8時間以上働く日があっても、精算時に実働時間の合計が所定労働時間を超えていなければ残業に該当しません。

フレックスタイム制は1日の出退勤の時間を労働者の判断に委ねるだけで、労働時間をみなし時間とするわけではありません。労働時間自体は実労働時間で計算し、月単位で集計しているだけです。一方、裁量労働制は労働時間自体をみなし労働時間とし、残業代を固定で支払う制度になります。残業時間が規定以上でも以下でも固定額が支払われる仕組みです。

変形労働時間制

変形労働時間制とは、月単位、または年単位で労働時間を調整する勤務体系のことをいいます。上記で紹介したフレックスタイム制も変形労働時間制の1つです。変形労働時間制では、月単位・年単位で労働時間が計算されるため、1日に何時間働いたとしても月単位で見たときに法定労働時間内に収まっていれば残業代は発生しません。ただし、変形労働時間制でも、あらかじめ設定した日・週以外で法定外労働時間を超えた場合、残業代を支払う必要があります。変形労働時間制は、勤務時間が不規則になりがちな職種や土日出勤が多い業種で積極的に採用されている勤務体系です。また、シフト制や繁忙期や閑散期がある業界でも変形労働時間制を取り入れることで、年単位で見たときには残業代が発生していないという処理をすることができます。

管理職

労働者が管理監督者の場合、労働基準法は残業代の支払いをする必要がないと規定しています。管理監督者に残業代が支払われない理由は「経営者に近い権限を与えられているから」「始業終業時間が自由」「他の社員と比較して高い待遇・給与を受けているから」です。こうした状況であれば、労働基準法は管理監督者に残業代を支払う必要はないとしています。

しかし、実際には「名ばかりの管理職」というケースが多く見られます。管理監督者として要件を満たしていない名ばかり管理職の人は残業代が発生するので注意が必要です。名ばかりの管理職としての要件とは、「出退勤の時間を自由に決められない」「重要事項の決定会議に出席できない」「役職手当がない、もしくは少額(1~3万円程度)」などです。名ばかりの管理職に該当するかどうかは、個別具体的な勤務状況によって異なります。労働者が名ばかりの管理職に該当するかどうかはきちんと確認しておきましょう。

年俸制

年俸制とは、年単位で労働契約を結び報酬を支払う勤務体系です。年単位で評価が行われるため、1年間で結果を出せば年俸は上がり結果が出なければ下がります。年俸制と聞くと「残業という概念がないのでは」と思う人も多いかもしれませんが、年俸制でも基本的に残業代は支払う必要があります。いかに年俸制といえども、使用者と労働者の関係は変わらず労働基準法が適用されるからです。

したがって、法定労働時間以上の労働時間がある場合、残業代が発生します。年棒制においても労働時間を把握しておくことが大切です。ただし、年俸制でも残業代が発生しない場合があります。それは、「個人事業主と業務委託契約を結んでいる場合」です。個人事業主は税金・給与・社会保障において労働基準法では保護されないため、残業代は発生しません。

日給制

日給制とは、1日単位で金額を定めて、勤務日数に応じて賃金を支払う勤務体系のことです。日雇いの労働者や派遣労働者を使用する場合に利用される勤務体系になります。日給制の場合でも、労働者は労働基準法によって保護されるため、所定労働時間を超えた場合、残業代を支払う必要があります。例えば、日給1万2000円、所定労働時間が8時間として1時間残業した場合、残業代は1875円です。計算式としては「1万2000円÷8=1500円(時給)」「1500円×1.25=1875円」になります。所定労働時間である8時間を超えた1時間の残業は法定外残業となり、1.25倍の割増率が適用されます。

労働者から残業代の未払いを請求された場合の対応方法

労働者から未払いの残業代の請求があった場合、まず残業代や労働時間の計算が正しいかどうかを確認しましょう。請求されている残業代が本当に発生しているのか、精査する必要があります。労働者の残業代計算方法は合っているのか、労働時間の計算は合っているのかを事業者側でも再計算し残業代が発生しているのであれば、支払いに対応しなければいけません。

また、計算する際には「そもそも労働者に割増賃金を請求する権利があるのか」も確認しておきましょう。残業代の請求権は労働基準法第150条によって、2年間で時効消滅すると規定されています。消滅時効が成立している残業代に関しては、時効の援用をすることで支払い義務を免れます。もし、残業代の支払いに関して当事者間で話し合いをしても解決しない場合は、弁護士に相談しましょう。

企業側が把握しておきたい残業代に関する注意点

残業代に関する労働者と企業側のトラブルは年間で1000件以上(100万円以上の残業代請求があった企業)も発生しています。残業代に関するトラブルを回避するため、ここでは残業代の支払いに関する注意点を紹介します。

残業代の未払いは労働基準法違反にあたる

労働者は労働基準法によって雇用・給与・税金・社会保障などを保障、保護されています。事業者は労働基準法を遵守しなければならず、規定を破った場合、罰則の適用や罰金が科せられる場合もあります。残業代の未払いは労働基準法違反にあたり、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されるため注意が必要です。労働基準法違反は会社の信用にもかかわるため、未払いがないように正しく労働時間や残業代の計算を行いましょう。

残業代の未払いが発覚しても、いきなり罰則や罰金が科せられるわけではありません。労働者からの申告や相談を元に、所轄の労働基準監督署から是正勧告が行われます。この是正勧告を受けても改善が見られない場合、事業者の逮捕や罰金が科せられるので、是正勧告を受けた場合は速やかに対応しましょう。

無断で残業する労働者を出さない

労働者の中には残業代を目的として、無断で残業をする人がいます。事業者側が把握していない部分での残業をさせてしまうと後々トラブルになります。経営に関しても、人件費が高騰してしまうため無駄なコストがかかってしまうでしょう。そのため、就業規則等で「残業は会社側からの指示があった場合のみ」など事前に規定を定めておく必要があります。残業はあくまでも「監督者の指揮監督下にあった場合」に発生するものです。事前にしっかりと取り決めをしておき、無断で残業する労働者を出さないように注意しましょう。

残業代は原則1分単位で計算する

事業者によっては残業代に関して「10分未満、15分未満は切り捨て」などと規定している会社もあります。しかし、原則的に残業代は1分単位で発生します。日々の労働時間について10分未満や15分未満は切り捨てるという計算は、残業代の未払いになってしまうので注意が必要です。ただし、1カ月の時間外労働時間を計算する際に1時間未満の端数が生じた場合、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることは認められています。日々の労働時間に関して10分未満や15分未満を切り捨てて処理しないようにしましょう。

残業代は正しく計算して必ず支払おう!

残業代に関するトラブルは事業者にとっては経営リスクの1つです。長期化すればするほど支払わなければならない残業代も高額になります。さらに、状況によっては罰則の適用や罰金を科せられる場合もあるため注意が必要です。今回紹介した残業代の計算方法を理解し、忘れずに社員に残業代を支払いましょう。細かな点も見逃さず、正確に残業代を支払うことが長期的に見てトラブルを防ぐ最善の方法です。

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