チャレンジする市役所を目指して 行政サービス向上のために評価を効率化
300名の評価シートをメールベースでやりとり。煩雑さからこなすだけの評価制度になっていた
ーこれまでの評価方法とその課題について教えてください。
三木さん
MBO評価を年に1回実施しており、評価制度自体は10年以上続いているものになりますが、現在のスタイルは平成30年度から正規職員全員に対して実施しています。
システム導入以前の評価は、Excelでまとめてメールで送付するという流れ。そのため、目標作成、難易度の調整、最終評価の内容確認等、目標管理制度のステップごとに、関連するいくつものエクセルシートが、人事課と各部署を行き来していました。300名超えの職員のシートを漏れなく管理するだけでも大変ですし、修正があると一つのシートが何度も行き来することも。とにかく煩雑なフローでした。
藤原さん
市役所には、行政職や技能労務職、保育士といった多様な職種のメンバーがいます。評価には、実績評価と能力評価がありますが、異なる職種を同じシートで評価することはできないため、それぞれの職種にあった評価シートを作らなければなりません。その上で、新人や管理職等、役職ごとにシートが分かれています。ですから、評価シートが何種類もあるわけです。
三木さん
Excelファイルの作成や権限管理、記入漏れのチェック等は全て人力なので、ミスもありましたし、時間もかかっていました。また複数部署の進捗状況を俯瞰してみることもできず、人事課からの催促もうまく機能しないことがありました。
藤原さん
現場管理職にとっては、一人ひとりの成長という視点が持てず、評価のフローをミスなくこなすことに意識が取られてしまいます。人事課にとっても「今回の評価をいかにスムーズにやり切るか」ということ自体が目的になってしまい、大きな課題に感じていました。本来の評価制度の目的は、職員の成長や行政サービスの向上、ひいては「加東市に住む住民の方々に、より良いサービスを提供する」ことにあります。
目的達成のために重要なのが、人事を含む全職員にとっての評価工数削減でした。
ー評価する側もされる側も、ただこなすだけの制度になってしまっては意味がないですよね。
藤原さん
作業の煩雑さでいっぱいいっぱいになってしまうと、人事評価自体がネガティブな印象になりかねません。職員に「人事評価は前向きな変化の機会」と捉えてもらうためにも、システムの導入は不可欠でした。
確認工数やミスを大幅に削減、直感的な操作でスムーズにシステム化
ーシステムの選定基準を教えてください。
藤原さん
自治体に特化したシステム提供をしているベンダーさんも多くいます。しかし、民間のノウハウが取り入れられたものにも大変魅力を感じていました。
そうした前提のもと「今運用している評価制度を最もスムーズにシステム化し、業務効率をあげられるシステムはどこか」という基準で選定した結果、CYDASに決定しました。
ー導入後、職員の方からいただいた声や、人事としてシステムを利用した感想を教えてください。
三木さん
システムに慣れていない職員も多くいるので、導入する前は「人事課への問い合わせが増えてしまうかな」と心配していたんです。しかし、いざ導入してみると、操作に関する問い合わせはほとんどありませんでした。管理者側の人事としても、CYDASの直感的な操作性に助けられています。
また、問い合わせがあった時には「画面上でエラー表示になっているところはありませんか」と聞くことで、すぐに原因を特定して解決することができました。
Excelで評価をしていた時には、ウェイトの計算が違ったり、そもそもの入力項目がずれていたりと、原因の特定から一苦労。いちいちExcelファイルを送ってもらって、一つひとつ内容をチェックし精査して…。そもそも内容にミスがあるかも、ファイルを開けてチェックするまでわかりません。一方、CYDASだと入力ミスがあればエラーが出ますよね。人事の確認工数も減りましたし、ミスも少なくなりました。問い合わせがあったとしても、エラーの内容を確認してもらうことでスムーズに指示が出せます。
入力や承認を促すリマインドメールが飛んだりといった機能も、便利に使えています。
行政にも人材の流動性。時代に合わせて変化する育成の仕組み
ー採用や育成の仕組みについて教えてください。
藤原さん
基本的に、毎年10名程度の新卒メンバーを採用しています。行政職の職員は、オールマイティな人材であることが求められるので、入職して10年ほどの時間をかけて、様々な行政サービスの窓口経験や管理業務をローテーションで経験してもらいます。行政の管轄領域は、本当に幅広いんです。土木や工事等、インフラに関わるところもあれば、福祉や教育、税金に至るまで、行政サービスという点では一貫していても、求められる知識やスキルは異なります。だからこそ、20代の10年間で多様な分野を経験してもらい、30代以降になると、自分の適性を鑑みて特定の分野を極めていく。これが、今まで一般的だった人材育成のパターンでした。
しかし今は、ちょうど団塊の世代の方が退職し、在職10年未満の職員が約半数になっています。この状態でこれまでと同じようなローテーションを回していくと、現場の混乱は避けられないので、この制度は見直す時期かなとも思っています。
三木さん
公務員というと、定年まで勤め上げるものというイメージをお持ちではないでしょうか。今でも他の業界に比べると途中で辞める方は少ないですが、自己実現を果たすために別の道を考える方、ライフステージの変わり目となる方など、様々な選択をされる方がいます。
人材の流動性が高まり、今までのような育成の仕組みでは対応しきれなくなっていくからこそ、システム活用は必須だと思います。
目標の記録をシステム上に残して、自身の成長実感を得る
藤原さん
育成に関連した話でいうと、期初には目標立てのための面談を実施しているのですが、最近では、その記録をCYDAS上に残しています。
これまで、面談記録は紙やエクセルで管理していたので、本人はもちろん上司や人事も過去の面談記録を見ることはしていませんでした。システムを入れたことで、自分のこれまでの考えや頑張りを簡単に振り返ることができるようになりました。
職員からの反響はこれからですが、過去の記録を見返すことで、自身の成長に気づく機会にもなるのかなと期待しています。
また、先にも述べたとおり市役所は異動の多い組織です。だからこそ、異動時に情報が分断されることなく「○○さんは、△△な考えを持った人です」といった申し送りにCYDASを活用できればと思います。
ゼネラリストとスペシャリスト、複線型人事の実現へ
藤原さん
複線型人事という言葉をご存知でしょうか。これは、企業が複数のキャリアの道筋を用意し、社員が自らの意思で方向性を選択できる人事制度のあり方です。
広く浅く多様な業務経験を活かしてマネジメントをしていくゼネラリストと、特定の分野で資格や専門性を活かして働きたいというスペシャリスト。組織には、両方がいてしかるべきですが、これまでの市役所では「いかにゼネラリストを育成するか」に重きが置かれてきました。しかし、最近では各自治体で複線型人事を推進する流れができており、加東市においても来年以降に実施する計画を立てています。
その際には、CYDASのアンケート機能や自己申告機能を活用しながら、一人ひとりの職員が持つ意思を確認し、異動計画や育成計画に活用できたらと思っています。
チャレンジとアイデアがキーワード。これからの公務員像とは
ーこれからの加東市を作っていくために、人事として実現したいことを教えてください。
藤原さん・三木さん
市役所は地域住民の生活の中心にある場所。だからこそ、柔軟性やスピード感は確実に必要です。職員側も新しいアイデアを出していかないといけないし、勉強するべきことはたくさんあります。
公務員というと、「コツコツ真面目に」のイメージがあったと思いますが、今はそうした時代ではありません。もちろん今でも、「公務員=安定」のイメージを抱いて入職する職員もいます。しかし、実際の現場では「周りの自治体と比べてどんなオリジナリティを出していくか」「チャレンジする職員を育てていくにはどうしたらいいか」と組織を前向きに変化させる施策を常に考えています。そうしないと生き残れないと感じているからです。
人事として、CYDASや評価の仕組みを活用しながら、これからの加東市を担う人材を育てていければと思っています。