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2022.5.17

人事評価の目的とは|評価基準や人事評価制度の種類を紹介

人事評価制度とは、従業員の仕事ぶりや能力、パフォーマンスを評価し、給与や役職に反映する仕組みのことを意味します。人事評価を正しく運用すれば、正当な評価を行えるだけでなく、従業員の適性や能力に合わせた人材配置につなげることができます。人事評価に携わる立場として、実施する目的や運用方法、指標の設定方法などを改めて把握しておきたいという方もいらっしゃるでしょう。

そこで本記事では、人事評価の目的や評価基準、人事評価制度の主な種類を紹介します。記事の後半では、人事評価制度を設定するステップや運用のポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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人事評価制度とは

人事評価制度とは、従業員の能力や会社への貢献度を評価し、報酬や役職などに反映される仕組みのことを指します。ちなみに、「人事評価」とは、企業が期待する人物像や役割を明確化し、優れた成果を上げて企業の利益に貢献してくれた従業員を評価する方法のことです。人事評価と人事評価制度は同じような意味合いで使用されることが多いですが、厳密に言うと、人事評価制度は、企業が人事評価を公平かつ円滑に行うために定める必要がある仕組みのことを指します。

人事評価制度では、人事評価を実施する期間や評価方法、評価基準、報酬などが設定されています。内容は企業によって異なり、実施するタイミングは、四半期や半期、1年ごとに行われるのが一般的です。

人事評価制度は民間企業だけでなく、国家公務員や地方公務員に対しても行われています。国家公務員の人事評価制度については、「国家公務員法」によって定められており、人事評価は「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価」(国家公務員法第18条の2第1項)と定義されています。

人事評価制度を構成する要素

企業が人事評価制度の見直しや策定を行う際、どのような仕組みにすればいいのか分からない方もいらっしゃるかもしれません。人事評価制度の具体的な内容は、企業が独自に設定するものですが、主に「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の3つの要素によって構成されています。それぞれ詳しく解説します。

等級制度

等級制度とは、企業が従業員に期待している役割などを等級ごとに分けて階層化し、役職などの等級別に、権限移譲や業務範囲を決めるための制度です。等級制度の具体的な項目を提示すれば、職務に就く従業員は企業から求められている能力や役割などを正確に知ることができます。また、次の目標として目指している職務に必要な能力などを確認できるので、従業員は将来を見据えた行動を取りやすくなるでしょう。

等級制度を設定する際は、以下に挙げる視点を持つことが重要です。

  • どのような仕事を期待しているのか
  • 職務を遂行する上で必要なスキルを持っているか
  • 企業における立場を理解し、どのような影響を与えてほしいのか

ちなみに、等級制度には3種類あり、日本の大企業では「職能資格制度」の導入が主流です。一方で、ベンチャー企業などでは、「職務等級制度」や「役割等級制度」を導入するケースもあります。それぞれの違いは次の通りです。

職能資格制度

従業員の職務遂行能力を判定し、そのレベルに応じて等級を定める方式。職務遂行能力が向上すれば給与は上がるが、役職は連動しない。従業員や従業員の能力を主軸にした制度。

職務等級制度

職務ごとに業務内容や難易度を定義し、各ポジションに対応する給与を定める方式。ジョブ・ディスクリプションと呼ばれる文書を基準にする。職務を基準とした制度。

役割等級制度

従業員に期待する役割(ミッション)に応じて等級(グレード)を定める方式。職能資格制度と職務等級制度を組み合わせたハイブリッド型。

職務等級制度については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

関連記事:【人事関係者必見】職務等級制度とは?等級制度の種類や作り方など紹介

評価制度

評価制度とは、企業が独自に設定した行動指針に従って、従業員の能力や企業への貢献度を評価するための制度です。評価制度は、等級別に異なる評価項目を設定する必要があり、上述した等級制度で決定した等級を元に評価が行われます。また、後述の報酬制度と連動させている企業が多いことが特徴です。

主な評価対象は、業務における行動や成果です。評価制度の採用により、業績や成果などの数値化できる評価基準だけでなく、業務に対する姿勢や考え方、職務における成長度などの目に見えづらい評価基準を組み合わせた、公平な人事評価を行うことができます。例えば、営業部門であれば、契約件数や売上などの定量的な目標と、提案力や交渉力といった定性的な目標を組み合わせた評価も可能です。

良い面を評価するのと同時に、達成できなかった目標や課題に対する適切なフィードバックを行い、従業員の成長につながる運用をすることも重要です。

関連記事:【目標設定】定量目標とは?定性目標との違いや概要について

報酬制度

報酬制度とは、評価制度の結果により、従業員の給与や賞与などを決めるための制度です。報酬は、等級制度で決定した等級に基づき、従業員一人ひとりの金額や手当の有無などが決まります。

報酬制度は、等級別の給与・賞与を定める制度ではありますが、必ずしも金銭的な報酬が反映されるとは限らず、社内報で活躍を取り上げるなど非金銭的な報酬も存在します。給与や賞与の金額が上がることはなくても、より難易度の高い業務を任せたり、上のポストを目指すための研修への参加・教育の機会を与えたりするなど、成長するためのきっかけやチャンスを提供するケースもあります。

納得できる評価を得られない場合、従業員のモチベーションやエンゲージメントが低下する可能性もあるので、報酬や成長の機会などをうまく活用することが大切です。

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人事評価制度の目的とは

企業が人事評価制度を導入する目的は、「企業のビジョンや方針の明示」「従業員に期待する行動・役割の明示「人材育成の促進」「組織活性化・モチベーションの向上」「人材配置の最適化」「公平な処遇・査定の決定」の6つです。

人事評価に携わる場合、自社がどのような目的で人事評価を行うのかをしっかりと理解しておくことが大切です。人事評価の目的を把握せずに進めてしまえば、従業員の評価を見誤ってしまう恐れがあるでしょう。以下では、それぞれの目的について詳しく解説します。

【人事評価制度の6つの目的】

  • 企業のビジョンや方針の明示
  • 従業員に期待する行動・役割の明示
  • 人材育成の促進
  • 組織活性化・モチベーションの向上
  • 人材配置の最適化
  • 公平な処遇・査定の決定

企業のビジョンや方針の明示

人事評価の目的の一つは、企業のビジョンや方針を明確に示すことにあります。単に従業員の仕事ぶりを評価するだけのものではありません。企業が従業員に対して何を期待しているのか、企業としてどのような将来を描き、方向性を定めているのか、などの企業のビジョン・方針を共有する際に重要な役割を担っています。

人事評価が重要な役割を担っているとはいえ、「業界ナンバーワンになる」などの漠然としたビジョンを従業員に伝えても、日々の業務に具体的な落とし込みを行うことは難しいでしょう。そこで重要となるのが、評価基準です。

企業のビジョンや方針を評価基準に盛り込むことで、ビジョンを実現するために必要な従業員像をイメージしやすくなります。

また、従業員は評価基準を通して、経営者との認識を合わせることも可能です。つまり、人事評価は、経営者が従業員に向けたメッセージと捉えることができます。

従業員に期待する行動・役割の明示

人事評価は、企業が従業員に期待する人物像を具体的に示すことができます。上述した企業のビジョンを実現するには、従業員一人ひとりの意識を向上させることが重要です。

従業員がビジョンや方針を意識することで、自分が企業のためにどのような役割を果たし、どのような行動に移せばいいのかを明示できます。「自主的に行動できる従業員になってほしい」や「積極的にアイデアを提案できる人材を目指してほしい」などが、その一例です。

一方、従業員は会社からの評価や判断基準を通して、自分が目指すべき従業員像やビジョン・方針を意識した行動を取りやすくなります。人事評価の判断基準に従った行動を取れる従業員が増えれば、企業のビジョンを実現しやすくなるでしょう。

人材育成の促進

人事評価をどのように活かすのかによって、人材育成を効率良く進めることができます。個別に適切なフィードバックを行えば、従業員の仕事に対する意欲向上を目指すことも可能です。

人事評価は、評価基準に基づいた評価項目が設定されています。実際に評価されることで昇給・昇格などの具体的な結果につながると理解できれば、従業員は自身の評価を高めるために、意識や行動を変える努力をするようになるでしょう。

従業員の能力向上も期待できるので、結果的に、企業が求める従業員の育成を促進することができます。従業員の仕事への意欲が高まることで、エンゲージメントの向上が期待でき、今後のキャリアプランづくりにつながる良いきっかけとなるでしょう。

組織活性化・モチベーションの向上

人事評価が適切に行われ、従業員が評価に見合った処遇を与えられれば、個々のモチベーションアップにもつながるでしょう。

とくに近年は、キャリアプランの形成やワークライフバランスの充実などが重視される傾向にあり、処遇の改善だけでは従業員のモチベーションの維持・向上を図ることは難しくなっています。

モチベーションを向上させるためには、従業員が納得感を得やすい人事評価を行うことが重要です。人事評価に納得できれば、従業員は仕事にやりがいを見出し、能力・スキルの向上を目指すことができるでしょう。結果的に、組織の活性化につなげることができます。

人材配置の最適化

人事評価は、人材配置の最適化に有効です。人事評価の結果から、従業員の能力や成果などを客観的に判断できるようになるため、適切な人材配置を行うことができます。

具体的には、若手従業員の中から次世代リーダーの候補者を選定し、重要な役職を経験させることも可能です。また、これまでの評価結果を分析することで、埋もれていた優秀な人材を上のポジションに登用するなどの大胆な人材配置も実現できます。

人事評価は、個々の能力や経験などを考慮した部署や役職を見直すことで、現状維持のためではなく、個々が成長するための環境づくりや、人材配置の最適化を図るのに有効です。

公平な処遇・査定の決定

人事評価の目的は、従業員の処遇・査定を公平性を保ちながら決めることにあります。正当性のある人事評価を実施し、評価結果を元に給与・賞与や昇進・昇格、異動などの処遇が決まることで、公平性が保たれた組織改革を実現できます。これまで国内企業では、年功序列による人事評価が主流で、勤続年数や年齢などで給与や昇進などが決まるのが一般的でした。

しかし、従来の人事評価では年齢が若い従業員や社歴が浅い従業員の中に優れた人材がいても、能力に見合った処遇を与えることができません。

近年は、年功序列による人事評価から、能力や成果などの実力主義による人事評価に加え、行動や人間性に関する人事評価を導入する企業が増えています。従業員はスキルや結果に見合った正当な対価を受け取ることができるため、納得感を得やすいでしょう。

人事評価における3つの評価基準・項目

人事評価制度の運用には、明確な人事評価の基準を策定する必要があります。人事評価の評価基準・項目は、主に「成果評価」「能力評価」「情意評価」の3つの要素で構成されます。もちろん、人事評価の評価基準や評価項目は、企業が自由に設定することもできますが、柱となる基準を抑えておくと独自のルールも決めやすくなるでしょう。3つの評価要素についてそれぞれ詳しく解説します。

成果評価(業績評価)

成果評価とは、評価する対象期間を定め、期間中の業績などの目標達成度を評価するための基準の一つで、業績評価とも呼ばれます。企業から与えられた役職や役割に対し、従業員がどのような成果を出したのか、を評価します。

評価される成果の例は、企業における課題の解決や改善、売上などの目標の達成などです。成果評価は、達成すべき目標が明確化されているので、従業員は日々の業務に取り入れやすいといったメリットがあります。

小さな成功体験を積み上げていく中で、より難易度の高い目標を設定する重要性を従業員に理解させることができ、業績アップに対する意識を強化させるのに効果的です。ただし、短期的な成果が評価対象になるため、中長期的な目標や育成などの進捗を評価したい場合は向いていません。

成果評価では、「業績目標達成度」「課題目標達成度」「日常業務成果」の3つの項目が設定されます。それぞれの違いは次の通りです。

業績目標達成度

業績目標達成度とは、業務における目標をどの程度達成できたのかを評価するためのものです。人事評価の対象期間に、従業員が業務を行う上で目指すべき目標を設定し、評価期間が終わったときに、立てた目標の達成度を検証します。

課題目標達成度

課題目標達成度は、業務上の課題を上司もしくは自分で設定し、対象期間中にどのくらい解決・改善ができたのかを評価する指標です。達成度が高いほど、課題と真剣に向き合い、成長できたと評価できます。

日常業務成果

日常業務成果とは、業績に直結しない日々の業務を評価するためのものです。

能力評価

能力評価とは、業務の遂行に求められる能力や、職務に就いたことで習得したスキル・経験などを評価するための項目です。どのような能力やスキルを評価基準に取り入れるかは、職種や業務の内容によって異なります。厚生労働省では、職業能力評価シートを公開しています。

前提として、能力評価では、業務を行う上で従業員に期待する能力やスキル、知識を持っているかが評価の対象になるため、個々の実績によって左右されることはありません。そのため、とくに、業績のように数値化しやすい評価基準を活用できないバックオフィスの従業員の評価に向いています。ただし、従業員がスキルや能力などを習得するまでに、長い時間がかかるため、短期的な成果を追い求める意識が弱まりやすいです。

能力評価だけでなく、上述した成果評価とのバランスを調整することで、納得感のある人事評価を実施できるでしょう。

能力評価の主な項目は、次のような能力・スキルが挙げられます。

企画力

企画力とは、新しい商品やサービスの企画・開発に携わる従業員だけに求められる能力ではありません。既存の仕組みや方法とは異なるアイデアの提案も評価対象になります。

実行力

実行力とは、設定した目標や計画を実践するための行動を起こす能力のことです。机上の空論で終わらず、行動に落とし込めているかが評価のポイントになります。

知識

知識とは、学歴や学力とは関係がなく、業務で活かすことができる知識やノウハウのことです。

育成力

育成力は、部下の価値観や考え方を考慮してアドバイスを行い、企業が求める従業員像に導く能力を指します。指導者よりも伴走者に近いイメージです。

改善力 

改善力は、課題に対してアイデアで改善するために求められる能力です。

情意評価

情意評価とは、勤務態度や業務に取り組む姿勢などを評価するための項目です。業績や能力だけを評価対象にすると、評価項目に該当しない部署や従業員を正当に評価できず、公平性を保てなくなるでしょう。

人事評価に、情意評価に関する項目を採用すれば、成果評価や能力評価では評価されづらい人間性などを評価対象にすることができます。

仮に、成果評価や能力評価で高い評価を受けた従業員でも、勤務態度が悪かったり、やりたくない仕事を他人に押し付けたりするなどの問題がある場合は、相当の評価になるでしょう。

情意評価は、数値化できない部分の評価に向いていますが、評価者の主観が反映されやすいので、一定の評価項目を設定する必要があります。

また、経営コンサルティング会社識学が運営するメディア「識学総研」によると、仕事において「感情」はゴール達成を妨げる要因になりうると指摘しており、情意評価(定性評価)ではなくとにかく定量評価で評価するといった切り口もあるという考えを示しています。自社にとって情意評価が有益であるかしっかりと吟味しましょう。

参考:株式会社識学 「感情」と仕事を切り離し生産性増大| 0からわかる『感情の切り離し方』

情意評価で設定される項目には、次のようなものが挙げられます。

責任性

責任性とは、与えられた業務を最後まで遂行する意志の強さや、行動に伴う結果を指します。業務を迅速に完了させるのも大切ですが、抜けや漏ればかりでは本当の意味で業務を終えたことにはなりません。一定の水準をクリアできる仕事を期日までに行っているかどうかが、評価を分けるポイントになります。

積極性

積極性とは、業務を積極的に行う姿勢のことです。作業効率を上げるために何ができるのか、などを常に考えて仕事をしているかを見極めましょう。

協調性 

協調性は、チームのことを第一に考えた行動を取れるかどうかを評価するための項目です。困っているメンバーのサポートや、チーム全体の評価を上げるための行動などが評価対象になります。

人事評価の手法例

ここまで、人事評価制度の概要と評価基準についてご紹介してきました。しかし、人事評価制度と一口に言っても、MBOやOKR、360度評価、コンピテンシー評価など、さまざまな種類の評価方法があります。

企業に合った手法を選び、正しい方法で評価するために、ここでは、次の3つの代表的な評価制度をご紹介します。

MBO(目標管理制度)

MBOとは、「Management By Objectives」の略で、日本語では「目標管理制度」「目標による管理」などと言われています。1954年にアメリカの経営学者P.F.ドラッカーが著書「現代の経営」で提唱した概念で、経営目標や部門目標を踏まえて個人目標を設定し、目標の達成度を評価します。

MBOは、設定した目標に対する達成度がどのくらいかを評価するため、成果評価を実施する際に向いている評価手法です。MBOにおける目標は、企業目標に関連しており、個々の役割や能力などに合わせたものを設定する必要があります。

ただし、達成度の低さと評価を結びつけてしまうと、従業員は達成しやすい目標を立てる、目標の設定を目的にする、などの状況になりやすいです。

従業員によって達成しやすい目標が設定されている場合は、以下のページで解説している運用のポイントを参考にして、適切な対応を取りましょう。

関連記事:目標管理制度(MBO)とは|メリットや失敗例、運用ポイントを紹介

OKR

OKRとは、「Objectives and Key Results」の略で、企業が定める目標と、その企業で働く従業員の目標を紐付ける目標管理の手法です。日本語では、「目標と主要な成果」と直訳されることがあります。

OKRは、組織としての目標設定を部門単位へ、そして部門単位から個人単位まで落とし込むことで、最終的に企業の目標達成を実現することが特徴です。また、MBOは100%達成できそうな目標を設定するのに対し、OKRでは60〜70%程度達成できそうな難易度が高い目標を設定します。評価期間は1ヶ月単位など比較的短期間であるため、仮に目標が高すぎた場合でも再設定しやすいのがメリットです。

OKRは、先述したMBOと比較されることが多いです。OKRとMBOの違いについては、以下の記事で紹介しています。

関連記事:MBOと OKR|それぞれの意味と違いを比較

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、業務を遂行する能力や行動特性(コンピテンシー)を備え、高い成果を出すための行動が伴っているかを評価するための手法です。従業員が持つ能力を客観的に評価できることから、人事評価の3つの評価項目のうち、能力評価の実施に向いています。

コンピテンシー評価の特徴は、高い成果を上げ、業務を遂行する上で優れた能力を持つ従業員に共通している行動特性を、評価基準の主軸にしていることです。どのような行動特性が評価基準に適しているのかは、企業の業種や職種によって異なります。

評価基準を設定する際は、以下のページを参考にし、優秀な従業員の行動特性を見誤らないように注意しましょう。

関連記事:人材活用で自社改革を!コンピテンシー評価の概要から設計例まで解説

360度評価

360度評価とは、上司だけでなく、同僚や部下などの多面的な視点を取り入れた評価手法のことです。主に、勤務態度や業務に取り組む姿勢、チームワークなどを評価することから、情意評価を実施する際に適しています。

360度評価は、従来の上司による評価のほかに、複数人からの評価や意見が反映されるため、客観性や公平性のある人事評価を行うことが可能です。業績や成果などでは評価できない人間性などを評価できます。

異なる立場による評価を行えるメリットがある一方で、評価者の主観が反映される可能性も高い点に注意が必要です。

他人を評価することに慣れていない従業員が参加する場合もあるので、以下のページを参考にして、フィードバック例や記載方法などを明確にし、評価者に共有しておきましょう。

関連記事:【人事必見】360度評価とは?「意味ない」と言わせない導入ポイント

ノーレイティング

「評価をしない」という意味のノーレイティングとは、人事評価のランク付けを行わない評価方法のことです。

ただし、何も評価しないという意味ではありません。一般的な人事評価で行われている数値やランクによる評価ではなく、あくまでも上司と従業員がコミュニケーションを取りながら評価を決定します。

従来の人事評価では、企業が設定した評価基準に従って従業員をランク付けするのが一般的な方法でした。しかし、ノーレイティングは、従業員自らが目標を設定し、上司との個別面談の際に、立てた目標が適正なものであるかを一緒に確認します。

個別面談の時間だけでなく、上司は必要に応じて従業員にフィードバックを共有しながら、評価を決定するのが、ノーレイティングの仕組みです。

ノーレイティングについてはこちらの記事でも解説しています。

関連記事:新時代の評価制度!話題のノーレイティングの概要・メリットとは?

バリュー評価

バリュー評価とは、企業が大切にしている価値観(バリュー)に基づき行動規範を設定し、「どの程度実践できたのか」を評価する制度です。バリュー評価を採用することで、企業の価値観や求める人物像を浸透させる効果が期待できます。

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人事評価制度の設定ステップ

人事評価制度を設定するには、評価方法の種類や評価基準、実施するタイミング・対象期間など、さまざまな内容を考える必要があります。人事評価制度をスムーズに導入するためには、効率良く進めていくことも重要です。

人事評価制度を設定するための全体の流れを、5つのステップに分けて詳しく解説します。

1.目的を設定する

人事評価制度を設定するには、まず導入する目的を明確にすることが大切です。目的を定めずに、「多くの企業で導入しているから」といった曖昧な理由で導入してしまうと、失敗する可能性が高まります。

人事評価制度は、業種や職種、求める従業員像などによって目的が異なるため、企業に合った評価方法などを選ぶ際は、目的を明確化することが重要です。

他社の導入事例を参考にするのも一つの方法ですが、どのような目的のために人事評価制度を導入するのかを社内で話し合い、決めておきましょう。

2. 評価制度を検討する

人事評価制度の導入目的が定まった後は、具体的な評価制度について話し合います。導入する評価制度を決める際は、企業のビジョンや理念などの実現に近づけられるものかどうかを比較検討するようにしましょう。

企業に適した評価制度を選ぶためには、従業員を対象にアンケート調査を実施し、現状の課題や問題、要望などを把握しておくことも大切です。従業員の意見を参考にして、継続して運用できる評価制度を選びましょう。

3. 評価項目を決定する

評価制度の検討後は、具体的な評価項目を決める段階に入ります。評価項目は、職種や役職、業務内容などによって異なるので、それぞれの能力や業務範囲、権限の大きさなどを元に、決めましょう。

役職などによって評価項目を分けることで、個々の業務内容などが反映された評価や処遇を与えやすくなります。従業員が人事評価制度に納得感を持つことができるので、継続的な運用を行うことができるでしょう。

4. 従業員へ周知する

人事評価制度の設定が完了したら、社内に周知させます。従業員へ周知する方法として、説明会などの開催が有効です。

説明会では、評価内容が処遇にどのように反映されるのか、どのような点が評価されるのかなどを解説し、運用する前に従業員の疑問を解決しておく必要があります。

同時に、評価する側を対象にした研修を開催することも大切です。研修を実施して評価基準や評価方法を確認しておき、公平かつ客観的な評価を行える体制をつくりましょう。

5. 評価・フィードバックを行う

従業員に周知した後は、実際に人事評価制度を運用し、従業員を評価します。

例えば、目標が達成されたかどうかを評価するのではなく、目標に対してどのくらい達成できたのか、目標達成に取り組む中でどのくらい成長できたのか、などの達成度合いにフォーカスすることが重要です。

評価後は、個別面談を実施し、上司から適切なフィードバックを行います。評価者は、評価結果の事実だけを伝えるのではなく、従業員の成長やモチベーションの向上につながるフィードバックを心がけましょう。

人事評価制度を運用する5つのポイント

企業が人事評価制度を運用するには、いくつかのポイントを考慮することが重要です。

【人事評価制度の運用ポイント5つ】

  • 評価基準を見える化する
  • 具体性を持たせる
  • フィードバック面談を実施する
  • 評価エラーを認識する
  • 基本的に絶対評価で運営する

上記の5つのポイントを参考にすることで、人事評価制度の運用をスムーズに行えるでしょう。それぞれのポイントをくわしく解説します。

1.評価基準を見える化する

人事評価制度を運用する前に、すべての従業員に対し、評価基準や評価項目、方法、実施期間などを明確に示して、内容を理解するまで説明するようにしましょう。

人事評価制度の運用をスムーズに行うには、評価する側だけでなく、評価される側にも評価基準を説明し、理解を深めてもらうことが大切です。評価される側の従業員が、評価基準を理解していない場合、評価結果に不満を感じ、上司や企業に対する信頼を失うリスクが高まります。

また、従業員の疑問を解消しないまま人事評価制度の運用を開始すれば、人事評価そのものへの不信感につながる可能性があります。「目標はどのように設定すればいいのか」「どのような行動が評価に反映されるのか」などの従業員の疑問を解消してから運用を開始することが重要です。

2.具体性を持たせる

人事評価制度の運用を成功させる上で、従業員に具体性を持たせることも大切なポイントです。具体的なイメージが持てないと、人事評価制度を導入しても従業員に受け入れてもらえません。

人事評価制度を受け止めることができない従業員の中には、企業に貢献したいという意欲が削がれたり、業務へのモチベーションが下がってしまったりするケースもあるでしょう。いつまでに・何を・どの程度の行動を行えるようになると評価に反映されるのか、具体的な理由も合わせて従業員に説明することが重要です。

また、人事評価の評価者と評価される側の従業員が共通の認識を持つことができなければ齟齬が生まれ、制度に対する不信感を生んでしまうでしょう。人事評価制度を運用する際は、評価側と評価される側が同じ認識を持てているか、という点も確認しておきましょう。

3.フィードバック面談を実施する

人事評価を行った後は、評価される側の従業員に対し、上司からフィードバックをする機会を設けることが大切です。評価後にフィードバックを行うことで、従業員は評価結果に対する納得感を得やすくなります。

フィードバック面談では、評価結果の事実を伝えるだけでなく、なぜこのような評価になったのか、次期の人事評価で評価を高めるためにはどのようなことを意識すればいいのか、などの具体的なアドバイスも添えることが重要です。

具体的なフィードバックを行えば、従業員が今後の目標を設定する際に役立ちます。また、中間面談などの定期的なフィードバックを行う機会を作ることで、従業員は現状を客観的に分析できるようになるでしょう。

4.評価エラーを認識する

人事評価を行う中で、評価エラーが発生するリスクを認識しておくことも重要です。評価エラーとは、評価者が無意識もしくは意図的に、主観による評価を行うことで、人事評価の公平性や客観性が失われてしまう状態を指します。

人が人の評価を行うため、評価エラーが発生するリスクは避けられないでしょう。

評価エラーを起こさないためには、評価者が評価エラーの存在を理解し、発生のリスクを減らすための対策を学ぶ必要があります。

具体的には、評価者を対象にしたトレーニングの実施や、研修の開催などが有効です。また、評価エラーが起きることでどのようなリスクが高まるのか、具体例を上げて説明するようにしましょう。

5.基本的に絶対評価で運営する

人事評価制度は、絶対評価で運用することを原則にしましょう。絶対評価を基準にすることで、人事評価制度の公平性を保つことができます。

絶対評価とは、設定された数値目標やノルマなどの達成率で、従業員をランク別に評価する方法です。個々のスキルや実績、経験などを元に評価を行うことができ、適正に評価できる特徴があります。

一方、相対評価は、あらかじめランクごとに人数枠を設け、従業員を振り分けていく評価方法です。優れた実績を持つ従業員が多くいる場合でも、人数枠に収めなければならないため、実績などに見合った正当な評価が下されない可能性が考えられます。

ただし、中小企業は、絶対評価のみで運用すると、原資をコントロールできなくなる恐れがあります。絶対評価での運営が難しい場合は、相対評価も組み合わせて評価するようにしましょう。

目的を明確にして効果的な人事評価の運用を

人事評価制度を継続的に運用するためには、目的を明確化し、評価者や評価の対象者が同じ認識を持つことが重要です。人事評価の3つの構成要素や人事評価制度の3つの評価基準・項目を理解した上で、公平性や客観性を保つことができる方法や基準を設定しましょう。

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