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2022.5.17

360度評価の失敗事例とは?組織の弊害にならない人事評価のコツ

360度評価制度を導入する日本企業は増えており、注目を集めている人事評価制度の1つです。一般的な評価制度は1人の評価者が評価を行いますが、360度評価では複数の社員が評価を実施します。

人事評価制度は企業全体の運営にも影響する重要な施策であり、導入には慎重な検討が欠かせません。「360度評価に弊害はあるのか」「どうやったら失敗を防げ無駄なく運用できるのか知りたい」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

本記事では、360度評価の導入を考えている方向けに、360度評価の代表的な失敗例を5つピックアップしました。また、360度評価が失敗する理由や対策、360度評価を導入するメリットなど、成功に役立つ情報を包括的にご紹介しています。

360度評価(多面評価)のよくある失敗5つ

360度評価を導入しても、評価を良くするために社員同士が忖度しあったり、評価内容を受け留めきれず落ち込み業務に支障をきたしたりと失敗に陥る企業も少なくありません。制度を上手く機能させるために、失敗の共通点を理解しましょう。本章では、よくある失敗のパターンとして、5つを取り上げ解説します。

1.評価内容にショックを受けて落ち込む

第三者からの指摘に打たれ弱い社員が傷つき、業務に悪影響を及ぼすことがあります。360度評価は自覚していない自身の長所・短所を明確にできる点がメリットですが、評価内容の中には社員にとって耳の痛い内容が含まれていることもあるでしょう。

フィードバックそのものに慣れていない人や、自分の欠点を直視したくない人にとって評価内容を聞くのはショックが大きいかもしれません。

辛辣なフィードバックに傷つき、「全員が敵に見える」「疑心暗鬼になってしまった」など、評価者と被評価者の信頼関係に溝が生まれることもあります。

また、適切な評価ではなく、「実力もないのに偉そうにしている」などただの悪口を書き込まれ落ち込み、モチベーション低下を引き起こしたという事例もあります。フリーコメントを設ける際は、書く内容についてあらかじめ説明し、悪口などを書き込まないよう工夫することも重要です。

2.悪い評価を受けないよう忖度してしまう

次によくある失敗例が、評価期間中に好感度をアップしようと忖度するケースです。具体的には好感度を上げるために部下を一切叱らなくなる、相手の顔色をうかがう、派閥を作って周りから嫌われないようにするなどです。

ほかにも、「私の評価を良く書いといてね」と、被評価者が評価者に対して根回しをし、正しい評価内容が反映されなくなるケースもあります。

評価制度の目的や意図をしっかり説明して理解を促し、評価基準を明確することや、評価者に研修を行って適切な評価ができるよう取り組むなどの措置を講じましょう。

3.評価内容を活用できず費用対効果が悪くなる

360度評価は多面的に評価を集約するため、従来の評価制度よりもデータ数が膨大になりがちです。せっかくデータを得ても人事担当者の理解が浅く、分析できなかったり、システムを活用せず効率の悪い方法で制度を運用したりすると、費用対効果が上がってしまいます。

360度評価に限りませんが、人事制度は導入後すぐに効果が出るものではありません。「すぐに効果がない」からと運用を止めてしまうと、導入コストを回収できない事態に陥るでしょう。

360度評価の仕組みを理解し、データを一元管理する仕組みや分析ツールの導入など、人事担当者の負担を減らして効率良く運用することが大切です。

4.現場から反発が出てしまう

360度評価は上司に加え、同僚、部下など複数人が評価者となる手法です。今まで評価に参加していなかった社員も評価者となるため、業務の負担が増えたと感じる人も出てくるでしょう。

「人事から評価を丸投げされた」と現場から反発を買うことも少なくありません。「何のために評価するのか分からない」という反発心から、おざなりな評価内容を記載する社員が出るリスクもあります。

360度評価では、現場の協力が必要不可欠です。現場を巻き込んで組織が一丸となり、一人ひとりが評価に参加するという認識を持ってもらうことが大切です。

ほかにも、360度評価の評価内容に納得ができないという反発も生まれるかもしれません。

360度評価の内容に社員がショックを受けたり、納得感が得られないと課題を抱えている場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。

5.現場に業務負荷がかかる

現場の社員と、評価制度を運用する人事担当者の負担が増加し、正しく運用ができず失敗することも珍しくありません。

リーダーや管理職など評価に慣れている人ならともかく、一般の社員にとっては不慣れな評価を行うストレスや、物理的な業務量の増加から精神的・肉体的な負荷がかかります。過度の業務負荷は疲労や不満を募らせる要因となり、主観的・感情的な評価を行うリスクを高めるでしょう。

前述した通り、360度評価はほかの評価制度よりもデータ数が多く、集計や分析などの多くの工数が発生します。360度評価を円滑に運用するには、制度内容そのものに加え、実際に制度を運用できる環境が整っているかにも目を向けることも重要です。

360度評価の失敗理由と対策

ここまで代表的な失敗例を取り上げましたが、そもそもなぜ360度評価が失敗するのでしょうか。失敗する理由を理解することが、360度評価を成功させる近道です。本章では失敗の原因と防止策を確認していきましょう。

360度評価の特徴や導入目的を伝えられていない

そもそも360度評価とは何か、何のために行うのかを社員が知らないと、運用側と現場側で温度差が発生してしまいます。

もし360度評価の効果が今一つだと感じている場合は、導入目的と導入背景、人事担当の考え、360度評価のメリット・デメリットを事前に丁寧に説明する機会を設けているか振り返ってみましょう。説明会をしても疑問や不満などを感じる社員はいるはずです。説明会後に相談窓口を設け、上司も質疑応答などを行い、制度の理解を深めるよう配慮しましょう。

評価結果が給与や賞与に反映される

360度評価の結果だけを直接給与に反映することも、代表的な失敗の理由として挙げられます。評価がお金につながると考えれば、誰しもが忖度し、良い評価を得られるよう表面的なコミュニケーションをするのは極めて自然な行動です。

360度評価の構造上、忖度がしやすい環境になることを踏まえて、評価制度を設計しましょう。お金に連動しないよう、評価制度と賃金制度をどのように紐づけるか慎重に社内で検討し、忖度が加速しない環境を整備するのがポイントです。

人事システムが活用されていない

失敗する理由の3つ目は、人力に頼った制度運用をしていることです。人事評価制度をエクセルや紙で管理している企業は少なくありません。

エクセルは紙よりもグラフ作成やメール添付などが容易です。しかし、共同アクセスができないため複数人が同時に確認できない、部署によってフォーマットが異なる、集計項目も多くマクロ組むのに労力がかかるなど効率の悪い面があります。

アナログ的な処理では、膨大なデータを処理するときに入力ミスや計算ミスといったヒューマンエラーを起こし、制度の運用そのものが難航する確率が高いです。

360度評価は設問数が多く、評価者の数だけ分析項目も増えるため、業務工数の削減やミスの防止、データの集計、分析などを一元的に管理する人事システムの活用の検討がおすすめです。

運用後にフィードバックをしていない

導入や評価の実施に集中しすぎてフィードバックをおろそかにすると、360度評価は失敗しやすいです。運用にあたり、現場の業務負担を調整するフォローや、フィードバックなどを何も実施していないと、人事部に対して不満を抱く人が増えてしまうでしょう。

また評価制度の相談に乗り切れていなかったり、適切なタイミングでフィードバックができていないと、評価内容がずさんになり制度が機能しなくなる恐れがあります。

フィードバックの実施は、評価者に「自身の行った評価が活かされている」と実感してもらい、制度の重要性を理解してもらう機会でもあります。何のために評価したか分からないと社員が感じることのないよう、評価を終えたら早い段階でフィードバックを実施しましょう。

360度評価を失敗しないためには?3つの対策を紹介

人事評価制度は企業の発展を支える重要な施策の1つであり、失敗するとモチベーション低下を引き起こし、業績や生産性にマイナスの影響を与えるきっかけになります。

ここからは、失敗を未然に防いで360度評価を機能させるために、効果的な対策を3つ取り上げ説明しました。

導入目的や意図を浸透させる

1つ目のポイントは、社員全員に360度評価を導入した目的や意図を理解してもらうことです。経営者や人事担当者がはりきって制度を作り導入しても、運用する段階で現場から反発され難航するケースは多いです。

360度評価の概要や特徴を伝えることはもちろん必要ですが、1番重要なのは導入目的や意図を社員がきちんと理解し、自ら積極的に評価制度に参加しようと動機付けることです。

360度評価の運用前に形式的な社員説明会を行うだけでは、十分な説明をしたとは言えません。説明会に加えて上司が追加で説明し、定期的に360度評価の導入目的と意図を発信し続けましょう。

評価者研修とフィードバックを行う

評価する人向けの研修を行い、適宜フィードバックを行うことも重要なポイントの1つです。制度を効果的に運用するには、説明書の配布や口頭説明を1度行うだけでは不十分です。

評価者が評価に不慣れなケースだと、バイアスがかかったり主観が入ったりと、正しい評価を行うことが難しいでしょう。また集めた評価は改善点を見つけて成長するのに役立つため、本人にフィードバックして情報の価値を活かすことも大切です。

ほかにも、相談窓口を設けて制度そのものや評価内容に対する疑問、不満を適宜解消できる機会を設け、制度の設計以外の面で運用が上手くいく仕組みを作りましょう。

人事システムを活用する

膨大なデータを活かすためには人事システムの導入も有効な対策です。人事システムのメリットは以下の通りです。

  • 同時アクセスが可能のため、評価者が好きなタイミングで情報を入力できる
  • 評価の分析機能を使えが、グラフや資料の作成が簡単に行える

システムなしで評価制度を行うと、メールでファイルのやり取りをし、集約する手間が発生します。また入力を人事担当者だけで行うと入力や計算ミスが発生し、正確なデータが得られないリスクもあるでしょう。

評価制度の設計や運用は複雑で工数も多いです。煩雑な作業を減らし効率良く運用するために、人事システムの導入は欠かせません。

人事システムによっては360度評価に特化したシステムもあるので、気になるシステムがあれば無料で試しに使ってみるなどして、使用感を確認するのがおすすめです。

【おさらい】360度評価と特徴や導入メリットとは

ここまで、360度の失敗例や失敗する理由、成功に向けた対策などを説明しました。最後に、360度評価を導入する目的やメリット、注意点など基本的な項目を確認し、自社に合う制度か検討するのに役立てください。

より詳しく360度評価の概要を知りたい方にはこちらの記事がおすすめです。

360度評価とは

360度評価とは、部下や同僚、取引先の関係者なども含めた、仕事上のさまざまな段階で関わる人たちに聞き取りを行い評価する人事評価制度を指します。多面的に評価することで上司だけでは気付けなかった被評価者の長所・短所を発見でき、客観的な評価ができるため納得感を高めやすい評価制度とされています。

近年で仕事への価値観が変化し、終身雇用による年功序列型の評価から、成果主義型の評価が主流です。多様化する働き方(フレックスタイム制、在宅など)や人材不足により、評価制度の見直しが余儀なくされ、360度評価に関心が集まっています。

360度評価の導入目的

360度評価の本質は人材マネジメント、人材育成にあります。労働力人口が不足して人材の採用が困難となっている近年では、今働いている社員を育成して優秀な人材として活躍できるよう施策を講じることが企業の課題となっています。

前述した通り、360度評価は直属の上司や、1人の評価者だけでは気付けない、被評価者の良い点・悪い点を見出すことが可能です。

複数の人からの多面評価による適切な評価は、社員のモチベーションを向上させ、意欲的に仕事へ取り組み、成長を促せ、人材育成にも効果を発揮すると期待されています。

360度評価ならではのメリット

360度評価のメリットは大きく分けて以下の4つが挙げられます。

  • 客観性のある評価を行える(総合的な視点で評価が可能)
  • 周囲から見られている意識により、自発的な気付き、改善、成長の促進
  • 公平な評価により納得度が高まり、モチベーションアップにつながる
  • コンピテンシーについて広げるきっかけにもなる

上司だけが行う評価は、上司が見えていなかった側面が考慮されない傾向にありました。公平さに欠ける評価は社員に不信感を与えてしまい、モチベーションを下げ、離職につながるケースもあります。

360度評価では、評価者の視点が偏ることがないため、客観性のある評価を実現できます。社員の納得度が高まればモチベーションアップも期待できるでしょう。

コンピテンシーとは行動特性を指します。360度評価で改善点を認識することで「どのような行動を取れば業績や成果を高められるか」、気付くきっかけになる点も、360度評価を導入するメリットの1つです。

必ずおさえたい注意点

360度評価の設計・運用には以下の点も押さえておくと良いでしょう。

  • 好き嫌いの投票、主観や愚痴をぶつける制度ではないと理解を促す
  • 本来、評価にかかわるべきでない、関係性の浅い人を評価者に組み込まないこと
  • 設問数は絞る
  • 人事システムを活用しなければすぐに業務負担過多になる

360度評価に悪口や誹謗中傷などを書き込む社員が出るなど、制度の主旨を理解していない社員が現れることも珍しくありません。評価者が主観を排除し適切な対応ができるよう、企業全体で制度の重要性や目的を伝えて理解してもらう取り組みを行いましょう。

また、360度評価はお互いを日々監視する制度ではありません。見られている意識が悪い方に働きすぎるとストレスや忖度の要因となるため、制度が間違った方向に運用されないよう人事部は意識しておくことが大切です。

しかし360度評価によって人事の負担も増えるため、人事システムを導入するながら組織全体で人事評価制度に打ち込むという視点を持つことが、効果を最大限に引き出すポイントです。

あわせて知りたい評価制度とは

評価制度とは、人事評価制度を構成する要素の1つで、等級制度、報酬制度の3つと連動しています。評価制度には今回ご紹介した360度評価のほかにも、目標管理制度やコンピテンシー評価が有名です。

本章では目標管理制度やコンピテンシー評価の概要や360度評価の違いについて解説していきます。

目標管理制度(MBO)

目標管理制度(Management by Objectives)とは、個人が具体的な目標を設定して達成度合いを数値化し、評価を行う手法です。評価者は複数ではないことや、評価で重要視しているポイントが360度評価とは異なります。

目標管理制度では達成しやすい甘い目標を設定しやすくなるため、上司は目標が個人に合っているか都度確認する必要があります。目標達成そのものだけではなく、プロセスも評価することで、部下の成長を促進するのに役立ちます。

目標管理制度(MBO)の仕組みやメリットはこちらでご紹介しています。

コンピテンシー評価

コンピテンシーとは業務で高い成果を発揮している人が持つ行動特性を言い、行動特性を洗い出して評価制度の基準に落とし込み、社員を評価する仕組みをコンピテンシー評価と呼びます。例えば、栄養職であれば「プレゼンテーション能力」「目標達成への執着心がある」などです。

コンピテンシー評価は、効率の良い即戦力の育成に役立ち、評価しやすいといった点がメリットとして挙げられます。ただし、コンピテンシーそのものを設定するのが難しく制度設計が容易ではない点はデメリットと言えるでしょう。360度評価では、理想となる人物像の選定や成果の高い社員の行動特性などは行わず、評価の基準が大きく異なっています。

コンピテンシー評価の基本的な概要や評価シートの書き方は、こちらで詳しく説明しています。

まとめ

今回は360度評価の失敗例をメインに解説しました。失敗例を理解し対策を練っておくことは、360度評価を効果的に運用するのに重要なポイントです。

360度評価を導入したい方は、人事システムもあわせて検討してみましょう。バックオフィスは多種多様な情報を管理するため複数のシステムを導入する企業が多いですが、なるべく1つのシステムで一元管理することをおすすめします。

労務やマネジメントなどを1つのプラットフォームでつなげる人事システム、CYDAS PEOPLEはご存知でしょうか。CYDAS PEOPLEは、最新のデータを集約・活用でき、使いやすいシンプルなUIといった魅力を兼ね備えています。煩雑な業務効率化に役立つ人事システムで360度評価の運用にも効果を発揮するでしょう。

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